緒言: 性的接触による日本国籍のHIV感染者数について, 今後の対策による効果をシナリオとして画き, システムモデルを用いて2010年末まで試算した.
対象及び方法: 1999年末までのエイズ発生動向調査を基礎資料とした. 2000年以降のパラメータが不変の場合 (基本ケース) と対策により変化を与えるシナリオ (対策ケース) を設定し, システムモデルに基づいて, 2010年末までのHIV時点有病数を算定した. 対策ケースのシナリオは, (1) 性行為の頻度が5%減, (2) コンドーム使用割合が50→55%, (3) 活発から不活発への移行率が10%, (4) HIV発見率が20→3096, (5) 発見HIVの性行為頻度が20→10%とした. 感度分析として, 初期状態とパラメータの変化による試算値への影響を評価した.
成績: 基本ケースにおける2010年末のHIV時点有病数は, 異性間の男で8,700人, 異性間の女で3,500人, 同性間35,000人と試算された. 対策ケース ((1)-(5) の全体) における2010年末のHIV時点有病数は, 基本ケースに比べて, 異性間の男で81%, 異性間の女で77%, 同性間で66%と試算された. 感度分析では, 有病数の試算値はきわめて不安定であったが, その値の基本ケースに対する対策ケースの比は安定していた.
結論: シナリオの下で, 2010年末までの日本国籍HIV時点有病数の試算値を示した.
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