改革開放後の中国では,食品安全の危機は深刻な社会問題となっている。本稿の目的は,中国の食品安全の分野における消費者主権をめぐる民間組織の活動や「職業打假人」(摘発プロ)の行動を中心に,その実態を跡づけた上で,それぞれが直面している課題と限界を明らかにすることにある。研究手法としては,おもに文献資料による実態の解明と事例分析,および摘発プロ,企業担当者,行政職員など関係者へのヒアリングに依拠している。
食品安全をめぐる消費者運動については,法制度の不備,企業からの圧力,摘発プロの金儲け主義,行政の企業寄りの姿勢など,依然として多くの困難や障害が横たわっている。今後,事態を大きく改善するには,消費者主権の理念に基づき,消費者組織や消費者運動の健全な発展を促し,公平公正な市場体系を構築していかなければならない。
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