桑園の内外に於て氣温の垂直分布, 日射量, 紫外線量, 濕度及び濕球カタ寒暖計による放熱量, 桑園内に於ける蒸發量の垂直分布に就いて微氣象的觀測を行つた。
1. 日射量及び紫外線量は日中は桑園内でもかなり多く, 日射は桑園外日射量の90%以上, 紫外線量は桑園外紫外線量の80~90%に達するが, 朝夕は桑園外に對し桑園内は著しく少くない。
2. 桑園内の氣温の垂直分布を見ると日中は桑樹面及び地面附近が最も高く, 桑樹高の半ばより稍ゝ高い處の邊が最も低くなる。桑園に於ては一次的には桑樹面に於て, 二次的には地面に於て, 熱の出入が見られる。即ち桑樹面と地面との二箇所で放熱型や受熱型やその兩者の移行型などが見られる。
3. 日射を受けてゐる葉温は普通の状態の時には常に氣温より1~2℃高い。
4. 温度は朝は大體桑園内の方が桑園外より高く, 午後は逆に桑園外の方が低くなる。カタ寒暖計の放熱量は10時以後桑園外より桑園内の方が著しく大きくなる。
5. 桑園内の蒸發量の垂直分布は時刻により變動があるが, 大體上部ほど多く書間を通じての蒸發量に就いて見ると桑樹面附近の蒸發量を100とすれば, 地面附近の蒸發量は61の割合である。
最後に本研究に御便宜を與へて下さつた中央氣象臺長藤原先生に感謝すると共に觀測に當り助力を願つた小宮, 鈴木, 國分, 梅澤, 津村の諸氏に厚く御禮申上げる。
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