地球科学
Online ISSN : 2189-7212
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原著論文
  • 二村 光一, 森 勇一, 田中 里志, 宇佐美 徹
    原稿種別: 原著論文
    2025 年 79 巻 2 号 p. 39-54
    発行日: 2025/04/23
    公開日: 2025/06/23
    ジャーナル フリー

    大谷火山灰層は,Znp-大田テフラ層と総称される,中部日本における鮮新世前期の顕著な指標テフラである.本研究は,火山灰層の堆積過程をラハールの観点から検討するとともに,火山灰層下部に観察される未固結時 変形構造の形成過程を復元した.

    その結果,火山灰層は流下過程で鉛直方向,前方,後方へ漸進的に分化した,土石流やハイパーコンセントレイティッド流を伴ったラハール堆積物である.ラハール堆積物の急速かつ厚い堆積は,下位層に過剰な間隙水圧を発生させ,液状化と流動化を起こし,砕屑岩脈や荷重構造が形成された.さらにラハール堆積物の最下部には,急激なラハールの流れによる引きずり剪断により,転倒褶曲,スラスト,S字(Z字)状屈曲構造が形成された.これらの未固結時変形構造は,ラハールによる過重負荷と剪断応力の記録であり,その形成に関与したラハールの動的プロセスに関する貴重な情報を提供するものである.

  • 関根 栄一
    原稿種別: 原著論文
    2025 年 79 巻 2 号 p. 55-66
    発行日: 2025/04/23
    公開日: 2025/06/23
    ジャーナル フリー

    関東平野西縁部に分布する飯能層上部層に含まれるホルンフェルス礫について主成分,微量成分ならびに希土類元素組成測定を行った.ホルンフェルス礫の供給源に制約を加えるため,四万十帯内を流れる多摩川支流一之瀬川周辺域の試料と,秩父帯内を流れる荒川支流中津川周辺域の試料についても同様の分析を行った.飯能層上部層ホルンフェルス礫は,四万十帯ホルンフェルスとおおむね共通する化学的性質を示した.また,秩父帯から苦鉄質ホルンフェルスが見いだされたが,これらは飯能層上部層では見いだされていない.したがって飯能層上部層ホルンフェルス礫の供給源は四万十帯内のホルンフェルス岩体であると推定される.また,その供給経路は四万十帯を上流域にもつ多摩川水系または秩父凹地帯を流れていた河川のいずれかであると考えられる.

  • 濱田 真実, 入月 俊明, 辻本 彰, 瀬戸 浩二
    原稿種別: 原著論文
    2025 年 79 巻 2 号 p. 67-80
    発行日: 2025/04/23
    公開日: 2025/06/23
    ジャーナル フリー

    島根県東部島根半島の下部~中部中新統成相寺層が分布する11の地域の葉理の発達した黒色頁岩から,保存状態の良い魚鱗化石が多数発見された.これら462点を形態学的特徴に基づき同定したところ,本研究で初めてニシン科,ハダカイワシ科,トカゲギス科,タイ科,ムツ科の5科を同定した.また,堆積した当時の環境を復元するために,底生有孔虫化石,全有機炭素,全窒素,全硫黄の含有量の分析(CNS元素分析)も行った.産出した魚鱗化石,底生有孔虫化石,およびCNS元素分析の結果に基づき,成相寺層における魚類相の変遷と古環境の復元を行うと次のようになる.成相寺層最下部堆積時に海水の影響が強化されたことにより,底層は非常に還元的で溶存酸素の乏しい環境となったが,水深0~200 mの表層付近は酸化的で,ニシン科が卓越していた.その後,成相寺層下部~中部堆積時には中部漸深海帯の環境となり,ハダカイワシ科やトカゲギス科などの深海魚が生息していた.成相寺層上部堆積時では,底層の溶存酸素濃度が増大し,魚類分類群が豊富になった.このように,成相寺層下部から中・上部にかけて,水深の増加,堆積環境の変化とともに魚類相の多様性が増加したことが明らかになった.また,同時期に堆積した日本海側の他の地層との比較に基づくと,成相寺層は他の地層よりも早く海進が起き,深海化したと推察される.

  • 上田 広和, 三瓶 良和
    原稿種別: 原著論文
    2025 年 79 巻 2 号 p. 81-101
    発行日: 2025/04/23
    公開日: 2025/06/23
    ジャーナル フリー

    青森県下北半島の第四紀火山である燧岳の北東麓に中~上部中新統薬研層下部層の熱水変質作用を受けた珪質泥岩が局所的に露出する.本研究は,燧岳熱水系が下部薬研層泥岩の有機物濃度や組成,岩石組成に及ぼした影響を明らかにすることを目的とした.同一層準とみなせる①国道沿い露頭,②大赤川露頭,③連続変質露頭の3地点における泥質岩試料を採取し,有機地化学・無機および鉱物学分析を行った.この結果,TOC濃度や炭化水素量は燧岳に近いほど低下する傾向が明瞭に見られた.C/N比とC/S比は燧岳に近いほど変動幅が大きく,有機物は熱水変質により熱分解し,アミノ基の分解,アスファルテンの生成,堆積性黄鉄鉱の溶脱と再沈殿が生じたことが明らかになった.熱水流動は炭化水素の流出を促したが,n-アルカンの変質前の組成はほぼそのまま残る事象が見出された.熱水による被熱温度は,国道沿い露頭で100~110℃,大赤川露頭で200~240℃,連続変質露頭で150~250℃(Ueda and Sampei 2024)と推定された.このうち大赤川露頭はオパールCT/石英転移帯に相当し,孔隙率が高い.連続変質露頭ではSiO2濃度と孔隙率には相関があり,珪化の進行と共に岩石密度は増加する.鉱物組成に基づけば,連続変質露頭では硫酸熱水による変質であり,火山性揮発物質の寄与が高い.一方,大赤川露頭では加熱された地下水による変質で,弱酸性~中性の熱水変質である.変質年代はいずれの露頭も0.1 Ma以降だった可能性がある.

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