農業情報研究
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16 巻, 3 号
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原著論文
  • 井口 信和, 谷口 祐一, 内尾 文隆, 瀧 寛和, 亀岡 孝治
    2007 年 16 巻 3 号 p. 81-90
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究は農場ネットワークに適した無線通信によるアドホック通信方式の提案を目的とする.具体的な農場としては,果樹園を対象とする.本稿では,アドホックネットワークによる農場ネットワークの要件を整理し,端末のバッテリ残量と優先度を考慮した通信方式を提案する.本提案方式では,端末はバッテリ残量のレベルに対応したサービスのみを提供する.さらに,端末はバッテリ残量のレベルに対応したルーティングテーブルを用いて通信する.経路表の変更によってスループットが低下した場合には,送信時にIEEE802.11eのEDCAの優先度を上げることでスループットを確保する.この優先度は,パケットの種類,バッテリレベルおよび宛先端末までの中継回数から決定し,ネットワークの状況に応じて動的に変化させる.本研究では,提案方式を実現するために,IEEE802.11eのQoS制御機能を拡張した.ルーティングプロトコルにはアドホックネットワークで広く利用されているAODVを用いた.本稿では,提案方式をネットワークシミュレータであるNS-2上に実装し,評価実験を行った.実験結果から,提案方式が有効であることを確認した.
  • 北村 豊, 杉山 純一, 佐竹 隆顕
    2007 年 16 巻 3 号 p. 91-98
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Webベースで登録された農産物・加工食品の生産情報およびレシピ情報をインターネット接続したパソコン(ICタグ端末)に転送・閲覧できる情報開示システムを構築した.ICタグ端末は,ICタグを封入した農産物や加工食品,レシピカードを付設のリーダーにかざすことにより,ICタグの固有番号にリンクされる情報を画面上に表示する.ICタグ端末をつくばみらい市のモデル住宅の台所に設置して,500名弱の男女からその試用体験に関するアンケート調査を実施した.回答結果の解析により,情報開示システムの利用可能性や情報の有用性,ICタグ端末の設置場所およびその利用形態の考え方など,今後の改良および用途開発のための基礎資料が得られた.
  • 河野 恵伸, 星野 康人, 大浦 裕二, 佐藤 和憲, 小田 俊介
    2007 年 16 巻 3 号 p. 99-106
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,育種研究におけるアウトリーチ活動のプロトタイプを策定することにある.そのため,パン用小麦「ミナミノカオリ」を事例にしてWebを用いた3タイプのモデルを考案し,評価を行った.考案したモデルは,ホームページと電子掲示板による双方向コミュニケーションシステムをベースとし,これに「ミナミノカオリ」の小麦粉の使用体験や,研究者との直接対話を組み合わせた3タイプである.これらのモデルを,30~50歳の女性に適用し,「知識」,「関心」,「態度」,「行動」の4視点で各モデルの評価を行った.その結果,「知識」についてはモデル間で差がみられなかった.「関心」,「態度」については,使用体験と直接対話を組み合わせたモデルの方が,研究に対する関心や態度が高くなることが明らかになった.「行動」については,使用体験と直接対話を組み合わせたモデルの方が,より多くの第三者へ情報が伝達されることが明らかになった.つまり,育種研究に対して国民の関心を得るとともに,新品種に関する情報を広く伝達させるためには,Webによる双方向システムと,使用体験,及び研究者との直接対話を組み合わせることが重要であるといえる.
  • 大角 雅晴
    2007 年 16 巻 3 号 p. 107-112
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    普及が進んでいるデジタルスチルカメラの農業分野への利用例として,直播きされた水稲群落のデジタル画像を撮影し,苗立ち数の計測を試みた.撮影された画像をパーソナルコンピュータのディスプレイ上に表示し5名の計測者に目視させ,苗立ち数を計測する時の計測誤差率や計測時間,これらに影響を及ぼす画像条件を調べた.画像条件として画像解像度,苗立ち数,苗の水面への映り込み,播種条間の苗の重なりに着目した.  画像全体の86.8%で目視計測の結果は実際の苗立ち数より少なく,苗立ち数を実際より少なく答える傾向が強かった.計測誤差率に影響を与える要因としては画像解像度と苗立ち数,播種条間の苗の重なりがあると考えられた.苗立ち数が石川県での推奨範囲40~70本/m 2 の場合,計測誤差率は4.7~-13.0%となることが推定された.計測時間に影響を与える要因としては,主に苗立ち数と水面への映り込みがあると考えられた.計測時間と計測誤差率には相関はないことが判明した.
  • 滝岸 誠一, 町田 武美
    2007 年 16 巻 3 号 p. 113-123
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    近年,農業を取巻く様々な環境変化により,農家の多くが営農への意欲を失ってきているように見える.農家が営農意欲を取り戻す方法の一つが,将来展望への確信を持てるようになる経営計画の作成にあると考え,経営方針の策定から経営計画の作成までを行えるソフトウェアの開発を行った.本論文では,そのうち,テキストマイニングをもちいた経営方針の策定までを報告する.  本研究では,経営の現状を知らせ,経営の改善を図っていくための情報として,簿記記帳データと営農情報データを元に経営分析集計結果を提示する.農家はこれら経営分析集計結果を見ながら経営の現状やその問題点,また問題点の解決方法を項目ごとに分類された自由記述文として入力を行う.入力された自由記述文としての感想は,形態素解析と日本語係り受解析を使用したテキストマイニングを通じて,統計処理が行いやすい単純化された文章に変換する.得られた単純化された文章をクロス集計することにより,当該農家の経営の現状や問題点,その解決方法のどれが主要な要因であるかを判定する.また,単純化された文章の内,解決法のいくつかを重要な文書として選択しこれを代替案とする.その案に対して収益・技術・労働・発展を評価基準とし,重みをつけAHP(Analytic Hierarchy Process)を通じて計算し,経営計画を作成するに際し,どの方針を優先するかの順位付けを試みた.また,マーケッティングカテゴリーを代替案とした計算も行った.
  • Xinwen Yu, Atsushi Yamakawa, Takuji Kiura, Toshihiro Hasegawa, Seishi ...
    2007 年 16 巻 3 号 p. 124-131
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    A web-based system for sharing and integration of crop data and weather data called CROWIS was developed to allow users upload their experimental data and download the merged and integrated data in spreadsheet format. The system was designed based on a hybrid of MVC (Model, View and Controller) and SOA (Service Oriented Architecture) design pattern and composed of a web application and three services of MetBroker, Google Maps and Rice Data Service. User can upload crop data in spreadsheet format, and then these data are merged with data from other locations in the database. Crop data can be queried from Rice Data Service and be integrated with weather data by way of MetBroker based on specified locations and then be downloaded as a spreadsheet file. By using Google Maps service, user can register the latitude and longitude information of a new location. Successful uploading of 37 spreadsheet rice data files indicated that the upload and merging function of CROWIS is operational. A total of 184 rice properties of 151072 records containing information of 6486 different varieties and lines collected from 256 different experiment locations from 1980 to 2004 had been stored in rice database. The results of various combinations of rice data queries and data integrations with weather data indicated that CROWIS is robust and stable enough for users to download merged rice data and/or integrated data files. With this system, people in experimental fields can easily share and integrate their most recent and valuable experimental data sets. Researchers and modelers can easily obtain the merged and integrated data. These data are helpful to test and verify existing models, improve parameter estimations and simplify construction of new models. The system is accessible at http://www.agmodel.org/CROWIS/
  • 南石 晃明, 菅原 幸治, 深津 時広
    2007 年 16 巻 3 号 p. 132-140
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,RFID(無線IC)タグを用いた農作業自動認識システムの可能性と今後の課題を明らかにすることである.そのため,システムの試作と基礎的な試験を行い,提案する農作業認識方法の有効性と試作システムの作動を検証する.本システムは,作業者が装着したウェアラブル型リーダを用いて,農業機械・施設・資材などの作業対象物に貼付したRFIDデータを読み取り,作業者が触れた作業対象物の情報から農作業の種類・内容を認識することができる.
    具体的には,2.45 GHzおよび13.56 MHzの2種類のRFIDタグを対象にシステムの試作・作動試験を行った.その結果,RFID履歴データから農作業の種類・内容を認識することが可能であることを確認した.また,実用的な農作業自動認識システム開発のための研究課題を整理した.
  • 合崎 英男
    2007 年 16 巻 3 号 p. 141-149
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,Microsoft社製のExcelを利用して,選択実験(選択型コンジョイント分析)の回答データを条件付きロジット・モデルで分析するためのマクロ・プログラムを開発することである.回答者ごとに整理された調査結果と調査で使用した全選択肢集合を利用者がExcelのシートに入力するだけで,条件付きロジット・モデルの適用が可能なシステムである.Excelベースの既存システムと比較した本システムの特徴は,1)選択実験の質問が2~6つの選択肢から構成される状況に適用できる点,2)分析用のデータセットが自動的に作成され利用者の手間の削減と入力ミスの軽減が図られている点,3)モデル適合度が算出される点,である.ただし,離散選択モデルの実証研究で広く活用されている計量経済分析用ツールによる分析結果と比較すると,本システムの分析結果には若干の誤差が含まれる点に注意を要する.
  • Hideo Aizaki, Noriko Sato
    2007 年 16 巻 3 号 p. 150-157
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    In this paper, we examined consumers' valuation of good agricultural practice (GAP), using a payment card contingent valuation method (CVM) and a contingent ranking method (CRM). A questionnaire survey was conducted in Sendai city, Miyagi prefecture, Japan. Responses from 200 participants were analyzed to measure the marginal willingness to pay (MWTP) for GAP in the case of tomatoes produced in Miyagi prefecture. The MWTP estimated from the CVM and CRM was 12.5 yen and 9.9 yen a piece, respectively. The MWTP for GAP estimated from the CRM in the case of tomatoes produced in Kumamoto was 9.5 yen, which was almost equal to the MWTP for GAP in the case of the tomatoes produced in Miyagi. This result leads us to the conclusion that regardless of place of origin, the MWTP for GAP seems to be approximately 10 yen a piece. The CRM was also used to explore the effects of respondents' characteristics on their valuation of GAP, based on 181 respondents. The respondents' sex and age influenced their valuation of GAP in the case of both Miyagi and Kumamoto. While the respondents who had a tendency to purchase agricultural products produced in Miyagi increased their valuation of GAP for Miyagi, those who purchased tomatoes almost every day decreased their valuation of GAP for Kumamoto.
  • 野口 良造, 三角 光弘
    2007 年 16 巻 3 号 p. 158-170
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    地域空間における食料とバイオマスエネルギーを含む再生可能エネルギーの生産競合シナリオの解析を行うために,Microsoft Excel®,Microsoft Visio®のVBAを用いて,地域エネルギーシミュレータ(以下「シミュレータ」)を提案した.シミュレータは,制約条件を農地面積,食料需要,飼料需要,エネルギー需要とし,目的関数を再生可能エネルギーの最大化,あるいは作付面積の最小化とすることにより,シナリオの最適解を,線形計画法にもとづいて求めることができる.
    バイオマス生産の試算に関する過去の研究成果との比較のなかで,シミュレータの評価を行った.過去の試算に用いたデータや制約条件を考慮すれば,シミュレータを用いることによって,栃木県レベルの地域空間における農業の作付体系を,十分な精度で同定できることが明らかとなった.さらに,「農業生産空間の有効活用が進むと,食料・エネルギーの生産量が増加し,食料・エネルギーの自給社会の形成が促進される」という方向性のもとで,シナリオを作成し,シミュレータによる試算と評価を行った.シミュレータは,エネルギー変換効率の高い作物の作付体系を作付パターンの自動生成プログラムによって,数多くの組合せの中から自動的に選択した.また,作付面積の最小化を行うと同時に,耕地利用率を最大化し,食料生産の自給とバイオマスエネルギー生産の最大化を行う解を提示した.
  • 鈴木 剛伸, 南石 晃明, 菅原 幸治
    2007 年 16 巻 3 号 p. 171-180
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    都道府県が作成する病害虫雑草防除基準は,当該区域内における防除実施に関する方針であり,重要な情報である.誤記載による影響は大変大きく,正確な防除基準を作成するために多大な労力を要している.そのため,農薬使用判定に有効である農薬ナビを活用して防除基準作成を支援する手法を提案した.提案した手法では,まず,作物名と農薬名から会社名を削除した名称(以下,屋号抜き農薬名)を指定し,農薬ナビ判定サーバで判定を行う.屋号抜き農薬名を指定することで,同一グループの農薬全てを抽出することが可能となり,商品ごとの農薬使用基準の違いを把握することが可能である.次に判定結果を確認し,問題がない場合は,XML形式で保存し,本研究で作成した各種スタイルシートを適用する.スタイルシートを工夫することで,判定結果XMLファイルを印刷物の防除基準とほぼ同一の様式で表示することが可能になり,防除基準の原稿もしくは確認資料として利用でき,迅速かつ的確な防除基準作成に有効であることが明らかになった.
  • 庄野 浩資, 関 朝美, 松嶋 卯月, 小出 章二, 武田 純一
    2007 年 16 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    切り花リンドウの市場価値を低下させる大きな要因の一つに老花の存在がある.老花とは,既に花弁内で受粉した花を意味し,市場に出回るまでに本来の花色から赤褐色に変化するため,個体全体の外観を大きく悪化させる危険性が高い.このため,採花から出荷までの間に老花を早期に検出して除去する必要がある.現状では,岩手県の主力品種である‘安代の夏’を始めとする多く品種において,目視による外観の観察によって老花を検出しており,その精度は作業者の熟練度に依存する.しかし,受粉直前の若花と受粉後間もない早期の老花との外観的違いは非常に小さく,結果として老花の除去が不十分なまま出荷せざるを得ない状況にある.その一方では,外観の精査によって老花の早期検出が可能な熟練栽培者も少数ながら存在する.このため,その個人的技術の普及が期待されるが,そのためには,感覚的かつ主観的な判別方法を客観的に解明することが必要となる.そこで本研究では,外観を構成する要素の中でも特に“花色”,すなわち花弁の分光放射輝度に注目し,その若花と早期の老花における違いが簡易測定法により検知可能か否かを‘安代の夏’を対象に可視域から近赤外域に渡って検討した.その結果,特に,720 nm近辺の波長域において,若花と早期の老花の分光放射輝度間に有意な差が認められた.本波長域は市販のビデオカメラなどで撮像が可能であるため,将来的に同波長域の画像撮影による老花の早期検出装置を安価に開発することが可能と期待される.
  • Senlin Guan, Hirofumi Matsuda, Morikazu Nakamura, Takeshi Shikanai, Ta ...
    2007 年 16 巻 3 号 p. 188-195
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    A practical farm work planning is important for agricultural production corporations to manage the farming work systematically and efficiently. Since the farm work planning corresponds to a NP hard scheduling problem, a satisfactory and rational farm work planning is difficult to be generated by conventional approaches. This paper proposes a new concept of applying the Petri net and simulated annealing (SA) algorithm to develop a farm work planning for the agricultural production corporations. The necessary data for farm work planning including the data of farming process and changes of uncertainties is recorded by a cellular phone equipped with a GPS (Global Positioning System) function and an Internet connection. Petri net mathematically and graphically describes the farming process, and simulates the farming activation and resource allocation. The marking that is one of properties of Petri net facilitates mastering the farming progress and the online status of the farmland and resources. According to the formulation of farming process, we developed the SA algorithm to obtain high-quality solutions approximated to the optimum solution for the farm work planning. In the experimental evaluation on the simulation data between the SA algorithm and conventional local search algorithm, the scheduled length by the SA algorithm was much shorter than that by the local search algorithm. The result revealed that the SA algorithm had high superiority to generate high-quality solution for the farm work planning.
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