葉面の濡れやすさの異なる2種のオオムギ品種を用いて, 葉面の濡れ状態(葉面の水滴付着量, 水滴の接触角度)及び濡れ特性と葉面ワックスの関係について検討を行った。さらに降雨処理による濡れ特性の変化についても検討した。供試した材料として, 同質遺伝子系統で, 葉面の濡れやすさを除いては同じ遺伝的性質をもっているオオムギ「五畝四石埼1号」(正常葉系統)と「五畝四石埼1号変」(濡れ葉系統)の2系統を使用した。
第1葉(最上位葉)から第5葉(下位葉)の平均水滴付着量は, 正常葉系統では, 5.6mg/cm
2, 濡れ葉系統では12.6mg/cm
2であった。葉面の水滴接触角度は, 正常葉系統で125°, 濡れ葉系統93°であった。また葉面ワックス量は, 正常葉で17.3μg/cm
2, 濡れ葉では9.3μg/cm
2であった。
葉位別に水滴付着量, 接触角度を検討した結果, 両系統とも第2葉位がもっとも濡れにくく, 下位葉ほど付着量が多くなる傾向がみられた。水滴接触角は正常葉系統では葉位別差異は少なかったが, 濡れ葉では, 下位葉の角度は若い上位葉と比較して低い値であった。
両系統とも5時間の降雨処理により水滴付着量は増加する傾向がみられたが, 正常葉系統では増加が少なく, 濡れ葉系統では約40%の増加がみられた。また5日間の降雨処理により, 正常葉系統の接触角度はほとんど影響されなかったが, 濡れ葉系統では約30%の減少がみられた。また降雨処理により両系統ともワックス量の減少がみられた。正常葉系統では10-20%, 濡れ葉系統では第1葉で15%, 第2~3葉では約50%の減少がみられた。
以上のことから濡れ葉系統は正常葉系統と比較してワックス量が少なく, 雨水付着量が多く, 水滴接触角度が小さく, 濡れやすい性質をもっていることが明らかになった。また両系統とも活動の盛んな若い葉は濡れにくく, 葉齢の進んだ葉は濡れやすくなる傾向がみられた。さらに長時間降雨を受けると, 葉が濡れやすくなることを明らかにした。
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