久住山麓の草地斜面上における接地気層内の風と気温の構造を, 同斜面上に位置する九州大学農学部附属高原農業実験実習場での2か月の気象観測結果に基づいて解析した。その結果, 次のような特徴が明らかになった。
1) 標高の増加に伴う斜面上の地表風速の増加割合は, 斜面を上昇・下降する風よりも等高線に沿って斜面を横切る風の場合の方が大きかった。
2) 斜面を上昇・下降する風の摩擦速度は, 風速が比較的強い場合は, 平均して斜面を横切る風の値より大きかった。
3) WSWの風の場合, 風速が臨界値を超えて増すと, こぶ状隆起の風下側に位置する斜面上部の風速は, 後流形成の影響を受けて, 斜面下部よりも増加割合は弱まった。
4) 晴天夜間における高度1.5~2.8mの気層内の下向き顕熱フラックスは, 正味放射とほとんど同じか, あるいはしばしばその約2倍になった。この結果は, 地表付近の放射冷却によって形成された冷気の流下層(CADL)がしばしば上空大気のエントレインメントによって暖められたことを示唆する。
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