東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
24 巻 , 1 号
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  • 岸本 千佳司
    2013 年 24 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    2008 年5 月に発足した台湾の国民党・馬英九政権は,当初より中国との融和,対中経済関係の「正常化」を推し進め,さらに2010 年6 月,自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)に相当する「海峡両岸経済協力枠組み協定」(中国語は「海峡両岸経済合作架構協議」,英語では“Economic Cooperation Framework Agreement:ECFA”。以下ECFA と記述。なお「両岸」とは中国と台湾の意)の締結を行った。これと並行して,両岸架け橋プロジェクト(中国語は「両岸搭橋専案」)や中国からの買い付け団の訪台のような中台間企業・産業協力促進の取組みも実施されている。  中台経済一体化の趨勢を反映した「チャイワン(Chaiwan = China + Taiwan)」の概念が登場し日本や韓国など周辺諸国への影響が注目されているが(伊藤,2010),その言葉から想像されるほど中台間は一枚岩ではない。台湾内部でも対中連携推進を巡っては賛否両論がある。反対派はこの政策を「中国化」と批判するが,馬政権と支持派は,孤立化回避と「国際化」が狙いであり中国との関係改善はその不可避の前提と主張する。筆者の理解では,馬政権および支持派の基本戦略は,対中連携推進によりビジネスチャンスを拡大し中国市場開拓で有利な立場を得る,それを梃子に中国ビジネスのゲートウェイとして台湾の戦略的価値を高め日米等からの外資誘致と企業間連携を促進する,そしてこれが台湾企業の競争力強化と対中(および対アジア)ビジネスチャンスの一層の拡大に繋がる,といったものである。ECFA の関税減免により必ずしも工場を中国に設立する必要がなくなり台湾本国での投資が増えるという期待もある。このサイクルが展開することで,台湾の経済活性化と雇用創出および産業構造改革も達成され,行く行くは台湾を「外国企業のエリア運営センター」「台湾企業のグローバル営業総本部」「アジア太平洋の経済・貿易の中枢」へと発展させることが企図されている。他方,反対派は,ECFA の実質的利点はさほど大きくないと考え,むしろ中国からの製品・資本の流入による国内中小企業へのダメージや中国の影響力浸透のリスクを重視する。また言語・文化・地理的親近性と経済規模の圧倒的格差から結局は中国に資本・人材が吸引され台湾の空洞化が加速することを懸念する。さらに対中連携を梃子に台湾の戦略的価値を高めアジアの地域経済センター化を目指す構想についても非現実的な期待に過ぎないと切って捨てる(詳しくは,岸本,2012a 参照)。  馬政権の第1 期の経済実績は芳しくなかったが,その主たる原因は世界不況にある。中国との交渉の仕組みを構築し,ECFA や架け橋プロジェクト等の経済交流の枠組みを整え,中国人観光客受け入れや海運・空運で目にみえる成果を上げた点は有権者から一定の評価を受けたとみられる。これを背景に2012 年1 月の総統選挙で再選され,同年5 月に馬政権の第2 期目が始まった。上述の戦略の成否を最終的に評価するには時期尚早だが,第1 期から数えてすでに数年経過しており,現在(本稿執筆中の2012 年12 月末時点)までの進捗状況を分析することは必要である。本稿では,対中連携推進策の柱としてECFA と両岸架け橋プロジェクトに注目し,また中国ビジネスのゲートウェイ化による外資誘致と「国際化」追求の例として日本との連携推進を取り上げ,これまでの成果と課題および今後注目すべき点について検討する。
  • 範 金, 傘 鋒, 袁 小慧
    2013 年 24 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    家計消費の拡大は,中国経済の長期的・持続的な発展にとっても,社会主義「和 諧社会(各階層間で調和のとれた社会)」建設の推進にとっても,あるいは経済発 展方式の転換という目標の実現にとっても重要な戦略的意義をもっており,今回の 金融危機後の国際環境や国内経済の構造転換がいずれもこの点を実証した。しかし ながら,長期に渡って形成されてきた,消費成長を抑制する体制メカニズム的な各 種の要素が存在し,また足枷となるような各種要因も絡み合っているため,家計消 費の拡大には尚も困難な努力が必要とされる。そこで私たちは,家計消費拡大は所 得分配体制の健全化,社会需給環境の万全化,政府統制の強化などの面から着手す べきだと考える。
  • 税所 哲郎
    2013 年 24 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    東南アジアにおける立憲君主制国家のカンボジア王国(Kingdom of Cambodia:以下,カンボジア)は,インドシナ半島の中央に位置し,西部にタイ,東部にベトナム,北部にラオスと国境を接し,南部は南シナ海に接している。  現在,カンボジアにおける主要産業は農業や漁業,林業の第一次産業が中心であるが,近年の観光業や縫製業等による発展で,過去10 年間の実質国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)(注1) 成長率が平均 7.9%の高い経済成長を続けている。近年では,チャイナ・プラスワン(注2 )のリスク分散国の 1 つの国として注目を浴びており,外国からの直接投資も大きな伸びを示している。  特に,中国・韓国系企業が社会インフラ・不動産関連を中心に積極的な投資を行っている。例えば,首都プノンペン市内でのカンボジア首相府のビル(中国)や42 階建ての高層ビル(韓国),プノンペン郊外での20 億米ドル規模の新興都市(韓国)の建設,カンボジア南部のタイランド湾に面した港湾都市シハヌークビルのインフラ整備(中国)等に多額の投資を行っている。  一方,カンボジア国内の産業政策においては,経済特別区(SEZ:Special Economic Zone)や工業団地(IZ:Industrial Zone)等の産業集積地を中心とした地域産業を開発することで,積極的な外資誘致政策を展開している。  本稿では,筆者の現地調査( 注3 )に基づき,産業集積地の開発,および同地への日系企業の進出が数多くみられるプノンペン経済特区(PPSEZ:Phnom Penh Special Economic Zone)の事例を中心に,カンボジアにおける産業クラスター( 注4 ) の可能性についての考察を行うこととする。
  • 秦 兵
    2013 年 24 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    中国では現在,工業化が急速に進行し,ここ数年で経済規模が大きくなり「世界の工場」といわれるようになった。産業構造と産業発展が地域経済と国民経済に重大な影響を与えつつある。内需拡大と地域格差是正などの問題を解決するためには,適切な産業発展戦略と産業政策が求められている。産業構造とその発展戦略は中国全体および地域の経済発展に重要な影響を与え,地域経済の競争優位にとって極めて重要である。工業化するに伴って,業種構造の傾向を知ることが重要である。そして中国ないし各地域はその傾向の中で如何なる位置にあるのかを判断して,先手を打つことが効果的と考えられる。  産業構造に関する理論は多数存在するが,工業内部の産業構造に関してはホフマン法則がよく知られている。Hoffmann(1958)は,経済発展とともに消費財に対する生産財の比率が上昇することを説いた。次に,宮沢(1975)は経済発展につれて,工業の産業構造が軽工業から重化学工業へ移行すると指摘した。また,吉村(2008)は,産業構造変化の世界標準パターンを,三角形ダイヤグラム(三角形図)を用いて数量的に導出し,それに基づく修正ペティ=クラーク法則を示し,産業構造の収斂傾向を実証的に明らかにした。吉村の修正ペティ=クラーク法則によれば,経済発展につれて,産業構造は,第1 次産業から,第2 次産業・第3 次産業へと移行し,さらに経済発展すれば第2 次産業のウエイトは減少に転じるということである。中国の経済発展に関する研究,文献資料は多数存在する。また,産業構造に関する研究も増えているが,その実証研究は,まだ十分ではない。中国における産業構造の傾向を,統計データを用いて実証的に解明した分析は乏しい。  ここでは,工業3 分類(生活関連型,基礎素材型,加工組立型)からみた中国の経済発展と産業構造について分析する。中国の工業発展においては,1949 ~ 78 年の伝統工業化段階と1978 年~現在までの新型工業化段階の2 段階に分けられる(汪,劉,2009)。しかしながら,1987 年以前の連続した詳しいデータが入手できないので,それ以前のものは,本稿では扱わない。本稿では,工業3 分類とは,中国産業分類に基づき,工業を次のように,生活関連型工業,基礎素材型工業,加工組立型工業の3 つに分類することを指す。生活関連型工業は消費財産業(軽工業)に属しており,基礎素材型工業と加工組立型工業は投資財産業(重工業)に属する。 ○生活関連型工業:食品加工,食品製造,飲料,タバコ,紡績,製紙 ○基礎素材型工業:石油加工煉焦,化学工業,医薬品,化学繊維,非鉄金属鉱物,黒色金属加工,金属製品 ○加工組立型工業:機械,専用設備,交通設備,電器・機器,電子・通信,計器類 遼寧社会科学院世界経済研究所助理研究員 秦 兵  そこで,工業構造は,生活関連型→基礎素材型→加工組立型に変化するという仮説を設定する。この仮説を検証するために,経済発展理論と三角形ダイヤグラム分析を用いて,中国における経済発展と産業構造との一般的な傾向を検証し,さらに省レベルのデータを用いて,各省の経済発展と産業構造との関係を示す。吉村(2008)は,種々の方法で産業構造を表現できるものの,ぺティ=クラーク法則のように産業3 分類を扱う場合には,「三角形ダイヤグラム」が3 産業の構成比を平面上の1 点に表示できるので,有効であることを指摘した。3 つの座標のうち,第1 座標,第2 座標,第3 座標をそれぞれ第1 次産業,第2 次産業,第3 次産業の構成比(%)とすれば,ある地域のある時点の産業3 分類の産業構造を三角形ダイヤグラムの中の1 点として表すことができる。この三角形ダイヤグラムを用いれば,ある地域が三角形内のどこに位置するかによってその地域の産業構造の特徴を把握することができる。  本稿では,この三角形ダイヤグラムを工業3 分類に適用して,中国の工業構造を分析する。また,中国および中国 31省市自治区の工業就業者構造( 注1 ),工業生産額構造について分析し,それに基づいて工業3 分類からみた中国の経済発展と産業構造の傾向を明らかにする。その結果,「工業構造は,生活関連型→基礎素材型→加工組立型に変化する。」という仮説が成立することを示す。
  • 鳥丸 聡
    2013 年 24 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    インフレターゲット2%水準を目指す金融政策と10 年間で200 兆円規模の社会資本整備を目指す財政政策が象徴する新政権の経済政策,いわゆる「アベノミクス」への期待と不安が交錯しながら2012 年は幕を閉じた。そして政策の実行を督促するかのように,為替・株式市場は一足早く円安・株高に大きく振れて2013 年が幕を開けた。しかしながら,金融緩和や財政出動といった景気てこ入れ策は「失われた20 年」において,規模の問題は別として,幾度となく実施されてきたことであり,とりわけ奇をてらったものではない。従って,その効果を訝る声も聞かれる。  以下では,行き場のない資金が金融機関にだぶついて金融政策の効果が低迷している様子を概観し,従来と同様の財政政策とは異なる社会資本整備が求められている現状を考える。そして,九州における新社会資本整備の課題について検討する。
  • 南 博
    2013 年 24 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本連載は「ギラヴァンツは北九州に何をもたらすのか」をテーマにしている。私達がまちづくりの側面からギラヴァンツに期待する効果例としては,「にぎわいづくりへの寄与」や「市民の地域への愛着の醸成」,あるいは「“北九州” の対外的PR」といった点があげられる。  こうした面について相通じる効果が期待される大イベントが,2012 年秋,北九州市で開催された。それは,B級ご当地グルメ( 注1 ) の祭典「B-1グランプリ in 北九州」である。  筆者は,同イベントの実行委員会事務局が実施した「ご来場者アンケート」の調査票設計,現地調査統括,集計・分析を担う機会をえた。そこで今回は,特別編として『「B-1グランプリ in 北九州」は何をもたらしたか』をテーマに取り上げるとともに,ギラヴァンツにかかわる事項への教訓も若干考察してみたい。
  • 坂本 博
    2013 年 24 巻 1 号 p. 63-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
  • 伊佐 勝秀
    2013 年 24 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    筆者は勤務校の在外研究制度を利用して2012 年9 月3 日から1 年間,香港中文大學に客員研究員として滞在する機会をえた。香港には過去に,1993 年3 月と2012 年3 月の計2 回,訪れている。前者は中国返還前のまだ九龍城や啓徳空港があった頃の個人旅行,後者は今回の在外研究の下見を兼ねた調査旅行で,いずれも10 日以内の短期滞在だった。この「海外便り」では数回にわたり,在外研究中の香港で見聞した様々な事柄について記したい。例えば香港の社会経済的な特徴として,「自由放任」「積極的不干預(介入)主義」「安価な政府」という表現がしばしば使われる。確かに中央銀行(発券銀行)が存在しない,法人税や所得税の最高税率が低い,付加価値税や関税が(ほとんど)ない,社会的セーフティー・ネットが乏しい(その結果として2011 年のジニ係数が0.537 と世界有数の高さ)などの特徴はある。しかし近年の高齢化などを背景に進む労働法制や社会保障制度の見直しなどをみると,この表現は必ずしも当を得ていない。また1997 年に中国に返還されたとはいえ,2047 年までは大陸(mainland)とは異なる「一國両制」の存続が法的に保証されている。しかしその内実は,日本では意外と知られていない。しかも近年は「一國両制」が順調に「一國一制」に収斂するかどうか,予断を許さない状況が続いている。こうした話題の紹介・検討は,今回の在外研究での研究テーマの一部であり,この「海外便り」でも随時取り上げる予定でいる。今回はまず,滞在地である 香港の概要を記し,次いで香港の学制と香港中文大學について紹介したい。
  • 坂本 博
    2013 年 24 巻 1 号 p. 83-84
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/09/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
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