農業情報研究
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18 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 小平 正和, 澁澤 栄, 二宮 和則, 加藤 祐子
    2009 年 18 巻 3 号 p. 110-121
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/01
    ジャーナル フリー
    リアルタイム土壌センサ(RTSS)を用いて大規模畑作地の効率的な圃場マッピング手法の開発を行った.
    具体的には,土壌観測ラインと圃場マップの表示に注目した.一筆管理は慣行法の対角線とし,局所管理は定幅散布機の走行間隔として圃場全面を観測した.圃場マップは,営農者が理解し易いグリッドマップとした.グリッドマップの特徴は,グリッド内に平均値と最大値および最小値を表示した.
    RTSSの主な改良点は,土壌観測速度を慣行の2倍(0.56 m/s)にした.高速化による検量線の感度変化をPLS回帰分析により解析した.得られた決定係数(R 2)は,土壌水分(0.77),有機物含有量(0.49),pH(0.53),硝酸態窒素(0.09),全窒素(0.86)および全炭素(0.95)であった.硝酸態窒素は,分析ミスにより土壌試料数が減ってしまったので,参考として記載した.
    RTSSの高速化により,4圃場で11 haの大規模畑作地に対して1 ha約1時間の観測作業速度を得た.
    本研究の最大の成果は,営農者が過去の経験として圃場内にライムケーキを多量に溢した場所があることを,圃場マップから正確な位置情報として,確認できたことである.そして,RTSSが意思決定支援の1つとして,営農者に認められたことである.
  • 庄野 浩資, 関 朝美, 山口 香子, 松嶋 卯月, 小出 章二, 武田 純一
    2009 年 18 巻 3 号 p. 122-129
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/01
    ジャーナル フリー
    岩手県における重要な花卉作物の一つである切り花リンドウの収穫後の商品価値を長く保つためには,鮮度を長く維持し得る生育ステージの個体を選別・収穫することが有効と考えられるが,現状では,生育ステージの非破壊・非接触的な判定手法は開発されていない.ここで,庄野・関ら(2007)は,花冠の波長域700~900 nmにおける分光情報の生育ステージ判定における有効性を指摘したが,波長域400 nm以下のいわゆる紫外線領域に関しては未検討である.そこで本研究では,リンドウ花を紫外線領域(UVA)で撮影した画像の画素値に基づく生育ステージの判定手法の可能性を検討した.その結果,特定の一品種において同画像の花の画素値は,花粉が成熟して飛散を始めるとほぼ同時期に顕著に上昇した.ここで,花粉はミツバチなどの花を痛める昆虫を内部に誘引する要因の一つである.このため,同画素値は,これらの有害な昆虫の飛来時期を推定し,最適な収穫時期を決定する上でも有用な情報と期待される.以上の結果から,リンドウの生育ステージの非破壊・非接触的判定システムの実現において紫外線画像が果たす役割は大きいと期待できる.
  • Phorntipha Junkwon, Tomohiro Takigawa, Hiroshi Okamoto, Hideo Hasegawa ...
    2009 年 18 巻 3 号 p. 130-141
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/01
    ジャーナル フリー
    The goal of this study is to develop an approach to determine the internal qualities in oil palm (Elaeis guineensis Jacq. var. tenera). Bunches and fruits belonging to 4 classes of ripeness (overripe, ripe, underripe and unripe) were used for this study. For these bunches, three of internal qualities as ripeness, oil content and free fatty acid content were examined. Since the estimation of internal qualities based on the overall data for a bunch was difficult, we focused on the average reflectance and the average relative reflectance values of fruits that were not concealed by fronds in bunch. By our approach, it was necessary to estimate the ripeness of the bunch before the oil content and free fatty acid content were determined. To classify ripeness of a bunch, the average relative reflectance values of bunches in different classes of ripeness were used and classified based on Euclidean distance. In addition, ratio of chlorophyll to carotenoids (Rp) was also used for estimating ripeness of a bunch. Then oil content (OC) and free fatty acid (FFA) content were predicted by calibration models corresponding to the class of ripeness. Correct estimation results in all classes of ripeness were obtained by both methods. The coefficients of determination (R2) were 99.7% and 99.5% with a standard error of prediction (SEP) of 0.421 and 0.190 in the validation of oil content and free fatty acid models, respectively. For oil palm fruits, methods to estimate the ripeness of the fruits were developed. Ripeness estimation using the average relative reflectance values in lower part of the fruit was compared with ripeness estimation using the ratio of a not-pale greenish yellow area, a not-yellow area and a not-reddish orange area to the entire area of fruit. The correct estimation in all classes of ripeness was obtained by using the average relative reflectance at lower part of fruit while a correct ripeness estimation rate of 97.92% was gained by using ratio of area in fruit. Since the ripeness estimation using the ratio of the area of the fruits can be done automatically, it may provide more practically applicable for the assessment of fruit ripeness in the factory.
  • 野口 良造, 小山 瑞樹
    2009 年 18 巻 3 号 p. 142-151
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/01
    ジャーナル フリー
    地域社会を対象にした,バイオマスエネルギーによる自動車用エネルギー代替の可能性を明らかにするために,複数のバイオマスやエネルギーを取り扱い,システムダイナミックスのプログラムへ応用可能な,エネルギーフローモデルを提案した.つぎに,栃木県を対象として,耕作放棄地を利用したバイオマス生産とEV(電気自動車)の普及を前提に,6つのシナリオを設定し,システムダイナミックスを用いたシミュレーションを行った.その結果,EVの普及率:5% / 年,EVとGV (ガソリン自動車)の燃費性能の向上:2.9% / 年,耕作放棄地の拡大:4.2% / 年,飼料米ふくひびきの生産によって,27年後に自動車用エネルギーを自給できる可能性を明らかにした.また,EVの燃費性能の向上,および新車販売台数のなかでEVの占める割合の増加が,栃木県での自動車用エネルギー自給の可能性に大きく影響を与えることが明らかとなった.
  • 齋藤 陽子, 齋藤 久光, 仙北谷 康
    2009 年 18 巻 3 号 p. 152-161
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/01
    ジャーナル フリー
    資源循環や飼料自給率への関心の高まりとともに,食品残渣を飼料として再資源化するエコフィードの取り組みが注目されている.エコフィードは,適切に給与することで畜産経営の改善につながると期待される一方,食品廃棄物由来であることから,畜産物に対する消費者の評価が低下すると懸念されている.そこで本研究では,表明選好法を用いて,エコフィードを給与して生産された豚肉に対する消費者評価について分析し,今後のエコフィード普及に必要な条件を明らかにする.結果は,エコフィードに抵抗を感じる消費者など一部の消費者からは否定的に評価されていた.しかし,食品や資源リサイクルに関心を持つ消費者や所得の高い消費者からは肯定的な評価を受けていた.従って,今後,エコフィードの普及を促進するには,エコフィードの安全性や,エコフィードの利用が循環型社会の実現につながることを消費者に周知することが重要である.
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