農業気象
Online ISSN : 1881-0136
Print ISSN : 0021-8588
ISSN-L : 0021-8588
64 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
研究論文(英文)
  • 今 久, 松岡 延浩
    2008 年 64 巻 3 号 p. 101-109
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    ポットに植えられたトウモロコシ葉の蒸散が,葉の熱収支モデルに基づき乾燥模擬葉と実葉の温度差から算定された。実葉の温度は茎の上部にある葉の日当たりが良い水平部分で測定された。このモデルで算定された葉蒸散量は同じ葉についてポロメータで測定された値と良く一致した。得られた葉蒸散量を個体全部の葉に当てはめることで,トウモロコシ個体全体からの蒸散量が算定された。この算定個体蒸散量は実際の個体蒸散量とは異なるものである。実際の個体蒸散量はポットの重量を測定することで求めた。水ストレスがない6日間について算定個体蒸散量に対する実個体蒸散量の比は,ほとんど一定で,0.54±0.02になった。茎についている葉の位置や葉の曲がりを考えると,この値は妥当であると考えられる。この比を使うことによって葉の蒸散量からトウモロコシ個体全体の蒸散量を算定できる。水ストレスがあるトウモロコシについて,この比は小さくなる傾向にあった。
  • 金 元植, 趙 在一, 明 光敏, 間野 正美, 小森 大輔, 金 聖徳
    2008 年 64 巻 3 号 p. 111-120
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    In January 2004, the Daegwallyeong Flux Measurement Station (DFMS) was instrumented with an eddy covariance system to study the net ecosystem exchange (NEE) over a temperate broadleaf deciduous forest on the Korean peninsula. As an initial study, short-term experiments involving turbulence tests, footprint analysis, and random error estimation were carried out to investigate the quality of the DFMS data for 3 days each during the summer and winter. The results indicated that the DFMS has a sufficient source area and well generated turbulence for flux measurement and that the measurements have low random error, without diurnal variation. The measured minimum and maximum CO2 fluxes were -27.3±3.0 µmol CO2 m-2 s-1 and 4.5±0.5 µmol CO2 m-2 s-1, respectively, with clear diurnal variation in summer. In winter, the CO2 flux was 1.1±0.2 µmol CO2 m-2 s-1 without variation throughout the day.
  • 小野 圭介, 間野 正美, 宮田 明, 井上 吉雄
    2008 年 64 巻 3 号 p. 121-130
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    渦相関法により地表面フラックスを推定する際の座標回転の方法として広く用いられている平面近似法(planar fit法)の適用性について,平坦地において測定した3年間のデータを用いて検討した。このデータでは,測定システムが原因と思われる流れの歪みにより各方位からの流れが吹き上げとなり,平均流れ面は地表面と平行にならず凹型の分布を示した。この凹型の平均流れ面に平面近似法を適用した場合,流れ面の切片と傾きが誤って算出され,その結果平均鉛直風速及び運動量フラックスは不自然な頻度分布を示した。一方,風向30°毎に平均流れ面を算出した場合,これらは妥当な分布を示した。平面近似法の適用時には平均流れ面が平面により近似可能かどうかを確認することが重要であり,測器が引き起こす流れの歪み等により平面により近似できない場合には,風向毎に平均流れ面を決定することにより問題が回避できることが明らかとなった。
  • 山口 真弘, 稲田 秀俊, 佐藤 亮平, 星野 大起, 長澤 亜季, 根岸 蓉, 佐々木 治人, 野内 勇, 小林 和彦, 伊豆田 猛
    2008 年 64 巻 3 号 p. 131-141
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    2品種の日本イネ(Oryza sativa L.)の成長、収量および葉のガス交換速度に対するオゾンの影響を調べた。2007年5月15日に黒ボク土を詰めたコンテナにコシヒカリとキヌヒカリの苗を移植し、野外に設置したチャンバー内で9月20日まで育成した。ガス処理区として、活性炭フィルターによって浄化した空気をチャンバー内に導入した浄化空気区、毎日10:00~17:00にチャンバー内のオゾン濃度を60 nl l-1(ppb)に制御した60 ppb O3区および同時刻のオゾン濃度を100 ppbに制御した100 ppb O3区の合計3処理区を設けた。なお、ガス処理は2007年5月30日から9月20日まで行った。
    オゾン暴露によって、収穫時におけるイネの個体乾重量と収量が有意に低下した。60 ppb O3区と100 ppb O3区における収量低下率は、コシヒカリではそれぞれ3%および23%であり、キヌヒカリではそれぞれ18%および34%であった。なお、個体成長と収量におけるオゾン感受性に有意な品種間差異は認められなかった。
    オゾン暴露によって個体あたりの穂数、稔実率および一穂あたりの稔実籾数が有意に低下したが、1000粒重に有意な影響は認められなかった。成長解析の結果から、オゾンによる収量低下の原因として、栄養成長期における個体成長の低下と生殖成長期における穂への乾物分配率の低下が考えられた。さらに、栄養成長期における個体成長の低下原因として、オゾンによる気孔拡散コンダクタンスの低下に伴う純光合成速度の低下が考えられた。なお、収量構成因子と葉のガス交換速度におけるオゾン感受性に有意な品種間差異は認められなかった。
  • 渡辺 誠, 山口 真弘, 松村 秀幸, 河野 吉久, 伊豆田 猛
    2008 年 64 巻 3 号 p. 143-155
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    日本の常緑広葉樹を対象としたオゾンのクリティカルレベルを評価するための基礎的知見を得ることを目的として,日本の代表的な常緑広葉樹であるスダジイの成長と光合成に対するオゾンの影響を異なる窒素条件下において調べた。2年生のスダジイの苗木を4段階のガス処理(浄化空気,外気オゾン濃度の1.0,1.5および2.0倍)と3段階の土壌窒素処理 (0,20および50 kg ha-1 year-1)を組み合わせた合計12処理区で2成長期にわたって育成した。オゾン暴露によって,スダジイ苗の純光合成速度と個体乾重量は有意に低下した。一方,土壌への窒素負荷によってスダジイ苗の純光合成速度および個体乾重量は有意に増加した。スダジイ苗の純光合成速度におけるオゾン感受性は土壌への窒素負荷によって増加した。しかしながら,個体乾重量におけるオゾン感受性は土壌への窒素負荷の影響を受けなかった。その原因として,2成長期目に比較的窒素負荷量の多い処理区で認められたオゾン暴露による2ndフラッシュ葉の有意な増加が純光合成速度の低下を補償したことが考えられる。本研究の結果より,50 kg ha-1 year-1までの土壌への窒素負荷はスダジイの個体乾物成長におけるオゾン感受性に影響を与えないことが明らかになった。個体乾重量の増加量を5%低下させる1成長期あたりのAOT40 (accumulated exposure over a threshold of 40 nmol mol-1)をクリティカルレベルとすると,スダジイのクリティカルレベルは22 µmol mol-1 hと評価された。
研究論文
  • 井上 君夫
    2008 年 64 巻 3 号 p. 157-166
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    The climate-moderating function of agricultural land has been attracting attention from the viewpoints of global warming and environmentally conscious agriculture. In this study, we observed Bowen's ratio in rural and urban areas on clear summer days in daylight, using the prototype of a portable Bowen's ratio measuring device. We continued this observation for three years from 2004 to 2006, and analyzed 18 full clear days. It was found emerged that Bowen's ratio in the daylight varies slightly over a range of approximately ±2, and the mean value for each land-use type was 0.65 in urban areas, -0.029 in sweet potato fields, and -0.059 in rice paddy fields respectively. These values were compared with previous ones. Urban areas and rice paddy fields showed almost the same values as the previous values, however, crop fields showed smaller values, suggesting that they were in a singular condition in which the oasis effect was excellent. Next, we surveyed the relation between Bowen's ratio and the mean temperature, and observed a relation expressed by a hyperbolic functions. When this relation is applied, for example, if rice paddy fields are converted to urban areas, the mean temperature increases by approximately 3°C because Bowen's ratio rises by approximately 0.86 on clear days in summertime. This rise is estimated to lead to an approximate 148.5 yen increase in daily electric costs for artificial cooling. Based on these considerations, it was clarified that Bowen's ratio depends on the degree of humidity (wetness) of land types, which is effective as an index of climate moderation and a climatologic evaluation method.
短 報(英文)
  • Nguyen Duy KHANG, 小寺 昭彦, 坂本 利弘, 横沢 正幸
    2008 年 64 巻 3 号 p. 167-176
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    気候変化による海面上昇およびメコン河の流量減少がベトナム・メコンデルタにおける塩水遡上へおよぼす影響について,水理モデル(MIKE 11)を利用して評価を行った。温室効果ガス排出シナリオIPCC-SRES B2に基づく気候変化状況を想定し,2030年代ならびに2090年代における12月から翌年6月までの期間の流量と海水侵入程度を推定した。このシナリオでは,2030年代での海面上昇は20 cm,流量減少は15%,2090年代ではそれぞれ45 cm,29%と想定されている。
    シミュレーションの結果,水路における塩分濃度2.5g/Lをしきい値とする塩水遡上域は,主要河川においては,2030年代には約10 km,2090年代にはおよそ20 km上流へと拡大する。さらに,水田の広がる内陸部へは,支流や水路に流入することで,2030年代には約20 km,2090年代にはおよそ30 km拡大することが推定された。
    また,塩水遡上が水田における灌漑水供給へ及ぼす影響を調べた結果,年間三期作を行うことが可能な面積は,2030年代では約71,000 ha,2090年代では72,000 ha減少することが示された。年一期作しか灌漑できない面積は,それぞれ約38,000 haおよび179,000 ha増加することが推定された。
    以上の灌漑供給期間の変動に対する水稲栽培の脆弱性を指標化し分類したところ,2090年代には中程度の影響を受けやすい水田面積は400,000 ha,強度の影響を受ける水田面積は200,000 haにのぼると推計された。
  • 根本 学, 広田 知良, 岩田 幸良
    2008 年 64 巻 3 号 p. 177-183
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/09/16
    ジャーナル フリー
    本研究では拡張フォースレストアモデルを用いて,火山灰土壌の北海道十勝地方における土壌凍結深の推定を試みた。実測の土壌凍結深と拡張フォースレストアモデルによって計算される値の二乗平均平方根誤差(RMSE)が最小となるように,各寒候期毎に一定の雪の熱伝導率を求めた(2001-2007)。その結果,各年毎の雪の熱伝導率は0.074から0.172 Wm-1 K-1の範囲で最適化された(RMSE=0.020~0.039 m)。年最大土壌凍結深では最大で0.03 mの差で推定することができた。また,全ての年で一定として最適化した雪の熱伝導率は0.173 Wm-1 K-1(RMSE=0.043 m)で,土壌凍結深が小さい年(2003-2004,2004-2005)を除けば,年最大土壌凍結深は最大0.04 mの誤差で推定することが出来た。拡張フォースレストアモデルを用いることで,気温と積雪深データのみから,固定した雪の熱伝導率を用いた場合でも,数cmの精度で最大土壌凍結深を推定できることを示した。
feedback
Top