温室内気温の夜間降下ならびに暖房の問題が, 非常に簡単な方法で研究された。温室内気温の夜間降下の推定には応答函数の解が利用された。解を求めるにあたつては, 床面での地中熱フラックスならびに外気温の時間的変化は既知であるとした。経過時間が約1時間経過すると, 過渡的影響はなくなり, 室内気温の時間変化は(
iTa(t)) はつぎのように近似できることがわかつた。
iT
a(t)≅1/P{Q
0+(Q
1+2b)(1/P-t)}+bt
2.
また, 外気温に対する室内気温の遅れ (τ) は次式で表わされた。
τ
t=l+m+n・t.
温室のガラス壁面からの有効放射フラックスを特徴づけている形態係数 (
f) を求めるのに, 斜面の有効放射フラックスの関係式が利用された。ガラス面と周辺地面との間に温度差がないときは, 形態係数 (
f) はつぎのように近似できる。
f=1-0.55(1-A
f/A
w).
温度差の
fに対する影響は±数%以内で無視できることがわかつた。この結果は, 温室の保温比が非常に重要な量であることを示している。
若干の仮定にもとづいて導かれた理論的関係を用いて, 地中熱フラックス強度・保温比・換気率・有効放射量などの室内気温の夜間降下に対する影響がしらべられた。地中熱フラックス強度が一定の時には, 温度遅れ(τ) は一定となり, 室内気温は外気温の変化に平行であることがわかつた。一方, フラックスが次第に減少するときは, τは次第に減少し負になり, また, フラックスが増加するときは, τは逆に時間の経過につれて大きくなつた。温室内気温の夜間降下に対する保温比の影響は熱貫流率の小さいほど顕著になつた。換気率がますと, 換気顕熱伝達係数が大きくなるために, 室内気温は外気温に接近してくる。温室内外の気温差の積分値 (
D.H.)に対する有効放射量の影響は次式で近似できることがわかつた。
D.H.=(75-5.7fh
t/
0h)-(150+716.6fh
t/
0h)F
H温室保温材 (ポリスチロール層) は単に熱貫流率を減少させるだけでなく, 有効放射による熱損失の室内気温に対する影響を著しく緩和させることがわかつた。
以上の説明からわかるように, 簡単な応答函数の解を利用することによつて温室内気温の夜間降下に対する温室の構造条件と外部気象条件の影響を推定することが可能である。しかしながら, 問題を単純化するために地中熱フラックスの時間的変化を既知として与えているので, この仮定を除いた正確な関係式を求めることがつぎの研究段階としては必要である。
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