農業情報研究
Online ISSN : 1881-5219
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23 巻, 4 号
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特集:営農支援を目指す圃場型分光計測技術
原著論文
  • 深津 時広, 遠藤 玄, 伊藤 祐太, 小林 一樹, 斉藤 保典
    2014 年 23 巻 4 号 p. 140-153
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では広域・精細なモニタリングを実現する手法のひとつとして,移動作業型フィールドサーバを用いたモニタリングシステムを提案した.移動作業型フィールドサーバとは,これまでのフィールドサーバに計測位置を変更できる移動機構ユニットと柔軟なモニタリングを実現するマニピュレータを搭載したものであり,周囲のフィールドサーバとこれが連携することで効率的な操作・管理を行うことができる移動計測システムを構築した.本論文では高積載量を実現し,搭載面を水平に保ちつつ不整地を安定して歩行できる移動機構ユニットと,軽量・省電力で広範囲の作業領域をもつマニピュレータを備えた移動作業型フィールドサーバを開発し,幾つかの評価実験を行うことで提案システムの有効性や実現可能性について検討した.特に圃場現地試験では,遠隔地の利用者が必要に応じて圃場群落内を移動させながら目的作物の詳細な生育情報を取得できることを確認した.実験結果から,提案システムが高度で汎用的なモニタリングシステムを構築し,より有用な情報の取得が可能であることを示すとともに,提案システムの実現に向けた今後の課題について明らかにした.
  • 伊藤 淳士, 遠藤 智章, 平藤 雅之
    2014 年 23 巻 4 号 p. 154-164
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    食の安全・安心の基礎となる生産履歴情報は,生産工程を通じて随時記録される必要がある.そのためのアプリケーションやサービスは,スマートフォン,タブレット等の新しいデバイスの登場に対応して,迅速なアップデートと機能の向上が求められている.また,農業従事者の高齢化,経営の大規模化,農業の6次産業化等に対応するため,ユーザビリティ及び機能の向上が求められている.これらのニーズに迅速に対応できるようにするため,生産工程管理の支援を行うクラウドサービス「apras」を開発した.aprasは,JA等の生産者団体での利用を想定している.aprasを利用することで生産工程情報を簡便に入力でき,各生産者団体において情報を共有できる.aprasのユーザは,PC,スマートフォン,手書き入力など好みの手段で入力や閲覧ができる.さらにモバイル機器に接続(内蔵)された分光センサ等からのセンサデータをaprasに格納し,生産履歴情報と統合的に利用する機能も有している.北海道内における8つのJAを対象とした実証試験(ユーザ数は約4,500人)でaprasが不具合なく稼働することを確認した.
原著論文
  • 井山 佳美, 野口 良造, 森田 祐介
    2014 年 23 巻 4 号 p. 165-174
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    持続的な社会発展を前提としたバイオ燃料生産について,バイオ燃料生産の背景を整理し,人間中心主義と自然共生主義の観点,および三条件(化石燃料の枯渇,CO2排出による地球温暖化,エネルギーセキュリティ)から,世代間倫理の成立の有無の検討を行うとともに,農地や森林の環境回復の観点から,時間軸における世代間倫理の成立について考察を行った.その結果,三条件のうち一つの条件でも成立し,かつ人間中心主義の立場をとる場合には,バイオ燃料生産の世代間倫理が不成立となり,それ以外では世代間倫理が成立した.また,人間の労働年齢が15歳から65歳とすると,農地利用のバイオ燃料作物生産において,世代間倫理の成立が弱いことが示された.さらに,バイオマス一次生産量の最も多い熱帯雨林地帯で,農地を放棄した場合に発生する二次林のバイオマスの文献データの調査結果から,50年では二次林のバイオマスが自然林と同程度に回復されないため,約50年以降の世代に対して世代間倫理が成立することが明らかとなった.
  • 宮住 昌志, 南石 晃明, 長命 洋佑, 松倉 誠一
    2014 年 23 巻 4 号 p. 175-186
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,農業の担い手の高齢化が進む一方,法人経営や新規就農者の数は増加しており,技術・技能伝承の手法が大きな課題となっている.本稿では,大規模稲作経営での田植え作業を取り上げ,営農可視化システムFVS(Farming Visualization System)を用いて,作業の熟練者および初級者の農作業技術・技能を計測した.集計・分析の結果,両作業者の作業速度・精度確認頻度を定量的に把握するとともに,両者の作業速度・精度確認頻度に有意な差異があることを明らかにした.具体的には,作業速度および精度確認頻度の指標として,作業時間および後方確認回数に着目して集計を行い,熟練者と初級者のそれぞれの①後方確認回数(直線コースのみ),②直線コース作業時間,③ターン作業時間(苗補充無し),④ターン作業時間(苗補充有り)について,平均値の差の検定(t検定)を行った.その結果,①後方確認回数(直線コースのみ),②直線コース作業時間,③ターン作業時間(苗補充無し)の三つの項目において,有意水準1%で有意差が認められた.このことは,熟練者と初級者の作業速度および作業精度確認頻度に明確な差があることを示している.なお,作業技術・技能に関する作業者間の定量的な比較分析がFVSによって可能であり,得られたデータや分析結果を体系的に整理できれば,技術・技能伝承へ活用できることに十分期待できることも示された.
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