農業情報研究
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12 巻, 4 号
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総説・解説
  • 澁澤 栄
    2003 年 12 巻 4 号 p. 259-273
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿は,精密農業研究の枠組みと課題について総括したものである.ほ場ばらつきの記述と解析およびその農学的解釈に関わる科学の論理,ほ場ばらつきのセンシングや可変作業機械の開発に関わる技術の論理,そして農産物の販売戦略や利益に関わるビジネスの論理にわたる俯瞰的な研究アプローチ群をもつことが精密農業研究の特徴である.このような研究の枠組みは,欧米諸国をはじめとした世界各国の多様な農業立地条件を基礎にして,多年にわたる研究・開発・普及の蓄積により形成された.
    精密農業研究モードは過去に5回の大きな変化を遂げ,最後に登場した米国モデルと日本モデルは,農業イノベーションを展望したビジネスモデルであり,その発展には社会実験が求められる.情報技術を軸にした横断的な研究分野の創出が,精密農業ビジネスモデルの発展にとって切実な課題となりつつある.
原著論文
  • 南石 晃明
    2003 年 12 巻 4 号 p. 275-297
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    営農技術体系の経営的評価や営農計画に数理計画モデルが有効であることは,従来の研究から知られている.しかし,数理計画モデル作成には一定の専門知識と経験が要求されるため,実際の応用が制限される実態がある.そこで,本稿では,まず農業経営に固有な営農リスク,多様な経営目標,土地や労働力などの経営資源制約と共に機械作業制約を総合的に考慮した汎用的数理計画モデルを提示する.本モデルでは,作業リスクや収益リスクなどの不確実性を伴うモデル係数は離散型確率分布に従うものと仮定し,目標計画モデルとして定式化している.本稿では,このモデルをモデル・テンプレート(雛形)として,個別の適用事例に即して変数および目標式・制約式を追加・削除する数理計画モデル自動生成手法を提案する.本手法の有効性を検証するため,エンドユーザ向けアプリケーション・システムFAPSに実装し,一般利用者による利用実験を実施した.その適用事例から,地域も対象作物も異なる多様な営農技術体系評価および営農計画における有効性が確認された.
  • 喜田 環樹, 加茂 幹男, 澤村 篤, 松本 大助
    2003 年 12 巻 4 号 p. 299-306
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    酪農経営の規模拡大に伴い,給飼や堆肥化処理の管理作業量は増大しており,これらに対応して,飼養管理作業の機械化や自動化が進みつつある.それら施設機器を導入した農家での飼養管理の効率化や改善策として,酪農施設機器のモニタリングシステムを検討する.本研究では飼養管理作業の高度化を図るため,牛舎の外から,牛舎に設置している全自動TMR給飼機や畜舎周辺に設置している堆肥化処理施設の稼動状況を記録管理するシステムと,監視するライブカメラシステムのネットワークによるモニタリングシステムを開発した(http://pc211.ngri.affrc.go.jpにて試験公開中).
  • 鈴木 隆文, 星 岳彦, 渡辺 勉
    2003 年 12 巻 4 号 p. 307-314
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    日生産量に影響する主要因子とその影響期間の探索及び日生産量予測モデルの作成を行なうソフトウェアを開発した.生産現場のパソコンでの使用を可能にするために,ソフトウェアの操作性が容易で,結果がわかり易く表示できるようにした.本ソフトウェアをトマト生産施設の事例に適用し,日生産量と説明因子の間で最も相関が大きい期間が容易に抽出できるように,3Dグラフによる可視化表示を実現した.トマト生産施設のテストデータを用いた実行テストでは,労働時間と環境因子の日射量,温度が主要因子として選ばれ,約30%の相対誤差で日生産量が予測できることが示された.
  • 清水 庸, 大政 謙次
    2003 年 12 巻 4 号 p. 315-325
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    北海道における自然植生のうち,森林帯である亜高山帯自然植生とブナクラス域自然植生を対象として,これらの植生タイプの分布と気候条件の関連性,および植生タイプを細分した植物機能タイプの分布と気候条件の関連性を統計解析により分析した.その際,植生のタイプを気候条件により分類する判別モデルにおいて,複数の気候条件を適用し,影響の大きい気候条件を明らかにするとともに,モデル間の比較を行った.また統計モデルの結果の分布表示から,空間分布に関する検討を行った.データは基準地域メッシュサイズで整備された第3回植生調査データとメッシュ気候値である.その結果,ブナクラス域自然植生は亜高山帯自然植生と比較して,夏季および秋季において,温暖な地域に分布しており,植生タイプの判別に与える気候条件の影響は,秋季積算最高気温により表される暖かさの条件が,最寒月気温が示す寒さの条件よりも影響が大きく,寒さの条件と積雪深条件については同程度であることが示された.また,ブナクラス域自然植生において,落葉広葉樹林は,針広混交林と比較した場合,秋季積算最高気温や最寒月気温の差から,秋季・冬季ともに温暖な地域に分布する傾向が見られた.気候条件間の比較では,寒さの条件が暖かさの条件や積雪深条件より,影響が大きいことが示された.
  • 星 岳彦, 鈴木 隆文, 塩沢 栄地, 亀岡 孝治
    2003 年 12 巻 4 号 p. 327-335
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    植物生産の情報化を進めるために,あるひとつの植物生産に関係するすべての情報をXML形式に統一してひとつにまとめ,電子的に交換するEDI化を検討し,規格化案の策定を行った.そして,東海大学で実施したホウレンソウ養液栽培一作分の植物生産情報のサンプルBIX-ppデータを作成し,4種のBIX-pp対応アプリケーションプログラムを試作し,規格の検証を行った結果,当初の目的を達成することができた.また,植物生産情報に多い表計算ソフトウェアのCSV形式からBIX-ppデータに変換するレコードコンバータ,および,植物生産の属性情報(品種や生産施設など)をBIX-ppで記述するためのプロパティエディタのアプリケーションプログラム2種も開発した.BIX-ppの標準規格としての可能性を検証してもらい,幅広い分野での利用を検討してもらう目的で,サンプルBIX-ppデータおよびBIX-pp対応アプリケーションプログラムの実行ファイル等の最新情報をインターネットで公開した.
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