強風による脱粒被害を明らかにする目的で, 水稲農林29号を使い, 風洞内で風速と脱粒・出穂後の経過日数と脱粒・着粒位置と脱粒との関係などを調査した。
1) 脱粒抵抗性が比較的強い思われる当品種は, 12m/s程度の風速から脱粒を発生しはじめ, 風速の増加に伴って急激に脱粒を増加した。しかし一定以上の強風にさらされると挫折倒伏し, 穂部の振動が著しく減少するので脱粒はかえって減少する。したがって倒伏抵抗性の強弱によって多少の差が生ずるであろうが, 一般的には14.5m/sの風速で最高の脱粒被害が発生するものと考えられた。
2) 脱粒被害は強風処理時期で異り, 15m/s・5時間処理のばあいには, 出穂完了直後は全然脱粒の発生は見られなかった。出穂後1週間を経過した時期には10%弱の脱粒を生じ, その後登熟の進むに従って脱粒が増え, 出穂後4週間を経過した時期には約40%程度の最高脱粒歩合を示し, その後は再び減少する経過をたどった。
3) 穂の先端部における籾は下位部における籾に比べて著しく脱粒歩合が多い。この理由として, 穂先部は穂首部に比べて著しく振動が大きいと同時に, 着粒強度 (脱粒抵抗) がやや弱いという2種の原因が実験的に明らかにされ, 前者の影響度がより大きいと想像された。
4) 脱粒被害の防止軽減策としては, 防風林・防風垣を設置して風速を軽減する物理的操作や, 脱粒抵抗性品種を育成する育種的操作が最も望ましい。しかし登熟後期の応急対策として穂発芽の発生が防止できるならば, 人為的に倒伏させる操作が有効な手段になると考えられる。
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