防水用高分子材料の耐候性評価研究の一環として, 屋外暴露試験を実施し, 紫外線量・試料温度に注目して検討し, 以下の結論を得た。(1)ここで測定した紫外線量・試料温度のデータを, すでに前報で得ている光と熱による変質劣化を表す式に代入して求めた計算値は, 屋外暴露試験結果とほぼ近く, 紫外線量と試料温度を用いて屋外環境下での材料の変質劣化をほぼ定量的に取扱うことが可能である。(2)暴露状態の差異が明瞭であり, 断熱材上の試料の場合, 試料温度が高い状態下で紫外線を受けるため変質劣化が最も著しい。金網上の場合は, 同量の紫外線を受けているが試料温度がそれ程上昇せず, またアンダーグラスではガラスによる紫外線強度低下のため変質劣化は緩慢となる。また日陰の場合は直接的な太陽光線からは保護されているため変質劣化が非常に小さい。(3)材料の変質劣化に及ぼす季節の差も大きく, 夏季間は試料が比較的高温状態で紫外線を受けるため, 計算上最も変質劣化が進行する。逆に冬季間は紫外線量も少なく, また試料温度も低いため変質劣化は小さい。春秋季間は前二者の中間程度である。(4)屋外暴露試験と光熱劣化試験との関係は, 太陽光線と本実験で使用した光源とが分光分布, 強度等の点で同一でないため厳密な議論はできないが, おおまかには, 例えば断熱材上の透明材料, 屋外暴露1年間に相当する光熱劣化試験条件は試料温度40℃前後で, JIS A 1415の条件に最も近い光源からの距離50cmの場合約870時間, 2年間に相当するのは約1730時間程度であるという結果が得られる。また金網上の場合に相当させるためにはもっと試料温度を低下させる必要があり, アンダーグラスの場合に相当させるためには, 試験時間を少なくする必要がある。これらの事は屋外暴露試験と光熱劣化試験との相関性を論ずる場合, 紫外線量とその時の材料の温度を知る必要があること, すなわち材料が使用される部位, 条件等が明らかでなければ適正な相関性を論ずることができないことを示している.なおここでは水分の影響については全く考慮されていないが, 一部, 例えば断熱材上の試料では計算値と屋外暴露試験結果に若干の差があるものもあり, この原因の一つに水分の影響も考えられ, 水分の効果も含めた定量的な取扱い, 評価については今後の課題である。
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