地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
72 巻, 1 号
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原著論文
  • -塩分指数と電気伝導度の検討-
    嵯峨山 積, 近藤 玲介, 重野 聖之, 横田 彰宏, 宮入 陽介, 百原 新, 冨士田 裕子, 矢野 梓水, 横山 祐典
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル オープンアクセス

    北海道北部の猿払川流域の沖積層から,中湿原コア(全長33 m,HU-SRN-1)とアカエゾ松林コア(全長9 m,AEM-1)を採取し, 堆積環境を明らかにするために放射性炭素年代や電気伝導度(EC)の測定,珪藻分析を行った.コアは層相に基づき下位より頁岩相,砂礫相,泥炭質シルト相,砂質シルト相またはシルト相,泥炭質砂質シルト相および泥炭相に区分される.本地域の完新世の堆積環境は下位より淡水域,汽水域,淡水域へと変化し,汽水化した原因は縄文海進によるものと考えられる.中湿原コアの海水流入開始は深度27 m(標高 -15.2 m)付近で,その年代は約8,990 cal BP と推定される.珪藻群集から求めた塩分指数とEC 値の相関係数は0.38 前後で,塩分指数の曲線は猿払湿原と北海道中央部の石狩平野の沖積層の対比の可能性を示唆している.

  • 中野 聰志, 橋本 勘, 木村 克己, 周琵琶湖花崗岩団体研究グループ
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル オープンアクセス

    琵琶湖南湖湖岸・雄琴において,大津市によって深層ボーリングが行われ,地下918.5 m から1,801 m の雄琴花こう岩の連続コアサンプルが得られた.雄琴花こう岩は,北方の比良花こう岩体と南方の比叡花こう岩体の中間に位置している.雄琴花こう岩は,中粒斑状の角閃石・黒雲母花こう岩~花こう閃緑岩と細粒斑状の角閃石・黒雲母花こう岩~花こう閃緑岩の大きく二つの岩相からなる.モード組成・全岩化学組成・K-Ar 年代(71.2±3.6Ma)は,雄琴花こう岩が琵琶湖南部周辺の後期白亜紀環状花こう岩体のメンバーであることを示している.一方,雄琴花こう岩は,岩相・主成分および微量元素組成・年代において比叡花こう岩や北西方に分布しているアダカイト質の花こう岩とは異なる.

特集:本州弧中央部における隆起とその火成造構的背景(1)
原著論文
  • 角田 史雄
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 23-39
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル オープンアクセス

    若狭湾-伊勢湾から利根川までの本州弧中央部で東西方向の切峰面の断面図を作成して,局地的な高まりの孤立状隆起と,全域に及ぶ撓曲状の盾状隆起が確かめられた. この地域の白亜紀後期以降における火成-堆積-造構活動過程から,高粘性マグマの湧昇→上部地殻の上向き撓曲→削剥礫・礫径・礫岩層の増加などの隆起現象,という変動が明らかになった.盾状隆起,地層圏,上部地殻上面の弧の矢高/ 弦長比がほぼ同じことから,盾状隆起は,上部地殻上面の撓曲変形が原因で発生したと想定される. 一方,孤立状隆起は,肥厚化した中部地殻の上面からのプリューム状の高温流動体が上部地殻をブロック隆起させてできた.

  • 足立 久男
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 41-57
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2019/12/27
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    新生代においてフォッサマグナ地域の隆起は中期中新世末からはじまり,後期中新世には全般的隆起が進行している.この時期には隆起中軸部付近で激しい火山活動が生じ,多数の火山性陥没盆地群が形成されている.火山性陥没盆地群は一次的な配列と,それと斜交する雁行状の二次的な配列をなしている.これらは,溶融体の上昇による鉛直下からの地殻の突き上げによる引張場での雁行状の深部断裂の形成によって説明することが可能である.隆起中軸部には中新世の花崗岩類の活動,後期中新世の火山性陥没盆地群の発生,第四紀火山の活動などがみられ,現在もキュリー点深度は浅く,また,周囲より地殻熱流量も高い値を示しており,高温帯(火山-深成作用高温帯)を形成している.一方,地震分布・地震波速度構造・地震波トモグラフィなどのデータからも隆起中軸部の地下には溶融体の存在が想定され,深度30 ~50 km ないしは20 ~60 km には地震波の低速度層がみとめられる.これらは地表部から得られた火山性陥没盆地群の形成機構と調和的である.マントル内における部分溶融の発生後,地殻下部~最上部マントル付近への溶融物質の付加と蓄積,溶融物質の地殻内への上昇と迸入(群生マグマだまりの形成),地殻内の断裂に沿っての上昇などが想定され,隆起中軸部における隆起は,このような溶融体の形成とその活動からもたらされるマグマ活動に原因があると考えられる.

  • 正田 浩司, 関東平野西縁丘陵団体研究グループ
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 59-72
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2019/12/27
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    関東平野西縁地域の諸丘陵やその間を流れる河川の河床には後期鮮新世以降の地層が分布する.飯能層中の矢颪テフラ層(YAO),狭山層中に挟在する狭山ガラス質テフラ層(SYG),狭山ゴマシオテフラ層(SGO),仏子層中に挟在する笹井ガラス質テフラ層(SSI)を記載した.広域対比について検討したところ,SYG は新潟地方に分布する約1.7 Ma の津池火山灰単層(TsA)に対比できる.SYG の約20 m 上位にあるSGO は仏子層中のE1,多摩丘陵のHU1 に対比できる.E1 の直下に見いだしたガラス質テフラSSI は約1.65 Ma を示す多摩丘陵のHU2,房総半島黄和田層中のKd25 に対比できる.

    関東平野西縁地域のテフラ層序の詳細な記載と,各々の地層の堆積年代と走向・傾斜を比較し,関東平野西縁地域の地殻変動について検討した.その結果,後期鮮新世以降,関東山地の隆起は現在も継続しており,特に2.6~2.5 Ma 頃には急激な隆起が発生したため関東平野西縁丘陵を構成する多量の堆積物が関東山地から供給されたと見なされる.

  • -孤立丘陵形成モデルの提起-
    久保田 喜裕, 新潟平野西縁団体研究グループ, チーム新潟平野
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 73-86
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2019/12/27
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    越後平野西縁には,背後に顕著な低地帯を伴い,後背山地の山麓斜面から分断された丘陵-“孤立丘陵” が分布している.詳細な野外調査をもとに,孤立丘陵形成モデルを提示し,孤立丘陵の縁辺活断層系の浅部~深部構造形態について議論した.

    隆起地塊(山塊)の縁辺断層系は,深部では垂直ないし高角であるが,浅部では逆断層へと移化する.山塊頂部は強い隆起により引張場におかれるため,高角正断層群が形成される.平野側は逆断層により圧縮場になるため小隆起し,丘陵-バルジが形成される.この時,後背山塊と丘陵の境界部も引張場におかれるため,グラーベン状の低地帯が形成され,“孤立丘陵” が形成される.孤立丘陵は弱い引張場におかれ,小規模で根の浅い高角正断層ないしは引張裂か群により地塊化される.

    この孤立丘陵形成モデルでは,主地塊境界断層は後背山塊と孤立丘陵間の低地帯域に高角正断層系として形成され,主地塊境界断層から派生した逆断層系は孤立丘陵の平野側前縁に形成される.孤立丘陵は後背山塊の隆起量に規制され,後背山塊の最高峰-最大隆起部の麓部に形成される.後背山塊の隆起量が大きいほど,孤立丘陵の平野側前面に逆断層系が複数形成されるため,多重孤立丘陵が形成される.

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