アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
65 巻, 3 号
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論文
  • 佐藤 創
    原稿種別: 論文
    2024 年65 巻3 号 p. 2-36
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/30
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    インドでは2000年代に会社のための土地収用が深刻な社会問題を引き起こし,1894年制定の土地収用法が2013年制定の法に代置された。ただし,新法もまた多くの規定を旧法から引き継いでいる。そこで,本稿はインドにおける土地収用制度の導入過程を検討し,その起源が東インド会社統治時代の19世紀前半にあり,直接統治が始まった19世紀半ば頃までにはその骨格が形成されていたことを示す。また,そのおもな特徴として,第一に,現地社会の土地に関する複雑な権利関係を認める一方で,土地に関するイギリス側の主権が曖昧であるという法的な枠組みが出発点となっており,それゆえ,対象となる土地に関する既存の権利関係をいわば清算して政庁側が当該土地に関する瑕疵なき権利を入手する仕組みが必要となったと考えられることを論じる。第二に,私企業による鉄道建設を含むとされた公共目的のための条項と,それとは別と位置づけられた会社のための土地収用の条項が,それぞれ1850年代,60年代に独自の規定形態をとって一般規定として盛り込まれたことのうちに,本国とも他の植民地とも異なる英領インドの土地収用制度の特徴が存在すると考えられることを議論する。

  • 牧野 久美子
    原稿種別: 論文
    2024 年65 巻3 号 p. 37-60
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/30
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    本稿の検討対象は,アパルトヘイト政策をとる南アフリカに対する国際社会の非難が最も高まり,また南アフリカの主要貿易相手国である日本に対する批判も高まった,1980年代後半の日本の対南アフリカ政策である。1980年代後半,日本は3段階にわたって対南アフリカ規制措置を追加した。この日本の対応は,先行研究においては「外圧」への反応として理解されてきたが,本稿では,3段階の追加規制のうち第2段階までは「外圧」というより西側諸国との横並びの協調として解釈することが妥当であり,第3段階にあたる1988年の貿易自粛措置については,米国の包括的反アパルトヘイト法に基づく対日制裁の脅威を背景としており,「外圧」の影響を認められることを,外交史料の検討を通じて明らかにした。また解放運動組織という非国家主体ながら積極的な「外交」を繰り広げていたアフリカ民族会議(ANC)との接触・関係構築が,日本の対南アフリカ政策に与えた影響について検討した。

  • 寺尾 忠能
    原稿種別: 論文
    2024 年65 巻3 号 p. 61-96
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/30
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    台湾の環境政策,環境行政は1971年の行政院衛生署とその部局であった環境衛生處の設立から始まった。環境衛生處は,通常の環境衛生だけでなく,公害防止と環境政策の多くの分野を担当した。本稿は,まず1971年の行政院衛生署設立に対して,1967年の台北市の行政院直轄市への昇格が大きな影響を与えたことを明らかにする。1971年以前,中央政府では内政部衛生司が衛生行政を担当していたが,衛生行政の多くを実質的に台湾省政府衛生處が分担していた。1967年に台北市が行政院直轄市に昇格して台湾省政府の管轄から離れた結果,中央政府の衛生行政組織を拡充する必要が生じた。また,環境衛生處の設置は行政院の当初の想定にはなく,行政院衛生署組織法案が立法院で修正を受けた結果であった。行政院は当初は衛生署を内政部の部局のまま昇格させる予定だった。しかし,対外的な危機への対応として衛生行政の成果を国際社会にアピールするために,行政院直属の行政組織に変更した。そのために組織法を立法院で成立させることが必要となった。行政院衛生署組織法案の修正には,国民党政権の移転後に台湾で初めて行われた1969年の欠員補充選挙で新たに当選した立法委員が重要な役割を果たした。政策形成の一連の動きは,いくつかの意思決定と国際環境への対応がもたらした事前に予期されなかった影響が積み重なった結果であった。

  • 三浦 航太
    原稿種別: 論文
    2024 年65 巻3 号 p. 97-125
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/30
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    今日世界各国で蔓延する政治不信のなかで,不信の対象たる政党と結びついてきた中間団体の弱体化が指摘されている。本稿では政治不信が広がるチリを事例として,今なお重要な中間団体であり続けている学生運動を分析対象とし,政治不信は学生運動の不信に結びついているのか否かを検証する。学生運動は,歴史的には政党青年部を通じて政党政治と結びつく政治エリートの一部という側面を持つ。他方で,今日では既成政党と距離を置き政権に対して抗議行動を行う政治エリートへの抗議者の側面も持つ。分析の結果,政党政治への不信は一貫して学生運動への不信と結びつく一方で,学生運動が政権と激しく対立するときには,政権不支持が学生運動への信頼と結びつくことが明らかとなった。この結果は,学生運動もまた他の中間団体と同様に政治不信とともに弱体化する一方で,抗議行動を通じて政治不信を自らの信頼につなげ弱体化を止めうることも示唆している。

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第45回アジア経済研究所発展途上国研究奨励賞 講評・受賞のことば
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