日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
11 巻, 4 号
令和元年10月
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
巻頭言
特別企画
◆日本補綴歯科学会誌 特別企画 座談会
依頼論文
◆企画:エビデンス&オピニオン 第8回
  • ─口腔機能と脳機能の活性化をめざして─
    細井 紀雄
    原稿種別: 依頼論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 302-308
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

     無歯顎や多数歯欠損は主として可撤性義歯によって機能や審美の回復が図られるが,そのためには機能時に義歯床が床下支持組織と適合していることが必要である.咬合圧下で義歯床の適合試験を行い,負担圧が適正に配分され,十分な支持が得られているか診断する.機能時に支持組織の負担圧が均等化すると咬合力も強く発揮できる.旧義歯と新義歯あるいは使用中義歯の調整前と調整後で咀嚼筋筋電図から算出した咬合力と負担圧分布との関係から変化する様相を検討した.下顎骨が高度に吸収した症例に軟質裏層材の応用が有効であること,咬合力の回復が咀嚼機能の改善だけでなく,脳機能の活性化に繋がることを併せて報告する.

◆企画:第128回学術大会委員会セミナー1(用語検討委員会)「歯科補綴学専門用語集〜改訂のポイント」
  • 村上 格, 古地 美佳, 秋葉 陽介, 木本 統, 木本 克彦, 岡崎 定司, 西村 正宏
    原稿種別: 依頼論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

     この度,4年ぶりに歯科補綴学専門用語集第4版が改訂され,2019年3月25日に第5版が発刊された.第5版では学問と時代の変化に伴って新たな用語が多く収載されたこと,また旧版収載用語のうち,用語やその意味が変わったものが多々ある.

     本稿では,用語集第5版の改訂の流れ,新規収載用語ならびに変更内容を解説するとともに,今後の用語検討の在り方に関する委員会案についても紹介する.

     本稿を通じて読者の皆様が新たな歯科補綴学専門用語集を存分に活用していただければ幸いである.

◆企画:プロソ’18 インプラント治療における審美修復のOutcome
「インプラント埋入位置と上部構造固定様式の違いが審美性に及ぼす影響」
  • ─上顎前歯部インプラント治療について─
    上田 一彦, 渡邉 文彦
    原稿種別: 依頼論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 315-320
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

     現在,インプラント治療は,長期の良好な予後が期待できる欠損修復法の1つの選択肢である.また患者の高度な審美回復への要望に対しても,CAD/CAMを用いたオールセラミック上部構造の臨床応用は良好な結果を獲得している.特に機械的強度,審美性,生体親和性に優れるジルコニアは,インプラント治療への応用では,主にスクリュー固定式とセメント固定式の2つの固定性上部構造に用いられている.上顎前歯部修復ではそれぞれ上部構造の固定様式によりインプラント埋入位置や方向,上部構造の形態が異なり,審美性において異なる臨床結果を示し,スクリュー固定式ではインプラント埋入方向が限定される.

「インプラント修復における水平的・垂直的骨造成」
  • 上野 大輔
    原稿種別: 依頼論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 321-326
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

     骨造成の目的は咀嚼機能の回復に必要な骨量の獲得だけではなく,審美性や清掃性の向上のためにも行われる.この際,さまざまな骨造成法の中から欠損形態に適した手法を選択する必要がある.骨欠損形態は周囲が骨壁に囲まれた内側性の骨欠損,外側に骨造成が必要になる水平性と垂直性の骨欠損に大別することができる.水平性,垂直性の骨造成は内側性に比べ周囲骨からの骨形成細胞などの供給が得にくい.一方で,口唇圧や咀嚼圧などの外圧に影響をうけるため,造成時の形態を維持するための工夫が必要となる.本稿ではさまざまな骨欠損形態における骨造成法の選択基準について,症例提示と文献レビューを通して考察する.

「Patient-Oriented Strategyからみた補綴設計とTissue Management」
  • 佐藤 洋平, 白井 麻衣, 清水 賢, 仲田 豊生, 鈴木 銀河, 大久保 力廣
    原稿種別: 依頼論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 327-331
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

     前歯部欠損は審美領域と称されるだけに患者と術者ともに関心の中心は審美性の回復にある.歯の喪失によりほぼすべての症例で周囲組織はボリュームを減ずる.したがって理想的なポジションに歯冠を位置付ける補綴主導型インプラント治療では,よりティッシュマネージメントの重要性が増す.補綴設計の工夫により外科的侵襲の軽減や治療期間の短縮ができる場合もある.治療計画の立案にあたっては患者側の要件を十分に考慮したPatient-Oriented Strategyが必要である.カンチレバーやガム補綴などを応用した補綴的な戦略も考慮したティッシュマネージメントに関して考察する.

「長期安定を目指した審美インプラント治療のストラテジー」
  • 佐藤 隆太
    原稿種別: 依頼論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 332-338
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

     近年のインプラント治療で審美性の維持獲得も患者の満足度に影響している.審美領域におけるインプラント治療では欠損歯および硬軟組織の量と周囲組織形態との調和が重要である.フルマウスリコンストラクションにおいては前述の項目に加え,咬合高径やリップサポートの変化による顔貌への影響など調和のとれた最終修復物を見据えたアプローチが必要となる.また作り上げた審美性は一過性のものとしてはならず,長期に安定させたい.連結上部構造製作時には不適合を最小限にするIAT(口腔内接着技法)を用いることで良好な経過を追っている経験を基に,さまざまな治療要件を持った審美インプラント症例を供覧したい.

◆企画:「上顎無歯顎のインプラント補綴 固定性vs.可撤性 読後感」
原著論文 ◆Secondary Publication
  • ─(公社)日本補綴歯科学会による多施設臨床研究─
    窪木 拓男, 市川 哲雄, 馬場 一美, 藤澤 政紀, 佐藤 博信, 會田 英紀, 小山 重人, 秀島 雅之, 佐藤 裕二, 和気裕之 , ...
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 355-375
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:日本補綴歯科学会は,補綴歯科治療を必要とする患者の複雑な多様性を評価し,それをもとに難易度分類を行うことを目的に「補綴歯科治療の難易度を測定する多軸診断プロトコル」を作成し,すでに臨床上十分な信頼性を示すことを確認した.本研究では多施設臨床追跡研究により本プロトコルの妥当性を検討した.

    方法:新たに作成した多軸診断プロトコルは,口腔内の状態,身体社会的状態,口腔関連QOL(OHIP-J54),精神心理学的状態の4つの診断軸からなる.それぞれグレード0(易しい)から3(難しい)の4段階評価を行う.

     日本補綴歯科学会の認定研修施設である大学病院補綴科9施設で,歯質もしくは歯列欠損に対し補綴歯科治療が必要と判断された初診患者を連続サンプリングした.補綴歯科治療前に,本プロトコルを用いて難易度評価を行った.そして補綴歯科治療後に,治療に要した時間,医療費などの医療資源および口腔関連QOL 評価を行った.

     本プロトコルの構成概念妥当性は,治療前の術者の主観による難易度評価と,本プロトコルの各軸の難易度の相関を求め検討した.予測妥当性は,総医療費,総治療時間,治療前後の口腔関連QOL 変化量をサロゲートエンドポイントとして用い,本プロトコルの4つの診断軸の難易度を統合した総合難易度との相関を求めた.

    結果と考察:口腔内の状態(Axis Ⅰ),身体社会的状態(Axis Ⅱ),口腔関連QOL(Axis Ⅲ)と治療前の術者の主観による難易度評価は,有意な正の相関を示した.一方,精神心理学的状態(Axis Ⅳ)と治療前の術者の主観による難易度評価には相関が認められなかった.

     術前に本プロトコルで評価した患者の総合難易度は,治療の難易度とよく関連すると考えられるサロゲートエンドポイント(総治療費,総治療時間,口腔関連QOL 改善量)のいずれとも有意に相関した.口腔内状況別にこの関係を精査すると,術前の総合難易度評価は,全部歯列欠損症例や部分歯列欠損症例においては,これらのサロゲートエンドポイントの一部と有意に相関が認められたが,全部歯列欠損と部分歯列欠損の混合症例や歯の問題の症例においては,それらのサンプルサイズが小さいこともあり有意差が認められなかった.

    結論:補綴歯科治療の難易度を初めて多軸診断することに成功した本プロトコルの総合難易度評価は,全部歯列欠損症例や部分歯列欠損においては,臨床使用上十分な予測妥当性を示すことがわかった.

原著論文
  • 岩脇 有軌, 後藤 崇晴, 岸本 卓大, 南 憲一, 藤本 けい子, 市川 哲雄
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 376-382
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では,アルコール含有義歯安定剤であるホームリライナーの使用が呼気中アルコール濃度(Breath alcohol concentration: BAC)へ与える影響を明らかにすることを目的とした.

    方法:義歯安定剤3種類および粘膜調整材2種類において,口腔内を模した準閉鎖空間内でのアルコール臭の拡散実験を行い,におい強度の経時的変化の検討および露出面積による差の比較を行った.また,健常有歯顎者に義歯安定剤を使用した口蓋床を装着し,アルコール検知器でBACの測定を行った.粘膜調整材に対しても同様の方法でBAC を測定し義歯安定剤の結果と比較した.更に,装着5分後に撤去し,撤去後のBACを測定した.

    結果:拡散実験では,義歯安定剤のにおい強度は露出面積に比例し,増加した.健常有歯顎者に対するBAC測定では,装着直後が最も高く,装着5分後までは酒気帯び運転の基準となる0.15 mg/Lを上回っていたが,経時的に減少し,装着30分後で0 mg/L となった.また,義歯安定剤のBACは粘膜調整材と比較して有意に高い値を示した.口蓋床撤去時には,一時的な増加は認めるが撤去10分後に0 mg/Lとなった.

    結論:義歯安定剤はアルコールを放出し,BACに影響を与える可能性があるが,使用法の遵守または口腔外への撤去によりその影響を小さくできることが明らかとなった.

  • 五十嵐 一彰, 盛植 泰輔, 酒井 悠輔, 池田 敏和, 船川 竜生, 伊藤 歩, 内山 梨夏, 関根 秀志
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 383-390
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:小臼歯CAD/CAM冠による補綴治療を行った患者の属性および装着されたCAD/CAM冠の予後を調査した.また,選択された支台築造および装着時のセメントが予後にもたらす影響を分析した.

    方法:歯科診療録を用いて,平成26年4月から平成28年3月の期間に奥羽大学歯学部附属病院でCAD/CAM冠が装着された患者の性別,年齢,装着部位について同時期の全部金属冠(FMC)装着患者と比較し調査した.クラウン自体の予後についてもKaplan-Meier法による累積生存曲線を描出し,log-rank検定にて同時期に装着されたFMCと比較した.さらに,CAD/CAM冠については,装着部位,支台築造状況および装着に使用したセメントを説明変数に,予後を目的変数として設定し数量化2類を用いて分析した.

    結果:CAD/CAM冠装着患者はFMC装着患者と比較して女性の割合が有意に高く,平均年齢は低かった.2年予後はCAD/CAM冠が有意に脱離しやすい結果となり,相対危険度は高値を示した.数量化2類による分析ではレンジ,偏相関係数ともに使用したセメントにおいて高値を示したが,判別的中率,相関比は低値を示した.

    結論:CAD/CAM冠は50歳代後半の女性に需要がある一方,脱離が多かった.そのため,支台歯の選択,歯科材料,ひいては接着システムの理解によるテクニックセンシティブ因子のコントロールが重要となることが示唆された.

  • 古玉 明日香, 野川 敏史, 岩田 航, 山田 怜, 高山 芳幸, 横山 敦郎
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 11 巻 4 号 p. 391-398
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:食環境や口腔機能における初期の虚弱兆候の4つのフェーズとQOLには関係があると報告されているが,口腔機能低下症の検査項目と口腔関連QOLの関連については詳細には検討されていない.本研究では,地域住民における口腔機能低下症の罹患状況を調査し,その口腔関連QOLへの影響を検討した.

    方法:北海道札幌市厚別区役所が主催した「あつべつ健康・福祉フェスタ」に参加し,本研究の実施に同意した65歳以上の者を対象とした.口腔機能低下症の診断に用いられる検査のうち5種を行い,OHIP-14によって口腔関連QOLを評価した.OHIP-14と各変数の比較には,Wilcoxonの検定またはKruskal-Wallisの検定を用い,多重比較にはSteel-Dwassの検定を用いた.口腔機能低下を認めた検査項目数とOHIP-14スコアでSpearmanの順位相関係数を求めた.また,ロジスティック回帰分析により各検査のOHIP-14に対するオッズ比を求めた.

    結果:OHIP-14スコアは,残存歯数が20歯未満の者で有意に高かった.被験者の18%が検査項目の3項目以上に該当し口腔機能低下症と診断され,口腔機能低下の項目数とOHIP-14スコアに有意な相関を認めた.さらに,残存歯数と嚥下機能がOHIP-14スコアに有意に関連する因子となった.

    結論:自立した地域住民において18%の被験者が口腔機能低下症と診断され,残存歯数および嚥下機能とOHIP-14スコアに関連があることが示された.さらに,口腔機能低下症の診断項目の該当する数が増えるに伴い,口腔関連QOLが低下する可能性が示唆された.

専門医症例報告
  • 川嶋 一誠
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 399-402
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は59歳,男性.上顎義歯の不適合による咀嚼障害を主訴に来院した.臼歯部の咬合支持がないため,下顎前歯の突き上げによる上顎義歯の矢状面回転が発現していた.上顎に二重構造フレームワークを適用した金属構造義歯,下顎は硬質レジン歯を適用した金属床義歯による補綴を行った.

    考察:硬質レジン歯の適用と剛性の高い義歯を装着したことで,患者は審美性と機能性に非常に満足した.

    結論:すれ違い咬合に対し,適切な前処置と設計を行うことにより,義歯の支持,把持が向上し,良好な咬合機能の回復が図れた.

  • 杉山 慎太郎
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 403-406
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:66歳男性.奥歯がなくものが食べられないという主訴で来院した.咬耗による咬合高径の低下が認められたため,オクルーザルスプリントとプロビジョナルレストレーションを用いて咬合の再構成を行い,固定性と可撤性の補綴装置を装着して咀嚼障害の改善を行った.

    考察:オクルーザルスプリントを用いて垂直的な顎間関係の修正を行うことで咬合高径の低下を改善することができた.その顎位を参考にしてプロビジョナルレストレーションを装着して機能的,審美的に問題のない適正な顎位を再構成した結果,主訴の改善に繋がったと考えられる.

    結論:著しい咬合高径の低下に対して,適正な顎位の改善を図ることで咬合や審美性,咀嚼機能の回復に有効であった.

  • 尾﨑 研一郎
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 407-410
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:舌がん再発にて舌亜全摘,舌再建術を施行した患者(71歳男性)に対する舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis: PAP)を製作した.主訴は術後の嚥下困難感であった.初診時,Universal Design Food(UDF)区分4(かまなくてもよい)と経腸栄養剤を1食あたり90分かけて摂取していた.

    考察:PAPを装着後3年が経過した.装着により食塊の送り込みや嚥下反射の惹起性の向上を認めUDF区分4の摂取が1食あたり30分で可能となり経腸栄養剤は不要になった.

    結論:舌亜全摘,再建術後のPAPは経口摂取の維持において有効と考える.

  • 菊井 美希
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 411-414
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:57歳の男性,主訴は下顎全部床義歯不安定による咀嚼困難であった.下顎の顎堤吸収は著しく,また義歯床縁が短いため,辺縁封鎖の不良による維持力の低下が疑われた.そこで,新義歯製作においては,床縁の位置と形態に留意し,頰粘膜と舌の可動域を視診と触診にて確認し,閉口状態で患者自身の口腔周囲筋や舌の動きを利用した印象採得を行った.

    考察:旧義歯より得られた情報を踏まえ,閉口機能印象を行うことで,舌や口腔周囲筋の機能を反映した辺縁形態を付与することができ,良好な結果となったと考えられる.

    結論:高度顎堤吸収無歯顎症例において,適切な床縁形態の設定と閉口印象は維持安定の改善に有効であった.

  • 藤田 崇史
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 415-418
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は79歳男性.上下顎全部床義歯の維持力不足と咀嚼困難を主訴に来院した.術前の咀嚼機能検査ではグルコース濃度74 mg/dL と低い値を示し,義歯不適合による咀嚼障害と診断された.治療用義歯を用いて咀嚼機能の改善を確認したのち,ダイナミック印象を行い上下顎新義歯を製作した.

    考察:本症例では,治療用義歯にて獲得した義歯の機能的要素および形態的要素を新義歯にトランスファーすることができたため,良好な結果が得られたと考えられる.

    結論:新義歯装着後に咀嚼機能の改善が認められた.新義歯への馴化を促すために,治療用義歯は有効であった.

  • 池田 貴之
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 419-422
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は82歳の女性,義歯不適合および咀嚼困難を主訴に来院した.

    旧義歯は形態不良で維持力に乏しかった.下顎左右顎堤の高さおよび粘膜の被圧変位量の差が大きかった.咬合重心に配慮した上下顎全部床義歯による治療を行った.

    考察:日本補綴歯科学会が推奨している症型分類や研究用模型での診査を十分に行い症例の難易度を的確に把握したこと,適切な治療方針を構築したことが良好な結果につながったと考えられる.

    結論:義歯の外形,咬合重心に配慮した人工歯排列および咬合調整により咬合力の負担を均等にしたことで,良好な結果を得ることができた.

  • 伏木 亮祐
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は27歳女性.上顎小臼歯部欠損による咀嚼障害および審美障害を主訴に来院した.診断用ワックスパターン形成を参考にしたプロビジョナルレストレーションを装着後,ジルコニアオールセラミックブリッジおよび二ケイ酸リチウム含有セラミックスを使用した部分被覆冠による補綴治療を行った.

    考察:プロビジョナルレストレーションを用いて,安定した下顎位を確認後,補綴処置を行い,適切な補綴装置の設計および接着操作を行ったことが長期安定したセラミック修復の獲得に寄与したと推察される.

    結論:セラミック修復を適用することで長期的に安定した審美的で機能的な回復が可能であることが示唆された.

  • 鈴木 善貴
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:54歳女性.閉塞性睡眠時無呼吸症に対しオーラルアプライアンス(OA)を装着し,咬合の変化による咀嚼困難を感じたため来院.暫間補綴装置にて適切な咬合を探り,半調節性咬合器上で臼歯部の補綴装置を再製作した.その後,下顎前方移動量を1 mmに抑えたOAを新製し,3年経過後も良好な咬合・睡眠状態を維持している.

    考察:可及的に臼歯部での咬合接触・ガイダンスを付与し,OAの前方移動量を少量としたことで,咀嚼困難が解消され,歯列形態が維持できているものと考える.

    結論:OA使用症例の咬合治療の際には,その後の咬合の変化を最小限にするために,OAの設計を考慮する必要がある.

  • 木村 尚美
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 431-434
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は64歳男性.補綴装置による違和感および上顎臼歯部欠損による咀嚼障害を主訴に当科を受診した.これまでにレジン床義歯を三度製作していたが,補綴装置による違和感のためいずれも使用できなかった.

     新義歯製作に先立ち,熱可塑性樹脂にて口蓋床を製作.新製義歯の口蓋形態を模索し,前後パラタルバーを用いたCo-Cr製の金属床義歯を製作し,主訴の改善を図った.

    考察:金属床義歯を製作した義歯により,患者の満足が得られた.術後4年を経過したが,義歯の安定は損なわれず経過は良好であった.

    結論:両側上顎臼歯部欠損症例に対し,大連結子の選択に配慮し,金属床義歯を適用して,良好な結果を得た.

  • 堤 一輝
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 435-438
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:59歳の女性.咀嚼時の義歯動揺による咀嚼困難,上顎義歯前歯舌側部に舌が触れることによる違和感,維持装置・人工歯による審美不良を主訴に来院.欠損部の一部にブリッジを選択し,上下顎部分床義歯を製作した.

    考察:前歯部欠損部に対しブリッジを選択したことで審美・感覚障害を,義歯における大連結子の設計により感覚障害を改善できたと考える.また,大連結子は口蓋前・後方を被覆しない形態のため,支台装置にミリングテクニックを用い義歯の安定性は向上し咀嚼障害を改善できたと考える.

    結論:各々の障害の要因に対する解決策として補綴装置の設計を考慮し,その要因を取り除いたことで良好な結果が得られた.

  • 奥村 暢旦
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 11 巻 4 号 p. 439-442
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は59歳女性.下顎両側臼歯部欠損による咀嚼困難のため来院した.前後的すれ違い咬合に移行するリスクが極めて高いと判断し,インプラントによる咬合支持の回復と,残存歯による適正なアンテリアガイダンスの付与を目的に補綴治療を行った.

    考察:欠損の拡大により治療の難易度が高くなることを理解し,顎位や咬合平面の是正など積極的な治療の必要性を患者と共有できたことが,術後の安定につながったと考えられる.

    結論:欠損の拡大や補綴的難症例への移行リスクがある症例に対して,プロビジョナルレストレーション等を用いて検討を行い,適切な顎位の設定とアンテリアガイダンスの確立ができたことで良好な予後が得られた.

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