畦栽培されているキュウリ群落の日向葉面積率に関する知見を得るために, 生育中期の群落構造調査データを用いた数値実験的研究を行なっこ。日向葉面積率に関連する要因として, 畦の方位・畦幅・畦数あるいは畦の順序 (以上栽培要因), 季節・時刻 (換言すれば太陽高度と方位角) (光要因) をとりあげた。用いた群落の平均葉面積指数は3.6である。えられた結果はつぎのように要約できる。
(1) 孤立畦群落の日向葉面積率は畦の方位によって大きく異なる日変化を示す。南北畦では日変化の様相に季節による違いが少なく, 太陽高度の低い朝夕に大きく南中時に最小値をもつ比較的に単純な日変化を示す。しかし, 他の3方位畦では季節によって異なる日変化がみられる。群落全体の日向葉面積率 (
Fl/Ft) は, いずれの方位をもつ孤立畦においても20~60%の範囲にある。
(2) 多畦栽培 (標準畦幅180cm) の場合, 第3列畦において日向葉面積率の群落内分布ならびに
Fl/Ft値は実際上定常となる。第3列における
Fl/Ft値の日変化の範囲は, 冬至15~40%, その他の季節20~40%である。太陽高度が低い場合, 畦数に伴って日向葉面積率の等値線の群落断面内分布は一様群落の分布に急速に接近する。
(3) 午前中における日向葉面積率の大小によって畦の方位別の優劣を判定してみると,
冬至: E45°N>E-W>N-S>E45°S畦
春秋分: E45°N≅E-W>N-S>E45°S畦,
夏至: N-S>E45°S≅E45°N>E-W畦,
5月16日では夏至の場合と同じという一応の順位がえられる。しかし畦栽培の場合の散光強度分布がえられた後でなければ方位についての最終的な優劣判定はできない。
(4) 畦幅が大きく変化した場合の日向葉面積率の減衰についても同様に, 計量植物学的測定資料を用いて推定することができる (Fig. 11)。第1列の日向葉面積率を1.0とする相対日向葉面積率
dN/d1と畦の順序・畦幅・太陽光の入射角度との関係を統一的に表わすために, 遮へい率 (群落による日陰の長さ/畦幅) を導入した。第3列畦以降についてはほぼ単一の関係として表わすことができる。本報告で用いた解析法は列栽培の果樹・茶樹についても適用できる。
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