地球科学
Online ISSN : 2189-7212
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74 巻 , 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著論文
  • 石賀 裕明
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 74 巻 4 号 p. 109-118
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    西南日本の汽水湖である宍道湖において,大型沈水植物のオオササエビモ(Potamogeton anguillanus Koidz)が2009 年から湖岸,特に南岸で段階的に再生を始めた.様々な水環境においてこのような植物は重金属イオンを吸収または吸着することが知られている.この生体濃縮を調べるために,2010 年から2012 にかけて湖岸の数ヶ所で採取したオオササエビモ試料の重金属濃度をXRF により測定した.その結果,高いMn 含有量が茎や葉身(葉)で認められ,特に葉の含有量は非常に高い.そのMn 含有量は2012 年では夏季に向けて高くなることが明らかとなった.一方,オオササエビモの葉の表面のSEM による観察では付着生物(藻類,珪藻類,甲殻類など)が多数見られる.今回のMn 含有量の測定はオオササエビモの茎と葉とこれらの付着生物の全体を測定したものである.2012 年のSS(浮遊物質)のMn 含有率も5 月から8 月にかけて急速に増加する.これらのことは,夏季に流入する塩水により発生する還元的な底層水中に底質から溶出したMn 2+ が,その後の底層水の湖風による湖岸への移動に伴い,オオササエビモに吸着・吸収(濃縮)された結果であると考えられる.なお,宍道湖における上記過程におけるFe の挙動はMn とは異なることも今回判明した.

  • 内村 耕太郎, 本山 功, 西村 智弘, 竹谷 陽二郎
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 74 巻 4 号 p. 119-136
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    穂別地域は空知–蝦夷帯に属し,褶曲・断層の発達する白亜系~新生界が分布する.この地域の上部白亜系蝦夷層群は軟体動物,海生爬虫類などの化石を豊富に産することから,多くの地質学的・古生物学的研究がなされてきた.一方,隣接する平取地域の白亜系の研究は限られている.そこで,トウナイ沢流域において地質調査を実施し,地質図を作成するとともに,堆積年代決定のために生層序学的検討を行った.この地域の蝦夷層群は鹿島層と函淵層からなる.鹿島層は主に単調な半遠洋性泥岩からなり酸性凝灰岩を挟有する.函淵層は鹿島層に整合に重なり,主に砂岩・礫岩・砂質泥岩からなり斜交層理砂岩や石炭層を伴う.本研究により調査地域西部に鹿島層の分布が認められ,これは北隣地域に分布する鹿島層へ連続すると考えられる.従来の研究ではトウナイ沢流域北部の鹿島層は褶曲構造をなすとされていたが,凝灰岩層の特徴に基づくと褶曲構造は支持されない.鹿島層・函淵層からDictyomitra formosaDictyomitra koslovaeLithocampe manifestaSpongotripus morenoensis などのConiacian ~Maastrichtian の年代を示す放散虫化石が産出した.鹿島層からはInoceramus amakusensisInoceramus japonicusEupachydiscus haradai などのConiacian~Campanian の年代を示す軟体動物化石の産出が認められた.これらにより調査地域の鹿島層はConiacian~Campanian に対比される.また,調査地域西部には中新統の滝の上層と川端層が分布し,白亜系とは断層で接する.放散虫の産出は少量で保存は不良であった.

  • 柴 正博, 横山 謙二, 大橋 泰知, 森住 誠, 前川 恒輝, 近藤 匡, 荻 修吾
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 74 巻 4 号 p. 137-155
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    静岡県掛川市北部地域に分布する下部~中部中新統は,不整合によって下位から倉真層群と西郷層群に区分される.倉真層群は下位から東道層,天方層,戸綿層,松葉層,真砂層からなり,西郷層群は下位から戸沢層と五明層からなる.倉真層群はBlow(1969)のN6~N8 帯に相当し,西郷層群はN8 帯に相当する.したがって,倉真層群の地質年代は前期中新世後期に,西郷層群は中期中新世初期に当たる.

    前期中新世後期に,倉真向斜軸部で沈降が開始し,そこに第1のチャネル・レヴィー複合体が発達して東道層が堆積した.その後の相対的海水準の上昇にともなって堆積域が南東側と北西側に広がり,基盤を不整合に覆って天方層が内側陸棚に堆積し,戸綿層が外側陸棚から陸棚斜面に堆積した.その後,倉真向斜軸部に沿った海盆底に第2 のチャネル・レヴィー複合体が発達し,松葉層の海底扇状地堆積物が形成した.それにつづいて,外側陸棚から陸棚斜面環境に真砂層が堆積した.西郷層群の堆積期には,倉真向斜の南東翼と北西翼が隆起して急傾斜面が形成された.その倉真層群の急傾斜な陸棚斜面を不整合に覆って西郷層群が堆積した.そこには海底地すべりにより形成された土石流堆積物と火山砕屑物からなる戸沢層が,そしてその後に,陸棚斜面に堆積した泥質堆積物からなる五明層が堆積した.

  • 柚原 雅樹, 梅﨑 惠司, 森 貴教, 川野 良信
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 74 巻 4 号 p. 157-170
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    北部九州東部に分布する関門層群脇野亜層群のいわゆる層灰岩の主成分および微量成分元素測定と希土類元素分析を行った.層灰岩は,数mm ~数cm の泥岩~極細粒砂岩からなる暗色層と泥岩~細粒砂岩からなる明色層の互層からなる.層灰岩は,脇野亜層群の泥岩,砂岩,礫岩と比べ,高いCaO およびSr 含有量を示す.紫川流域と黒川流域の層灰岩の全岩化学組成は類似するが,八木山川流域の層灰岩はこれらよりも低いTiO2,Al2O3 含有量と,若干低いCr,Ga,Nb,Th,Zr 含有量を示す.希土類元素パターンに明瞭な違いは認められない.これらの微量成分元素は,層灰岩の石器石材の原産地同定に有効である.

特集:「本州中央部における第四紀隆起運動」(1)
原著論文
  • 久保田 喜裕, チーム新潟平野, 新潟平野西縁団体研究グループ
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 74 巻 4 号 p. 173-186
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    本稿は,越後平野周辺域にみられる孤立丘陵の特異な地形配置の観点から山並みの形成過程を論じ,その地質学的要因について考察した.

    孤立丘陵は傾動地塊の背面側および断層崖側斜面の両麓に分布している.このことは,後背山地周辺の隆起様式が中期更新世の傾動隆起から後期更新世の鉛直隆起へ転換したことを示唆する.

    越後平野周辺の後背山地の隆起域は,津川-会津区を挟んで,南方では前期更新世~中期更新世,北方では中期更新世と北へ拡大し,傾動地塊を形成した.中期更新世には,最初の孤立丘陵が後背山地の東麓に形成され,つづく後期更新世の鉛直隆起により,西麓にあらたな孤立丘陵が形成された.

    現在の山並みの景観は,中期更新世の傾動隆起によって,その基本構造がつくられ,後期更新世~現世における山地直下の低速度層の膨張によって,地表が鉛直隆起し成立した.

  • 足立 久男, 小林 和宏
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 74 巻 4 号 p. 187-199
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    本論文は,本州中央部の火山-深成作用高温帯地域にみられる隆起地形と火山活動・地震活動との関連性および地震波トモグラフィなどから推定される地下構造との関連性などについて検討を加えたものである.

    その結果,①火山-深成作用高温帯地域の地下深度30 ~40 km 付近には水平方向の広がりをもつ低速度層が発達すること,②低速度層の上面側をおおって発生している地震の分布形状および隆起地形は調和的であること,③低速度層から分岐した低速度領域の直上には第四紀火山が発達することなどが明らかになった.隆起地形とそれに調和した震源分布の形状,およびその直下にみられる低速度層の発達という「3 要素ユニット」は,鉛直下からのマグマ性の押し上げ隆起の運動が生じていることを強く示唆する.火山-深成作用高温帯とその周辺地域は,地質学的測地学的データからみると更新世から現在にかけて著しい隆起傾向を示している.

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