農業情報研究
Online ISSN : 1881-5219
Print ISSN : 0916-9482
ISSN-L : 0916-9482
15 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著論文
  • 岡本 博史, 酒井 憲司, 村田 哲郎, 片岡 崇, 端 俊一
    2006 年 15 巻 3 号 p. 219-229
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    近年, 農業および景観生態系においての利用が期待されるハイパースペクトル画像データに関して, その様々な解析用途に特化したアプリケーションソフトウェアを開発することが, 本研究の目的である. 既報にてハイパースペクトル画像解析フレームワークを開発したが, これを利用することで, 解析ソフトウェアを効率的に開発することができる. このフレームワークはハイパースペクトル画像解析における共通的な処理の枠組みを記述したものであり, オブジェクト指向プログラミングにおけるポリモーフィズム機構を用いることでスペクトル処理アルゴリズムの交換が可能な仕組みとなっている. 解析ソフトウェアを開発する際には, 独自のスペクトル処理アルゴリズムを実装したプログラムコード (スペクトルプロセッサ) のみを記述し, フレームワークに組み込むだけでよい. 本研究では, 波長バンド画像の抽出, 疑似カラー画像の生成, スペクトルデータの正規化, 植生・土壌部の分離, SPAD値の推定, 植物種の分類をそれぞれ行うための6種のスペクトルプロセッサを試作した. また, ハイパースペクトル画像から基礎的な情報 (波長バンド画像, 画素スペクトルデータ) を抽出するためのデータサンプリングソフトウェアも開発した.
  • 井口 信和, 元永 佳孝, 内尾 文隆, 二宮 正士, 亀岡 孝治
    2006 年 15 巻 3 号 p. 231-240
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, BIXイメージブローカシステムによって交換される農作物画像と画像メタデータのXML規格 (BIX-image) の提案とBIX-imageデータをP2Pメッセージとして交換するためのP2Pメッセージハンドラ (BIX-P2Pハンドラ) の開発である. BIXイメージブローカシステムはP2P技術を用いて, 農業の現場で利用される様々なデジタル画像データの効率的な交換を目的として開発した情報共有システムである. 本システムにおいて交換される画像および画像のメタデータは, P2Pメッセージに組み込まれ, ノード間において交換される. 本稿では, 農作物画像に対して与えるべき属性情報を整理して, XML形式で記述できるBIX-image規格と, BIX-imageデータをP2Pメッセージとして扱うためのBIX-P2Pハンドラについて報告する. さらに, BIX-イメージブローカシステムの試作によって, 有用なメタデータを付加した農作物画像情報をP2Pのノード間で交換できることを確認した.
  • 官 森林, 鹿内 健志, 南 孝幸, 名嘉村 盛和, 上野 正実, 瀬戸内 秀規
    2006 年 15 巻 3 号 p. 241-254
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    農業生産法人は増産や経営安定のため農作業を体系的に効率よく管理する必要がある. 従って生産法人での農作業の実態を正確に把握し合理的な作業計画を立てる必要がある. 本研究では全地球測位システム (GPS) 機能利用とインターネット接続が可能な携帯電話を用いた農作業データを記録するシステムを開発した. GPS機能は作業者が作業している圃場の地図を携帯画面上に表示するために用いる. 携帯電話から入力されたデータはインターネットを経由しデータベースサーバーに保存される. サトウキビ生産法人において本システムを実際に使用した結果, 携帯電話のGPS機能は作業している圃場位置を計測するのに十分な精度であった. データを入力するのに要する時間は1~2分程度で農作業に支障を来すものではなかった. 本システムは低コストのハードウェアとソフトウェアで構築されており, データ通信なども低料金で利用出来ることが確認された. 本システムにより作業管理に必要な日付, 天候, 作業時間, 作業内容, 使用した農業機械などを記録することができる. さらに, 生産法人の管理する各所にひろく散在する多数の圃場についての多量のデータを効率よく管理することも可能である.
  • 佐藤 和夫, 角田 修一
    2006 年 15 巻 3 号 p. 255-266
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    本論の目的は, 一般市民が地域内の食料自給率をどのように価値評価しているのかについて, 特に日本全体での食料自給率と地域レベルでの食料自給率の関係に注目して分析をおこなうことである. 調査対象地域は札幌市とし, 「北海道」と「石狩管内」という2つの地域レベルを設定して選択実験 (Choice Experiments) をおこなった.
    分析結果から, 地域レベルでの食料自給率には, 日本全体での食料自給率を代替する働きがあることが確認された. また, 日本全体での食料自給率が60%から70%の水準であれば, 地域食料自給率向上の必要性は低いという結果が得られた. この結果は, 日本全体の食料自給率が40%程度という現状においては, 地域レベルの食料自給率向上に一定の価値が認められることを示している.
  • 金 容〓
    2006 年 15 巻 3 号 p. 267-279
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    本論文では韓国肉用牛経営を対象として, 情報が肉用牛経営およびそれを巻く環境条件との間でどのような相互関係を備えているか, そして情報機能の充実・強化が肉用牛経営に対して持つ効果をDEMATEL法, 主成分分析法及びAHP法を適用して明らかにした.
    DEMATEL法による計算結果をみると農民や農業関連機関の担当者との間で肉用牛経営と肉用牛経営を取り巻く環境の間の波及効果の評価は基本的に違いがない. 全ての情報要因は平均値以上の大きな関連度をもっている. しかし, 情報要因の影響度はマイナスで, 影響先要因として位置づけられる. 農民や農業関連機関の担当者は, 肉用牛経営を取り巻く環境は肉用牛に関する情報の充実・強化には影響を与えるが, 作成・公表された情報は, 肉用牛経営やそれを取り巻く環境にあまり大きな効果をもたらさないと考えている. ただし, 情報はその提供・機能充実がある程度は波及効果を与えていていることも明らかになった. このように波及効果を分析するうえで, DEMATEL法は有効であることが確認できた.
    また, DEMATEL法で計算される総合影響行列を主成分分析にかける方法を提示して, 影響を受ける相手側要因の類似性や, 影響を与える相手側要因の類似性に基づいて, 要因相互間の関係や特徴をより詳細に把握することができた. さらに, AHP法による重要性把握では, 被調査者は波及効果まで考慮して評価していないことが明らかになった.
    パソコンやインターネットの普及で農業情報の基盤は向上し, 様々な情報が農業関連機関などから提供されているが, その利用はまだ不十分である. 農村のパソコン普及率は韓国内の平均値以下で, それを利用する農民も少ない. その問題を解決するためには情報のネットワーク整備だけではなく, 農民の教育も必要である.
  • 井口 信和, 元永 佳孝, 内尾 文隆, 二宮 正士, 亀岡 孝治
    2006 年 15 巻 3 号 p. 281-292
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    農作物の生産現場において, 画像データは, 栽培管理や栽培記録, 生育レベルの診断, 病害虫の診断などに広く利用されている. 本研究では, 農業の現場で利用される様々なデジタル画像データの効率的な交換を目的として開発したBIXイメージブローカシステムと既存のネットワークサービスを連携させるためのGatway-P2P-Nodeを開発した. 既存のネットワークサービスとして, フィールドサーバ画像を維持管理するData Storageと画像処理アプリケーションであるImage Serverを対象とし, これらとBIXイメージブローカシステムを連携させるGateway-P2P-Nodeを開発した. 開発したGateway-P2P-Nodeによって, BIXイメージブローカシステムから, Data StorageとImage Serverの利用が可能となる. 本研究では, 近畿大学と新潟大学間において実際にインターネットを経由した利用実験を行い, 開発した機能によって, BIXイメージブローカシステムと既存のネットワークサービスとの連携が可能であることを確認した.
  • ―選択実験による接近―
    合崎 英男, 澤田 学, 佐藤 和夫, 吉川 肇子
    2006 年 15 巻 3 号 p. 293-306
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 輸入が停止されている米国産を含めた複数の産地・種類の牛肉を設定し, 国産牛については生産情報公表JAS, 外国産牛についてはBSE検査と生産情報公表JASの消費者評価を選択実験により明らかにすることである. 北海道札幌市清田区の335名から得た選択実験データをランダム・パラメータ・ロジット・モデルで分析した結果, 次の点が明らかになった. 1) 給餌・投薬情報の付加価値については, 国産黒毛和牛の方が国産牛よりも低かった. 国産黒毛和牛は国産牛よりも安全性に配慮して肥育されているという評価枠組みが消費者の間に存在することを示唆する. 2) BSE検査に対する付加価値については, 米国産牛の方が豪州産牛よりも高かった.
  • 瀬戸内 秀規, 橋口 公一
    2006 年 15 巻 3 号 p. 307-318
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    接線ひずみ速度が下負荷面の接線方向のみを有する接線下負荷面モデルは, 法線応力速度に比して接線応力速度が支配的な非比例負荷過程の変形挙動を高精度に予測できない. 本研究では, 下負荷面の誘導回転硬化および相似中心の移動が接線ひずみ速度の予測精度を補完する効果があるか否かについて検討した. また, 接線ひずみ速度の方向が下負荷面の接線方向のみだけでなく法線方向をも有する接線緩和の概念を導入した下負荷面モデルの予測精度を検証した. その結果, 接線緩和の概念の導入の重要性が実証された.
  • 大石 亘
    2006 年 15 巻 3 号 p. 319-330
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    線形計画法は営農計画の作成や農業技術の経営的評価などに活用されているが, Windowsで動作し手軽に線形計画法を活用することができる計算プログラムXLPを開発した. XLPはExcel用のアドインで, 起動時にExcelのメニューバーにメニュー [XLP] を作成する. 利用方法は, まずメニュー [XLP] - [新規ブック] でモデル記述シートを表示させ, 所定の形式で営農計画モデルを記述する. メニュー [XLP] - [LP計算] 等の計算メニューを選択すると, 最適解が整理されて計算結果シートに表示される. 計画モデルの記述は, 単体表による形式のほかに, 線形計画モデルの本来の記述形式である数式を利用できる. また, 単体表による形式では, 任意の列で折り返すことができるので, プロセス数がExcelの最大列数を超える計画モデルや, 営農部門ごとに折り返すなどの読みやすい計画モデルの記述が可能である. 基本的な営農計画モデルのサンプルデータが用意されており, メニュー [XLP] - [XLP_try] では線形計画法や営農計画モデルの作成方法の学習機能を提供している. このように, XLPは営農計画モデルを活用する際に手軽に線形計画法を利用できるツールに仕上がっている.
  • アンナス スワルディ, 金井 猛徳, 小山 修平
    2006 年 15 巻 3 号 p. 331-341
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/11
    ジャーナル フリー
    降雨情報は, 農業国における最も重要な環境情報の一つである. 降雨予測システムを開発し最新の降雨変動を推定することは, 地域の農業計画を構築する上で非常に有用である. 本研究の目的は, 降雨観測データに基づいて熱帯地域の雨季における降雨パターンのモデルを開発することである. ここでは, 主に雨季における降雨パターンについての分類と予測モデルについて検討する. そのために, まず, 熱帯降雨の分類モデルに関するファジィルールベースシステムを開発するためにニューロファジィ分類法を応用する. 次に, ファジィルールベースを生成して好適ニューロファジィ推論システムによる降雨予測モデルを構築する. 本システムの精度は, 平均平方誤差 (RMSE) を用いて評価する. 本研究で構築したモデルの実績を評価するために, 降雨に関する実測値と予測値の比較を行い総括的に明らかにする. その結果, インドネシアの熱帯地域の雨季における過去30年間の降雨について良好なモデル化を行うことができ, 降雨の年次変動にかなりよく対応することができたといえる.
feedback
Top