HIV感染に伴う免疫不全にパルボウイルスB19感染および慢性の貧血を引き起こした症例を経験したので報告する.
症例: 40歳, 男性, 同性間性交渉歴あり. 2000年1月より, 2か月以上続く原因不明の慢性貧血を認めた. 白血球数, 血小板数に異常なく, 骨髄所見では赤芽球系を中心とした低形成が認められた. 3月近医にてHIV抗体陽性と判明した. この頃より咳噺, 呼吸困難が出現し, カリニ肺炎およびサイトメガロウイルス肺炎と診断され, ST合剤, 抗生剤を投与された. その後薬剤性と思われる白血球減少, 血小板減少が進行したため, 抗生剤を変更し, G-CSF, ステロイドの投与を行った. 血漿中HIVウイルス量高値であり, 4月13日よりd4T+3TC+IDV+RTVの4剤内服を開始した. 白血球, 血小板減少, 肺炎は速やかに改善し, 貧血も徐々に改善を認めたが, 軽度の貧血は持続していた. 骨髄穿刺液にてパルボウイルスB19 (PCR) 陽性であることが判明し, 貧血の原因としてこのウイルスによる感染が考えられた.
考察: AIDSなどの免疫不全患者においては骨髄にてパルボウイルスB19感染が起こり慢性の貧血などの造血障害を来たす可能性が示唆された.
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