本実験では, 栽培畑におけるフィルムマルチ下同一深における地温測定値のバラツキを, 主に気象要因との関係から明らかにし, さらにマルチ区間の地温の比較方法について検討した。使用したフィルムは黒色有孔ポリエチレンフィルム (厚さ0.04mm, 植穴径8cm) であり, 植生としてダイズ (福獅子) を栽培した。実験区は, マルチと植生のない対照区である無植生無マルチ区 (Co), それに植生のある植生無マルチ区 (Cp), マルチがあり無植生状態の無植生マルチ区 (Mn), 植生のある植生マルチ区 (Mp) の計4区である。
1) 10cm深の水平方向10点地温バラツキの日変化については, 夜間, 植生マルチ区 (Mp)>無植生マルチ区 (Mn)>植生無マルチ区 (Cp)≈無植生無マルチ区 (Co) の推移であり, マルチの区での植生は地温バラツキの増大化に作用した。また, 昼間は全区ともバラツキは上昇し, 夜間の場合より区間差は減少した。
2) 地温バラツキに影響の大きい10点測定の土壌水分 (10cm深) は, 全般的に無マルチの2区よりマルチの2区で高く, さらにマルチ下では植生によって土壌水分バラツキが幾分大きくなった。
3) 各区の地温比較について, t-検定によって2区間の高低判定を行い, 期間中 (計63日) を通じ連日求めた (Table 4)。比較は最低地温としての6時値と, 最高地温としての15時値である。両時刻を通じて97%以上の高い高低関係が得られたのは無植生の区間 (Mn-Co) であった。他の区間では必ずしもそうではなく, 特に植生のある区では生育に伴う区間差の減少が現れた。
4) 期間中, 2区間の地温高低関係 (計3通り) を最多頻度め関係とそれ以外の関係の2グループに分け, 気象要因を説明変数とした判別関数により解析した。植生マルチ区 (Mp) と無植生無マルチ区 (Co) 間について行った結果, 同区間の2分類化には土壌水分と
LAIによる影響の大きいことが得られた (式1)。
5) マルチ下地温高低判定の九めの2区間の閾値 (地温差) を, 任意に設定して比較した。閾値の大きさによりマルチの地温効果は変化した。植生のある区との比較では, 植生の繁茂に応じた閾値設定の必要性が考えられた。
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