東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
29 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • AGI新旧理事長に聞く
    末吉 興一, 八田 達夫, 橋山 義博
    2018 年 29 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/01
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    今年6月にアジア成長研究所(AGI)第3代理事長を退任した末吉興一氏は,5期20年にわたり北九州市長を務め,在任中に当研究所を創設した生みの親。市長退任後“元祖改革派首長”と呼ばれたこともある。後任の八田達夫新理事長(大阪大学名誉教授,経済学博士)は,現在国家戦略特区ワーキンググループ座長を務める。地方行政のプロと,全国的な視野で日本の進路を探求してきた経済学のプロに,北九州市の今後のあるべき姿について,インタビューおよび討論形式で課題と対策を尋ねた。なお,本対談録は,「アジア成長研究所第31回成長戦略フォーラム」(平成30年8月24日金曜日,リーガロイヤルホテル小倉にて開催,約100名参加)の内容を整理編集したものである。
  • 片山 憲一
    2018 年 29 巻 2 号 p. 13-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/01
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    北九州空港は2006年の供用開始以来,24時間運用という武器を手に路線誘致に努めてきたが思惑通りには路線は増えず年間約130万人前後の乗降客数で推移してきた。その理由として,すでに福岡空港を拠点とした航空ネットワークが完成していたことや,北九州の知名度が低いこと,アクセスが弱い点など主に行政サイドからの弱点が指摘されてきた。ところが円安やLCCの登場に加え,東京五輪に焦点を合わせたビザ緩和などのインバウンド政策が強化されると外国人観光客が急増した。この2~3年は東アジアに近い九州がクローズアップされた上に福岡空港の混雑という要因も加わって北九州空港にも光が当たり,2016年秋に韓国のジンエアーが仁川と釡山からの定期便就航を発表した。この2路線のみで乗降客が年間20万人以上増えたが,この受け入れ態勢を整える中でマンパワーや容量不足など北九州空港がもつ本質的な弱点が明らかになった。複数の異なる立場で北九州空港の利活用にかかわった筆者は,これまでなぜエアラインに選択されなかったかがみえてきた。その中から,ここでは北九州空港の活用には空港背後圏のブランディングが必要なことやこれまで解決できなかった課題には異なる視点からのアプローチが有効なことを示し,正に今が空港を活用した地域づくりに取り組む絶好のチャンスであることを論じる。
  • 坂本 博
    2018 年 29 巻 2 号 p. 33-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/01
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    本研究は,福岡県における市町村人口の変遷を分析し,将来の動向をマルコフ連鎖による確率モデルで説明する。福岡県には60の市町村が存在し,15の地域ブロック(圏域)ならびに4つの地域にわけることができる。これら個別の人口を県人口からの比率に変換し,人口比率の変遷と時間との相関関係で調べた結果,福岡市およびその周辺市町村の多くで人口比率が増加しているのに対し,他の市町村はおおむね人口比率が減少していることが分かった。この結果に基づき,4地域ならびに県外や海外を含めた多地域の確率モデルを推計し,人口比率の収束分布を求めることで,将来動向を分析した。結果,福岡市を中心とした地域に人口がより集中することが分かった。さらに,確率モデルに変化を与え,収束分布の変化を求め,人口減少を食い止める方法を考察した。結果として,他地域への流出人口を抑制するよりは,他地域からの流入人口を増やす方法が効果的であることが判明した。
  • 「システム」としての包括的理解を目指して(後編)
    岸本 千佳司
    2018 年 29 巻 2 号 p. 48-73
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/01
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    本稿は,米国シリコンバレーにおけるベンチャー企業や新ビジネスを次々と生み出す土壌を「エコシステム」としてとらえ,その全体像を分かりやすく提示することを課題とする。この後編では,先ず,「資金提供者」について分析する。従来,当地の半導体・エレクトロニクス産業の発展とシンクロする形でベンチャーキャピタル(VC)業界が発展してきた。近年は,新世代Web起業家登場に合わせるように,VC業界の再編(従来型VCの停滞と「スーパー・エンジェル」の発展)がみられた。同時にクラウドファンディングが生み出され,資金調達ルートが一層多様化した。次に,大企業についてみると,かつては起業家・経営人材の供給源としての役割が重要であったが,近年は,M&Aによりベンチャー企業を取り込むことに重点がシフトしてきている。大企業によるベンチャー企業への投資(コーポレート・ベンチャーキャピタル)がVC投資額全体に占める比率も,近年高水準に達している。域外・海外リンケージについては,海外からの移民流入による新陳代謝と移民起業家の存在感増大がみられる。生産ネットワークでは,かつて主に域内における部品供給者および受託製造業者との密接なパートナーシップが競争力の源泉の一つであったのが,1990年代以降,海外,特にアジアの業者へシフトしてきている。政府の支援は,ルール作りを通しての支援,連邦政府の政府購買を通しての支援,研究開発への関与と資金提供を通しての支援,の3側面から(特にエコシステム発展の初期段階で)重要な刺激となった。最後に,本稿全体のまとめとして,エコシステムの中での各アクター間の交流・連携および各種リソースの循環が,2000年代以降如何に変化したかが示される。
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