アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
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論文
  • 許 楽
    原稿種別: 論文
    2024 年 65 巻 4 号 p. 2-33
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/25
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    1958年,中国共産党は大躍進運動を背景に,失業現象の消滅を宣言した。しかし,その後間もなくして,都市部の人口削減を目的とする精簡政策が実施され,3年間で2600万もの都市人口が削減された。本稿は,上海市を事例に,「失業消滅」がもたらした影響と,「失業消滅」を維持させた政治的メカニズムを分析するものである。「失業消滅」をめぐり揺れ動く中央政府の労働政策と未熟な計画経済体制は,地方レベルに労働力の削減,労働力の維持・拡大という相矛盾する双方向の圧力をかけた。この双方向の圧力に対応するために,地方政府,企業,基層社会組織,労働者など多様なアクターは,計画経済体制の外部に,労働力の流動を担保する空間を創出した。この空間の存在は,「失業消滅」の現実を支え,中国の計画経済体制を補完する役割を果たした。

  • 広川 佐保
    原稿種別: 論文
    2024 年 65 巻 4 号 p. 34-63
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/25
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    本稿では,オラーンチャブ盟を中心に,蒙疆政権時代における盟旗制度について,領域とジャサグの権限に注目して検討する。盟はモンゴル遊牧社会の動態に沿った組織であったが,農耕化や省県の設置により,内モンゴルでは,20世紀までに盟の解体が進んだ。1930年代,内モンゴル西部において,徳王らは国民政府に対して省廃止を求める自治運動を展開した後,蒙疆政権の支配下に入った。ここで徳王は,新たに盟公署を設置してモンゴル人による支配を強化しようとする。しかし盟はそもそも組織的実態がなく,これをどのように組織化し,運用していくかは,手探りの状況であった。蒙疆政権はオラーンチャブ盟で盟会議を開催したが,そこで王公らは清代の枠組みに沿って,領域とジャサグ制度の維持を求めた。しかし蒙疆政権側はジャサグ制度の維持を認めただけで,開墾地(領域)の問題は解決できなかった。その結果,同盟の各旗は不安定化したまま1945年を迎えた。

研究ノート
  • 梁 憬君
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 65 巻 4 号 p. 64-98
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/25
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    改革開放後の中国では,食品安全の危機は深刻な社会問題となっている。本稿の目的は,中国の食品安全の分野における消費者主権をめぐる民間組織の活動や「職業打假人」(摘発プロ)の行動を中心に,その実態を跡づけた上で,それぞれが直面している課題と限界を明らかにすることにある。研究手法としては,おもに文献資料による実態の解明と事例分析,および摘発プロ,企業担当者,行政職員など関係者へのヒアリングに依拠している。

    食品安全をめぐる消費者運動については,法制度の不備,企業からの圧力,摘発プロの金儲け主義,行政の企業寄りの姿勢など,依然として多くの困難や障害が横たわっている。今後,事態を大きく改善するには,消費者主権の理念に基づき,消費者組織や消費者運動の健全な発展を促し,公平公正な市場体系を構築していかなければならない。

書評
紹介
『アジア経済』総目次 2024年
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