東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
27 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 八田 達夫
    2016 年 27 巻 2 号 p. 1-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本の現在の制度の下では,高齢住民は,自治体に,大きな税収をもたらさないが,医療や介護などの高齢化対策費に多くの財政支出を余儀なくさせる。このことは,高齢者の多い自治体の財政負担を圧迫し,自治体サービスを低下させ,ますますの人口流出を促している。それだけでなく,受け入れ地方自治体が十分な施設を老人福祉計画で用意したくなくなるインセンティブを作り出すことによって,高齢者の地方移住を抑制することにつながっている。本稿では,その問題を解消するために,高齢者への社会保険のための財政支出に関して,国と地方自治体の間で,どのような役割分担を行うべきかを分析する。本稿の目的は,自治体ごとに支給されるべき「モデル給付額」を算定することである。最終的な目的としての,年齢層ごとの「モデル給付額」だけでなく,移行過程において採りうる「過渡的モデル給付額」も算出する。
  • ラムステッター エリック D., コーパイブーン アーチャヌン
    2016 年 27 巻 2 号 p. 15-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本論文では,アセアン経済共同体(AEC)が2015 年に形成されること(AEC2015)に伴い,北九州・下関の産業にどのような影響がもたらされるのかについて問う。本論文の内容は,以下のようにまとめられる。第1 に,過去50 年間の急速な経済成長により,アセアンは日本製の財やサービス,日本企業にとって重要な市場の1 つとなった。アセアン は,東南アジアにおける経済・政治的対話を促進することで,その経済成長を支えてきた。AEC2015 は,その重要な役割を強化していくことになろう。第2 に,アセアンは加盟国間の経済統合に向けた取り組みを実施し,AEC2015 もその新たなステップの1 つであるが,アセアン域内取引における実質的な障壁はAEC2015 後も依然として残るであろう。1992年に決定されたアセアン自由貿易地域(AFTA)の創設により,アセアン域内貿易に課せられる関税の多くは2010 年までに撤廃された。しかしならが,アセアンの貿易総額に対する域内貿易の割合はおよそ4 分の1 と比較的低い水準にとどまっており,2005 年以降その割合に大きな変化はみられていない。この点に関してより重要なことは,AFTA の場合と同様に,域外貿易に対する域内貿易の特恵的利益がAEC2015 によって相対的に拡大するという見込みは小さいということである。それは,アセアンとその主要貿易相手との間の域外貿易には強力な比較優位が働いており,また,アセアンでビジネスを行う企業は,アセアン域内だけでなく,東アジア地域,あるいは世界規模での生産ネットワークに深く関与しているためである。第3 に,AEC2015 はアセアン“単一”市場の誕生を宣言しているが,特に非関税障壁やサービス貿易規制などに関する,具体的目標の達成に向けた取り組みは比較的緩やかなスピードで進められている。第4 に,AEC2015 に伴う日本,あるいは北九州・下関への影響は,アセアンでビジネスを行う日本の多国籍企業を通じてもたらされるであろう。影響があるとすれば,商業や物流(卸売・小売業,輸送業,通信業),ビジネス・サービス業などのサービス産業に対して,一般に認められるよりも大きな影響をもたらすと予想される。これは,日本の輸出において高いシェアを占める機械産業の生産ネットワークが発展しているためである。
  • 坂本 博
    2016 年 27 巻 2 号 p. 34-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿は九州8 県における戦後1955 年以降の産業構造の変化を分析し,各県における産業構造の競合性と補完性を分析する。まず,産業構造を独自の手法を用いて指標化し,指標の時系列変化をもって産業構造の傾向を分析する。次に,産業構造の将来予測をマルコフ連鎖を用いた確率モデルで推計する。そして,予測前と予測後の産業構造について,競合性と補完性を議論する。九州の長期的な産業構造は第1 次産業,第2 次産業,第3次産業の順に主力産業が移っていることが分かるが,この変化の時期が各県で若干異なることが分かる。また,製造業のみの産業構造変化を調べた場合,各県で特徴的であることが分かる。したがって,製造業は各県で比較的補完的な関係であるといえる。
  • 岸本 千佳司
    2016 年 27 巻 2 号 p. 52-70
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    1990 年代以降,半導体産業における「設計と製造の分業」というビジネストレンドの中 で,日本企業が凋落し,かわって台湾企業が台頭してきている。台湾は,ファブレス(IC 設計専門企業)とファウンドリ(ウェハプロセス受託企業)の分業を核とする垂直分業体制を構築し,主に特定用途向けロジックIC(およびシステムLSI)の分野で市場シェアを伸ばしていった。本稿では,台湾半導体産業におけるファウンドリ・ビジネスの発展について(主に業界トップのTSMC の事例を念頭に),発展経緯を解説する。その発展史は少なくとも3 段階に分かれる。即ち,①ファウンドリ・ビジネスの初期モデル(1987 年~1990年代半ば),②ファウンドリ・ビジネスの発展:技術力・生産能力の発展(1990 年代後半頃から),③ファウンドリ・ビジネスの成熟:ソリューション・ビジネスへ(2000 年代以降),である。それを踏まえて,一橋大学・楠木健教授の『ストーリーとしての競争戦略』(楠木,2010)が提唱する手法を採用し,台湾ファウンドリの戦略を「ストーリーとして」描き出した上で,それが概ね「筋の良いストーリー」のイメージに近いことを示す。
  • 高橋 孝治
    2016 年 27 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
    台湾(国名としては「中華民国」)の著作権法第1 条には,著作者や著作権者の権利保護のみならず,社会の公共の利益や,国家の文化的発展をも保護することを目的とするとしている。そして,これを具現化するかのように台湾著作権法には,著作権の保護よりも国家利益や産業保護を重視するかのような規定が見受けられる。本稿は,台湾著作権法を概 観し,このような「権利者保護」以外の思想を確認し,これをもって台湾著作権法の根底にある思想を明らかにすることを目的とする。その結論としては,台湾著作権法には一部の規定のみだが,確実に「権利者保護」以外に重要視している思想があり,台湾には「アジア的な思想」といわれる「著作権法違反に対し寛容的な思想」も存在しているといえる可能性があると指摘する。
  • 高橋 孝治
    2016 年 27 巻 2 号 p. 81-83
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/03
    研究報告書・技術報告書 フリー
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