東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
24 巻, 3 号
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  • エリック ラムステッター
    2013 年 24 巻 3 号 p. 3-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本稿の主な目的は,東アジアの主要5 ヵ国(経済)の製造業におけるエネルギーコストおよびその他の主要なコストの役割を検証することである。つまり,エネルギーおよびその他の環境関連コストの重要性が,国別,産業別でどのように異なっているのかを実証するという問題意識のもとに分析したものである。最終的には,エネルギーおよびその他の環境関連コストが,この地域で操業する多国籍企業の立地選択にどのような影響を与えるのかを明らかにすること が目的である。   本稿では,まず,エネルギーおよび環境関連コストをどのように考えるのか,先行研究を紹介しながら議論をする(第2 節)。次に,本稿で用いたデータを簡単に説明し(第3 節),日本,韓国,マレーシア,タイ,インドネシアにおけるエネルギーおよびその他のコストのシェアの比較(第4 節),東南アジア3 ヵ国で操業する多国籍企業と地元工場におけるエネルギーおよびその他のコストのシェアの比較を行う(第5 節)。最終節では結論を述べる。
  • 彭 雪
    2013 年 24 巻 3 号 p. 15-25
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
     中国の住宅市場が過熱化しており,住宅バブルへの懸念が高まっている一方,消費や投資を目的とする住宅購入の需要が増加しつづけている。中国政府は,こうした動向を警戒し,住宅市場への政策介入を試みようとしている。しかし,中国の住宅価格の合理性に関する議論が数多く出されているが,論者の立場・使用データ・分析手法等がかなり異なるので,導かれた結論も多様になっている。前稿(彭,2013)で分析した通り,不動産市場に関連する各方面の代表人物は各自の利害関係に影響され,中立な判断をする者は非常に少ない。バラバラな各種論点の信頼性は,一般市民にとって非常に判断しにくい。住宅価格動向に関する正しい世論形成そして適切な政策決定へ導くためには,客観的な立場に立って,信頼できるデータと分析手法に基づく検証を行うことが喫緊の課題となっている。  本稿では,上述した問題意識をもって,住宅価格の合理性に関する既存の分析アプローチを整理・説明した上で,中国に適用できる方法を選定し,中国の住宅市場でバブルが起きているかどうかを実際のデータを使って検証する。
  • 袁 小慧, 範 金, 王 凱, 厳 斌剣, 坂本 博
    2013 年 24 巻 3 号 p. 26-37
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
    中国の対外開放が進むにつれ,経済のグローバル化の影響を受けるようになった。グローバル化により,経済成長が見込めると同時に,住民消費も大きな影響を受けるようになる。しかもそれは貿易,投資といった物質面での影響だけではなく,精神面,即ち国際間の文化,スポーツ,旅行やインターネットなどの交流による影響も受けるようになった。2010 年の上海世界博覧会と長江デルタの国家戦略の実施により,長江デルタ地区は中国経済で最も発達した地区となり,それが中国の経済成長を牽引している。グローバル化によるこの地区の都市と農村の住民の消費行動への影響を研究することは,重要な意義があると思われる。資本,製品,人材と情報が全世界を流通するにともない,長江デルタ地区の農村と都市部住民の収入は絶えず増加している。都市部世帯のサンプリング調査によると,2012 年の江蘇,浙江および上海の都市部住民1人当たりの可処分所得はそれぞれ2万5,979元,3万4,550元,4万188元に達し,2002年と比較して,それぞれ2.2,1.6,1.7倍に増加した。農村部世帯のサンプリング調査に よると,2012 年の江蘇,浙江および上海の農村部住民1 人当たり純収入はそれぞれ1 万2,202 元,1万4,552 元,1万7,401元に達し,2002年と比較して,それぞれ1.7,1.6,1.5倍に増加した。一方,長江デルタ地区の住民の消費水準も上昇している。都市部住民を例に,グローバル化により,長江デルタ地区の都市部住民の消費支出は1人当たり年平均10%程度増加し,2012 年の江蘇,浙江および上海の都市部住民1 人当たりの消費支出はそれぞれ1万8,825元,2万1,545元,2万6,253元に達した。その中で,上海の都市部住民1人当たりのサービス支出は7,955元に達し,2002年と比較して,4倍以上となっている。明らかに,グローバル化は外資を呼び込むことができるのと同時に,住民の消費行動に対してもとても大きな影響を与えている。  それ以外に,2007年の下半期以降,米国のサブプライム問題や中国のマクロコントロール政策の影響を受け,国内外の生産活動と貿易環境はとても大きな変化が発生し,同様に中国各地域に対しても,これらの影響が住民の消費行動に影響を与えている。よって,物質面と精神面のグローバル化による中国住民による消費行動の変遷を研究することは,やや陰りがみえてきた中国の経済成長を再び高度成長にする上で,重大な現実的意義や深い戦略的意義があると思われる。  そこで,本研究では外資流入や輸入関税の変更を物質的なグローバル化と仮定し,消費性向の変更を精神的なグローバル化と仮定しながら,長江デルタ地区のグローバル化の過程および住民の消費行動の状況をモデル化する。さらに,長江デルタを江蘇(省),浙江(省)および上海(市)にわけ,多地域,多産業のモデルを構築する。  経済のグローバル化に関する研究は国際的な関心がもたれているが,Kónya and Ohashi (2004)はグローバル化によるOECD 国家の住民消費の相違について研究を行い,消費水準の収斂傾向を確認している。また,Jams(2000)はグローバル化により先進国が発展途上国に対して消費行動の模範的役割と伝達の役割をはたしていると主張している。グローバル化による中国経済への影響について,Fujita and Hu(2001)は空間経済学の理論に基づき,海外直接投資(Foreign Direct Investment:FDI)と輸出入をグローバル化の指標として仮定し,1985~94年における,中国の地域経済への影響を研究している。しかし,グローバル化による中国の住民消費への影響に関する研究は比較的少ないと思われる。中国国内の学者によるグローバル化の研究では,主に外資の利用と多国籍企業の研究が多く,それ以外では,産業革新,デジタルデバイド,所得格差などの問題が多い(劉,馮,2002;劉,呉,2005;万,張,2008)。また,物質面でのグローバル化の影響の研究が多く,精神面でのグローバル化についてはあまり研究が行われておらず,さらに消費についての研究も少ないため,本研究の意義は大きいと思われる。消費に関する計量分析では主に線形の支出システムが採用され(包,範,瀋,1998;藏,孫,2003),弾力性の分析を通じて,政策決定のための情報を適用する。しかし,これは部分均衡の考え方をもとにしており,シミュレーションに基づく政策議論には適さない。一方で,応用一般均衡(Computable General Equilibrium:CGE)モデルに代表される一般均衡分析では,「厳 密な経済理論に基づき,モデル内で変数が相互に影響し,非線形システムも採用可能で,価格も内生化可能」(鄭,樊,1999)といった特徴をもつ。特に,シミュレーション分析ができることから,政策分析の重要なツールの1つとなっており,貿易,税収,エネルギー,環境,経済発展や経済成長などのさまざまな領域で広範に研究が行われている(Brown et al.,1996;Giesecke and Madden,1997;Curler and Strelnikova,2004)。最近では,中国でも盛んにCGEモ デルによる研究が行われ,WTO,環境,エネルギー,税収改革,金融,企業改革,貿易自由化,年金問題,台湾との「三通」政策など,多くの研究成果がえられている(鄭,樊,1999;李,翟,徐,2000;周,鄧,1998;Wang et a1.,2004)。本研究でもCGE モデルを使用することで有益な政策分析ができるものと考えている。そのため,経済のグローバル化による中国,特に長江デルタの住民の消費行動に対する影響を全面的に評価するために,本研究では,物質面と精神面の2 つのグローバル化にわけてCGE モデルを用いて比較静学分析を行うことにする。
  • 李 聖華
    2013 年 24 巻 3 号 p. 38-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
    中国経済は現在,集積の経済により著しく経済発展を遂げた沿海部と,それに比べ比較的経済発展が遅れている中西部が共存するという,集積の経済と未開発がはっきりと分かれる空間構造が形成されている。このような経済空間構造の形成は,1980年代からの中国政府の発展戦略に基づいた政策の結果であり,国家戦略そのものであった。しかし,2007年以降沿海地域の賃金と土地価格等生産コストの高騰をきっかけに,沿海地域から中西部への生産移転が加速化された。政策的にも1999年の「西部大開発」を皮切りとする経済発展政策の継続として,中国政府は2010年8月に「中西部地区承接産業転移指導意見」(中西部地域の産業移転受け入れに関する指導意見)を公布して,産業構造調整と経済成長方式の転換を図ろうとしている(注1)。このような経済発展の現状を背景に,近年になって頻繁に地域間バランスや地域特性を考慮した地域発展計画を公表することとなり,このような政策の策定は中国政府の地域発展に関する思惑が,大きく変化したことを意味するであろう(注2)。  ところが,労働集約型製造業は現在に至るまで沿海地域に集積し,中西部地域では期待される大規模の産業移転は行われていない(李,孫,2011)。中国経済は現在集積の逆U 字型の曲線の上り段階に位置し,産業の地域集積の強化がまだ続いている(孫,許,2011)。中国経済においては,現在特定地域への集積力が分散力より強いのが現状である。中国経済の減速の兆しが明らかになる中で,新しい成長極として中西部の経済発展が注目されるのは当然のことであろう。  2008年から続々と公表された中国の地域発展計画の中には,2008 年に公表された「広西北部湾経済区発展計画」と2009年に公表された「中国図們江区域合作開発計画綱要」といった,中西部国境地域の少数民族地域に関する経済開発計画も含まれている。また,この2つの地域計画は,2011年に中国国土空間開発戦略の実施方案として発表された「主体機能区計画」で定められた国家重点開発地域における地域開発計画でもある(注3)。広西壮族自治区の北部湾地域と吉林省の長吉図地域は元々中国国内で経済発展が遅れている地域であるが,中国西南地域 と東北地域から汎北部湾地域と図們江地域への国際協力,そして国内地域経済発展を展開しようとする,それぞれの地域特性を持っている地域である(注4)。  まず,国際経済協力という面に関しては,ASEAN と北東アジア各国との経済交流を進めようという目標がある。そして国内地域開発に関しては,広西壮族自治区の北部湾地域と吉林省の長吉図地域の経済発展を図ろうとしている。北部湾地域と長吉図地域は、それぞれ汎北部湾地域と図們江地域国際経済協力における中国国内の重点開発地域である。これらの国内地域経済に関する新たな計画の発表は,従来の特定地域に対する対外開放重視政策が,現在では国内協力と国際協力の両方を重視する政策に転換したことを意味している。特に北部湾と長吉図という地域経済発展計画で定められた国内特定地域に対する経済協力への関心が強く見てとれる。そこで本稿は,「広西北部湾経済区発展計画」と「中国図們江区域合作開発計画綱要」で定められた,中国国内における北部湾地域と長吉図地域の国際協力経緯や地域経済発展現状等方面の比較を通じて,新しい地域発展計画の下での南北国境両地域の経済発展を展望する。
  • 孫 剣氷
    2013 年 24 巻 3 号 p. 49-58
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
     中国の現存する古庭園は主に明清時代のものである。それらの庭園は皇帝に直属する大規模の皇室庭園と官僚や富豪らの私邸庭園の2 つの類型に大別できる。私邸庭園は江南地域に集中しており、なかでも重点は蘇州にある。新中国の成立以後に蘇州の私邸庭園は次々と文化財として指定され,重点的修復整備と日常的維持が行われてきた。しかし,文化財として指定されたにも関わらず,文化大革命の変動や1980年代から始まった都市開発が,庭園の破壊を招いた。現在,中国では経済成長が進んでおり,これらの庭園の保全に関しては,世界文化遺産の登録 にともなう過度の観光開発,庭園の保存と生活環境の改善の対立など,様々な問題に直面している。その一方で,今日,世界遺産の分野やランドスケープ遺産の分野で新たな価値観や取組みがみられる。その中で,私邸庭園の保全の在り方について新たな可能性が開かれ,それに関する議論の展開が期待されている。 1950年代に,建築史の分野で進められた蘇州の私邸庭園に関する研究は「中国営造学社」以来の方法論を引き継いでおり,民族主義の観点から庭園芸術の伝統を強調し,「文物」(文化財)としての保存と一般開放の方針を訴えていた(劉,1982)。1980年代以後は,学者による庭園研究が大きく進展した。これらの研究では庭園保全の課題について論じられていなかったが,陳従周の短文の中では,観光開発によって庭園本来の文化的境地が失われていたことを批判する記述がみられ,物質に重点をおいた文化財としての保存のあり方について問題提起がなされていた(陳,2005)。1990年代の末に蘇州の私邸庭園が世界文化遺産に登録され,それを契機に庭園保全の意義として,庭園価値に関して再認識する動きがあった。世界遺産の価値評価基準に対応して庭園の芸術的価値だけでなく,文化的価値なども含めて,より総合的な再評価が試みられている。特にいままで私邸庭園は単独で扱われてきたが,住居の一部としての位置づけが明確になされるようになり,都市計画との関連から庭園の保全に関して,問題提起がなされるようになった。  蘇州の住宅については,水路から離れて庭園などを有した住宅と,水路と街路沿いの一般民家に特色があるといわれている(鈴木,1992)。私邸庭園を有する蘇州の住宅は「蘇州古典園林」として中国の人々に知られている。「園林」という名称は中国では庭園の意味とよく混用されているため,本論ではこのような庭園を有した住宅に「庭園住宅」という名称を用いることにした。  本論文では清時代の末までに蘇州環濠内部の旧市街に建てられた庭園住宅を研究対象としている。蘇州の庭園住宅のほとんどは明・清時代に新築あるいは改築されたものである。しかし,近代以降,それらの多くが破壊されただけでなく,その利用形態も大きく変わってきた。そこで庭園住宅の変貌や保全の現状を把握することによって,保全の問題点を明らかにし,それらの問題を解決する方向性を探る。研究手法としては,まず①資料収集と現地調査によって,近代以来の庭園住宅の利用状況を把握する。②現状把握したうえで,観光利用,内部利用,および住宅としての利用形態にともなう庭園住宅保全の問題を明らかにする。③これらの問題に対して,文化財保全制度の下で,庭園住宅の保全の限界を考察し,都市の生活の中で,庭園住宅に新たな機能を付け加え,地区レベルでの利活用の課題を洗い出す。
  • 鳥丸 聡
    2013 年 24 巻 3 号 p. 59-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
    九州の観光が栄えた歴史は古い。明治期末から大正期にかけて,長崎本線,鹿児島本線そして日豊本線が相次いで開業し,広域観光が可能となったのがきっかけである。当時の代表的な観光地は,別府や長崎,雲仙であった。大正2 年には,雲仙ゴルフ場が日本初のパブリックコースとして開業した。昭和に入ると,別府では地獄めぐりルートに日本初のバスガイドが同乗した定期遊覧バスが運行されたことから,国内一の人気温泉観光地へと成長した。そして当時人口が最も多かった長崎市は異国情緒あふれる大都市として栄え,雲仙は,東の軽井沢に匹敵するモダンな避暑地として長崎市に住む外国人の多くが訪れた。結果,昭和9年には,雲仙(と霧島)が日本初の国立公園に指定されている。そして,戦後の混乱期以降に九州は観光王国と呼ばれる時代を迎えたのである。1960年代に南九州(宮崎~霧島~指宿)が新婚旅行客で賑わい,同時期に九州を横断する別府阿蘇道路(通称「やまなみハイウェイ」)がオープンし(1964年),別府~阿蘇~熊本~天草~雲仙~長崎が九州観光のゴールデンコースとして人気を集めた。背景には,九州が本土最南端であり,南国イメージが定着していたことがあげられる。現在の九州新幹線や九州縦貫自動車道といった高速交通基盤が九州の南北を走っているのと対照的に,当時の九州の観光ルートは,主に北部九州を横断するルートと南九州を斜めに横切るルートの2 つが中心であった。 ところが,1972年の沖縄本土復帰と75年の沖縄国際海洋博覧会を契機に,沖縄がリゾート地として集客力を高めるようになるにつれて,九州の南国イメージは希薄化していった。その後,1985年のプラザ合意で円高が定着して以降は,全国的な海外旅行ブームで,九州は海外との競争を強いられるようになった。その後は1987年の総合保養地域整備法(リゾート法)施行でリゾート・テーマパークがブームとなり,宮崎シーガイアが第1 号として,また,佐世 保ハウステンボスがそれに続いたものの,僅か数年でともに破綻した。大牟田市のネイブルランド,荒尾市のアジアパークも短命に終わった。1990年に開業したスペースワールドも1997年をピークとして入場者数は減少に転じ,2005年には営業権が新日本製鐵からリゾート運営会社の加森観光に譲渡された。九州観光が停滞した理由は,ライバル観光地が国内外に続々と誕生しただけでなく,観光形態が,小規模少人数,旅行日数の短期化,客単価の低下といった具合に大きく変化したのについていけなかったことが大きい。かつての成功体験が,むしろ足かせになっていたともいえるだろう。さらに,ライバル観光地=北海道のイメージを色に喩えると「白」,スポーツならば「スキー」,食べ物ならば「カニ」とシンプルで,また沖縄のイメージは「青」「マリンスポーツ」「ゴーヤチャンプルやソーキそば」とはっきりしているのに対して,九州のイメージはぼやけてしまっており,行きたくなるイメージが希薄化してしまっているのも影響している。自然・歴史・文化・食べ物・飲み物といった観光集客資源が豊富かつ多様であることが,逆に九州観光を売り出す上で足かせとなってきた感も否めない。では,九州観光の進むべき道は,どこに見出せるのだろうか。 以下では,かつての物見遊山型の集客手段とは異なる九州の新しい集客戦略について,過去10年間で注目されるようになった「外国人旅行者受入体制」「MICE(マイス)」「フィルム・コミッション」「プロスポーツキャンプ」「世界農業遺産」そして「食品産業観光」の現状を概観し,その課題について考える。
  • 山本 裕
    2013 年 24 巻 3 号 p. 68-70
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • 南 博
    2013 年 24 巻 3 号 p. 71-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
    この2013年9月号の原稿の締切日は,発行の約3 ヵ月前の6月中旬だ。おそらく発行される頃には,ギラヴァンツ北九州に関連する1つの大きな動きが,一定の決着を迎えているものと思われる。その動きとは,本連載の第4回などで取り上げた「北九州市の(仮称)新球技場整備事業」である。当該事業についての2段階目の「北九州市公共事業評価に関する検討会議」が2013年2~4月に開催され,「事業を実施することについて,全ての構成員が異論なし」との結論となった。その結論を踏まえて,北九州市では公共事業評価の結果等に対する市民意見募集を2013年5月下旬まで実施し,294人から572件の意見が出されたところである。筆者は2013年6月3日に開催された北九州市議会総務財政委員会を傍聴したが,そこでも当該事業について活発な質疑が行われた。市執行部は,市民意見募集結果と市議会6月定例会での質疑を踏まえ,6月定例会後に市長が意見表明を行うと説明している。2016年度末の供用開始というスケジュールを見据えると,この原稿が発行される頃には意見表明が済んでいる可能性が高いと筆者は考える。はた して,どのような結論だろうか。この件については,結論を踏まえて改めて本連載の中で取り上げていきたい。  一方,同様に気がかりなのはギラヴァンツ北九州の戦績と集客状況だ。6月8日時点で,今季リーグ戦全42試合中18試合を終え,戦績は22クラブ中20位。1試合当たり平均入場者数は最下位に沈んでいる。しかしながら,戦績面では主力のFW池元友樹選手(北九州市出身)らがケガから復帰して以降,明らかにチーム状態は上向きであり,柱谷監督の戦術もチームに浸透してきた感がある。今後,勝点を重ねていってもらいたい。また,集客面でも,J リーグ屈指の名門クラブ・ガンバ大阪を迎えた6月8日には7,207人が北九州市立本城陸上競技場に集まり,体感的には満席に近い状態となった。本連載の第7 回で取り上げたようにサポーター有志による地道な集客活動も続いており,また,選手による小学校訪問などの事業も進んでいる。今後,こうした活動の成果が実を結んでくることを期待したい。  ただ,その集客に関して,今年3 月に筆者が実施した市民意識調査においては気になる点もみられた。今回はその概要について紹介する。
  • 坂本 博
    2013 年 24 巻 3 号 p. 75-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/11/04
    研究報告書・技術報告書 フリー
    長らく続いていた景気の低迷も「アベノミクス」で回復の兆しをみせている。もっともこれが本当であるかどうかはしばらく様子をみる必要がある。今回は,主に月次データを用いて,北九州市の2007(H19)年4月~2013(H25)年3月までの6年分の景気動向を分析する。その際,比較対象として,全国および福岡県(もしくは福岡市)を選び,北九州市経済との同質性と異質性を検討する。  使用するデータは「大型小売店販売額」,「着工新設住宅戸数」,「有効求人倍率(新卒除きパートタイム含む,季節調整値)」,「1世帯当たり実収入額(勤労世帯)」,「輸出額」,「輸入額」,「企業倒産負債総額」,「日銀短観(4半期毎)」の8つの経済指標である(注1)。  また,北九州市については,収集したデータの直近分(2013年3月)から過去3年分の変動傾向をもとに,今後1年間の予測値を算出した。EPA(Economic Planning Agency)法(モデルX−4c)を用いて計算し,最も決定係数が高いケースもしくは最近の予測値と実績値との誤差が小さいケースを採用した(注2)。
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