農業気象
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65 巻, 4 号
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研究論文(英文)
  • 植山 雅仁, 鱧谷 憲, 西村 渉
    2009 年 65 巻 4 号 p. 315-325
    発行日: 2009/03/10
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    安価なガス分析計を用いて簡易渦集積法(REA法)による汎用的なCO2フラックス測定システムを開発した。スペクトル解析からガス分析計には高周波と低周波のノイズが混在していることが明らかとなったため,移動平均において高周波ノイズを低減した後,短い時間でブロック平均する事でCO2濃度測定の精度を向上させた。開発された測定システムは滋賀県のヒノキ林において適用され,オープンパス型の渦相関法により測定されたCO2フラックスと比較された。REA法により測定されたフラックスは,渦相関法により測定されたフラックスとよく一致し,両者の平均二乗平方根誤差は0.17 mg m-2 s-1であった。オープンパス型の渦相関法は降雨時に測定が出来なかったが,REA法では降雨時においてもある程度フラックス測定が可能である事が示唆された。
  • 岡田 将誌, 飯泉 仁之直, 林 陽生, 横沢 正幸
    2009 年 65 巻 4 号 p. 327-337
    発行日: 2009/03/10
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    近年,西日本を中心に登熟期の高温により,米品質が著しい減少傾向にある.今後地球温暖化に伴う気候変動によりその被害の拡大や甚大化が懸念されるため,近年の気候環境が米品質に及ぼす影響を解析することは非常に重要である.本研究では,コメ品質を広域(県スケール)の白未熟粒発生率として定義し,登熟期の主要気候要因(イネの生育ステージに応じて加重した有効積算気温δと積算日射量SR)からコメ品質を推定する統計モデルを構築した.その際,データおよびモデルパラメータに由来するコメ品質の推定の不確実性を考慮するためにベイズ推定を適用した.その結果,コメ品質の年々変動を良く再現することができ,特に,近年の再現性が高かった.次に,本モデルのパラメータの事後分布に基づき,コメ品質のδSRに対する弾力性をそれぞれ求めた.弾力性とは,δ(SR)が変化したときのコメ品質の相対的な変化率を示し,正(負)の符号はコメ品質の増加(低下)を指す.その結果,九州ではSRに対する平均弾力性がδに対する平均弾力性より大きいことが明らかになった.さらに,九州におけるコメ品質の時間変化は高温環境下のSRの時間変化と同期しており,これはイネが高温環境下におかれた場合,寡照環境により敏感になることを意味する.したがって,近年の気温上昇により日射量がより直接的にコメ品質変動の規定要因になっていることが示唆された.
  • Shinjiro OHKUBO, Naoto YOKOYAMA, Yoshiko KOSUGI, Satoru TAKANASHI, Nao ...
    2009 年 65 巻 4 号 p. 339-348
    発行日: 2009/03/10
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    We estimated the vertical distribution of CO2 effluxes from trunks, branches, and leaves in a temperate cypress forest by estimating the spatial distribution of biomass. To quantify the distribution of the CO2 source per unit biomass of each organ, we measured the respiration rate of 47 trunk, 26 branch, and 30 leaf samples from one representative tree. To quantify the distribution of biomass per unit height, we measured the positions of all of the branches and leaves, and then collected them to estimate branch volume and leaf area from their dry weight.
    Trunk respiration rate per sapwood volume increased with height within the canopy, but no clear difference was apparent below the canopy. The respiration rate per unit volume of lower branches was less than that of higher branches. Small-diameter branches had a higher respiration rate per unit volume than did large-diameter branches. The respiration rate per leaf surface area of leaves higher on the tree was greater than that of lower leaves, as was also the case of leaves farther from the trunk compared with those nearer the trunk. The cumulative trunk, branch, and leaf respiration per ground area at 25°C was estimated to be 1.36, 0.62, and 2.19 μmol m-2 s-1, respectively. CO2 efflux from the trunk per unit height did not differ significantly throughout the tree. The peak CO2 efflux per unit height was greater for leaves than branches. CO2 efflux from the canopy level (>11.5 m) accounted for 75% of cumulative above ground CO2 efflux, excluding soil respiration, and 38% of total ecosystem respiration including soil respiration.
  • Parinaz RAHIMZADEH BAJGIRAN, Yo SHIMIZU, Fumiki HOSOI, Kenji OMASA
    2009 年 65 巻 4 号 p. 349-355
    発行日: 2009/03/10
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    In order to evaluate how vegetation indices are affected by climatic patterns and to assess the relationships between them in semi-arid ecosystems of Iran, a six year (2000-2005) time series Moderate Resolution Image Spectrometer (MODIS) data over a six month growing season was used for retrieving Normalized Difference Vegetation Index (NDVI) and two Normalized Difference Infrared Indices (NDII6 and NDII7 using band 6 and 7 MODIS data, respectively) used as Vegetation Water Index (VWI). The study was carried out in dry farming and rangeland areas located in northwestern part of the country. Vegetation indices dynamics and relationships as well as their response to precipitation were studied. The results revealed the high dependence of temporal dynamics of MODIS vegetation indices on precipitation, promising the capability to differentiate drought and normal conditions in different land cover types. Among all indices, NDVI was found to be the best index to be used for drought detection for it had better relationship with precipitation and close relationship with the VWIs. The results of this research can be used as the basis to develop a region-specific drought index for semi-arid regions of Iran.
  • 横家 将納, 青山 高義
    2009 年 65 巻 4 号 p. 357-363
    発行日: 2009/03/10
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    ソーンスウェイトは可能蒸発散量の概念とそれに基づく気候区分の案出者として知られるが,本研究ではこのソーンスウェイトの方法と気候区分の概念に則り,中部地方の稲作地帯の気候区分を行った。可能蒸発散量と水収支の計算をメッシュ化アメダスデータを用いて1 kmメッシュ単位で行った。また1979年から2001年にかけての中部地方のすべての市町村の稲の反収のデータを作物統計などから収集した。反収と可能蒸発散量などの気候要素との関係を調べたところ,稲の収量は8月の平均可能蒸発散量がおよそ140 mm前後で,乾燥の程度が進むほど多収となることがわかった。また,8月の平均可能蒸発散量,8月の水分指数(乾湿の程度を示す)及び平均反収のデータを用いて,中部地方の全ての市町村をクラスター分析にかけたところ,少なくとも中部地方の稲作地域は5つの特徴ある気候地域に分けられることがわかった。そしてそれらを北陸平野型,東海平野型,長野盆地型,山地型,湿地型と名づけた。これらの区分は稲作に大きく関わる基本的な気候の特徴を現していると考えられる。我々の気候区分は成因であるところの気候要素と,結果であるところの収量の両方に依拠して行われているので,他の気候区分とも若干異なる分布の形態を示した。
  • 原薗 芳信, 近本 一宏, 吉川 俊作, 岩田 徹, 西田 奈菜, 植山 雅仁, 北宅 善昭, 間野 正義, 宮田 明
    2009 年 65 巻 4 号 p. 365-374
    発行日: 2009/03/10
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    陸域生態系のCO2 収支を明らかにするために,タワーを用いたフラックス観測が行われているが,その群落境界層の影響範囲の制限から,広域的に評価するには限界がある。これを広い地域レベルで評価するために,リモートセンシングが用いられ,従来NDVIを植生指標として利用することが多かった。しかし,一部の植生や農耕地ではNDVIが必ずしも良い指標となっていなかった。筆者らはMODIS衛星データの中の可視波長を用いた新たな植生指標,GR(緑色比)を提案し,GRをリモートセンシングの指標として水田のCO2収支を評価するモデルを構築し,妥当性を検証した。
    茨城県真瀬のフラックス観測サイトの2003年度のデータを用い,MOD09およびMOD11データをモデルに適用して,総一次生産量(GPP)と生態系呼吸量(RE)ならびに両者の差である生態系交換量(NEE)を評価した。GRはMOD09(8-day)から求め,これとMOD09から日別に推定した光合成有効放射PARを変数として日別のGPPを計算した。REの評価では,地上気温TaをMOD11の8日平均LSTから推定して8日毎の値として求めた。
    2003年は冷夏で8月上旬まで天候不順であったが,GPPは高い精度で再現できた。REも妥当な再現性であったが,生育後期に過小評価となった。生育期全体では,観測値に対してGPPは102%,REは95%となり,結果,NEEは109%と過大評価になった。以上の結果から,新指標GRは農耕地のCO2収支評価に有効であることが確かめられた。
  • 広田 知良, 福本 昌人
    2009 年 65 巻 4 号 p. 375-386
    発行日: 2009/03/10
    公開日: 2010/03/11
    ジャーナル フリー
    バルク法による裸地面からの蒸発量を推定する場合,蒸発効率は最も重要なパラメータとなる。本研究では,10日以上から数ヶ月程度の蒸発効率の期間平均値を,顕熱と潜熱フラックスおよび土壌水分のデータを用いずにルーチン気象観測データから簡易に推定しパラメータ化する方法を開発した。地温データがルーチン気象観測データ(気温,日射量,降水量,風速,湿度等)と共に観測されて,これらの日平均値の値が提供されるならば,蒸発効率は簡易な地温推定モデルにより潜熱,顕熱フラックスデータを用いなくても推定することができる。地温推定モデルは地表面の熱収支式とバルク法,および日平均地温を推定するためのforce-restore法で構成されている。蒸発効率の推定期間は,土壌の湿潤状態を反映する降水量の条件によって10日程度から数ヶ月程度となる。その際,先行降雨指数は土壌水分データを用いないで,土壌の湿潤状態を判定できる効果的な指標となる。この先行降雨指数により蒸発効率を土壌の湿潤状態に応じた適切な推定期間に分類することができる。蒸発効率は先行降雨指数によって分類された期間の下での日平均地温の推定値を観測値の差の二乗値の合計値が最小になるように推定する。さらに,裸地面の日平均地温と積算蒸発量を標準的な気象観測データから推定することを目的として,10日から数ヶ月平均の蒸発効率を降水量と可能蒸発量の比からパラメータ化する手法を提案する。
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