農業情報研究
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25 巻, 2 号
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原著論文
  • 藤田 かおり, 池田 日高, 佐川 岳人, 蔦 瑞樹, 杉山 純一
    2016 年 25 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    アフラトキシン(AF)は自然界で最も発がん性が高いカビ毒であり,輸入農産物への汚染が問題となっている.夾雑物の多いナツメグは前処理が煩雑であり,検査に時間と技術と費用がかかる.また試薬を大量に使用する従来の分析法は環境や実験従事者に負荷もかかる.蛍光指紋による簡易・迅速なアフラトキシン(AF)検出手法の開発のため,自然条件で汚染されたナツメグ中の蛍光指紋を計測した.各AF(AFB1, B2, G1)およびTotal AF(AFB1 + B2 + G1)の濃度の推定にはPLS回帰分析を用い,蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフによる化学分析値を目的変数,簡易粉砕したナツメグの蛍光指紋計測値を説明変数として回帰式を求めた.化学分析よりAFB1,B2,G1が検出され,Total AFは0.0~20.9 ppbであった.PLS回帰分析による各AF濃度推定モデルでは,キャリブレーション群の決定係数および標準誤差はAFB1(0.87, 2.5 ppb),AFB2(0.87, 0.2 ppb),AFG1(0.80, 0.3 ppb)であり,バリデーション群ではAFB1(0.81, 2.9 ppb),AFB2(0.75, 0.3 ppb),AFG1(0.79, 0.3 ppb)となり,作成された推定式が堅牢であることが示された.また日本の規制基準であるTotal AFでもキャリブレーション群(R2 = 0.87, SEC = 2.9 ppb),バリデーション群(R2 = 0.81, SEP = 3.4 ppb)ともに良好な結果を得た.これにより,複数成分混在系において抽出などの処理を要さず簡易に汚染ナツメグ中の各AFの濃度推定が可能であることが示唆された.
  • 樽本 祐助, 服部 太一朗, 田中 穣, 境垣内 岳雄, 早野 美智子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 68-78
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    育種において交配親をたどる系譜情報は,交配及び選抜において重要である.しかしながら,わが国のサトウキビ育種では,こうした情報が共有されず,育種に関わる機関がそれぞれに管理してきた.そこでサトウキビ育種に関わる機関で情報共有が可能なWebベースのデータベースを開発した.このシステムによって,系譜情報や形質特性を簡易に閲覧することができる.また交配親だけでなく,兄弟や後代の情報も得られる.こうした系譜情報は,交配や選抜における育種担当者の意思決定を支援することができる.さらに,交配においては,その遺伝的な近親性も考慮する必要がある.このシステムには,その指標となる近交係数の計算機能がある.サトウキビでは系譜の欠損値が多いため近交係数の適用には限界があるが,祖父母まで把握できるものでは,系譜上に同一の系統がある割合(重複率)と近交係数を活用することで,近親性が簡便に評価できる可能性が示唆された.
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