日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
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  • バイオバレー事業の事例
    飯嶋 曜子
    p. 151
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    1. はじめに 統合が進展するヨーロッパでは,現在,国境地域において越境的な地域連携の発展がみられる.これらの越境的地域連携のなかには,新しい政治的・経済的な実体を有する地域を形成する可能性を秘めているものもあり,従来の国家や地域といった概念の再考を促している.  本発表では,独仏スイス国境地域(オーバーラインOberrhein地域)における連携の形成と発展の過程を,ライフサイエンス関連の産学官連携を目的としたバイオバレーBiovalley事業の事例から分析する.それによって,新たな連携空間,つまり新たな政治的・経済的な地域がどのような形態で,いかに形成されつつあるのかを明らかにする.2. ユーロリージョン・オーバーラインオーバーライン地域では,1960年代から越境的連携が取り組まれ,「ユーロリージョン・オーバーライン(Euroregion Oberrhein)」として制度化されてきた.経済開発,教育,文化,観光,地域計画,環境などさまざまな分野で連携が行われている.同地域の連携は,行政に加えて,大学や研究機関,さらに商工会議所,地元企業など民間の参加が重視されてきたことに特徴がある.これは,EU地域政策に新たに導入された「パートナーシップ」重視の路線を先取りするものであった.1990年代以降は,EUの国境地域対策インターレグ・プログラム(INTERREG Program)が適用され,EU構造基金からの財政的支援を受け,連携がより一層発展している.オーバーライン地域では多元的な主体の参加を可能とする入れ子的な連携システムが形成されている.しかも,オーバーライン地域の入れ子的な連携システムは,その内部において個々の新たな連携の創出を通じて,新たな連携空間を次々に創出している.この新たな連携空間の創出は,地域連携への多元的な参加主体による,多様な相互依存の空間関係の創出という側面を有している.この点について,バイオバレー事業を事例に取り上げて詳しくみていく.3. バイオバレー事業ユーロリージョン・オーバーラインの1事業であるバイオバレー事業は,ライフサイエンス関連産業に関わる企業,研究機関,行政のネットワークを強化し,それらが有する既存の地域資源をより有効に活用することにより地域の産業の優位性を高めようする産官学連携事業である.オーバーライン地域にはライフサイエンス関連の高度な知識と技術を有する人材や研究機関,教育機関,企業が集積している.ライフサイエンス関連企業の多くは中小企業であるものの,一方でバーゼルの化学・製薬産業に代表されるグローバルプレイヤーも同地域には立地している. 本発表では,バイオバレー(BioValley)事業における参加主体が織りなす相互関係に着目し,参加主体の多元的かつ水平的な結びつきによってオーバーライン地域という新たな地域形成の基礎となる越境的な地域連携システムが形成されていく過程を解明するとともに,併せてその地理的な含意について検討する.
  • 平野 淳平, 三上 岳彦
    p. 152
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    全国各地されている古日記の天候記録は,歴史時代の古気候復元の代替データとして大変有効な史料である.特に江戸時代には全国各地で同時期に多数の日記が記されていたので,毎日の天気分布を描くことによって日単位での総観気候学的な気候復元が可能である. 冬についてはこれまでも天気分布から気圧配置型などを推定することは試みられているが,対象地域が限定されているものが多く,冬季の天気分布を客観的に分類する方法は確立されていない.そこで,本研究では1810/11!)1859/60年の冬季(11_-_3月)を対象として古日記の天候記録から客観的に天気分布型の分類を行い,天気分布型の出現頻度の変動から1811_-_1860年の気温変動を復元することを試みた.
  • 近藤 暁夫
    p. 153
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    1、研究の視点
    【1】 目的
     本報告は、ある地点から、離れた地点の位置を地理情報によって説明する時、どの程度の距離の範囲までなら説明できると経験的に認識されているのかを、屋外広告に掲示された地理情報から帰納的に検討するものである。
    【2】 マーケティングツールとしての屋外広告
    企業は市場の他者に対して自らについての情報を提示している。この、情報をもって他者に働きかけ、関係を構築する活動の総称を「マーケティング・コミュニケーション活動」といい、人的営業や広告、文化事業などが含まれる。
    マーケティング・コミュニケーション活動のすべてが必ずしも空間編成を伴うものではないが、地理学の直接の対象となる物的な空間編成を伴うものとして、屋外に広告を展開し、景観を広告化する、「屋外広告」の掲出がある。
    屋外広告が他の広告媒体と異なるのは、掲示された場所と広告主を情報によって結びつける点にある。この特性上、屋外広告は、地理情報の提示と地理的誘導に適したマーケティングツールであると考えてよいだろう。
    【3】 広告主からの2つの距離逓減
    <距離逓減1>広告主が地理的な一点に立地する時、その活動範囲に空間的限界(例えば商圏)が生じることから、一般に広告掲出のニーズは広告主からの距離逓減を見せる。
    <距離逓減2>しかし、仮に広告主の、広告掲出のニーズが遠方まで到達したとしても、広告主から離れた地点では、屋外広告体に掲示できる地理情報に限界が生じ、屋外広告の情報メディアとしての効果が低くなることも考慮しなければならない。例えば、屋外広告を起点として対象(広告主)の位置を説明する時、「次の信号左折200m」や「この信号左折、2本目右折突き当り」と表記して経路を提示することはできても、「217個目の信号左折200m」や「この信号左折、2本目右折、突き当り左折、4つ目信号左折、3本目右折」と表記することは、その地理情報がいかに正確であっても、また広告を掲出した場所がどれほど広告主にとって魅力的な場所であっても、非現実的である。つまり、個々の屋外広告というメディア自体の効用も、広告主からの距離逓減を免れない。屋外広告を用いた効果的な宣伝計画や、屋外広告活動による空間編成を考える場合は、この2種類の距離逓減を考慮に入れねばならない。
    本報告では特に、住所や地図といった類型別の地理情報の、広告主の提示する地点まで受信者を誘導するのに適した空間範囲と掲出範囲の距離的限界を問う。

    2、使用するデータと分析視角
    【1】 使用データ
    2003_から_2005年にかけて主に徒歩による目視悉皆調査によって確認し、GIS化した、濃尾平野の主要道路(総延長約600km)沿いに屋外広告を掲出している約8,000件の広告主と屋外広告21,000個。
    【2】 分析方法
     地図や住所などの地理情報の類型ごとに、広告掲出点から対象に誘導できる距離の限界と提示に適した範囲を抽出。

    3、結果と考察
    【1】 屋外広告へのニーズの距離逓減
    屋外広告全体の掲出数は、広告主の至近と遠距離で加速度的に減少する対数正規分布をなす。濃尾平野では、広告掲出は広告主からおおよそ7km程度の範囲に含まれる。
    【2】 広告上に提示される地理情報の距離逓減
    広告主を説明する地理情報ごとに、距離逓減のパタンに差異が確認できる。つまり、説明すべき対象から距離が離れるほど、詳細な地理情報での説明がなされなくなり、結果的に、地理情報の質が距離に従って低下していた。例えば、広告主の位置を地図を用いて説明できる限界は約5km、ルートを明示して誘導できる限界は約2.5kmと、屋外広告全体の掲出限界よりも狭い範囲となっていた。
  • 京都市中心部:堺町通・大宮通・上七軒通を例に
    戸所 泰子
    p. 154
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    都市景観形成における「地域の色」の役割_-_京都市中心部:堺町通・大宮通・上七軒通を例に_-_戸所 泰子(立命館大学・院) 1. 研究の視点と目的 2004年の景観法施行にみられるように、人々の価値観の量的充実から質的向上への移行に伴い、地域の歴史や文化・風土に根差した町並み・景観形成を目指す動きが活発化している。地域固有の景観創出には、建築物の更新に際し、形態のみならず、景観に現れる色彩(以下、色彩景観)からも、まとまりを持つ地域の創出が必要である。 地域性を検討する際の基準として、伝統的建築物などに多用される「当該地域の自然・文化・社会を反映し、地理的・歴史的に育まれた色」を「地域の色」と定義する。また、都市は公的な都市計画整備と、私的な建設等諸活動により形成される。そのため、これらの景観形成主体の景観形成に対する認識や取組みの検討も欠かせない。 そこで本研究では、主に都市景観を構成する建築物の可視的構成要素と、景観形成主体である住民と行政の取組みを通じて、都市景観に現れる「地域の色」の特徴と、その役割を明らかにすることを目的とする。特に、都市景観整備制度に着目し、規制の異なる複数の事例地域を比較しながら分析を進める。2. 研究対象地域 本研究における対象地域は、「地域の色」を色濃く残す伝統的建築物(以下、町家)が集積し、その活用保存を目指す景観整備制度がある地域が適す。また、伝統的意匠を継承した建築物(以下、町家風建築物)が一定数存在し、「地域の色」を現代に活かしている地域が良い。そこで適合する京都市中心部を研究対象地域とした。中でも美観地区内の行政主導の町並み整備計画の有無に着目し、明瞭な計画のない都心部の堺町通、都心周辺部の不連続的街路整備の大宮通、連続的街路整備の上七軒通を事例地域に選定した。3. 研究方法 まず、空中写真より戦後の町家減少過程から街路景観の変化を把握した。次に、現地調査より街路沿いの全建築物の外観調査を行った。調査項目は、土地利用2項目(高さ、事業活用)と外観7項目(種類、軒の有無、壁面の連続性、主要外壁色、外壁材、広告物の有無、広告の材質)とした。そして、住民への聞き取り・アンケート調査を行い、景観形成への意識とまちづくりの取組みを把握した。4. 結果 _丸1_町家の減少は都心から周辺部への距離減衰性があり、1960年代以降の高度経済成長期から現在にかけて著しい。 _丸2_形態面の町並みの連続性は、自動車交通の普及・建築技術の多様化・全国一律の法規制等により失われつつある。 _丸3_町家以外の建築物の増加に伴う色の増加が、地域性喪失の一因をなす。だが外壁に町家の類似色を用いたり、特に町家風建築物には忠実に伝統的色彩や素材を使用することで、町家の減少で失われた街路の連続性を色彩面で補完する。 _丸4_景観整備制度への認知度と町並みに対する満足度は、規制の強さに比例する。また規制の強さや手法、その認知度の差が、景観の連続性の有無となって町並みに現れる。 _丸5_規制が強い地域ほど街路の統一感が日常となり、景観形成への関心度が低くなる。また、景観整備の度合と景観形成への関心度の高さに比例し、形態などの機能性から色彩などの審美性へと都市景観整備の関心が移行する。 _丸6_都市内部の立地の違いで、社会経済活動に関する外圧の入り方が地域別に異なる。その結果、住民意識と現実の法規制や社会経済的動向の間に齟齬が生じるか否かが分かれ、地域としてのまちづくりの取組み方に差が生じる。5. 結論 高度経済成長期以降の全国画一的な都市開発手法の結果、各都市がもつ歴史的な空間秩序や景観の破壊が生じた。しかし、1980年代以降、地域性を重視した審美面での都市景観形成に関心が高まりつつある。つまり現在は、伝統的建築物の活用保存などにより、歴史的景観を維持発展させるシステムを創造し、個性豊かな地域性を再構築するための「地域の色」継承・創造期といえる。 「地域の色」の継承方法は、立地場所、土地の歴史性、建築基準法や景観整備制度などの法規制と、建築素材や建築技法などの「地域の色」継承システムの有無により、行政と住民のまちづくりへの関与の度合や方法に差異が生じ、地域性として現れる。形態面では非連続的な町並みでも、建築物の外壁の素材や色彩に「地域の色」を用いることで、色彩調和により視覚的連続性が保たれる。そのため、「地域の色」に配慮した景観形成によって、地域の実情に応じた地域的なまとまり感の創出が可能になる。
  • 飯塚 隆藤
    p. 155
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    研究の目的荒川では,近世から近代にかけて河川舟運が盛んに行われていたが,鉄道の開通や河川改修の影響を受けたため,船の航行が困難になり,河岸が衰退していった.飯塚(2004)は近代の荒川における河川舟運と,物資を扱う河岸の衰退過程を論じた.その中で,衰退過程を4つに時代区分し荒川舟運の衰退について検討を試みたが,物資や河川舟運そのものの変化については不十分であった.また,荒川では近代以降も河川舟運が行われており,2005年10月には荒川ロックゲート(閘門)が完成するなど,近年河川舟運を促進しようとする動きが高まっている. そこで本研究では,まず近代の荒川舟運において,物資がどのように変化し河川舟運が衰退したのかを明らかにする.次に,現代までの荒川舟運について明らかにし,全国の事例と比較しながら,今後の荒川における河川舟運を提案したい.
    研究の方法近代の荒川舟運では,物資や河川舟運の変化を明らかにするため,「荒川流域河川調査書」・「東京市貨物集散調査書」を分析材料とし,不十分な点を聞き取りした.次に現代の荒川舟運では,舟運事業者への聞き取りや現地調査・文献調査を行った.また,全国で河川舟運を行っている東京都・大阪市・新潟市・広島市・徳島市において,舟運事業者への聞き取りと現地調査・文献調査を行った.そして,荒川と他河川を比較し,今後の荒川における河川舟運を提案するために,これまでの河川舟運研究で行われてこなかった同縮尺の地図による比較を行った.
    結果・考察近代の荒川舟運では,鉄道開通以前と以後,河川改修以降では物資の内容が変化し,農作物や日常雑貨などは鉄道へシフトし,1950(昭和20)年頃には砂利・砂や鉄鋼,石炭などの重量貨物のみが舟運によって運ばれていたことが明らかになった.そして,近・現代の荒川舟運を「舟運最盛期」・「鉄道開通による舟運衰退期」・「河川改修による舟運衰退期」・「舟運最終期」・「舟運模索期」の5つに区分した(図1).荒川と全国の他河川と比較を行った結果,今後の荒川における河川舟運として,「河川・運河のネットワーク」・「水上バスとサイクル(自転車)・パーク(駐車場)の連結」・「リバーステーションを川の駅へ」・「河川・運河網を活かした交通」・「鉄道駅やバス停との連結」の5つを提案した(図2).
    文献飯塚隆藤2004.荒川の舟運!)河岸の衰退時期の地域差!).駒澤大学大学院地理学研究32:15-31.
  • 秋山郷硫黄川流域の例
    関口 辰夫, 秋山 一弥
    p. 156
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    長野県栄村と新潟県津南町と県境に位置する硫黄川は苗場火山の西麓の急流河川である。合流する中津川は火山地を浸食する深い谷を形成し、北流して信濃川に注ぐ。硫黄川一帯は第四紀の苗場火山の安山岩や玄武岩を主体とする地質から成り中津川や硫黄川流域には大小多数の地すべりが形成されている。また、この区域は本州の脊梁山脈にあたるために冬季の積雪は数mに達する豪雪地帯となり、春先の融雪季には多数の全層雪崩や崩壊、地すべりが発生する。特に硫黄川流域は崩壊地の形成が著しい荒廃河川となっている。 硫黄川流域の急傾斜の斜面では全層雪崩による雪崩地形が発達し、中津川左岸の鳥甲山周辺と硫黄川流域で著しい。鳥甲山とその北側では中津川に向かって大規模な地すべりが発達し、特に地すべり滑落崖でと直線状の筋状地形が顕著である。同様に硫黄川流域においても右岸側で大規模な地すべりの滑落崖で雪崩斜面がみられるほか、硫黄川の河川の渓岸に沿って顕著に発達している。  硫黄川流域では雪崩が1時期だけでなく、2時期および3時期に渡って繰り返し発生していた。また、雪崩は雪崩斜面だけでなく崩壊地においても多く発生しており、雪崩浸食の著しく地形変化を受けていることが判った。
  • 中西 僚太郎
    p. 157
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    明治・大正期のわが国では,景勝地や社寺,温泉地などを対象として,銅板または石版印刷による精緻な描写の鳥瞰図が多数作成された。全国の景勝地のなかで,この種の鳥瞰図が最も多く作成されたと思われるのは陸前松島であり,今日,各種図書館や古書市場において,その鳥瞰図を容易に見出すことができる。松島の鳥瞰図は,「真景図」と称されることが多く,「松島真景図」と総称できる。本研究では,「松島真景図」には,いかなるものがあるのか,また視覚メディアとしてどのような意味をもっていたかについて考察を試みた。「松島真景図」は,明治20年代初めに作成がはじまり,大正期を通じて刊行され続けた。図の性格としては,松島を主題とした「松島図」と,松島と塩竈を主題とした「松島塩竈図」(「塩竈松島図」)に分けることができる。図面構成としては,松島海岸を正面にすえた松島湾の鳥瞰図を主図とし,その周囲に瑞巌寺や塩竈神社,周辺の名所の図を配するものが多く,明治20年代後半からはこのタイプのものが主流となる。図の製作者は,ほとんどが仙台の印刷業者であり,盛光堂蜂屋十馬がその代表的存在である。図は松島海岸ほかの土産物店で販売されており,松島の観光案内ならびに土産物品として,作成・販売されたものであることは明らかである。明治20年代から30年代前半にかけて,さまざまな描写表現の鳥瞰図がみられる「松島真景図」であるが,明治30年代後半からは,一定の描写表現に収束する傾向が認められ,明治末から大正期にかけて刊行されたものは,明治30年代後半に作成されたものが,部分的な修正を加えて再版されたものにすぎない。明治40年代以降,「松島真景図」の作成は,衰退傾向にあったといえる。その理由としては,明治30年代半ば以降,写真の印刷技術の普及により,「写真帳」や写真入り絵葉書,写真を盛り込んだ「案内書」が刊行されるようになったことがあげられる。写真によって現実の景観がリアルに伝えられるようになると,写実性に富んだ「真景図」はその役割を終えることになったといえる。それゆえ,大正末から昭和初期に新たに作成された鳥瞰図は,「真景図」とは異なる意匠をもつものであった。本研究は,平成15_から_18年度科学研究費補助金,基盤研究(B),近代日本の民間地図と画像資料の地理学的活用に関する基礎的研究(課題番号15320115,代表者:関戸明子)による成果の一部である。
  • 松岡 恵悟, 河原 大, 矢野 桂司
    p. 158
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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     日本では幕末・明治維新以降の近代化過程において、西洋近代の制度や文化を積極的に取り入れてきた。その結果、日本建築も西洋近代の様式を取り入れたものが建設されるようになり、今日その一部を近代化遺産として目にすることができる。このような幕末の1860年代から第二次世界大戦終了までの間に建設された、西洋風のデザインを取り入れた建築を「近代建築」と呼ぶ。現存する近代建築の多くは、古い建物でも築後百年余りということから、これまではその文化財的価値が認められてこなかった。しかし、近年では、それら近代建築が日本の文化・社会あるいは都市の近代化・西洋化を語るうえで、いわば「証言者」であるということが認識されるようになり、国指定登録文化財制度なども整備された。 日本建築学会の「歴史的建築総目録データベース(一般利用試作版)」によると、全国の市区町村別に現存が確認されている近代建築数をみた場合、京都市が619件で最大である(東京23区を1都市と扱うと1606件で最大となる)。京都市では明治以降、目立った震災や戦災がなく、京町家や社寺の建築に代表される歴史的建築が多数存続していることは周知のことである。そのなかにあって、近代建築は相対的に数こそ少ないものの、京都の近世的であった社会が西洋近代を受容していった過程を知るうえで、重要な要素となっている。そのような理由もあって、京都市では行政サイドにおいても近代建築に対する関心が比較的高く、平成16年度には「京都市近代化遺産調査」をまとめている。それによると、京都市内には建物の全体または一部に西洋風のデザインを取り入れた近代建築が約2,000棟現存するとされた。 図は、現時点で報告者が把握しGISデータ化を終えている約800件の近代建築の立地密度を表している。上京区・中京区・下京区にまたがる都心部では煉瓦造やコンクリート造の金融・商業・行政の堅ろうな近代建築が多く残っている。大学や小学校の校舎も重要な構成要素である。伏見区では酒造会社に近代建築が多く見られる。また、従来から富裕層が多く住む左京区から北区にかけては、住宅の近代建築が多い。特に北区の賀茂川右岸付近は市内で最も近代建築の立地密度が高いエリアとなっている。しかし住宅の場合、所有権の移転や居住者の世代交代、建物の老朽化にともなって建て替えられるケースが多く、急速に減少している。 立命館大学地理学教室では、立命館大学21世紀COEプログラム『京都アート・エンタテインメント創成研究』の「京都バーチャル時・空間の構築」に関する研究において、都心部の京町家などとともに近代建築についてもVR(バーチャル・リアリティ)化を進めている。京都市などとも協力しながら、将来的には前述の京都市近代化遺産調査による約2,000件について調査およびGISデータ化を行い、デジタル・アーカイブ化するとともに、可能な物についてはVR化したうえで情報公開する予定である。
  • 関口 辰夫, 藤原 智, 村上 亮, 西村 卓也, 飛田 幹男, 矢来 博司, 大井 信三
    p. 159
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    干渉SAR技術による解析によって,センチメートルオーダーの地表変位や地殻変動を非常に広範囲に且つ面的に捉えることが可能である。したがって、観測機器が設置されていない場所においても地表変位を検出できることから地震や火山活動、地すべり、地盤沈下などの広域的な地殻変動や防災・災害予測の手段として有効に利用できると考えられる。 一方、地震活動や火山活動、地すべり等によって地表変位が検出される区域では、活断層、火山の火口・カルデラ・溶岩流、地すべり、扇状地、段丘etcの特有の地形や複合的な地形を有している。干渉SARによって変位が検出された区域の地形を調査することにより、地殻変動における地球内部の活動の要因や地表付近での地形・地質的な外的要因を推定することが可能になる。 本発表では、干渉SAR技術によって検出された1995年兵庫県南部地震時における斜面の変動や1993年以来活動がみられる北海道屈斜路湖東岸のアトサヌプリ火山周辺の活動を中心に、これまでに検出された地震、火山、地すべり地域の干渉SARによる検出事例と地形との関係について報告する。
  • 香川 雄一, 小口 高, 財城 真寿美, 小池 司朗, 山内 昌和, 江崎 雄治
    p. 160
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    _I_.はじめに 財城ほか(「日本における居住地の分布と地形との関係_-_GISを利用した市町村単位の考察_-_」日本地理学会2005年度春季学術大会;CSIS Discussion Paper #68、2005)は、人口の分布と自然環境との関係を、デジタル空間データを用いて分析した。この研究では、市町村単位で標高や傾斜といった地形条件と居住との関係を明らかにすることによって、居住地の自然地理学的特徴を,従来よりも詳細に解明することができた。本研究では、駅の乗降客数のデータを新たに導入し、GISを利用した居住地と自然環境との関係を、通勤等の要素も考慮して検討するための予察的な作業を行った。対象地域の範囲は東京大都市圏とした。ただし、人口の分布とは異なり、駅を利用する交通流動は必ずしも駅周辺の居住者数を反映していない。一方で通勤・通学圏における昼夜間人口差のある程度の部分は、駅の乗降客数に反映されている実質的な移動数として算定可能である。さらに駅前の地価や各駅の都心部からの距離および時間は、乗降客数との対比を通じて東京大都市圏内の都市構造の一つとして位置づけられる。このような理由により、駅を単位とする分析を進めた。_II_.データと研究方法 駅の乗降客数は各鉄道会社発表のものに加え、地方自治体の統計書にも収録されている場合がある。これらのデータは、_(株)_エンタテインメントビジネス総合研究所編集・発行の『東京大都市圏 京阪神圏 駅別乗降客数総覧』にまとめられている。東京大都市圏ではJRおよび私鉄の1558駅の乗降客数(1日当たり平均)が収録されている。GIS上でこれらの駅のポイントデータを作成し、乗降客数に加えていくつかの属性データを入力した。まず国税庁の作成した路線価図から駅前の地価を読み取った。ただし、調査地域の周縁部にある約250駅については、路線価が不明等の理由により分析から除外した。次に山手線を都心部の外周と仮定し、山手線の最寄り駅からの距離と時間を時刻表から算定した。山手線およびその内部の路線の駅は、都心部の中にあるとみなして作業から除外した。_III_.結果と考察 駅の乗降客数と駅前地価はほぼ比例しているが、地価の高い都心部の駅のいくつかで乗降客数がやや少ない傾向がみられた。また、乗降客数と距離および時間の相関を比較した場合、時間との相関の方が高かった。これは利用客のニーズからしてみれば妥当な結果であろう。地価を距離と比較した場合、中心から離れていてもいくつかの地価の高い駅があった。これらは都市構造としては二次的中心として理解できる。ただし、GISを用いて駅の乗降客数の分布図を作成すると、大都市圏中心部からの階層構造と並んで主要路線網に含まれない駅の空隙部分が浮かび上がった。このことは、距離や時間のほかに、自然環境の要因が乗降客数の分布を間接的に規定していることを示唆している。この仮説の妥当性を、地形データを用いて検証中である。_IV_.まとめ 既存の大都市圏の研究(たとえば都市経済学による土地市場や住宅立地の分析)に対して、GISを用いて居住、交通流動および自然環境の相互関係を明らかにする視角は、都市圏に関する経験的理解を促進するであろう。本研究はその第一歩である。
  • 川口 太郎, 中澤 高志, 佐藤 英人
    p. 161
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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     本報告は,戦後の一貫して大都市圏の郊外化の原動力となり,中流階層のライフスタイルのひとつの規範となってきた郊外住宅地が,世代交代期を迎えて大きな転換期にあるという認識にもとづき,そのひとつの事例として典型的なエリート郊外住宅地をとりあげ,世代交代をめぐる問題を明らかにするとともに,住宅地の持続可能性について考察することを目的とする。 調査を行った横浜市金沢区釜利谷西地区(釜利谷西1丁目から6丁目)は金沢区の南端,鎌倉市との境をなす丘陵の東側斜面を造成してできた住宅地であり,全域が第1種低層住居専用地区に,さらに半分程度が第2種風致地区に指定されている。1960年代後半に大手デベロッパーによる造成が始まり,1970年代から80年代初頭にかけて入居が行われた。アンケート調査は2005年3月,一戸建て住宅を対象にポスティングで2000部の調査票を配布し,349通の郵送回収を得た(回収率17.5%)。また同年8月,アンケート回答者のうちの20世帯に1時間から2時間程度の聞取り調査を行った。アンケートの回答者は現在60歳代が中心であるが,1970年代後半に40歳前後で入居し,京浜地区から東京都心にかけての大企業に勤める上級ホワイトカラー職にあった人が中心である。まさに「エリートサラリーマン」の郊外住宅地であり,50坪から80坪の敷地に小奇麗な住宅が立ち並ぶ光景は,成熟した住宅地景観を示すと同時に,高度経済成長と軌を一にした企業戦士の成功の証のようでもある。 アンケート対象世帯の子どもは現在30歳代が中心であるが,親世代と同居する既婚子は15世帯(4.3%)しかなく,高齢者比率の増大が大きな問題になっている。ここで人口回復(維持)の方途としては,1)直系親族による住宅の継承すなわち多世代同居と,2)非親族世帯の転入の2つが考えられる。 1)の多世代同居については,親世代の約3割がそれを希望している。多世代同居を可能とするためには,子世代の就業や生活のスタイルがそれに対応したものでなくてはならないが,少なくとも学歴や職業階層,勤務地などの点で子世代は親世代の社会階層を継承している。つまり,この対象世帯のような上層中流家庭では階層の再生産が十全に行われており,子どもの側に住宅地の社会的フィルタリングダウンをもたらす要因はない。しかしながら同居率は必ずしも高くなく,むしろ近居を指向する傾向が見られる。その理由のひとつは,それぞれの世代に世代間の摩擦を忌避する個人主義的な傾向があるためであるが,さらに,共働率が高い子世代にとっては専業主婦の存在を前提に計画された住宅地の設計思想がニーズを反映していないものになっていることもある。また,この住宅地の一部には,都市計画の用途地区や風致地区指定に加えて,良好な住環境を維持するために住民発意の建築協定が締結されており,そのため完全分離型の二世帯住宅を建てるのが事実上困難になっている点も見過ごすことができない。 一方,2)の非親族世帯の転入,すなわち資産売却の上での転出については,親世代の5割が「老人ホームなどへの入居」を,3割が「街中のマンションなどへの転居」を,積極的か消極的かは別として指向(覚悟)している。この点で現在の住宅地の資産価値を維持することはそのまま将来の生活の安定につながることになり,また,魅力的な住宅地環境に惹かれた新たな入居者を獲得することを通じて住宅地の更新は可能になる。1997年から1999年にかけて3年越しで議論された建築協定の更新に際して,厳しい土地利用規制のもとで資産価値の維持を図る意見と,規制を緩めて大型住宅の導入を容易にする意見の対立があったのも,こうした今後の住まい方の意向を反映したものであった。このように資産の処分に関してはきわめて有利な状況にあり,家の継承を前提にした住宅地の更新に依存しなくてもよい恵まれた事例であるが,当人たちにとっては,住み慣れた場所を離れる寂寥感は隠せない。とくに全国各地に散らばる出身地を後にして,自らの人生を賭して築き上げた第二の故郷を失う喪失感は,「子どもが望まなければこの場所を去るのも仕方ないが,できれば思い出があるこの家を子どもに継いでほしい」という発言に込められている。
  • 小原 丈明
    p. 162
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    _I_ はじめに 都市再開発は学際的な研究テーマであり,建築や土木といった都市工学的,都市計画学的観点からだけでなく,経済学や政治学など社会科学の立場からも多くの研究がなされてきた.地理学においても都市再開発は関心の高いテーマであった.各分野の既往研究を横断的に整理する必要があるが,それらの量は膨大であり,かつ観点やアプローチが多様であるため,そのような整理が十分には行われてこなかったのが現状である.また,地理学における都市再開発の既往研究に関しても,体系的な整理がなされてはいない.そこで本稿では,既往研究を通じて戦後の日本における都市再開発の展開とその背景を概観するとともに,地理学における都市再開発の研究動向を整理することを目的とする._II_ 戦後の都市再開発の展開とその背景 第2次大戦後の日本における都市再開発は,様々な出来事や法制度の影響を受ける形で展開されてきた.都市再開発の潮流や背景などから,都市再開発の動向を,1)第2次大戦後_から_1960年代,2)市街地再開発事業による都市再開発,3)都市再開発の新たな潮流,4)バブル経済とその崩壊,5)中心市街地活性化と「都市再生」の5つに区分できよう. 戦後における都市再開発の展開を考察した結果,幾つかの特徴が明らかとなった.第1に,都市再開発が重点的に実施された地域が変化してきた点であり,第2に,欧米における都市再開発の展開と類似してきた点である.しかし,再開発の中身や理念には差異もみられる.矢作(2002)は,都市再生が共通の政策課題である日本とヨーロッパ諸国とでは,その理念や手法において大きな差異があることを指摘した.そして第3に,経済的・政治的論理が優先されてきた点である.その結果,再開発が必要な場所ではなく,実施可能な場所で都市再開発が展開されてきた._III_ 地理学における都市再開発の研究 阿部(2001:227_-_228)は地理学における「都市再開発研究」が少ない点を指摘したが,筆者も同様に考える.しかし,それは再開発そのものに焦点をあてた研究が少ないという意味であり,再開発に関する研究が不足するということではない.地理学における都市再開発の研究を整理すると,空間的変化に着目した研究と展開や実施プロセスに焦点をあてた研究とに大別できる.さらに前者は,再開発による空間的変化に関する研究と,都市化など都市構造変化との関連で論じられた研究とに分けられる.後者に関しては,近年,アクターに着目し,政治的コンテクストから再開発を分析した研究がみられる._IV_ 今後の課題 地理学における既往研究の体系的な整理を踏まえ,それらの研究を「都市再開発研究」の枠組みの中で位置づける必要がある.文 献阿部恵伯 2001.都市再開発による地域経済循環!)所沢市を事例にして.小金澤孝昭・笹川耕太郎・青野壽彦ほか編『地域研究・地域学習の視点』226_-_246.大明堂.矢作 弘 2002.グランドデザインなき「都市再生」.都市問題93(3):3_-_15.
  • 土地被覆図・土地利用図における分類基準の調査
    高野 誠二, 小花和 宏之, 織田 竜也, 鬼頭 美和子, 長井 正彦, 小口 高, 柴崎 亮介
    p. 163
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに 大規模な自然災害や食料安定供給といったグローバルな問題に対応するためには,全球スケールの観測データを用いた学際的な検討が必要である.世界の様々な研究機関には膨大な地球観測データが蓄積されているが,データの共有や相互理解は十分には行われていない.研究分野のディシプリンや対象とする空間スケールの違いなどによって,膨大なデータが不均質な状態で細分化されているのが現状である. 地球観測データをより効率的かつ効果的に利用するためには,各分野におけるデータやフレームを可能な限り接合していくことが望ましい.本研究ではその一環として,「オントロジー(Ontology)」を用いた研究を提案する.2.オントロジーとは 「オントロジー」とは元来,哲学の分野における「存在論」を意味する用語である.しかしながら近年,工学の分野を中心に「概念の設計図」といった意味で使用されるようになった. 物の存在は概念化のあり方に深く関わる.同じ対象であっても視点が異なれば別の物として描かれうるし,異なる対象が同一の概念で表現されることもある.例えば「水」はときに「河川」であり,また「貯水池」である.あるいは「本屋」や「レストラン」は異なる建築物だが,「店舗」と統一して表現されることもある.つまり「オントロジー」は,様々な情報をどのような観点から概念化したのかを説明する.3.諸外国の土地被覆図の収集(データベースの作成) 本研究では,オントロジーの適用対象として土地被覆図や土地利用図を取り上げ,異なる基準を用いた分類体系を接合する方法を考察する.具体的には,土地利用・土地被覆・地形分類・植生に関する各国の資料を収集し,調査目的や対象地域の範囲,調査年代や背景などを考慮に入れつつ,分類基準の異同をオントロジー的に検討する.その第一段階として,英語圏を中心とした諸外国における資料を入手し,データベース化を行った.4.土地被覆図の比較(オントロジーの導入) オントロジーをWeb上で表現する言語であるOWL (Web Ontology Language)を用いて,データの視覚化を試みた.その結果,各国における分類基準の異同が明確になり,単純に分類定義の文面を比較するだけでは解釈し得ないような,技術的・文化的・歴史的背景と分類定義との関連の有無に関する知見が得られた. 今後,多くの研究者が利用できるような情報基盤を構築するために,調査対象を広げてデータの融合を行う予定である.
  • 福島 義和
    p. 164
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    1.グローバリゼーションが進むなか、世界の地域をいかに魅力的に教えるか2.マルチスケールの分析3.3年間の「総合科目」の実践4.クリチバ市(ブラジル)の実験
  • 西原 純
    p. 165
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
      いわゆる「平成の大合併」によって、1999年3月31日に3,232あった自治体数が、2006年3月31日に1,821に減少しようとしている。今回の大合併は、明治の大合併、昭和の大合併に次ぐ3度目の自治体再編の国家政策であり、地方自治のあり方や住民の日常生活に極めて大きな影響を与えている。 平成の大合併に関する研究は、さまざまな分野で盛んに行われ枚挙に暇がない。地理学の分野でも研究が盛んに行われ、最近の学会ではシンポジウムも多く開催されていている。 従来の合併でも役所の位置は大きな問題で、時には合併を頓挫させる要因でもあった。また昭和の大合併を中心地システムの観点から分析した堤正信(1975)は、多くの旧役場集落が衰退したことを指摘している。特に、わが国では住民生活と自治体行政との関わりが強いため、役所の位置や役所の空間的組織のあり方が住民生活に大きな影響を及ぼしている。その観点から平成の大合併の大きな特徴の一つとして、新自治体の空間的組織形態に、本庁方式(ここでは本庁・支所方式を呼ぶ)、総合支所方式、分庁方式という3方式があることが指摘できる。 本報告では、1999年4月1日から2006年3月31日までに誕生した(する)562の自治体(複数回合併した自治体も1と数えた)を対象として、特に「庁舎の方式」に着目して、平成の大合併の全国的な実情と、今後の行政課題を指摘することを目的とする。庁舎の方式について、各自治体で発表している組織表を元に、図1「庁舎の方式の分類基準」に基づいて分類した。ただし総合支所については、支所の権限を調査しなければならないが、本発表では上記の分類基準によっているため不確かな部分がある。 本庁支所方式とは、ほとんど全ての市長部局を1カ所(本庁)に集約し、支所は窓口業務のみとする方式である。業務が効率的で合併のメリットが大きい反面、中心と周辺の格差が生じやすい。総合支所方式とは、旧来の庁舎に従前とほとんど同じ機能を残し、管理部門のみ本庁におく方式である。この方式では、住民側からするとほとんど変化がないが、管理が二重になる点や、職員の削減が進まないなどの問題がある。一方、分庁方式とは、市長部局を複数の庁舎に分散して配置する方式である。この方式では、連絡・打ち合わせの点で業務がやりづらいが、その反面、従来の庁舎を活用できることと、地域的バランスが急には崩れないという長所もある。 対象とした自治体556のうち、不明の自治体43を除くと、本庁支所方式が163(31.8_%_)、総合支所方式が217(42.3_%_)、分庁方式が133(25.9_%_)を占めている。 「庁舎の方式」を新設合併か編入合併か、面積の大小、構成旧市町村数や地域タイプから検討した。その結果、新設合併(414)では相対的に分庁方式(128)が、編入合併(99)では本庁支所方式(51)が多かった。また、構成市町村数が少なく面積の小規模で自治体では本庁支所方式と分庁方式が、構成市町村数が多く面積の大規模な自治体では総合支所方式が、町村連合型で小規模な合併では分庁方式が多いことが明らかとなった。 庁舎の方式に最も強く関係している要因を、カイ2乗系統計量のCramerユs V係数から考えると、構成市町村の地域タイプ(0.346)が最も強く、合併の形態(0.264)、面積階級(0.256)、の順序となった。 平成の大合併によって、面積が1.000km2を超えるような超広域自治体も誕生した。もちろん人口分布の状態によるが、基礎的な自治体としての機能を果たすには困難が推察される。庁舎の方式に関連して、行政サービスのあり方と住民の庁舎利用、IT導入・業務の遂行(情報伝達・情報共有・合意形成)、合併後の旧役場集落の栄枯衰退や住民の生活行動の変化など、さまざまな克服すべき課題が存在している。
  • 遠藤 尚
    p. 166
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに 人口密度が高く,土地なし住民が多く存在するジャワ農村では,多就業が一般的であり,都市との移動労働が住民の世帯経営,ひいては農村の階層構造に大きな影響を持つことが,従来の研究において指摘されてきた(加納 1993; 水野 1993a など)。また,水野(1993b)は,西ジャワ農村住民の移動性向の高さの要因として,スンダ人のフレキシブルな夫婦間の居住地決定方法やグンバラ1)などの慣習を示唆している。発表者による2001年以降の研究でも,調査世帯の世帯主の約2割が都市において就業していること,そして,これらの世帯主,特に工場労働や事務職に従事する世帯主は,30代以下の若い世代に多いことが明らかとなっている。しかし,水野の調査以降,高度経済成長を経た現在,このような若い世代の都市就業が,従来のライフコースに沿った一時的なものなのか,それとも,経済成長による人口流出の一端であるのか検討する必要がある。そこで,本報告では,ボゴール県スカジャディ村において2005年8_-_9月に行った世帯主の都市就業経験に関する調査結果と世帯の就業構成に関するこれまでの分析結果を比較することから,上記の課題について明らかにすることを目的とする。
    2.対象地域の概要 スカジャディ村は,ジャカルタの南60km,ボゴールの南西10km,サラック山北側斜面の標高470-900mに位置し,ボゴールからミニバスで約1時間の道のりにある。村の総面積3.0km2の内,水田は1.6km2,畑地は1.1km2である。調査対象世帯(RW4,RT3,4の全85世帯)では,副業を含め世帯主の40%が農業関連業に就業している。しかし,対象世帯の内,水田を経営しているのは19世帯に過ぎず,比較的農業収入の割合が高い水田経営世帯についてさえ,農業収入は50%を下回っており,対象地域における世帯経営において非農業が占める割合は高いといえる。
    3.スカジャディ村における移動労働 2005年の調査結果から,現在村,およびその周辺で就業している世帯主の32%は都市での就業経験を持つことが明らかとなった。これらの都市就業経験者と現在の都市就業者を合わせると世帯主の49.4%(39/79)が都市との移動労働を経験している。また,40代以上はもちろん,高度経済成長以降に工場労働者として就業した30代の世帯主にも既に帰村している者がいる。このように,西ジャワ農村の場合,都市との移動労働は,農村から都市への一方的なものではなく,都市からの帰還を含む双方向的な形で,高度経済成長以前から現在まで継続していることが推察される。また,都市就業の離職理由としては,結婚が26%を占め,その他の家庭内の事情を合わせると47%に上り,ライフコースに沿った移動労働を裏付けている。ただし,都市就業経験者数,現在の都市就業者数共に,高度経済成長期に就業した30代が最も多く,高度経済成長期に移動労働が増大したことが推察される。また,現在の工場労働者,工場労働経験者共に,30代以下の若い世代がほとんどを占めており,経済成長以降,農村出身者の都市での就業先として,製造業が拡大したことが分かる。
    本報告では,世帯主の都市就業経験に注目することで,西ジャワ農村における移動労働の高度経済成長期以降の現状に言及したが,今後20代以下の就業者に注目し,経済危機以降の状況を明らかにする必要があるだろう。
    1) 遠隔地で働くために移動し,長期に亘って遠隔地に滞在するが村に帰ることを前提とすること(水野 1993b)。
    加納啓良1993. 中部ジャワ農村経済の構造変容.梅原弘光・水野広祐編『東南アジア農村階層の変動』研究双書No.431 89‐117.アジア経済研究所.
    水野広祐1993a. 西ジャワのプリアンガン高地における農村階層化と稲作経営-バンドゥン県チルルク村の事例を中心として-.梅原弘光・水野広祐編『東南アジア農村階層の変動』研究双書No.431 119-163.アジア経済研究所.
    水野広祐1993b.西ジャワ農村における労働力移動と農村諸階層-プリアンガン高地の農村工業村の事例-.アジア研究,39(3):65‐110.
  • 高村 弘毅, ザイドン パイズラ
    p. 167
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
    タクリマカン沙漠南縁地域の降水量が少ないため,表層土壌は一年中乾燥している状態である。しかし,気温の日較差が大きいため,季節によっては空気中のわずかの水蒸気が夜間に結露し土壌に浸透する現象を現場検証で確認している(晴天日に40cm2のビニル上に約10mlぐらいの水が溜まっていた)。この水は極少でありながら,沙漠植物の死活を決める最も重要な因子として,水不足が激しい季節(春季)には決定的な役割を果たしている。土壌水分の移動特徴・分布などの把握は,作物の栽培と沙漠の緑化,気候と生態系の維持や変動過程の解明,塩類集積のメカニズムの解明などにおいて重要な意義を持っている。
    本報告では,極乾燥という気候条件にあるチラ(Qira)オアシスにおける地温変化に伴う土壌水分の日変化と年変化について検討する。
    2.対象地域の概要
    タクリマカン沙漠南縁のチラオアシスで観測を実施した。ここは,海洋からの湿気流の侵入は難しいため,温暖帯極乾燥沙漠気候に属しており,典型的な極乾燥地である。
    数多くの研究(吉野1996,他)では,タクリマカン沙漠地域は大幅な水分不足(年水不足量は750mm以上)となっていると指摘されている。また,TAKAMURA and MUHTAR(1997)は, 20年間(1959_から_1979)の気象データを用い算出を行い,ホータン(Hotan)オアシスの年間水不足量は770.8mmで,その東部のチラ・ケリヤ(Keriya)・ニヤ(Niya)オアシスの年間水不足量もホータンとほぼ同じ量であるという結果を示している。これらの結果から,タクリマカン沙漠南縁地域の各オアシスは,タリム盆地全体の中で水不足がもっとも激しい地域であると考えられる。
    3.研究方法
    土壌水分は,土壌水分自動計測器(サンケイ理科,SK-5608D)を用いて,15,30,50,70,100,150cm深さにそれぞれセンサーを設置し, 2時間間隔で約一年間(2002.9_から_2003.8),地温は米国オンセットコンピュータ社製Onset HOBO H8 4-Channelにより同じ条件下で観測した。
     土壌の透水係数は大起理化製DIK_-_4000を用い計測した。土壌の保水性は加圧板法(多容量土壌pF測定器,大起理化,D型,DIK-3440)で計測した。
    4.結果および考察
     観測データから見ると,土壌水分は冬季に増加,夏季に減少する傾向を現している。日変化から見ても,地表近くで日中減少,夜間増加の傾向にある。春季と秋季の土壌水分の変動幅が大きい。30cm深度の透水係数が15cmと50cmの層位より大きく,156.8cm/dで,土壌水分も上下の層位より多いことが判明できた。水分特性曲線ではpF2.0_から_2.5の間で急速に脱水する現象があり,これは、非毛細管間隙の多い沙漠土壌の特徴と一致する。
     今回,凍結のセンサーへの影響を避けるために0_から_10cm層位に水分計のセンサーを設置しなかった。そして70cm以下に設置したセンサーも異常を示したため,データが得られなかった。
    5.おわりに
     地温と水分に顕著な年間変化と日変化が見られ,地温が高くなると水分が減少し,地温が低くなると水分が増加することを確認できた。また,水分の変動幅は夏と冬は小さく,春と秋は大きいことがわかった。冬季に土壌水分が比較的多く,これは地下水位の上昇と蒸発散量の減少,凍結によるものと思われた。
     今後,データが欠けている土壌層の水分を再観測し,温度変化に左右される土壌水分の収支解析を行うことは水不足が激しいこの地域の水管理や土壌改良においても重要であろう。
  • 小荒井 衛, 佐藤 浩, 宇根 寛, 長谷川 裕之, 岩橋 純子, 神谷 泉
    p. 168
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに 昨年10月8日、パキスタンの首都イスラマバードの北北東約100km、深さ26kmを震源とするマグニチュード7.6の地震が発生し、パキスタン、インドあわせて5万人を超える死者が出た。 今回の地震については、様々な高分解能衛星画像が被災地を撮影しており、Web上でも広範囲に公開されている。このような状況は今回の地震災害が初めてであり、演者らはWeb上で公開されている高分解能衛星画像も含めて各種衛星画像を活用して、被害状況の把握とその地形学的な視点からの特性把握を試みた。また、各衛星画像を災害判読特性の視点から比較した。2.判読に使用した衛星画像・SPOT5(分解能2.5m:ハ゜ンクロ) 地震後のステレオ画像(2005年10月20日、10月27日) 地震前の単画像(2004年3月2日)・IKONOS(分解能1m:ハ゜ンシャーフ゜ン) スペースイメージング社のHPでムザファラバード周辺の画像(地震前:2002年9月22日地震後:2005年10月9日)を公開。http://www.spaceimaging.com/gallery/AsiaEQViewer.htm・Quick Bird(分解能0.6m) 日立ソフトのHPでバラコット周辺の画像(地震前・地震後)を公開。http://hitachisoft.jp/News/News350.html・GoogleEarthで被災地域の画像を広域にわたって公開 (画像はQuick Bird)3.衛星画像から把握した地震被害の状況とその特徴3_-_1 斜面崩壊 SPOT5のステレオ画像を実体視判読し、地震前の単画像と比較することにより、地震により発生した斜面崩壊の分布を網羅的に把握した。斜面崩壊の分布を見ると、断層に沿って断層の北東側に集中していることが判る(図1)。ここは逆断層の上盤側に位置しており、変動の大きい隆起域で斜面崩壊が発生したことが読み取れる。断層の南西側には、大規模な崩壊は確認出来なかった。なお、図1のAの領域にも斜面崩壊が集中した地域が確認出来るが、その原因については特定出来ていない。 ムザファラバード断層沿いに39の崩壊が、タンダ断層沿いに25の崩壊が確認出来た。特に、タンダ断層とムザファラバード断層を繋ぐ位置にあたるムザファラバード北部で大規模な斜面崩壊が集中している。ENVISATのSAR画像の画像マッチングで検出した地震による地殻変動量は、ムザファラバード北部地域で最大4mであったが(国土地理院:2005)、その領域に大規模な斜面崩壊が集中している。 一方IKONOS単画像の判読では、画像の範囲内で約100の斜面崩壊が確認できた。SPOT5ステレオ画像では同範囲で48の斜面崩壊が確認出来たのみである。斜面崩壊の抽出には、立体画像よりも、より高分解能のIKONOS画像の方が有用であったが、IKONOS画像でのみ判読出来た斜面崩壊は、表層の薄い崩壊や切土部での小規模な崩壊などである。SPOT5で確認出来た崩壊分布の特徴は、IKONOS画像による場合と同様である。SPOT5はステレオ画像なので、実体視した結果をオルソ化したSPOT5画像に移写することにより、正確な崩壊地形のポリゴン情報を取得する事ができた。3_-_2 建物被害・地盤の液状化 SPOT5画像ではステレオ画像ではあるが、分解能の関係で建物の倒壊状況までは判読困難である。IKONOS画像の方は、単画像であるために実体視が出来ず、市街地の建物の破壊状況を判読して網羅的にマッピングすることは困難である。しかし状況によっては建物の被害状況を判読できる場面もある。また、液状化を起こした可能性のある場所も抽出できた(図2)。QuickBird画像は、分解能が良い分建物の倒壊状況などはIKONOS画像よりも判読しやすい。これは、バラコットの街自体の建物倒壊率が高く、壊滅的な被害を受けていることが、建物倒壊の判読を容易にしているのかもしれない。3_-_3 その他・断層変位地形など IKONOS単画像では、橋梁の破壊、道路の不通・損壊(土砂崩落による)、河川の濁り、亀裂などが判読された。地震断層の存在や河岸段丘の変位は、はっきりしたものは確認できなかったが、ムザファラバード北部で河川に斜行する崖に沿って建物被害が集中している地域があり(図3)、地表地震断層の可能性があり得る。4.今後の課題 衛星画像を使って、今回の地震で発生した斜面崩壊の分布特性について、活断層の位置や地殻変動量と関連が深いことが明らかに出来た。今後は、DEM等と組み合わせた解析を行い、地形的な特徴について明らかにしていきたい。また演者の内の1人が1月に現地視察に入るので、その結果も含めて報告したい。なお、建物被害については光学画像では十分抽出出来なかったが、地震前後でSAR画像の散乱強度が変化する可能性が高いので、これを使って建物倒壊集中域の抽出を試みたい。
  • 福島 あずさ, 高橋 日出男
    p. 169
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    ?.はじめに
     インド半島北東部では、モンスーン開始前のプレモンスーン季にまとまった降水が観測されている(Sadhukhan et al., 2000ほか)。同時期の降水現象はヒマラヤ山脈の南麓でもみられ、前回の報告(2005年度秋季大会)ではネパールの日降水量データから、東南部のタライ平原を中心に5月ごろから降水が明瞭に増加することを明らかにした。そしてこの降水現象が、上層の亜熱帯ジェット気流がまだチベット高原南部に位置するモンスーンの開始前に見られること、500hPa面での寒気と関係があることを示した。 本研究では、この寒気流入のプロセスとネパール東南部での降水の関係を明らかにすることを目的とし、1990?95年の5?6月の事例からネパールにおけるプレモンスーン季の降水と循環場について解析した。
    ?.資料
     ネパール科学技術省水文気象局による1976?2002年の94地点の半旬平均降水量データから、Ward法によるクラスター分析によって抽出されたネパール東南部の23地点(図1の地域6)の1990?95年の日降水量データを用いた。循環場の解析には気象庁客観解析資料(1.85ーグリッド)の1990?1995年分を用いた。
    ?.上層トラフにともなう寒気の流入と対流不安定
     プレモンスーン季は、モンスーン季と異なり亜熱帯ジェット気流がヒマラヤの南側に解析される。ジェットの位置はネパールのプレモンスーン季の降水に大きく影響すると考えられる。ジェットに沿ってカスピ海周辺から東進してくる300hPa面のトラフがチベット高原を通過する際に、500hPa面では寒気がトラフの接近・通過とともに出現する。この寒気がヒマラヤ南山麓に沿って南東方向に伸張するときに、ネパール東南部で降水がみられた(図2)。
     トラフは各年ともモンスーン季が始まるまでに数回ネパール上空を通過し、ネパール東南部で観測される断続的な降水と対応している。ジェット気流がヒマラヤの北へ移ると、トラフはネパール付近でほとんど解析されなくなる。
     1990?95年の5?6月にネパール上空で-5度以下の寒気が112日間解析された。92年の33日に対して90年は8日と、年によってばらつきがみられた。90?94年はこれらの日に降水がみられるが、95年は無降水日になっている。95年は5月初旬にトラフがネパールの西のインド北西部で発達したためとみられる。トラフがネパールまで達しないのは、95年が他の年よりも早い、5月中旬からモンスーンの影響を受けていることに関係すると考えられる。
     また、相当温位の鉛直分布によれば、ネパール付近では5月上旬から、対流不安定な状態が続いており、降水の発生しやすい条件にある。850hPa面の混合比は増加傾向にあり、地表付近の水蒸気量が増えていることが推察される。
     ネパールにおけるプレモンスーン季の降水は、モンスーンオンセットに向けて下層大気が湿潤・高温になっているところに、中緯度のトラフの通過とともに低温の空気が流入し、不安定性が大きくなることによってもたらされていると考えられる。
  • 近未来の環境資源マネージメントに向けて
    元木 靖, 田村 俊和
    p. 170
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    関東平野は,土地自然の構造としては,鮮新世ころ3つのプレートの接触面に発生して現在も発達中の大きな「盆地」であり,その構造を発達させている沈降運動の一つの中心は,現在,埼玉,群馬,栃木,茨城,千葉各県の県境が接するあたりに位置する.この地域に展開される自然環境も,それを利用・開発してきた人間活動も,この盆地の運動・構造と直接・間接に絡みあっている.本シンポジウムでは,この関東盆地中央部の自然環境(水・土)と人間活動の全体像を,東京とのかかわりも視野に入れつつとらえ直し,近未来における環境資源のより賢明な活用のしかたについて模索したい.関東盆地中央部の水・土-人間関係は,江戸開府以来400年の歴史の中で,江戸・東京への人口集中にのみ呼応した,いささか一方的な資源配分という性格をつよく帯び,かつそれぞれの時代の巨大技術に支援され展開してきた.その結果, 地域のあり方はある意味で合理的になったかのようであるが,自然と人間生活との間には大きな矛盾が増幅されてきている。災害対策や流域の水循環,さらに土地利用問題等いずれの面から見ても,いま大きな転機を迎えているように思われる.これまでの地域整備で生じた矛盾を補正し,地球環境の変動が指摘される状況下での新しい資源環境マネージメントにかかわる提案を試みていくための一里塚として,本シンポジウムを企画した.
  • 山神 達也
    p. 171
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    1. はじめに都市人口密度関数は,都心からの距離を唯一の変数として,都市の人口密度分布を把握しようとするものである.都市人口密度関数に関する研究は,Clark(1951)を出発点としてさまざまに展開してきたが,他のモデルに比べて,クラークモデルとニューリングモデル(Newling 1969)が,安定して高い適合度を示すことが知られている.このニューリングモデルは,クラークモデルに負の2次項を追加することで,都心部における人口密度の落ち込みを表現しようとしたものであるが,既存の研究を見ると,2次項のパラメータが正になる結果が得られることがある.そこで,本報告では,1965年から1995年までの東京大都市圏と大阪大都市圏を対象として,2次項が正になる場合も含めて,ニューリングモデルによってどのような人口密度分布曲線が描かれるのかを検討することを目的とする.その際,山神(2001)と同様に,展開法(Casetti 1972)を利用して,各パラメータの方向的な変動を検討する.これにより,都心からの方向により異なる人口密度分布とニューリングモデルのパラメータとの関係を,詳細に検討することが可能となるからである.2. 分析方法展開法は,3段階の手続きを経る分析手法である.ニューリングモデルを対数変換したものを基本モデルとする.都心から距離rの地点の人口密度Dr は以下の式で示すことができる.   lnDr=lnD0+br_-_cr2  (1)次に,都市における人口密度分布は都心からの方向によっても異なることを考慮し,(1)式の各パラメータを方角で展開する.   b=b0+b1sinθ+b2cosθ  (2)   c=c0+c1sinθ+c2cosθ   (3)ここでθは,北を0度として時計回りに測った方位角を示す.最後に,(2)式と(3)式を(1)式に代入すると,   lnDr=lnD0+b0r+b1rsinθ+b2rcosθ_-_c0r2_-_c1r2sinθ_-_c2r2cosθ   (4)という最終モデルが得られる.パラメータの推定は通常の回帰分析を行い,10%水準で有意なものを取り上げる.また,(4)式で有意となったパラメータを(2)・(3)式にフィードバックして図化することで,都心からの方向の違いにより各パラメータがどのように変動するのかを考察することが可能となる.また,都市圏の設定は,山田・徳岡(1983)による標準都市雇用圏を採用し,分析単位は市区町村とした.3. 適用結果表は(4)式を適用した結果を示したものである.R2値は0.7以上の高い値を示し,(4)式で示されるモデルの説明力は高いといえる.また,図は,東京大都市圏における各パラメータの方向上の変動をグラフ化したものである.図でパラメータcを見ると,1975年まではどの方向でも0以下の値を示すが,1985年以降は0以上の値を示す範囲が現れている.式からわかるように,パラメータcが0以上の範囲は2次項が負となる範囲であるが,東京大都市圏の場合,2次項が負の結果が得られるのは東京から横浜に向けての方向である.ただし,パラメータbとパラメータcから得られる曲線の軸の位置はマイナスの値となっており,ニューリングモデルで期待される都心部での人口密度の落ち込みを表現するものとはなっていない.このように,東京大都市圏では,2次項が負となるのは人口密度の距離的変化率(密度勾配)の小さいときである.一方,大阪大都市圏では(図は省略),2次項が負となるのは密度勾配の大きいときである.したがって,ニューリングが期待したような2次項が負となる結果が得られた場合でも,人口の分散が進んでいるパターンとそうではないパターンという,異なった人口密度曲線が描かれることが示された.一方,2次項が正となるのは,両大都市圏とも共通して,密度勾配が大きく,かつ低密な郊外が広がる範囲である.以上のように,都心からの方向上の違いを考慮したニューリングモデルを大都市圏スケールで適用することで,Newling(1969)の想定の範囲外となるさまざまな人口密度曲線を描き出すことが可能となった.
  • 白馬大雪渓落石事故の教訓
    苅谷 愛彦, 佐藤 剛, 目代 邦康, 小森 次郎, 石井 正樹, 西井 稜子, 宮澤 洋介, 津村 紀子
    p. 172
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    ■2005年8月11日7時30分頃,飛騨山脈・白馬大雪渓で落石が発生し,2名が死傷した.近年,同地では大量の登山者・観光客を受け入れているが,山岳の自然災害に関する知識の普及は不十分である.自己責任行動が原則とされる登山にあって,大雪渓をより安全に遡行するにはどうしたらよいのか.本発表では,この事故の概要を述べ,地形研究者が取り組むべき課題を提示する.■落石は大雪渓最上部・杓子岳北面の岩壁(珪長岩)で起きた.崩壊発生域は大雪渓の谷底から200-250 m上位にあり,ここから崩落した岩塊は長さ約150 mの雪崩道状の岩樋を通過・移動した.移動物質は谷底の残雪上に堆積した.推定崩壊量は0.8万立方メートル以上である.崩壊物質の一部は残雪上に設けられた夏季登山道に達し,登山者を巻きこんだ.崩壊の主誘因は判明していないが,事故前日の降雨(崩壊地点の東方約4 kmで日雨量46 mm;山麓の観測資料による崩壊発生時の推定気温は約11度)が関わった可能性がある.また岩壁には節理密度の高・低部分が交互に現れていることから,飛騨山脈・穂高岳の圏谷壁崩壊の説明に使われた岩壁後退モデル!)!) 高密部分が選択的に後退し,節理密度差を反映した凹凸が岩壁に生じて不安定化する!)!) が本事例に適用できる可能性がある.■今回,崩壊物質が登山道に到達しただけでなく,長径6 mの巨礫が雪渓上を約1 km滑走して登山道を横断したことは特筆すべきである.この滑走による被害はなかったが,最盛期には1日約1000人が通過する大雪渓の登山者の列に巨礫が突っ込めば,1980年富士山吉田大沢事故(死傷41名)並みの災害に至る可能性がある.■大雪渓では,落石以外にも地形変化を主とする土砂災害が起こる潜在的危険性がある.大雪渓最上部の圏谷底に存在する堆石は1995年7月の集中豪雨で渓岸侵食を受け,下流側の雪渓に約2.5万立方メートルの土石流堆積物をもたらした.同規模の土砂流出は1952・1959年にも生じ,現存する顕著な堆積地形を形成した.また支谷最上部の随所に裸岩壁が存在し,そこから供給された岩屑が大雪渓に達することもある.■事故後,白馬村は「自然の中での予期できない災害.白馬岳はもともと安全な山.こんなことはめったに起こることではない」(福島村長;8月12日 中日新聞岳人ニュース)との談話を発表した.また事故直後に閉鎖した登山道を14日に再開した.これらの背景には観光収入の減少による地元経済への影響を最小限にとどめたいとの意図があったのかもしれない.しかし大雪渓上部の岩壁で日常的に落石が発生していることは一般登山書にも記されており,地元山岳関係者も熟知している.また事故に遭遇したベテラン登山者は,「前日に通過した際,杓子岳から落石の音をひっきりなしに聞いた」と演者らに証言した.証言内容は未検証であるが,真であれば選択的な岩壁後退が前日に急速に進んでいたことも推測される.落石の予見可能性や大雪渓の安全性については,十分議論すべきである.■登山中に土砂災害に遭遇した場合,受動安全策だけで難を逃れるのは難しい.登山者自ら危険を予見して回避する能動安全行動が必要である.それには登山者自身の事前学習が不可欠であるが,大雪渓の土砂災害に関して,登山書や自治体ウェブサイトが提供する情報は具体的ではなく,現地説明板なども皆無に等しい.■持続可能な山岳余暇の今後に向け,地形学が貢献できることは少なくない.大雪渓の場合,落石や土砂流出を詳述した上記既往文献のほか,地域地質図や地すべり地形分布図など地理学関係の研究者・実務者が作成に関与した文献や主題図は多い.これらを再検討・編集のうえ,新データも加えて災害危険度予測図を提示することは可能であろう.その場合,他地域で試作された地形災害危険度地図や基礎研究が参考になる.ただし既往の文献・資料は一般人の利用を想定してはいない.研究者の発言の重みに留意しつつ,一般むけの貢献に際しては平易な語や図による情報伝達を強く意識すべきである.また登山や観光の奨励は登山者・観光客を自然の驚異に近づけることなので,受入れ側も自然災害を常に自覚すべきであるとされる.受入れ側関係者の教育を支援する環境創成・政策提言も必要であろう.
  • 田村 俊和, 石田 武, 早乙女 尊宣, 小暮 岳実
    p. 173
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
     シンポジウム「関東盆地中央部をめぐる水・土_-_人間関係の展望_-_近未来の環境資源マネージメントに向けて_-_」のイントロダクションとして,関東構造盆地・造盆地運動を大観し,完新世(後期)の河川流路の自然的・人工的変遷や,開発・災害史等を示す,1枚の地図を作成する.
  • 飯島 慈裕, 石川 守, 門田 勤, 大畑 哲夫
    p. 174
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    I.はじめにモンゴル北部の山岳地域は,北から南にかけて森林から草原へと移り変わる植生の漸移帯であると同時に,北方林の南限地域となっている.また,その山岳地域の南向き斜面に草原,北向き斜面に森林が差別的に分布している.この異なる植物分布に対応して,森林斜面には地下に永久凍土が分布する一方,草原斜面には永久凍土が認められず,その結果,暖候期の土壌表層の土壌水分量に差が現われるなど,水文気候環境も大きく異なっている.本研究では,この特徴的な植生景観を示す地域での水循環過程と,水文気候環境が植物の生育に与える影響を明らかにするため,北向き森林斜面の優占種であるカラマツ(Larix sibirica Ledeb)を対象に,Granier法による樹液流観測とデンドロメーターによる幹生長の継続観測を行ない,樹木からの蒸散量と幹生長との季節変化と、その対応関係を検討した.II.研究地域と観測方法 本研究の観測地点は,モンゴル国の首都ウランバートルの東北東約50kmに位置する,Tuul川上流のShijir川流域の北向き斜面下部のカラマツ林(標高1,640m)である.樹冠に達するカラマツ2個体に対して,Granier法による樹液流測定を2004年7月から開始した.Granier法は熱トレーサー法の一種で,樹木の通水部分(辺材)にヒーター付きの温度センサーと参照用の温度センサーを差し込み,その温度差との関係式から樹液流速を求める測定手法である.樹液流速と辺材の面積との積から樹液流量が求められ,日合計量は測定木からの日蒸散量に相当する.同時に,樹液流を測定している2個体に対し,デンドロメータ(D8;GP社製)による幹生長量の測定を行なった.また,観測地点では,自動気象観測装置による気温・湿度・風向風速・放射収支・地温・土壌水分の継続観測が行なわれている.III.結果と考察図1に2004年、2005年の降水量・土壌水分量とカラマツの樹液流量(蒸散量)と幹生長量の測定結果を示す.5月_から_10月の降水量は2004年(203mm)よりも2005年(293mm)の方が多かったにも関わらず、多降水の期間が6,7月に現れた2004年の方が、土壌水分量も多く、7月に40kg/dayを超える大きな蒸散量を示した。2005年はカラマツの展葉前から測定を開始した。5月中旬に表層40cm深までの季節凍土が融解すると,カラマツの展葉が始まり樹液流が増加した.樹液流の開始時期は,40_から_80cm深の地温が0℃以上に上昇し,それに伴う凍土の融解による土壌水分の供給が対応すると考えられる.そして,展葉が完了した6月中旬を境に樹液流速が急増し,この時期から幹生長が進行した.幹生長は日射量が年間の最大となる6月下旬から8月上旬にかけて継続して進行した。紅葉・落葉は9月下旬に進行し,同時に樹液流は急激に停止した.幹生長は10月上旬まで進行した後,それ以降の気温低下に対応して収縮する傾向を示した. 以上から、カラマツの蒸散活動には、凍土融解時期とその後の降水時期が大きく影響し、蒸散活動がピークを示す7月に幹生長が現れると考えられる。
  • デジタル地区マップの作成と効果:GISで散歩、桃井マップ
    藤本 修
    p. 175
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    実践の概要 『地区マップ』というと今までは、模造紙など紙面を利用したものや大きな板を活用したもの等があった。しかし、情報の更新や写真等の貼り付けなどに限界があり、継続的な地域教材としては活用が難しい面があった。 そこで、Webページ形式を用いた『デジタル地区マップ』の作成を前任校で行った。これにより、たくさんの画像などやカテゴリーなど情報量を増やすことができたことと児童のパソコンに対しての取組の良さが重なり、児童の地区に対する興味関心を高めることにつながっていった。 今年度、この環境マップに地図の学習がプラスすることができるのでGISを活用することを試みた。具体的な内容は、次の2点とした。(1)桃井小の近くの施設や児童の活動の場になっている場所の紹介(図1)(2)県内等で、校外学習の場になっている施設の紹介その際、作成したGIS環境マップを本校webページの1カテゴリーに加えることで保護者等にも閲覧可能とした。 桃井小学校Webページ http://www.momonoi-es.menet.ed.jp/教材の活用例 環境マップは、以下の学年、教科で利用できる。・小学校第2学年 生活科『まちたんけん』・小学校第3学年 社会科『地域めぐり』『市内めぐり』・小学校第5学年 国語・社会科『地域のニュースの発信』・全学年 校外学習事前学習 また、授業の中での活用例として2点あげる。(1)導入での活用・生活科や社会科における地区学習・校外学習事前ガイダンス(2)まとめでの活用・身近な地域のことやニュースにしたことを「GIS環境マップ」上にアップする。研究の成果 以下の2点を考えた。(1)自分の地区をより正確な地図でみることができたので、児童の興味・関心が高まった。また、本校児童の活動写真もあるということでやる気もわいてきたようだ。(2)調べたことがインターネットを通して発表できたことで、充実感が味わえたとともに、地図上にアップできたことで地区に対する愛着も感じられたようである。今後の課題 実践を終えてみての課題を以下にあげる。(1)小学生にとって複雑な操作もあるので、児童向けマニュアルなどがあるとより効果的な使い道がでてくると思われる。(2)Webカテゴリーということで、保護者への地区情報の提供にもなるので、保護者からもアップした方がよい情報を聞き、ツーウェイ化を図っていきたい。(3)今回作成した「GIS環境マップ」は、様々な教科・学年での活用も考えられるのでこれからも情報の更新をしていくなどして充実を図っていきたい。
  • 東京を訪れる中国人観光者を事例として
    劉 慧, 杜 国慶
    p. 176
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.研究の背景と目的近年、中国人の訪日旅行は活発な動きを見せている。1999年秋に中国人の訪日団体観光ビザが解禁された。2001年のWTO加盟を機に、中国において観光が急速に発展している。中国人の訪日観光者数は1999年の37,153人であったものの、2003年には95,991人となり、わずか4年間で約3倍まで増加した。一方、国際都市東京は、文化、政治、ビジネス、娯楽など多種多様な機能を有し、訪日観光の玄関口としても重要な役割を果たしている。JNTOの統計によると、中国人観光者において、東京都訪問率は64.6%と日本では最大であり、第2位は大阪府(43.7%)の約1.5倍である。本研究は、東京23区とその周辺の観光地における観光資源認知について、訪日観光が著しく発展している中国人観光者を事例として考察することを目的とする。2.研究の方法本研究は、東京23区とその周辺日帰り観光圏に存在する観光地における観光資源認知の特性について、訪日観光が急増している中国人観光者を事例として考察する。地理学の視点に拠りながら、アンケート調査に基づいて、東京における中国人観光者の属性、都市機能、国際観光の側面から、観光者の認知を明らかにする。観光者の空間認知を分析するためには、認知地図を用いて考察する方法も存在するが、中国人観光ツアーの日程が限られていることなどを考慮して質問紙に地名を列記して調査を行うことにした。2004年1月から2005年6月までの中国人観光者の旅行を取り扱っている主な旅行社14社の旅行商品471コースを収集した。これらを元に質問紙を作成し、調査を実施した。アンケートでは、122箇所の観光名所と施設を列記して、「行ったことがあるまたはこれから行く」、「行ったことがないが知っている」「全然知らない」の三つの項目から一つ選択する。観光者の属性については、訪問目的、回数、滞在期間、性別、年齢層などについて調べた。アンケートを配布する際は、配布地による偏りに配慮して、中国人観光者が誰でもよく行く場所あるいはよく知っている場所で配布するとともに、団体観光客に対してツアーの最終日に空港に向かう途中のバスの中でアンケートを実施した。そのほか東京において個人観光者(ビジネス観光者、親族訪問観光者など)と団体観光者を対象に150部のアンケート用紙を配布し、114部の有効回答が得られ、有効回答率は76%であった。内訳には、38人が個人観光者であり、76人が団体観光者であった。3.中国人観光ツアーの空間的分析観光者の認知は、その空間での目的や活動内容によって違いが生じると考えられ、観光者の観光資源に対する認知も国によって異なっていると考えられる。本研究では、質問紙の作成にあたって、各旅行会社の旅行商品を収集し、調査対象となる観光資源の選定を行った。2日間から5日間までのツアーでは、全体的には、日数の増加につれて観光対象地の訪問率と数は増加する。ただし、東京都庁、歌舞伎町、銀座商店街、秋葉原電気街などの場所は、訪問日数に関わらず、訪問率が非常に高い。4.観光対象の認知および観光者属性による差異ここでは、中国と日本における東京に関する観光情報についてみる時、都市観光の先行研究に基づいて、「劇場」、「博物館・美術館」、「スポーツ施設」、「興味深い建物」、「遺跡」、「宗教」、「公園・自然」、「遊園地」、「宿泊」、「飲食」、「ショッピング」、「複合地域」の12項目に分類した。観光者の属性による観光資源に対する認知の差異について考察する。アンケート調査では、観光の属性について、訪日ビザの種類、訪日回数、滞在期間、性別、年齢などについて回答してもらった。5.都市機能から見た都市観光資源認知東京の都市機能と観光者認知の関係を考察するため、アンケートでは、都市機能を配慮した上で観光対象を選定した。122ヶ所を都市機能の性質を基に分類すると、劇場・展示場(5)、博物館・美術館(26)、スポーツ施設(1)、興味深い建物(5)、遺跡(1)、宗教(6)、公園・自然(12)、遊園地(6)、宿泊(10)、飲食(10)、ショッピング・市場(31)、複合地域(9)となった。
  • 澤口 宏
    p. 177
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
     加須低地への利根川の流入以降の利根川(とくに利根大堰_-_栗橋間),渡良瀬川,荒川の流路変遷をたどり,その要因を論じる.
  • 近世
    元木 靖
    p. 178
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    利根川東遷後の埼玉低地(とくに池沼)を中心とした水田開発の方式と地域的展開の特徴を江戸・明治・大正・昭和の時間的変遷の中で捉える.
  • 小学校の安全教育におけるGISの活用
    木崎 正美
    p. 179
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    対象とする教育分野 本研究の目的は、小学校の安全教育での地理情報システムの活用について模索することにある。 周知の通り、昨今登下校の安全確保は特に重要視されている。文科省からは、通学路の安全点検の徹底と要注意箇所の周知徹底や危険予測・回避能力を身に付けさせるための安全教育の推進等を挙げ、学校教育における安全対応を急務とし学校現場に求めている。その対応の一つに、児童生徒に対して「通学路安全マップ」の作成などを通して周知することが有効であるとしている。WebGISの活用 そこで、通学路に関わる安全指導において地理情報システム(以下GIS)を用いる授業を設定することにした。対象を6年生とし、学級活動の「登下校の安全」という題材で12月に実施した。 本授業のねらいであるが、危険意識が低い児童の実態があることから「危険体験データから危険箇所や危険内容を具体的に知ることを通して、登下校中における安全意識が高められるようにする。」「登下校中における危険回避の仕方を知ったり、自分なりの回避方法を考えたりできるようにする。」とした。 GISは、ブラウザで開ける「みんなで調べて発表して交流する」群馬県教育用WebGISを使用した。WebGISを利用した理由は次のとおりである。(1)レイヤ機能により教師の意図的な情報提示が可能であること(紙地図版は情報が全部記されてしまい児童の視点が定まりにくい)(2)危険内容別に位置のカラー表示ができ、地図の拡大縮小も瞬時にできること(配布分のカラー地図版を用意すると費用がかかり、拡大縮小は瞬時にできない)(3)より多くの新情報を提示できること(紙地図版は、多くの情報を記すと見づらくなることから情報掲載に限りが生じたり、児童への配布分の修正や新情報の追加が容易ではなかったりする)。 提示資料は、児童の危険体験(車両との危険体験、不審者による危険体験、脅しやからかいの被害体験、盗まれた体験)や教師の注意箇所といった情報を入力して作成した。 WebGISの効果 研究の成果と課題は次のとおりである。成果は、(1)児童の興味・関心を高め危険意識を高めることができた。(2)教師による意図的な資料提示ができた。(3)保護者からの「安全マップ」作成や安全指導を強化する要望に応えられ、学校の信頼度を高めることができた、である。課題は、(1)児童が実際に見て気づく過程を大事にした展開を図り、児童と共にGISに情報を入力する設定をするとより有効である。(2)授業にとどめず保護者にも閲覧できる環境を設定すると広く利用できる、と考えられる。
  • 近代・現代
    内田 和子
    p. 180
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    他地域との比較からみた,近代化過程における関東盆地中央部の農業用水(および都市用水)の管理と配分の特色を中心に述べる.
  • GPSを活用した小学生の地域安全学習
    西井 寛
    p. 181
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    対象とする教育分野 小学生の下校時における誘拐事件が毎日のニュースに取り上げられ、学校や地域、児童による通学路の安全点検や災害防止の活動が全国的に行われるようになった。看板づくりやパトロールによる啓発活動だけでなく、人工衛星や通信設備の進展により、瞬時に児童の居場所を確認できるシステムまで開発され、地図を携帯し、どこでも利用できる体制が整いつつある。 本研究は、小学校4年生の「安全なくらし」の学習で、GPS(GARMIN社製etrexVista英語版)とGIS(カシミール3D 杉本智彦作 http://www.kashmir3d.com/参照)を用いて、地域の安全マップづくりを授業実践したものである。授業の構成 GPSは携帯地図であり、自分の移動に合わせて画面上の地図が移動するため、地図学習を本格的に習い始める児童に、抵抗なく、身近に地図を捉えさせることができる。そのほかに次のような学習効果が期待できる。 (1)画面に表示された人工衛星をもとに、上空から自分の位置を見る意識を育てられる。(2)方位・標高・距離・移動速度を体感しながら把握できる。(3)目的コース(ルート)を登録しておき、ルートを正確にたどったり、帰着時間を予想したりできる。(4)地点(ポイント)や歩いた道のり(トラック)をGISに取り込み、写真やメモと一緒に発表できる。など、地図を児童の生活体験の中に取り込むのに十分な、豊富な機能を備えている。 英語版のGPSに、住宅地図なみの詳細な地図を取り込むためには、次の手順が必要になる。(1)GPSMapEdit(http://www.geopainting.com/en/参照)で属性を入力する。(2)cgpsmapper(http://gps.chrisb.org/en/download.htm 参照)を介して変換する。(3)sendmap20 でGARMIN社製GPSに地図をアップロードする。GIS活用の効果児童はGPSとデジカメを持って、校区の安全点検を行った。火災や交通事故、誘拐などの災害や事件から、安全を守る施設整備や安全協力の家などを調査した。 カシミール3DにGPSデータを取り込むと、デジカメの撮影時刻とGPS時刻とを関連させて、撮影場所を推定することができる。撮影地点を地図に登録する作業は、大人でも難しいが、この機能を利用すると、地図を習い始めの児童でも、手間をかけずに正確に撮影地点を登録できる。また、登録した撮影地点へ、GPSで後からたどることも可能になる。 トラック(調査軌跡)を、高度変化グラフや3Dムービーと一緒に提示して、順番にたどったりする機能もあり、豊かな表現力で発表資料を作成できる。3Dムービーでは、地表面に地図が貼り付いているので、等高線と地形を見比べたり、地名や、山や川の名前を覚えたりしやすいのも長所として挙げられる。
  • 高村 弘毅, 丸井 敦尚, 宮越 昭暢, 林 武司, 小玉 浩, 小室 信幸
    p. 182
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    地下水盆の形状・容量,利用状況,水位低下・地盤沈下等の推移,荒川扇状地とその周辺における地下水をめぐる最近の問題等について述べる.
  • 複数校連携授業の試み
    岡田 行宏
    p. 183
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    背景と目的 笠懸町は,群馬県の東部,桐生市に隣接し,北に接する大間々町を要とし南の方向へ扇状形に拓けた土地である。町の北部に鹿田山,稲荷山,琴平山,東部に荒神山,西部には天神山と小高い山々が緑をたくわえ,古くは笠懸野と称されてきた自然豊かな環境の町である。また,岩宿遺跡に象徴されるように旧石器文化の高い水準をしめす遺跡等,貴重な先人の遺産が数多く存在している。人口約28,000人の町であり、町の産業別就業人口の割合は第二次産業や第三次産業に従事する者の割合は92%となっている。 学校数は、幼稚園1園、小学校3校、中学校2校、合計6校である。児童生徒数は増加傾向で、児童数が1,000人を超えた笠懸町立笠懸小学校を有する。 笠懸町は,元々は農村地帯だったが,近年,隣接する市からの流入人口が多く,町外に職場を持つ家庭が多く,昼夜人口の差が大きい。また,町の中心を国道が通り,その国道を迂回する車が多く,郊外型の飲食店や販売店が増加してきたために,住民でない人の流入が多くなってきている。ビニールハウスも多く,死角となる場所が多い。児童生徒の通学距離は比較的長く,登下校時に一人になる時間が長い。以上のことから,本町では,児童生徒の登下校時の安全を確保することに対する要望が学校や関係機関等から多く寄せられていた。 このような背景から,児童生徒の犯罪危険体験について調査を行い,その状況をまとめていくことを通して,児童生徒の安全や安心を守りたいと考えた。研究の概要(1)アンケート調査の対象及び実施時期・小学校3校の4_から_6年合計840名 平成16年1月実施・中学校2校の2_から_3年合計507名 平成16年7月実施(2)調査内容及び方法 暴力被害・性被害・盗難被害について,被害の有無,内容,時,場所,その時の状況,地図上への記載の6点にについて調査を実施した。教育委員会がアンケート調査を担任を通して児童生徒に配布し,回答後は厳封し,教育委員会で回収・開封した。(3)分析及び活用 回収したアンケートを教育委員会で分析し,その結果をもとにPTAを中心として,ワークショップを実施した。ワークショップでは,対応策や,ワークショップの成果を広めるための方法等を協議した。 また,ワークショップの成果として,アンケート調査の結果を集約した「安全マップ」が作成された。その「安全マップ」とは,子どもの犯罪危険体験に応じたタックタイトルシールを地図上にマーク(暴力被害は青,性被害は赤,盗難被害は青で表示)したものである。その安全マップを教育委員会でWeb-GIS上に作成し,公開した。成果と課題 WebGIS上にデータを公開することで,子どもの犯罪危険体験についての情報について学校や関係機関等,様々な立場の人の間で共有することができ,対応策が迅速に行われるようになった。また,協議を図る場の提供が諮られた。 課題としては,より詳細な情報を地図上に載せられる工夫と,インターネット上の情報量の軽減を図ることである。
  • 佐藤 直良
    p. 184
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    これまでの河川行政の立場から,評価できることと反省を要することを述べるとともに,これからの課題について言及する.
  • 地域の環境学習での利用
    阿部 恵光
    p. 185
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    対象とする教育分野 本研究は、小学校「総合的な学習の時間」において、GISを授業に導入することによって得られた成果および今後の課題を明らかにすることを目的としている。今回は、以下の授業実践を中心とした発表を予定している。WebGISを利用した「南小学校周辺の川や池の水質調査」(2005年12月に第6学年を対象に実施)授業の構成 WebGISは、教師と児童の資料作成時と児童の発表時に利用。コンピュータの利用形態は、(1)コンピュータ室(2)グループ学習(3)ティームティーチング(4)資料作成・発表形式。GISを活用する目的は、まとめる力と発表する力の育成。実践の流れは以下の通り。 (1)準備段階で児童は、水質調査の方法を教えてもらうために地域で活動している人に話を聞く。 (2)南小学校の周辺にある川や池、沼に行き、水質調査をする。 (3)授業(一回目)時に、WebGISの公開マップを閲覧し、イメージをつかむ。 (4)2回目の授業時に調査してきたデータをWebGISに記入。 (5)3回目の授業時に、WebGISを利用して発表。Web GISの効果 WebGISを利用することで、児童の興味・関心を高めることができた。また、従来の授業では、まとめる際、模造紙などを利用して行っていたが、WebGISを利用することで、児童がまとめる時間を有効に活用することができた。さらに、コンピュータの画面での発表により、発表のための準備時間も短縮することができた。 今回は、学校周辺の川や池の調査に留まってしまったが、今後は調査地域を広げることで、地域の環境の関連性に気づかせたり、地域の人たちと協力することで、身近な地域の目を向けさせ、地域社会の一員としての自覚を持たせることにも役立つと考える。
  • 小松原 琢, 宮本 真二, 河角 龍典, 濱 修
    p. 186
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    1.はじめに  琵琶湖の水位変動・沿岸環境変遷に関する資料を求めることを目的として,琵琶湖沿岸の内湖周辺において深度5~10mの簡易ボーリングによるコア採取を行った.コアは,地殻変動による沈降量の違いを考慮してATの埋没深度が異なる地点=高島市南沼旧内湖,(大津市堅田内湖:既往調査),守山市赤野井浜遺跡,安土町竜ヶ崎A遺跡(旧西の湖),彦根市曽根沼内湖,湖北町尾上内湖=で採取した.2.堆積物の層相と年代  コアの柱状図と14C年代(暦年補正値)を下図に示す.背後の丘陵によって河川からの堆積物供給が遮られている南沼内湖や曽根沼内湖などでは,厚い腐植ないし塊状腐植質粘土が連続する.一方低平な三角州に位置する堅田内湖や赤野井浜遺跡では,砂ないし砂礫と泥の互層が主体をなし厚い細粒堆積物は発達しない.3.堆積環境による内湖の分類  背後の丘陵により河川からの堆積物供給が妨げられる南沼内湖など(閉塞型内湖)と,低平な三角州に位置する堅田内湖など(開放型内湖)では,堆積物の層相に大きな違いが見られる. 閉塞型内湖で厚い腐植質堆積物が卓越することは,閉鎖的な浅い水域が長期間継続的に存在したことを示唆する.琵琶湖の東西に位置する南沼内湖と曽根沼内湖ではBC2500_から_AD500に関する限り同年代の腐植の標高はほぼ同じと言えるが,2500BC以前では同年代の腐植を比較すると南沼内湖の方が曽根沼内湖に比べ低い地点に出現する.これは2500BC以前に南沼(西)側を大きく沈降させる地殻変動が行われ,その後の水位上昇にもかかわらず両岸で少なくとも500ADまで内湖が継続的に存在していたことを示唆する. 一方開放型内湖では,河川に由来すると考えられる砂_から_砂礫を頻繁に挟在する.このことは,河道や湖岸線の移動により短期間で環境が変化してきたこと,河川から急速な堆積物の供給が行われていたことを示す.琵琶湖の東西に位置する堅田内湖と赤野井浜遺跡では年代_-_標高の関係が全く異なるパターンを示す.これは開放型内湖では水位変動に伴う堆積環境の変化が一様ではないことを示している.
  • 増田 佳孝, 春山 成子, 近藤 昭彦
    p. 187
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめにアムール川の延長距離は4350km,流域面積は205万1500㎢であり,寒冷地にある.流域の上流地域はモンゴルの乾燥地域,中・下流地域は中国・ロシア国境付近の半乾燥地域であり,年間の降水量は500-600mm程度に過ぎない.旧ソビエト連邦が崩壊後のロシア・プーチン大統領時代初期は経済低迷期にあり,一方,中国では沿岸地域の経済発展の余波が内陸部に向かい東北部中国でも工業化が目覚しい.このため,アムール川流域ではロシア・中国国境地帯での土地被覆変化には顕著な差が見出させる.土地利用変化は工業地域の拡大と都市拡大のみならず,高度経済成長期にあった中国の穀倉地帯としての東北平原,三江平原の農業開発の歴史も包含している。この影響はアムール川,支川の松花江流域も如実に見出すことができる.このような土地被覆の変化を明らかにすることは食糧生産や生物多様性とのかかわりを理解する上で重要である.しかし,アムール流域における既往研究では,個別地域での土地被覆変化研究がなされているものの,流域全体を対象地域としての土地被覆の経年変化を捉えた研究事例はない.そこで,本研究では流域全体を視野にいれた土地被覆の解析を行うことにした.この研究で1982_から_2000年までの地域の変容を明らかにすることができ,これは将来的に流域の管理計画などを立案するための一助となる.2.手法流域全体の土地被覆変化のシグナルを明らかにするため,本研究では,近藤(2004)の提案したPALデータセットを用いた1982_から_2000年の間の全球スケールの植生・土地被覆変動解析の手法を用いた.NASA/GSFC DAAC(Data Active Archive Center)の提供するPALデータセットは,気象衛星NOAAに搭載するAVHRRセンサーにより得られた画像データを基に作成されたデータセットであり,今回は時間分解能が10日コンポジット,空間分解能が0.1°である.本研究では1982 年から2000年の間でのNDVI(正規化植生指標)の年間積算値(ΣNDVI),年間最大値,ΣNDVIの標準偏差(NDVIstd),年間最大地表面温度(Tmax),Ts-NDVI空間における軌跡の傾き(TRJ)のトレンド解析手法を用いた.上記パラメータの19年間のトレンド解析のほかに夏期・冬期ΣNDVIの年々変化の解析を行った.またPALの解析によって現れた土地被覆変化のシグナルを説明するために,高空間分解能の地球観測衛星LANDSAT TM/ETM+を用いる.データはNASAが提供しているGEOCOVER(https://zulu.ssc.nasa.gov /mrsid/)のCirca 1990 Landsat 4/5とCirca 2000 Landsat 7を使用した.空間分解能は前者が28.5m,後者14.5mと非常に高いため,農地や伐採地などの抽出には優位である.データについてはER-MAPPER7(ソフト)を用いて,幾何補正をかけ,モザイク処理を行った.1990年と2000年の2時期の画像を比較することで土地被覆変化を明らかにすることができる.最後に,PALデータとの対応関係についても考察する.3.結果本研究により,アムール流域では夏期ΣNDVIの変化が,19年間の各パラメータのトレンドに影響を与えていることが分かった.また,各パラメータのいくつかを組み合わせて画像解釈を行なうことで土地被覆変化が説明できることを示唆できた.例えば.三江平原周辺ではNDVIampの正のトレンドが見られる一方,NDVIsumやTRJは減少傾向にある.これは,生育期間の短い植生へ転換を示しており,湿地から農地への転換といった人間活動を捉えていると考えられる.実際,現地では過去数十年間で,湿地から畑作,畑作から稲作へと土地被覆が変化している. Landsatの解析では,三江平原周辺では,農地と思われる区画されたエリアが拡大,細分化しており,特に東部の湿地帯では大きな変化が見られた.これはPALの解析によって捉えた人間活動のシグナルを裏付けたものであると考えられる.今後,PALの解析で現れた他の地域における土地被覆変化のシグナルも,同様に検討していく必要がある.
  • 教師による主題図作成と授業での利活用
    小林 宏
    p. 188
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    対象とする教育分野 本研究の目的は、小学校の総合的な学習の時間における観察・調査後のまとめの段階や、理科における現地学習の内容を補うための児童主体の調べ学習の段階の課題解決の場面で、教師がGISを用いて作成した主題図を使うことが有効であるかを明らかにすることである。主題図の作成にあたっては、次の二つのものを使用した。・地理情報分析支援システム MANDARA for Windows95/98/2000/XP Version 5.66(開発者 谷 謙二)・Web GIS(インターネット上で利用できる地理情報システム システム開発 国際航業株式会社)総合的な学習の時間におけるMANDARAを使った主題図の作成と活用 まず、藪塚地区の地図を読み込み編集した空間データと藪塚地区の史跡の属性データを作成し、時代を指定するとその時代の史跡分布の様子を地図上に描き出せる主題図を作成した。(図1)「史跡があった場所の共通の特徴を考えよう。」という学習課題では、学習に必要な情報を記録した主題図を見ることによって、児童は町全体の中で、史跡がどの辺りに分布しているか、時代ごとにはどのように分布しているかというような地域の特徴を把握することができた。また2枚の主題図を重ね合わせ処理をして作成した資料(図2)を見ながら、史跡分布と土地利用との関連から考え、史跡があった場所の特徴も見つけることができていた。5年生理科「流れる水のはたらき」におけるWeb GISを使った主題図の作成と活用 本校は、学区内に川がなく、川の観察ができない。教科書や教師が一方的に提示する資料を使った授業では児童が受け的になりがちである。そこでWeb GISを使って、桐生川・利根川の上流・中流・下流ごとに数カ所ずつポイントを置き、そのポイントをクリックすると、そこの川の写真を見られるようにした主題図(図3・図4)を作成した。これらの主題図を使うことで、意欲的に授業に取り組み、川の特徴を的確に記録することができていた。GIS活用の効果 以上のことから、GISを用いて作成した主題図を使うことは、総合的な学習の時間や理科の授業での課題解決の場面や意欲的な学習を促すために有効であることが分かった。
  • 池下 誠
    p. 189
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    工業化の進展や人口の増大、交通や通信の発達により地球は相対的に小さくなり、多様な生き方や価値観をもった人々が相互に関連しあいながら生きていく時代にあって、中学校では現実の世界に目を向け、世界像を構築し、持続可能な発展を考えた国土認識の育成を目指す公民的資質の基礎を養う学習指導を行うことが必要である。そこで、この趣旨に沿った地理的分野のカリキュラムと、アメリカの学習指導例を示す。
  • GPS携帯を用いた地域資源マップ作り活動の事例
    吉村 和広, 新藤 博之, 杉村 仁, 治郎丸 宏, 今岡 祐輔, 西野 まどか, 松田 美沙貴, 安岡 恭三, 堤 純
    p. 190
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
    近年,全国各地で「地元学」が注目を集めている。地域活性化の旗印のもと,各地で多様な活動が展開され,関連する報告は枚挙に暇がない。
    地元学においては,しばしばグループで地域資源調査を行った後に「お宝マップ」を作成するが,それらの地図は大きな模造紙と写真などを組み合わせた紙媒体の場合が多く,情報の公開および共有という点においては改善の余地がある。
    近年,インターネットを介した情報収集および公開に関するノウハウが飛躍的に向上し,これらをまちづくりに応用する例も散見されるようになってきた。ここでは,まちづくりに関する「情報の収集・公開・共有」をインターネットを介して効果的に行うことを目指し,愛媛大学と松山市役所,そして松山市堀江地区の住民との協働による「ほりえタウンウォッチング」の取り組みについて報告する。これらの活動を通して,WebGISのまちづくりへの利用可能性についても検討する。

    2.地域資源調査と地域資源情報のWebGIS化
     「ほりえタウンウォッチング」は2005年11月27日に実施した。松山市堀江地区の住民26名(小学生11名を含む),学生スタッフ8名,大学関係者1名の参加の下,カメラ付きGPS携帯を用いて地域資源調査を行った。調査は,全体を3班に分けて行い,地域の高齢者2?3名を「地域の生き字引」として各班に割り当てた。午前中は,カメラ付きGPS携帯を用いて地域資源情報を収集した。撮影した画像には同時に緯度経度情報が添付されるので,写真や付帯情報を一括してそのまま携帯電話からメールサーバへ送信した。午後は,従来通りの紙媒体の地図を,「地域の生き字引」(地域住民)を頼りに作業を進め作成し発表した。発表後,学生スタッフおよび大学関係者はGPS携帯から送られたデータの整理と地図化を行い,インターネット上に公開するための作業を行った。インターネット上に公開された各写真には,それぞれ独立してウェブログ(以下,ブログ)にリンクを作成し,閲覧者が自由にコメントを投稿できるように工夫した。ブログを活用することにより,地域資源情報の公開と共有を効率良く,またそれらの利用可能性を高めることができた。
    図1は,上記のWeb地域資源マップ等をまとめた「住民参加型」地域サイトのサイト構築図である。これらのサイトは,すべて一般的なブラウザで閲覧が可能であり,インターネットを閲覧する環境があれば,誰でもいつでもどこでも地域資源情報の共有ができる。また,ブログのコメントやトラックバックなどの機能を使用することにより,インターネット上に公開された各種の地域資源情報に関する新たな情報収集・公開も可能となる。

    3.まとめ
     今回実践した地域資源マップのWebGIS化は,それまで公開や共有の方法が限られていた地域資源情報を,地域内外を問わず誰もが収集・公開・共有することを可能にした。地域住民による「地域内自治」の重要性が注目されるなか,このような「情報の収集・公開・共有」に至る一連のしくみを創り出すことで,新たな発見や驚きが生まれ,ひいては地域に新たな活力が生まれる。GPS携帯による情報送信や情報収集の機能,そしてWebGISとの組合せによる地域資源情報の公開・共有の取り組みは,今後の可能性が大きいと期待される。
     今回の「ほりえタウンウォッチング」の活動は,2006年3月に開催される堀江地区主催の発表会の場においても発表される予定である。今回の取り組みにおいて注目すべき点は,情報の収集・公開のみならず,情報の共有ひいてはまちづくりへのフィードバックを念頭において作業を進めたことである。地域資源情報を地域住民とともに共有する取り組みの詳細については,学会発表当日に報告する。
  • 鷲崎 俊太郎
    p. 191
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
     本報告の目的は,徳川都市における土地市場の推移を長期的に分析するとともに,19世紀以降の都市の衰退という実態を,土地が産み出す収益および資産価値という側面から検討することにある。
     図1は,江戸・東京の実質地価を17世紀後半から19世紀末期まで示したものである。図1からは,3つの波動が読み取れる。このうち,第1の波動は18世紀前半の貨幣改鋳に端を発し,第2の波動は利子率低下という金融政策に依拠する。これに対して,第3の波動は深刻な資産デフレをもたらし,土地の資産価値を明治維新までに6分の1に減少させた。他方,収益還元地価([地代/利子率]で資本還元した価格)は,1730年代から100年間,変動しなかった。よって,田沼時代と大御所時代には土地バブルの全盛時代を迎えるが,文政改鋳によってバブルは崩壊した。
     バブル発生の要因は,名目の土地評価額を文政改鋳以後も見直さなかったことにある。したがって,実質地価は,基本的な経済構造以外の要因で,下降せざるをえなかった。
     このように,都市の土地資産市場は文政期から沈滞化するが,郡村部の土地売買は活況を呈した。都市部と郡村部は,土地資産市場において代替的関係にあったわけである。
  • 地層学習における利用例:うすね地層探検プロジェクト
    吉田 努
    p. 192
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    対象とする教育分野 本研究の目的は、小学校理科6年「大地のつくりと変化」の学習においてWebGISを活用して、児童に科学的思考力を身に付けさせることである。本実践においては、地層をデジタルコンテンツとして児童に提示するだけでなく、フィールドワークの記録やグループ学習の交流、そして地層の広がりを推論する場面において、WebGISを活用した。授業の構成 本校は、群馬県北部、典型的な河岸段丘を有する沼田市に位置している。利根川、片品川、薄根川等によって作られた河岸段丘は、中学校社会科の教科書にも登場する。 そのため、薄根地区にも本単元の学習活動の地域教材として観察に適した露頭が数多く残されている。学校付近でも1500万年前の火山灰の堆積により作られたとされる凝灰岩層や十数万年前に沼田市が湖であった時代に堆積したとされる平行葉理(沼田湖成層)、古沼田湖消失後に形成された砂礫層(沼田砂礫層)を観察することができる。 本単元の学習は、前半部で県内の典型的な地層の特徴と火山活動や地震によって起こる地殻変動の仕組みを、デジタルコンテンツを観察して理解する。そして、その知識を生かして地層観察のフィールドワークを行い、その結果をまとめる。そして、その様子から薄根地区の地層の概要や成因を推論するというものである。WebGISの活用と効果 水と火山のはたらきできた地層を観察させる場面では、渡良瀬川流域の桐生市と赤城山麓の前橋市等の地層を、WebGISを活用して提示した(図1)。児童は、標高が色分けされたレイヤーと地層の位置から渡良瀬川や赤城山と地層成因との関連性を推論するとともに、その特徴も理解することができた。 その後、4つのグループに分かれてフィールドワークを行い、(A班)砂礫層、(B班)凝灰岩層+砂泥互層、(C班)砂泥互層+砂礫層、(D班)凝灰岩層を観察し、WebGISにまとめた(図2)。この時点で児童が理解した薄根地区の地層の概要は図3の通りである。その後、グループごとに観察結果を発表し、意見交流を行った。その際、児童が提示した資料は、地層の特徴を鮮明にとらえていたため、自分が観察した場所以外の地層の様子もその特徴をとらえ、比較して共通点等を見出すことができた。交流の中で発表された主な考察結果は、(1)凝灰岩層は火山灰が堆積した地層であること、(2)平行葉理は構成物が細かく均等であることから湖等の底に堆積した地層であること、(3)砂礫層は丸い石が横に並んでいることから流れる水のはたらきできた地層であること、(4)それぞれの地層が複数の場所で見られること、などである。これらのことから、4地点の地層の縦と横の広がりが明らかになった(図4)。 以上のような活用方法により、本単元の学習でWebGISが児童に科学的思考力を身に付けさせる一助となることを検証した。さらに、授業時間外や学校外でも利用する児童が多く見られ、意欲を維持して学習に取り組むことができるという利点も確認することができた。課題として、Web上で意見交流ができれば遠隔地の学校とも時間の制限なく交流することが可能になるであろう。<文献>群馬県の貴重な自然!)地形・地質編!), 群馬県(1990)  沼田市史・自然編, 沼田市(1995)
  • 伊藤 修一
    p. 193
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    _I_ はじめに 本研究では,タイにおける高度成長を遂げた1980年代と,農業から非農業への就業構造の地域的変化が,男女の居住分化として表れてきたとされる1990年代において,男女の就業者の居住分化が全国的みてどう変化したのか,さらに地域的に居住分化にどのような差異がみられるのか,計量的な分析により解明する._II_ 研究方法 本研究ではPopulation and Housing Censusの県別集計の1980,1990,2000各年版を用い,15歳以上の就業者を対象としている.対象地域はタイ全土であり,その分析単位は県である.2000年時点ではバンコク都を含めて76県あるが,1980年以降に新設された県があるため,72県に統一して分析を行った. 本研究では居住分化を客観的に評価する方法として,非類似指数Index of dissimilarly(Duncan and Duncan 1955)を用いる.これは空間的均等性を評価するセグリゲーション・インデックスの1つで,主に民族の居住分化に関する研究で採用されてきた.非類似指数(以降,Dと略称)は以下の式により算出される.D=Σ|xi/X_-_yi/Y|/2ここでXは対象地域全体における人口のサブグループXの人口を表し,xiはその単位地区iにおけるサブグループXの人口を表す.一方,Yは対象地域全体における人口のサブグループYの人口を表し,yiはその単位地区iにおけるサブグループYの人口を示す.Dは0から1までの値をとり,1に近いほど居住分化が顕著であることを示す. このようにDはグローバル指標であって,対象地域全体の居住分化を明示できる点で優れているが,対象地域内での居住分化の違いを説明するものではない.それに対して,Benenson and Omer(2002)はDのローカル・モデル(以降,Diと略称)を提案している.一部を筆者が修正したものが次の式である.Di,U(i)=Σ|xi/XU(i)_-_yi/YU(i)|/2ここでXU(i) =Σwij xi ,YU(i) =Σwij yiwijは単位地区間の空間的関係を示している.本研究では,2つの県iとjの県界が接する場合には1,そうでない場合は0となるような二値データを用いる.Diも0から1の値をとり,1に近いほど隣接県に対してその県の居住分化が顕著と解釈される._III_ 男女別就業人口の居住分化の空間分析 男性就業者は1980年では1,136万人,1990年1,588万人,2000年には1,746万人だったのに対して,女性も1980年1,048万人,1990年1,461万人,2000年1,632万人と増加しており,その増加率の男女差は小さい.また1県あたり就業者の平均数に対する,その標準偏差の比率(変動係数)は3時点とも8.4程度で,男女ともにほぼ同じであった.そのこともあり,男性就業者と女性就業者の空間的分布は, Dによれば,1980年の0.04,1990年0.03,2000年には0.02とごく小さな違いにすぎない.ただし,わすかながらその分布は類似してきている.県ごとにみても,3時点の中で最も居住分化が進んでいるのは1980年のバンコク都であるが,それでもそのDiは0.02に過ぎない.ただし,1980年代のDの傾向と同様にDiが減少しているのはバンコク都や東部臨海工業地域の立地するラーヨン県とチョンブリー県を含む49県であり,これは全72県のうち3分の2にあたる.一方,中部タイのアユタヤー県やサラブリー県,東北タイでも南に位置してバンコク都の近い県,北部タイのチェンマイ県やランプーン県に隣接する県ではDiが増加している.1990年代になると,Diが減少した県は33に減少し,そのうち,バンコク都,ナコーンパトム県,パトゥムターニー県,トラット県,アーントーン県といった中部タイに14県が集中し,バンコク都に近いサムットプラーカン県やロプブリー県のほか,北部タイのチェンマイ県やランプーン県といった地方の県の多くでは,Diは増加している._IV_ おわりに 全国的にみた場合,1980年から2000年を通じて男女別就業人口の居住分化はきわめて小さいものの,わずかに解消傾向にある.このような傾向はバンコク都に近い県でみられる.一方,地方では1990年代に入り,その居住分化が拡大傾向に転じた県が少なくなく,このことが,国内の男女別人口分布のアンバランスに大きく関係しているものと思われる.
  • 田中 博春, 中野 智子, 三上 岳彦, 菅原 広史, 成田 健一
    p. 194
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    I. はじめに
     東京都の新宿区と渋谷区にまたがる新宿御苑では、都市内大規模緑地が周辺市街地に及ぼす熱的影響についての研究が精力的に進められている。本報では、特に緑地が夜間生成する冷気の立体構造の把握を目的とした、各種鉛直観測の結果について報告する。

    II. 観測方法等
    タワーゾンデ観測:2005年8月14-15日および8月17-18日の夜間に、新宿御苑中央の広場(芝生)と新宿区立花園小学校校庭(新宿御苑北縁から約200m北側の市街地内に位置、ダスト舗装)の2地点で、タワーゾンデを用いた鉛直同期観測を実施した。地上高約100mに気球を係留し、気圧・風向・風速を測定した。係留索には小型温度ロガーを16-18台取り付け、気温の鉛直分布の測定を行った。今回の観測では、鉛直方向の気温の測定高度間隔を1.5-10mと高密度に設定した点が特徴である。
    気温定点観測:2005年7月15日-8月29日に、新宿御苑内外の約90地点で2分間隔の地上気温定点観測を行った(設置高約2.5m)。また、それとは別に新宿御苑北東側に隣接する新宿区立四谷特別出張所(14階建て)の外階段、および気球を係留した花園小学校(4階建て)の外階段に、それぞれ9点、5点の鉛直測定点を設けた。ただし花園小学校外階段の最下測定点(地上1.5m)は校庭に面した百葉箱内とした。
    放射収支観測等:気球を上げた新宿御苑中央部の広場(芝生)に4要素の放射収支計を設置し、上下方向の長波・短波放射量を測定した。あわせて気温・風向風速の測定を行った。新宿御苑外縁の3地点には超音波風向風速計を設置した。
    以上のデータは基本的に10分平均値として整理した。

    III. 新宿御苑内外での地上気温南北断面 (図1)
     図1に、定点観測による新宿御苑内外の地上気温の南北断面図を示した。図には、タワーゾンデ観測時間中新宿御苑内外の気温差がもっとも顕著となった2005年8月14日5時と、同日2時の測定結果を示した。2時の段階では曇天かつ弱風のため南北断面の気温差は最大1.0℃に留まった。これに対し、雲量が4まで低下した5時には地上はほぼ無風となり、放射冷却が進行した。これにより南北断面の気温差は、最大2.3℃まで拡大した。超音波風向風速計では新宿御苑の外側に向かう微風を観測(0.3-0.6m/s)。冷気の「にじみ出し現象」の発生が認められた。これに伴い、南北断面では新宿御苑北縁から北側80mの区間に大きな気温勾配が現れた。

    IV. 新宿御苑内外での気温鉛直プロファイル (図2)
     図2に、2005年8月14日5時のタワーゾンデおよび外階段で測定した気温鉛直分布を示した。曇天であった同日2時の段階ではいずれの地点でも接地逆転はほとんど認められなかったが(図省略)、雲量が低下し「にじみ出し現象」が顕著になった5時には新宿御苑中央に明瞭な接地逆転が現れた。これに対し、新宿御苑北東端のビルの外階段では同時刻に接地逆転はほとんど認められなかった。新宿御苑中央と北側市街地内にある花園小学校校庭の気温鉛直分布を比較すると、両者に多少の温度差はあるものの、おおむね地上高40m以下で両者の気温の差が開き、この高度以下で新宿御苑内に冷気が溜まっていることがわかった。また、花園小学校校庭では、層厚10mの接地逆転層が認められた。これは、小学校校庭で生じた放射冷却により発生したものと思われる。小学校外階段の気温分布にもこの影響が現れていた。

    謝辞: 鉛直観測に際しては新宿御苑、新宿区立花園小学校、新宿区四谷特別出張所に、また観測全般に渡り首都大学東京、日本工業大学の学部生・院生の方々に大変お世話になりました。謹んでお礼申し上げます。
  • 土地利用の変化を調べる
    諸田 健
    p. 195
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    対象とする教育分野 本研究は、中学校社会科「身近な地域」を学習するにあたり、教育用WebGISを活用した実践的研究である。授業の構成とWeb GISの活用 以前は「身近な地域」の単元を学習するに当たっては、地図の基本的な決まりを学習した後、実際に身近な地域のフィールドワークを行い、紙地図上にまとめるという形で学習を展開していた。紙地図による学習は、手作業で分かり易い、費用がほとんどかからない、地域の特色をとらえる地理的な見方や考え方の基礎を養うことができるなどの良い面が見られる。 しかし、何度か授業実践を行うにしたがい、紙地図の場合「テーマ設定」「観察や調査活動」「地理的なまとめ方や発表方法」がすべて生徒個人の学習になり情報の共有が十分に行われない傾向や課題があった。このことから、もっと班で協同して作業したり、調査結果をつなぎ合わせたり、重ね合わせたり、統合したり、共有したりして調査結果について生徒間で交流が図れるような学習環境を与えられたら、授業改善につながるのではないかと考えるようになった。 そこで、この課題を解決するため、教育用WebGIS(インターネットを介した地理情報システム)の活用を考えた。教育用WebGISは、インストールにかかる費用及び環境設定等の紛らわしさなどがなく学校において手軽に利用できる。また、ネットワーク機能を介して、作業を分担したり、生徒一人一人がまとめた調査結果をレイヤ機能を使って結合したり、重ね合わせたりすることができ、発表の段階では簡単にWeb上に公開することができる。また、コンピュータとネットワーク環境がそろえば、いつでもどこでも、その結果を交流することが可能であるため、紙地図を用いた学習では行うことが不可能だった生徒間や学校間などで交流するという教育的効果が期待できると考えられる。学習補助教材「WGナビ」 実際に教育用WebGISを活用するに当たり、生徒に教育用WebGISの操作方法を短時間で、生徒のパソコン活用能力に応じて学習する必要がある。そこで、学習補助教材「WGナビ」(WebGISナビの短縮形)をWeb形式で作成した。生徒はWGナビと教育用WebGIS双方のソフトをディスプレイに立ち上げ、WebGISの操作学習を行った後、フィールドワークのまとめ作業が出来るようにした。
  • 単元「地域環境」における大気測定調査での活用例
    高橋 秀武
    p. 196
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    対象とする教育分野 中等教育理科における課題は、校外での観察調査が少なく、自分で調べたことをまとめる力が不足しているから、新しい発見をする機会が少なく、理科のおもしろさが薄れているということである。 以上のことから、机から離れた学習は非常に意味があり、高い教育効果が期待できる。しかし、校外に出て調査活動を行うことは、調査やまとめに時間がかかり、安全面でも校外調査は実施が難しくなった。そこで、短時間で、安全面も配慮されたい校外調査例を提案する。 活用した単元は「地域環境」である。身近な自然を調べ、科学的な思考をめぐらせることでまとめる力を高めたり、新しい発見をすることを目指している。今回は、昨年度の調査で違いがはっきり確認できた窒素酸化物(NOx)について調べ、最終的にはまとめたことを発表する。校外での観察 校外調査では、生徒一人一人が調査して、安全面も十分配慮されていることが大切である。個別調査のためには、検査装置が安価で簡単に使えて数がそろえられることが必要である。検査装置は筑波総合科学研究所の大気測定用捕集管が条件と一致した。捕集管は500円以下で購入でき、測定は蓋を開けて24時間調査場所に設置するため、測定後は蓋をすれば数日放置することもできる。結果は数値で持ち寄ることができたため、調査結果の比較がやりやすかった。調査活動は、授業中に調査場所に移動することは安全面からも心配なため、登下校中に設置して24時間後に回収する。Web GISの活用 まとめの課程では、短時間に科学的な思考を高めることが期待できるWeb GISを活用した。 短時間にまとめるには、生徒一人一人が持ち寄った調査結果の数値を白地図かコンピュータに入力しなければならない。大きな白地図は取り扱いが不便で、全員が見づらく、情報も限られたものになる。また、コンピュータに入力する場合は、専用ソフトを使っていると授業時間や放課後などの時間を充てなければならない。その点、Web GISはWeb上で調査結果を入力することができるため、生徒の自宅で結果を入力することができ、情報も写真を含めた多くの内容を登録することができる。生徒の約9割が自宅でインターネットに接続できる環境である。Web GIS活用の効果 科学的な思考を高めるためには、調査した結果から新たな発見をすることが大切である。Web GIS上にクラス全員の調査結果がそろうので新たな発見が期待できる。また、Web GISはレイヤというシートを何枚も重ねることができるため、調査場所を乗用車の交通量を基準に、交通量多、交通量中、交通量少の3段階にわけて入力する。その結果、レイヤを重ねたり、外したりしてみることでも、新たな発見があることが期待できる。更にくわしく調べたい生徒には、他生徒の調査場所の情報を入手することで、新たな発見が期待できる。 生徒はWeb GISの操作の習得には時間がかからず、まとめで新たな発見した生徒が多数いた。しかし、調査結果の入力には2時間程度が必要であるため、自宅で入力する授業計画が必要である。今後は、他校との連携など多くの活用方法が考えられる。
  • 複数校連携の試み:川の環境調査を例として
    町田 寿一
    p. 197
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    対象とする教育分野 本研究の目的は、環境教育における水質調査の場面にWebGISを利用し、その効用を明らかにすることである。WebGISはWeb上で地理的情報を閲覧できることから、離れた場所にいる人との間で情報を共有できる。中学校の場合は、他校の生徒が集めた情報を利用することによって、環境の様子を比較的広い空間で捕らえたり、考察したりできるのではないかと考え、河川の水質調査に利用した。対象とする教育分野 調査対象地域は群馬県の吾妻郡を流れる吾妻川とその支流や水路である。これらの河川について流域の4町4村(中之条町、吾妻町、長野原町、草津町高山村、東村、六合村、嬬恋村)の中学校13校で平成17年10月に調査を行った。 調査する要素はCODに特定し市販のパックテストを利用した。生徒がめいめい調査地点に赴いて採水して測定したので調査地点は200ヶ所を上回るものとなった。 各調査地点のCOD値は、WebGIS上にある地勢図に色別のアイコンで表現した。こうして完成したCODマップを生徒に提示し、水の汚れについて考察をさせたところ以下のような答えを導くことができた。(1)吾妻川流域のCOD値は大きいところもあり小さいところもあり、一様ではない。COD値とまわりの地理的条件を関連づけて考えると人口の多い地域のCOD値は大きく人口が少ない地域のCOD値は小さい。したがって、CODの値を大きくするのは生活排水であると考えられる。(2)川上でCOD値が大きくても流れ下るにしたがってCOD値が小さくなっている。吾妻地区は集落が散在しているため人口が少ない地域を流れ下る間に自然の浄化作用が働くのではないだろうか。WebGISの効果 (1)の考察においてWebGISを利用したことにより生徒は自分の生活空間より広い地域について考えることができた。その結果、人口の多さとCODの値について数箇所の比較ができ、生活排水と水の汚れの関連について推量できたのであろう。また、(2)のような自然の浄化作用について考えが及ぶのもWebGISによって長い流域について連続したCODのデータを得ることができたからである。また、上流で流入した物質が下流の環境に影響するという認識は水や空気といった環境を構成する要素を考えるときに大切でWebGIS はこのような環境の要素の連続性をとらえることにも有効であったと考えられる。
  • 岐阜市営バス民間譲渡を事例として
    佐藤 正志
    p. 198
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    _I_.はじめに
    現在の日本においては,公部門の財政の縮小を狙いとする行政改革が推進されている.この行政改革の流れの中で,1990年代から事業にかかる規制を撤廃・緩和することで市場原理を活性化させ,新規事業者の参入や事業者間の競争を促し,規制にかかる公部門の費用削減や財・サービスの質の向上を目指す「規制緩和」が推進されている.規制緩和は公共サービスの分野にも取り入れられ始めており,公部門の経営効率化や財・サービスの質の向上が期待されている.その一方,市場原理を導入することで不採算部門の切捨てが進行するという批判も存在する.特に公共サービスへの規制緩和の導入はサービス内容・水準の地域間不均衡を引き起こすという懸念はあるが,規制緩和が導入されたことに伴う公共サービス内容・水準の変化は既存研究ではほとんど実証されてこなかった.
    そこで本報告では,規制緩和に伴うサービス内容・水準の変化を,事例から考察する,対象とする公共サービスとして,2002年に事業全体にかかる規制緩和が行われたバス事業を取り上げる.対象地域として,規制緩和に対応する形で市営バス事業の民間譲渡を行った岐阜市を取り上げて考察を行う.

    _II_.公営バス事業の全国的動向と規制緩和
    日本におけるバス事業の動向として,1960年代以降モータリゼーションの進展による利用者離れ,それに伴う経営の悪化が起こっていることは既存研究でも明らかにされているが,公営事業者と民営事業者間の輸送状況・収支状況の実態はこれまでほとんど明らかにされてこなかった.
    ㈳日本バス協会発行『日本のバス事業』及び日本自動車会議所発行『自動車運送事業経営指標』を用いて,全国的な公営事業者と民営事業者間の収支状況の比較を行った結果,民営事業者と比較して公営事業者の収支状況は悪い状況が続いている.これは経常費用に占める人件費率の差によるところが大きいと考えられる.バス事業は労働集約的な産業であるが,民営事業者と比較して公営事業者では人件費率が10%近く高い構造が続いている点が大きな要因として働いていると考えられる.対象地域とする岐阜市でも全国的な動向と同様に1960年代以降収支状況の悪化は続いている.1980年代初頭に合理化策で一時的に収支は改善されたが,近年再び収支状況は悪化している.
    バス事業にかかる規制緩和は道路交通法を改正する形で2002年4月に行われた.バス事業の規制緩和の特徴として,路線への参入/退出が自由化された点である.規制緩和により事業者間の競争を促しサービスの拡大が期待される一方,届出のみによる退出が可能になった点についてはサービスの悪化の懸念が持たれている.実際に規制緩和を受けて,経営の悪化している公営事業者の中には退出・民間譲渡を行った公営事業者も岐阜市以外に存在する.

    _III_.バス事業譲渡の経緯とサービス体系変容の考察
    岐阜市では,道路交通法の改正を受けて2002(平成14)年6月に,2003(平成15)年度から3年度に分割して市営バス路線の民間譲渡を行うことが決定された.公募による選定を行った結果,地元大手民営事業者(以下G社)が選定され,2003年1月に岐阜市とG社間で路線譲渡の契約が行われ,同年4月から路線の民間譲渡が進められている.
    民間譲渡に伴うサービスの変化を見るため,運賃(サービス価格の指標)と路線網及び運行本数(サービス水準の指標)を取り上げ,民間譲渡前後での比較を行った.その結果,運賃,路線網及び運行本数ともほぼ維持されていることが明らかになった.一方で,民間譲渡された路線の収支状況は大幅に改善されている.岐阜市の市営バス事業への財政投入も減少しており,公部門の財政の効率化と事業の効率化は達成されていると考えられる.サービスは維持されながらも収支の改善が達成された要因として,一つにはG社の経営努力による人件費を中心とした費用の圧縮がある.しかし,サービス水準が維持された大きな要因として,G社との契約時に岐阜市が設けた「譲渡後3年間の路線系統,運行回数及び運賃維持」の条件及び違反した際の罰則条項が強く働いていることが明らかになった.
    以上から,岐阜市のバス事業については,規制緩和に伴う民間譲渡があってもサービス内容・水準は維持されている.しかし,サービス内容・水準の維持には依然として行政の事業に対する関与が必要になると考えられる.
  • 山口県宇部市における産学官連携を事例として
    外枦保 大介
    p. 199
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
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    1.はじめに
     企業城下町とは,特定の大企業を中核とし,その周辺に直接・間接の下請取引を行う多数の中小企業が立地している都市である.しかし近年,企業城下町の中核であった大企業は,事業の選択と集中を迫られ,長年取引のあった中小企業との関係を見直さざるを得なくなっている.他方,中小企業においては,特定企業からの依存度を低め,下請企業からの自立化を迫られているが,状況は改善されていない.
     こうした中,1990年代後半以降,企業城下町において,主体間関係を再構築することによってこれらの諸問題を打開しようという動きが現れている.特に産学官連携の動きは,従来の企業城下町の産業集積を転換させる点において注目される.
     本発表では,企業城下町の歴史的展開の中で,主体間関係がいかに形成され,産学官連携を機にどのように再構築されようとしているのか検討する.対象地域として,近年産学官連携が活発な企業城下町である山口県宇部市を選定した.宇部市は,宇部興産の企業城下町として知られる都市であり,産学連携に積極的な山口大学を抱える都市である.

    2.宇部興産の事業展開と宇部市の変容
     宇部では,明治期以降,石炭が本格的に採掘された.石炭産業によって得られた利潤は,セメント工場,鉄工所,窒素工場に投資され,石炭産業の成長が化学をはじめとする工業の発展を促した.また,宇部は域外から労働力が流入し都市としても成長を遂げていった.1942年に沖ノ山炭鉱,鉄工所,セメント,窒素の4社が合併し,宇部興産が設立された.設立時,宇部興産の資本の大半は地元所有であった.戦後,石炭産業は衰退するものの,工業が雇用の受け皿となったため,他の産炭地ほどの深刻な状況には陥らなかった.
     中核企業である宇部興産は,1960年代以降,生産・営業拠点を全国的に分散し,東京本社へ本社機能が移転してしまうことで全国的な企業へと変身していった.

    3.主体間関係の形成と展開
    (1)企業間関係
     宇部市において主となる企業間関係とは,親企業と下請企業の下請構造である.宇部興産の下請構造の特徴は,親企業の工場内で生産が完結するため,構内外注として設備管理や補修・メンテナンスに従事したり,原材料・製品を運搬したりする下請企業が多いことである.また,自動車や電機産業と比べて,下請企業の階層構造がはっきりしない.宇部興産では,宇部興産の協力企業組織が存在し,セグメントごとに結成されている.
    (2)大学と地域の関係
     宇部市では,1940年前後に現在の山口大学工学部と医学部が,戦後,宇部高専や山口東京理科大学が建てられた.この地域では,1950年代,産学官が連携した公害対策(「宇部方式」)を行った歴史をもつ.宇部地域では1980年代にテクノポリスに指定されるが,目標としていた工業成長は達成されなかった.だが,大学や研究所を同時期に誘致できたことで,域内の研究者の数は増加し,今日の産学官連携の基盤となった.

    4.産学官連携による主体間関係の再構築
     1990年代後半以降,宇部市にある山口大学医学部・工学部では学内で医工連携の動きが進み,その連携が知的クラスター創生事業につながった.
     大学・高専では,1990年代後半以降,大学・高専の法人化をにらみ,産学官連携支援体制が構築された.地元企業との研究協力会が設けられたり,地方自治体・金融機関・地元の大企業と包括的連携を結んだりして地域に根付いた活動を展開している.また,産学連携を行っている企業は,現在,産学連携を進める企業に対しては国や地方自治体からの様々な補助金・助成金制度が用意されているため,産学連携を進めやすい環境にあり,中小企業にとって産学連携は,研究開発費を抑えながら新たな技術を獲得できるため魅力的である.そして,自治体は,財政難の状況下,新産業を創出することで税収を増やし,未売却の企業団地の販売にめどをつけるために,産学官連携に熱心である.
     宇部市の産学官連携の特徴は,そのコーディネータに宇部興産退職者が就いていることである.このことは,宇部興産が特別な意味を持つこの地域にとって,産業界と学術機関との間の信頼の創出効果をもたらしている.
  • 身近な環境問題について考え、調査・報告しよう:利根川の水質調査を通じて
    早川 洋一郎
    p. 200
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/18
    会議録・要旨集 フリー
    対象とする教育分野 本研究の目的は、総合的な学習の時間において、利根川の水質について調査した結果を考察していくために、WebGISをどう活用していくかを明らかにすることである。 具体的には、利根川を中心に学校付近に流れている河川のいくつかの地点で、4つの班が分担して河川の水を採取し、CODなどの5項目について水質調査をし、そのデータや付近の画像を、Web上に貼り付けた(図1)。Web GISの活用 WebGISには、レイヤの重ね合わせの機能がある。各班が調査結果を入力し作成したレイヤを重ね合わせることで、他の班の調査結果を重ねて見ることができる。今までの学習では、自分たちの調査結果でのみ考察していたことが、WebGISを活用することにより、様々な班が調査したデータをWeb上で共有できることにより、調査範囲がより広範囲となり、グローバルな考察ができるようになった。 また、WebGISはインターネットにより閲覧・入力が可能である。したがって、利根川流域の各学校が水質調査した結果を、このWebGISに入力することにより、そのデータを簡単に閲覧することができるだけでなく、自分の学校のレイヤと他の学校の作成したレイヤを重ね合わせることも可能となる。そうなれば、利根川の上流から、下流までの全域で調査結果を知ることができるはずである。 今回の研究では、WebGISが試行段階であるため、本校のみの活用であったが、他の小学校や中学校、高等学校が利根川の水質調査をした結果が、Web上で数値として公開されていたため、私がレイヤを作成し、生徒に比較・考察させた(図2)。 Web GISの効果 研究の成果としては、データの数値を三段階のアイコンの大きさで表したことで、調査地点ごとの水質の違いが分かりやすかった。他の班が調査したデータを自分たちのデータに重ね合わせることができたので、広範囲にわたって水質の考察ができた。 今後の課題として、WebGISのよさは、ネット上でデータを共有できることである。利根川は他県にもまたがる有名な河川であり、複数の学校が水質調査をした結果を共有できるはずである。多くの学校や団体が調査に参加し、WebGISを通して、互いにデータ公開し、環境問題解決の一助になるとよいと考える。
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