農業情報研究
Online ISSN : 1881-5219
Print ISSN : 0916-9482
ISSN-L : 0916-9482
14 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特別報告
  • 南石 晃明
    2005 年 14 巻 3 号 p. 159-169
    発行日: 2005年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    農業情報学会が新体制に移行したことに伴い,論文審査においても担当編集委員責任制が導入された.論文審査過程のシステム化や論文審査過程の迅速化・作業負担軽減が課題となり,これらの問題を解決するために,論文審査支援システムをWebアプリケーションとして開発した.システム稼働試験の結果,システムの効果(利点)は,(1)論文審査の迅速化,(2)ユビキタスな論文の投稿と審査,(3)論文投稿者の支援,(4)レビュアおよび担当編集委員の支援,(5)事務局・担当編集委員の作業省力化の5点に大別できた.システム開発構想の段階に想定した以上の効果があり,農業情報学会の論文審査の効率化や高度化に止まらず,学会誌論文の質および量の向上にも貢献すると思われる.
原著論文
  • 岡山 毅, 村瀬 治比古
    2005 年 14 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2005年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    自然界の情報処理系には,進化の結果として得られた数多くの最適化手法が確認されている.これらの最適化手法の理解は,新しい最適化アルゴリズムの構築につながる.その成功例として,遺伝的アルゴリズム,ニューラルネットワーク及び免疫的アルゴリズム等が挙げられる.岡山らによって提案された,それらに続く新しい生物系由来最適化アルゴリズムであるDNAアルゴリズムは,遺伝子情報を含まないとされるイントロンを利用しており,イントロンをエキソン部に挿入することにより,重要な遺伝子情報を含むエキソン部を突然変異から保護し,結果として突然変異率の設定に対して,安定した解の推定が可能である.本研究では,このDNAアルゴリズムに,新たにエキソンシャッフリングの概念を導入し,その効果を検証するために100都市巡回セールスマン問題を用いた.その結果,イントロン挿入率およびイントロン削除率を変化させ,エキソン数を調整することで,ほぼ最短の巡回ルートの探索が可能であった.また,単純遺伝的アルゴリズムと比較したところ,10個体,10,000世代において,単純遺伝的アルゴリズムの推定ルート長が1997に対し,DNAアルゴリズムでは881と良好な結果が得られた.
  • 野口 良造, 三角 光弘
    2005 年 14 巻 3 号 p. 177-186
    発行日: 2005年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    ロータリのホールダ式配列とフランジ式配列の両方の配列に対して,性能評価,改良設計,新規設計を行うトラクタ用ロータリ耕うん刃の配列設計プログラムの開発をWindowsPC上で行った.性能評価は,耕うん後の土の状態,振動の大きさ,および耕うんのための所要動力の観点から,7つの項目にまとめた.シミュレーションによるフランジ式配列のトルク平均値は,ホールダ式配列の約80%となり,過去の研究仮説や実験結果に沿う結果を示した.また,構築されたデータベースの利用によって,市販ロータリの性能向上が可能になった.
  • 大角 雅晴, 宇佐川 智也
    2005 年 14 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2005年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    めん羊の位置を24時間連続して自動追跡するためのコンピュータビジョンを応用したシステムの開発を行った.フレーム間差分法により抽出された移動体の濃度値ヒストグラムにしきい値を設定して二値化処理を行い,テンプレートマッチングを利用してめん羊胴体を抽出するアルゴリズムを考案した.試作ソフトウェアの性能を検証するために,サフォーク種めん羊を用いて実験を行った.野外に設置した約5m×5mの柵内におけるめん羊の行動を,白黒CCDビデオカメラと赤外線投光器を使用して24時間,約5m上空から撮影した.撮影された画像から試作ソフトウェアを使用して,めん羊の1秒間隔の位置座標を自動的に計測し記録した.5分間隔でサンプリングした画像について位置誤差を計算した結果,位置誤差がめん羊体幅より大きくなる場合は約24.3%であったが,多くは撮影環境を改善することによって位置誤差は小さくなると考えられた.誤差原因がはっきりしている場合を除いた平均位置誤差は15.1画素で,体幅の1/2程度であった.
  • -温州みかん産地の戦略的情報利用と協調行動-
    松下 秀介, 高橋 克也, 小野 洋
    2005 年 14 巻 3 号 p. 195-206
    発行日: 2005年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究の課題は,果樹経営安定対策を対象に,温州みかん産地行動の視点からみた対策参加の経済性について数量的に検討することである.具体的には,対策下の産地行動を寡占市場における戦略的情報利用を前提とした非協力ゲームの枠組みにより表現し,限界収入・限界費用推定モデルの分析結果から産地行動の経済性を数量的に検討する.
    分析の結果,明らかになった点は,以下の3点に要約できる.
    1) 表年については,すべての産地にとって対策への参加が最適反応戦略となる.また,この場合,政策当局が「適正出荷量」をさらに縮小する必要があることが示された.
    2) 裏年については,果樹経営安定対策への不参加が最適反応戦略となる産地が存在する.しかし,この産地行動の経済性ついては,対策不参加に起因する機会費用等を考慮する必要があることが示された.
    3) 以上の結果,本対策が,生産段階において不可避の課題となっている豊作年(表年)の市場価格低迷(いわゆる豊作貧乏)への対応を目的とした2年を単位とした対策であることを考慮すると,温州みかん産地が本対策へ参加するという行動は合理的であると考えられる.
    他方,果樹経営安定対策に参加しない場合には本対策以外の施策の対象とならないことなどの機会費用,すなわち対策不参加の社会的・政治的・制度的な外部性についても,産地の意思決定行動を分析するための重要な視点であることが指摘された.
  • 南石 晃明, 菅原 幸治, 渡邊 朋也, 大口 鉄雄, 菊地 宏之, 鈴木 剛伸, 遠藤 宏幸
    2005 年 14 巻 3 号 p. 207-226
    発行日: 2005年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
    農薬適正使用のための手順として,農薬使用計画作成および事前判定,さらに防除作業直前の判定と一体化した履歴記帳を提案した.この手順に基づいて,農薬適正使用を支援する農薬適正使用ナビゲーションシステムの構想と実装例を提示した.農薬ナビは,防除指針作成支援機能,農薬使用計画作成支援機能,農薬使用計画判定機能,農薬使用現場警告・履歴記帳機能から構成される.システムの利用者は,パソコンを用いて防除指針作成や農薬使用計画に必要な最新の農薬登録情報データを農薬ナビ判定サーバから取得できる.パソコンで作成した農薬使用計画は,農薬ナビ判定サーバを用いて,その適否判定を簡単に行うことができる.防除作業直前には,圃場や農薬庫から携帯電話を用いて使用したい農薬の適否を簡単に判定でき,問題が無ければそのまま農薬使用履歴として記録することができる.農薬使用現場警告では,過去の農薬使用履歴と今後の農薬使用計画を考慮した2種類の判定が可能である.約450名が利用者登録を行った2004年実証試験で明らかになった課題が,本システムでは概ね解決されたことが確認された.今後の当面の課題としては,農薬使用計画作成支援機能における使用農薬単位での逐次判定・作成方式の導入,現場警告・履歴記帳機能における携帯端末システム型の導入,農薬JANコード等の農薬識別子データの整備が重要である.
トピックス
feedback
Top