地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
72 巻, 2 号
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原著論文
  • 平社 定夫
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2018/04/25
    公開日: 2020/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    茨城県稲敷台地南部に,上部更新統木下層に属する高海水準期に始まるプログラデーションによって形成されたチャネル充填堆積物が分布する.今回,この基底部で水中土石流と推定される堆積物,および,穿孔痕をもった大礫・巨礫を見出した.穿孔痕はその形態的な特徴からGastrochaenolites lapidicus Kelly and Blomley 1984

    に同定される.本穿孔痕の形成は水中土石流堆積物堆積後に始まり,上位の掃流堆積物に覆われて完結した.近年,Gastrochaenolites は海進期に形成される不連続面と結びつくことで注目されている.しかしながら,本稿は,Gastrochaenolites 動物が高海水準期の古東京湾においてチャネル底で半固結状態の大礫や巨礫を見いだし,それらを基層として一定期間棲息したことを指摘した.

短報
  • 米山団体研究グループ, 相澤 正隆
    原稿種別: 短報
    2018 年 72 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2018/04/25
    公開日: 2020/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    The early Pleistocene Nakanodake Composite Intrusion composed of basaltic rock core surrounded by hornblende andesite, exposed at the northern foot of the Mt. Yoneyama, central Japan. The boss dimension of this intrusion is 1.6 km in diameter. Basaltic rock comprises of mafic minerals, including clinopyroxene and orthopyroxene. Andesite can be classified into two types: hornblende-rich type and hornblende-poor type. The former includes a minor amount of pyroxene in the groundmass, whereas pyroxene is invariably present in the later. Hornblende is replaced by clinopyroxene, magnetite, and feldspar either partially or entirely. Then the hornblende-poor type andesite gradually changes into basaltic rock. It was observed those hornblendes became unstable, and were decomposed by injection of basaltic magma.

原著論文
  • 箱根発生期団体研究グループ
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2018/04/25
    公開日: 2020/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    要 旨

    下部更新統の足柄層群は伊豆海嶺と本州弧が交差する地点に発達している.足柄層群の海底隆起にともない,堆積年代の最も若い塩沢累層の堆積物は浅海成~陸成環境において堆積している.足柄層群は東側の地層の隆起によって西側に急傾斜している.

    箱根火山噴出物は火山砕屑岩,溶岩,および水成堆積物などから構成され,足柄層群の浸食面を不整合に覆っている.本地域の箱根火山初期堆積物の大沢層最下部には珪藻化石を含む水成堆積物があり,北西-南東の走向で約20°南西傾斜を示す.このような傾動は足柄層群の隆起と西へ傾く構造をもたらしたマグマ性物質の貫入によって引き起こされたものと考えている.本地域の箱根火山堆積物に見られる池沼成堆積物からの珪藻化石の報告は初めてのものである.

  • −孤立丘陵形成モデルの検討−
    久保田 喜裕, チーム新潟平野, 新潟平野西縁団体研究グループ
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 2 号 p. 125-142
    発行日: 2018/04/25
    公開日: 2020/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    越後平野西縁断層帯域で得られた孤立丘陵形成モデル(久保田ほか 2018)の妥当性を議論し,越後平野周辺のとくに後期更新世の隆起運動と地形形成作用について検討した.

    “孤立丘陵” とは,背後に顕著な低地帯を伴い,後背山地の山麓斜面から分断された丘陵をいう.孤立丘陵の前面と背面には逆断層系が分布し,孤立丘陵には変位量数10 m の高角正断層系が分布する.孤立丘陵はこれらの断層系によって数100 m ~数km に地塊化されている.

    越後山脈は鮮新世~前期更新世に隆起を開始した.前期更新世には隆起運動は西進し,越後山脈南部西麓に魚沼丘陵,新津・下田・東山丘陵を形成した.中期更新世には隆起運動の西進は越後山脈北部へ北進し,西麓に五頭山地,櫛形山脈を形成した.後期更新世には隆起運動は全域で越後平野側へ西進し,魚沼丘陵の東麓,新津・下田・東山丘陵,五頭山地,櫛形山脈の西麓に孤立丘陵が形成された.

    この前進する隆起運動により「越後平野-孤立丘陵・背後低地帯-後背山地・背後低地帯-越後山脈」という“東 高西低” の帯状地形配列が成立した.孤立丘陵の後背山地は“南高北低” の高度を示すが,孤立丘陵は後背山地南部の最高峰,すなわち最大隆起部の麓部に形成された.孤立丘陵の形成は,後期更新世以降に生じた加速的な垂直~高角ブロック隆起運動による地形更新作用-高山化が要因とみられる.

  • 岡野 裕一, 秩父盆地団体研究グループ
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 72 巻 2 号 p. 143-152
    発行日: 2018/04/25
    公開日: 2020/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    秩父盆地団体研究グループのこれまでの研究成果と小川町総会シンポジウムでの討論の結果をもとに,秩父堆積盆地の発生~発展~消滅期の地史をまとめ,堆積域と後背地の隆起・変遷を考察し,さらに関東山地地域の隆起について検討した.

    秩父堆積盆地の発生期には,断層活動による小陥没が生じ,それらが結合して大きな沈降域へと発展した.最下部層の地質年代は18-17 Ma であり,秩父堆積盆地の発生は前期中新世末である.16 Ma 頃には部分不整合が形成されており,堆積が進行する一方で,堆積域・後背地の一部で隆起が生じた.この後,急激に海底面深度が深くなった.

    堆積盆地発展期にあたる小鹿野町層群堆積期には海進が一層すすみ,砂岩泥岩互層を主体とするタービダイトが堆積したが,その後期には海退がはじまった.さらに,上位の秩父町層群の堆積時には堆積盆地の環境は浅い海へと変化した.この時期には周囲から堆積物の供給がみられることから,後背山地地域の隆起が想定される.

    秩父堆積盆地消滅期にあたる最上部層は粗粒な岩相のものが多い.堆積盆地の消滅は,15-14 Ma と推定される.堆積盆地消滅後,地塊化をともなった関東山地の隆起運動は一層進行している.秩父堆積盆地の周辺地域における深成岩の活動や陸上火山活動と,堆積盆地域における海域の消滅,消滅後の隆起の時期は対応しているようにみえる.とりわけ,堆積盆地周辺部にみられる深成岩の活動は,地殻の上昇などをもたらし,地塊化をともなった関東山地地域の隆起運動の原因になったのではないかと推定される.

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