農産物の色彩や形状,大きさなどの外観特徴は食味食感とともに農産物の商品価値を決める重要な品質要素である.農産物の外観品質の評価は,主に熟練者の目視によって行われるが,これらの評価は,熟練者の作業経験の積み重ねによって獲得された判断要因や判断基準に依存しているため,客観性や再現性の問題が生じ,評価者により異なる評価結果が得られる場合が存在する.このような問題を解決すべく,今日では,農産物の外観品質の評価に画像解析技術を用いた研究が広く行われている.本研究では,農産物のための色彩画像解析システムの構築を目的とし,色彩画像撮像装置を構築した.色彩解析には,Content-based Image Retrieval(CBIR)手法の一つであるColor HistogramとColor Distribution Entropy(CDE)を組み合わせた手法を採用し,さらに,対象農産物に対して最適な色彩解析が行えるようにCDE手法の改良を試みた.対象農産物には,果実の色彩が重要な品質要素であるイチゴを用いた.構築した色彩画像撮像装置では,光拡散体として円筒を用いることで拡散光の下で撮像でき,イチゴの正確な色彩が記録された画像が得られた.また,色彩画像解析では,イチゴ画像に対するCDE解析の最適なパラメータが決定され,同品種内での異なるイチゴ間の色彩の差異を定量的に評価することが可能となったことから,構築した色彩画像解析システムのイチゴの色彩評価への有効性が示唆された.
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