日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
12 巻 , 4 号
令和2年10月
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:誌上シンポジウム「全身疾患と口腔機能」
  • 古屋 純一
    原稿種別: 依頼論文
    2020 年 12 巻 4 号 p. 309-315
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

     脳卒中(脳血管障害)は虚血性(脳梗塞)と出血性(脳出血,クモ膜下出血)がある.要介護原因第二位の疾患であり,脳機能障害によって口腔機能にも後遺障害が生じる.脳卒中による口腔機能の障害は,感覚機能,運動機能,そして統合機能の障害であるが,病期によって症状が変化しうる.

     脳卒中の口腔機能管理は,摂食嚥下リハビリテーションが中心となるが,口腔衛生や義歯などの口腔機能が不良であることが多い.そのため,多職種連携(協働)の中で口腔機能の評価と管理を行い,職種や地域を超えたシームレスな連携をすることが重要である.特に,義歯への対応は歯科医師にしか行えないため,今後の補綴歯科のアプローチに期待したい.

  • 飯田 良平
    原稿種別: 依頼論文
    2020 年 12 巻 4 号 p. 316-321
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

     パーキンソン病は神経変性疾患のなかではアルツハイマー型認知症に次いで多く,訪問歯科診療などの現場では少なからず遭遇する.オーラルジスキネジアや開口保持が困難となれば,種々の歯科治療だけでなく口腔衛生管理に際しても難渋することとなる.姿勢や口腔機能の障害が進行すれば,義歯のコントロールも不良となり,徐々に使用困難となることが多い.摂食嚥下障害は高率に存在するが身体的運動障害とは必ずしも関連しないとされている.また不顕性誤嚥(誤嚥してもむせがみられない)の多いことも特徴とされている.患者の予後に影響する①摂食嚥下障害における口腔衛生管理や摂食機能療法,②水分・栄養・服薬管理の観点からの口腔機能管理,③付随する唾液誤嚥や流涎,そして顎関節脱臼への対応など,歯科が対応すべき問題は多いと考える.

  • 平岡 綾, 吉田 光由, 津賀 一弘
    原稿種別: 依頼論文
    2020 年 12 巻 4 号 p. 322-329
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

     神経変性疾患は,アルツハイマー病,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症などを含む,いわゆる神経難病であり,病理学的には神経細胞死と脳内への異常タンパク質の蓄積を特徴としている.現在,それぞれの疾患に対する治療薬は一部存在しているが,病気の進行を阻止するあるいは正常な状態に戻すような根本的な治療法は確立されておらず,口腔機能や摂食嚥下機能の障害に対しても,症状に応じた対応をしていくしかないのが現状であり,個々の患者に応じたきめ細やかな対応が求められる.

  • 柏﨑 晴彦
    原稿種別: 依頼論文
    2020 年 12 巻 4 号 p. 330-336
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

     口腔に対して機能的・器質的な障害を生じる薬剤は,口腔機能低下をもたらす可能性がある.意識レベルや注意力を低下させる薬剤,唾液分泌低下を起こす薬剤,口腔運動機能を障害する薬剤,味覚障害を起こす薬剤,口腔粘膜障害を起こす薬剤に大別できる.対応としては,主治医と連携したうえで,薬剤の変更や減量が有効であるが,変更不可能な場合が多くある.原因薬剤への対応に加え,口腔環境の改善・維持をはかることが大切である.薬剤性味覚障害や抗悪性腫瘍薬による口腔粘膜炎については特異的な対応が必要である.処方されている薬の情報について正しく理解することが大切である.

症例報告
  • 奥村 暢旦, 荒井 良明, 河村 篤志, 長谷川 真奈, 小松 万記, 原 さやか, 髙木 律男, 藤井 規孝
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 12 巻 4 号 p. 337-343
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は57歳の女性.下顎の右側偏位と顔貌の非対称による審美障害を主訴に来院した.右側下顎頭骨軟骨腫の診断にて右側下顎頭切除術施行後に右側第二小臼歯から左側第二大臼歯までの広範囲な開咬が生じたため,プロビジョナルレストレーションを装着し,開咬の改善と安定する顎位を長期間にわたり検討した.下顎位が安定し,顎関節症状が生じないこと,良好な顎運動を行えること,咀嚼と審美性に支障が無いことを確認した後に最終補綴治療を行った.

    考察:下顎頭骨軟骨腫は比較的緩慢な経過をたどる良性腫瘍であり,本症例も顔貌の非対称を自覚するまでに長期間を要した.この間に行われた補綴治療は,右側下顎頭が過形成した状態で製作されたと考えられる.今回右側下顎頭部腫瘍切除によって,腫瘍により右側に偏位した咬合関係で補綴され,歯冠長の大きな右側臼歯部補綴装置のみが早期接触した結果,その他の部位に広範囲な開咬が生じたと考えられた.

    結論:下顎頭切除後に生じた広範囲な開咬に対して,プロビジョナルレストレーションを用いて慎重に経過を確認することで,顎関節や咀嚼筋,新たな咬合に適応した下顎位が得られ,最終補綴装置の装着が可能となった.下顎頭切除後の口腔リハビリテーションにおいては,術後の顎関節や咀嚼筋の安定には数か月から1年ほどの期間を要する可能性が高く,顎位の3次元的な計時的変化に応じた慎重な補綴介入の重要性が示唆された.

専門医症例報告
  • 水野 遥子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 12 巻 4 号 p. 344-347
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:初診時22歳の女性.上顎義歯の維持不良と鼻腔への水の漏出を主訴に来院.口唇口蓋裂の既往があり,初診時に使用していた義歯は,支持・把持・維持が不足し,残遺孔部の封鎖は不十分であった.そのため,エーカースクラスプおよび鋳造双子鉤を設定した栓塞子つきの上顎義歯を製作した.

    考察:栓塞子に粘膜調整材を用いた後,レジンに置換し残遺孔を封鎖し,また,優れた支持・把持・維持を発揮する支台装置を設定することで,良好な結果が得られた.

    結論:残遺孔を伴う上顎前歯部欠損に対し,残遺孔の良好な封鎖と適切な支台装置の設定により,義歯の支持・把持・維持の不足と鼻腔への水の漏出を改善することができた.

  • 鶴岡 淳
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 12 巻 4 号 p. 348-351
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は75歳女性.(6)54(3)21|ブリッジの脱離を主訴に来院し,上顎左側中切歯と下顎右側中切歯間のみが残存歯同士で咬合接触をしていた.下顎部分床義歯の不適合による咀嚼困難と上顎前歯部欠損による審美不良と診断した.デンチャースペースの不足に対して治療用義歯による咬合挙上を行った後に,FGPテクニックと咬合圧印象を応用し,最終補綴装置として上下顎金属床義歯を製作した.

    考察:FGPテクニックと咬合圧印象を応用することで,治療用義歯によって得られた情報を最終義歯へ移行することができたと考えられる.

    結論:3年経過時の客観的・主観的機能評価は良好であり,本症例の欠損補綴治療が有効であったことが示唆された.

  • 本木 久絵
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 12 巻 4 号 p. 352-355
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は47歳の女性で,前歯部の審美障害を主訴に来院した.問題点として前歯部に歯冠補綴装置の不適合,歯の転位および変色などが挙げられた.

    考察:審美障害の原因が複数混在しており,歯冠補綴装置による審美障害の改善にとどまらず,周辺の歯に認めたさまざまな問題点に対しそれぞれ適切に補綴前処置を行うことで,前歯部全体の審美性改善という患者が満足する結果が得られたと考えられる.

    結論:審美性改善においてその原因一つ一つを正確に診断し,それぞれ適切に処置を行うことで,患者満足度の高い補綴治療が可能である.

  • 大野 晃教
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 12 巻 4 号 p. 356-359
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は64歳男性, 咀嚼困難を主訴に来院した.各種検査の結果,下顎前歯部の咬耗と咬合高径の低下が診断された.咬合再構成を行うため,咬合高径の決定には,客観的な評価を用い,プロビジョナルレストレーションおよび治療用義歯にて咬合挙上を行った.その後,最終補綴装置を装着し,定期的に経過観察を行い,現在3年以上経過しているが良好な経過が得られている.

    考察:咬合高径の低下に対して咬合再構成を行うことで,咀嚼機能および審美障害の改善を図ることができたと考えられる.

    結論:セファログラム分析を参考とした客観的な評価は,咬合再構成を行う際の咬合高径の決定に,有効であることが示唆された.

  • 駒ヶ嶺 友梨子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 12 巻 4 号 p. 360-363
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:70歳男性.「右で噛めないので噛めるようにして欲しい」との主訴で来院した.過蓋咬合であり,咬頭嵌合位での上顎と下顎の前歯部同士の咬合接触は認められず,前後的類すれ違い咬合であった.

    考察:固定性補綴物と治療用義歯による欠損補綴治療を行い,更に最終義歯の製作・装着後,3年4か月経過時に咀嚼筋に疼痛を訴えたが,その後,残存歯,歯周組織,顎関節,補綴物に大きな問題は認められておらず,良好な経過をたどっている.

    結論:上顎臼歯部の固定性補綴物と上顎前歯部と下顎臼歯部のリジッドサポートを考慮した設計の義歯の装着により,咀嚼機能の回復と残存している臼歯部の咬合支持の長期的保存を可能とした.

  • 前田 直人
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 12 巻 4 号 p. 364-367
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は82歳女性.咀嚼時における上下顎全部床義歯の脱離を主訴に来院した.新義歯製作において,片側性咬合平衡を確立するために,顎堤上の片側性咬合平衡が得られる領域を記録した上下顎模型を規格化撮影し,オクルーザルマップを作成した.その分析結果をもとに臼歯部人工歯排列を行った.

    考察:オクルーザルマップと片側性咬合平衡の確立に主眼を置いた人工歯排列によって,主訴が改善でき良好な結果を得ることができた.

    結論:本症例で用いたオクルーザルマップは,上下顎堤の対向関係の診査および片側性咬合平衡を確立するための人工歯排列の指標として非常に有用であった.

  • 門田 千晶
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 12 巻 4 号 p. 368-371
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:64歳男性.口底および舌癌術後の補綴歯科治療について,手術担当医より術前に依頼され当院歯科を受診した.術後,機能回復および補綴装置の形態検討のため治療用義歯を用いて機能訓練を行った後,最終補綴装置として上顎部分床義歯および下顎顎義歯を製作した.

    考察:術後早期より治療用義歯を用いて補綴装置の形態検討を行ったこと,その際に言語聴覚士が立ち会い嚥下と構音の変化を確認しながら歯科医師と連携したことが,患者の口腔機能改善とともに満足度を高めることに結びついたと考えられる.

    結論:機能運動に調和した補綴装置の形態決定により,適切な機能回復が可能となった.

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