持続的な社会発展を前提としたバイオ燃料生産について,バイオ燃料生産の背景を整理し,人間中心主義と自然共生主義の観点,および三条件(化石燃料の枯渇,CO
2排出による地球温暖化,エネルギーセキュリティ)から,世代間倫理の成立の有無の検討を行うとともに,農地や森林の環境回復の観点から,時間軸における世代間倫理の成立について考察を行った.その結果,三条件のうち一つの条件でも成立し,かつ人間中心主義の立場をとる場合には,バイオ燃料生産の世代間倫理が不成立となり,それ以外では世代間倫理が成立した.また,人間の労働年齢が15歳から65歳とすると,農地利用のバイオ燃料作物生産において,世代間倫理の成立が弱いことが示された.さらに,バイオマス一次生産量の最も多い熱帯雨林地帯で,農地を放棄した場合に発生する二次林のバイオマスの文献データの調査結果から,50年では二次林のバイオマスが自然林と同程度に回復されないため,約50年以降の世代に対して世代間倫理が成立することが明らかとなった.
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