本報告は, 同一形態・同一建設方位の温室でも, 温室構造材の配置法, 構造材の厚さなどによって, 温室内日射量およびその分布が大幅に異なることを数理モデルにもとづく数値実験によって, 定量的にしめしたものである。その数理モデルは, 温室の構造材を立体であると見なして, その幅, 長さと共に, その厚さをも考慮している点, および温室構造材が床面に落とす影の全床面積に対する割合が求められるようになっている点で, 従来のモデルとは異なる特徴を有する。
上記数理モデルを, 温室形態は同一であるが, 構造材の配置および構造材の厚さが異なる4種の温室に適用し, 冬期の温室内日射量を算定した結果, 構造材の厚みを無視した既応の成績とは著るしく異なる, 注目すべき事項が明らかになった。重要な点は次の通りである。
1. 床面に平行な構造材を有する温室では, 構造材の厚みに起因する, 床面における直達日射の平均透過率の減少が, N-S方位およびE-W方位に関しては全日にわたって7%以下と少ない。NE-SW方位に関する上記透過率の減少は朝方より午前10時頃までは6%以下と小さいが, それ以後日没にいたるまでは10~15%と大きくなる。
2. 床面に対して角度を持つ構造材 (屋根の垂木および側壁の垂直材) を有する温室では, 構造材の厚みに起因する上記透過率の減少は, N-S方位に関しては全日にわたって15%と大きい。E-W方位におけるそれは, 朝夕においては15%と大きいが, 正午前後には5%以下と小さくなる。NE-SW方位に関するそれは, 上述の床面に平行な構造材を有する温室のそれと同様の傾向を示す。
3. 床面における一日の積算直達日射量に対する透過率分布は, 水平材を有するE-W棟, N-S棟では, きわめて不斉で, 透過率の最大は80%, 最小は35%である。しかし, そのNE-SW棟, NW-SE棟における透過率の最大は70%, 最小は60%で, 比較的斉一である。他方, 垂直材 (屋根の垂木も含む) を有する温室のそれは, いずれの建設方位に対しても, 最大70%, 最小55%である。
以上の結果は, 温室構造材の配置および構造材の厚み等の相異によって, 温室内の直達日射透過率が大きく変化することを示すもので, 温室設計に重要な指針を与えるものである。
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