日本補綴歯科学会誌
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4 巻, 2 号
【特集】第120回記念学術大会より
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
依頼論文
第120回記念学術大会 ジョイントシンポジウム1 「CAD/CAMからDigital Dentistryへ―コンピュータを応用した歯科治療の最前線―」
  • ―コンピュータを応用した歯科治療の最前線―
    末瀬 一彦, 疋田 一洋
    2012 年 4 巻 2 号 p. 121-122
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
  • 宮崎 隆
    2012 年 4 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    近年デジタル技術が歯科医療にも急速に導入されている.補綴治療においても,補綴装置作製の歯科技工にCAD/CAMの手法が利用され,新しいガラスやジルコニア系のファインセラミックスの利用が可能になった.さらに,光学印象用の口腔内スキャナーが開発され,印象採得から模型作製,歯科技工の全工程にデジタルの応用が進められている.このような補綴治療へのデジタルの応用は,患者にとって,低侵襲治療,治療期間の短縮,治療効果の向上,適正な治療コストなどから医療サービスの向上に貢献すると期待される.
  • 中村 隆志
    2012 年 4 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    オールセラミックレストレーションが臨床で数多く用いられるようになった.以前は,セラミックスの加工には煩雑な技工操作が必要であったが,CAD/CAMシステムの導入後は,セラミックスの技工が大幅に機械化された.ジルコニアをはじめとする高強度のセラミックス材料が開発されたこともオールセラミックレストレーションの普及を促進している.また,最近では歯科でもデジタル化が進み,セラミックスを加工するCAD/CAMシステムだけでなく,口腔内の印象採得にもCCDカメラを使用するデジタル印象が導入された.そこで本稿では,デジタル化が進んだオールセラミックレストレーションの概要と支台歯形成,さらに口腔内スキャナーを用いて行うデジタル印象について解説する.
  • 細川 隆司
    2012 年 4 巻 2 号 p. 140-147
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,CT撮影を行い顎骨の三次元データを用いてコンピュータで術前解析を行い,狙い通りにインプラント手術が実施できるシステムが開発されたことにより,いわゆるMI(低侵襲)の概念を導入したインプラント治療が比較的安全確実に行えるようになってきた.さらに,最近,CTの三次元データを用いて,三次元有限要素法モデルを構築し,生体力学的なシミュレーションを行うことにより,術前にインプラントの本数や配置を最適化することも可能になりつつある.そこで,本総説は,インプラント補綴治療介入におけるCTデータを用いたシミュレーションの活用に関して,三次元情報を用いた術前診断について,その現状と未来への方向性を論じたものである.なお,本総説は,2011年に広島で開かれた第120回日本補綴歯科学会学術大会において開催されたシンポジウムでの講演をまとめたものである.
  • ―材料をいかに生かして補綴装置を作り上げるか―
    増田 長次郎
    2012 年 4 巻 2 号 p. 148-155
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    補綴治療における予知性と審美性の両立は,外科術式や補綴の技術革新により,可能かつ容易となった.歯列の連続性を回復し,顎口腔機能へアプローチしたうえで審美性を確立していかなければならない.歯科材料の目覚しい発展によって,外科術式や補綴の選択肢・優位性が向上したことは周知の事実である.特に,CAD/CAMの進歩により,審美修復およびインプラント修復の幅が大きくなった.しかしながら,それらが先行するあまり,本来の患者本位の歯科医療の分野が置き去りにされていないかを本項において再考してみたい.今回は新素材ジルコニアに焦点を絞り,強度や光透過性や組織親和性などその特性を紹介するとともに,ジルコニアフレームの特徴を最大限引き出すための手法,さらにはインプラント(アバットメント)も含めた幅広い臨床応用や留意点について解説する.チェアーサイドとラボの役割分担を明確にし,同じ意識で一人の患者・一つの模型に取り組むことが重要であり,検査・診断・治療計画から,審美性と機能の回復,メインテナビリティの確立のために何が必要かを示していきたい.
第120回記念学術大会 臨床リレーセッション2 「欠損歯列を読む:治療結果に影響する因子を探る」
  • 宮地 建夫, 前田 芳信
    2012 年 4 巻 2 号 p. 156-157
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
  • 森本 達也
    2012 年 4 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    欠損歯列の評価として,咬合三角,アイヒナーの分類,受圧条件,加圧条件などから,症例の全体像の特徴,補綴物の効果とリスク,その後の進行の傾向などを推測している.しかし同じ欠損形態でも,その評価が処置方針に直結しない場合も多々あるため,さらに細かい評価項目を設けて,経過のなかから処置方針を考えていく方法をとっている.今回初期に予想された病態の進行がみられなかった症例を通じて,上記の評価基準の次の評価として,加圧条件にも影響する咬合力のバランスも,欠損歯列を読む評価指標として必要ではないかということを検討してみた.
  • 牛島 隆
    2012 年 4 巻 2 号 p. 164-169
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    欠損進行のリスク因子は初期欠損から,中期欠損,多数歯欠損といった欠損進行の過程のなかで,その影響の大きさは異なっており,補綴設計を考えるうえでも,その比重を考えながら進めていく必要がある.個々のケースに対峙したときに,どういった因子が欠損進行に影響するのかを思考する場面では,すべての因子を総合的に判断し,柔軟な個別対応が必要になるが,仮説の検証のためには,問題点を一つひとつバラバラにしてみたほうが考察しやすく,欠損の進行にかかわる要素の分析とその傾向を探ってきた.今回は欠損進行に関する臨床データを分析し,“欠損歯列を読む”ことの一助としている例をご紹介させていただきたい.
  • 鷹岡 竜一
    2012 年 4 巻 2 号 p. 170-177
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    近年のインプラントの発展はめざましく,その生存率も格段に高くなっている.インプラントを応用すれば,従来ブリッジで対応していたような少数歯欠損症例はなくなり,現在ではパーシャルデンチャーの適応であった多数歯欠損症例への応用も見られ,クラウンブリッジで対応できる歯列へ改変されている.しかしながら歯科疾患は慢性疾患であり,処置方針も経過の良否も患者の個別性に色濃く影響を受けると言われている.欠損歯列も類に違わず画一的・永続的な処置方針は選択が難しく,術者が製作するパーシャルデンチャーに次の一手という設計を組み込む理由も理解できる.言い換えれば年齢とともに変化してゆく生体への対応を加味しているのかもしれない.本稿では欠損歯列の難症例といわれている咬合三角第III エリアに突入している3症例を提示し,患者の個別性を配慮しながらそれらの症例が本当に難症例なのかを検証してみたい.また欠損歯列の改変の必要性を考察しながら,従来法であるパーシャルデンチャーの可能性と限界を探ってみたいと考えている.
  • ―5年以上のメインテナンス症例の観察結果から―
    前田 芳信
    2012 年 4 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    欠損歯列に対する補綴処置を考える場合,従来はどのように機能を回復するか,装置をいかに長期に安定させるかが重要な課題としてとりあげられてきた.しかしながらそれにも増して,来院された状態より「歯と顎骨の欠損を拡大しない」ことを目的とし,そのためには何をみて何をしなければならないかを問題にする必要があるように思われる.本稿では,補綴装置を装着して5年以上,最長25年を経過した110症例の経過観察結果から,「適合・外形・咬合・剛性」に関して分析した結果をもとに,特に「欠損が加速的に拡大した症例」と「欠損が進行しなかったか,進行がわずかであった症例」について考察した.
原著論文
  • 依田 信裕, 渡辺 誠, 末永 華子, 小針 啓司, 濱田 泰三, 佐々木 啓一
    2012 年 4 巻 2 号 p. 183-192
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:近年,ノンクラスプデンチャー(NCD)の臨床応用が拡大している.しかしながら,機能時にNCD が生体に及ぼす力学的影響に関しては,不明な点が多い.本研究はNCD装着時の支台歯および義歯床下粘膜部へ加わる荷重を静力学的に測定し,それらからNCDの生体力学的特徴を明らかにすることを目的とした.
    方法:下顎第一小臼歯と第二大臼歯を支台歯とし,第二小臼歯と第一大臼歯が欠損している中間欠損歯列モデルを製作した.両支台歯内部には小型水晶圧電式センサを,また義歯床下粘膜相当部にはシート型触覚センサを設置した.実験用義歯は,材料がポリアミド–ナイロン系樹脂のみ(PA-NCD),ポリカーボネート系樹脂のみ(PC-NCD),支持・把持要素に金属フレームを用いたポリカーボネート系樹脂(mPCNCD),および一般的なアクリリックレジン製部分床義歯(PMMA-CD)の計4種類とした.実験用義歯の人工歯相当部に静的荷重(10,30,50,100 N)を段階的に負荷し,支台歯および義歯床下粘膜に加わる荷重を測定し,実験用義歯間で比較した.
    結果:支台歯の歯軸方向に加わる荷重量は,義歯への負荷が50,100 Nの場合,PA-NCD とPC-NCDに比較してPMMA-CDにおいて有意に大きかった.義歯床下粘膜荷重は,負荷が50,100 Nの場合,mPCNCD,PMMA-CDに比較してPA-NCDにおいて有意に大きかった.
    結論:NCDでは機能時に義歯床下粘膜に加わる負荷が従来の部分床義歯よりも過大になる可能性が示された
  • 廣田 正嗣, 新保 秀仁, 鈴木 恭典, 大久保 力廣
    2012 年 4 巻 2 号 p. 193-200
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:ノンクラスプデンチャーは特異的弾性を有することから,金属維持装置を必要とせず,広く臨床応用されつつある.しかしながら,審美性を優先した設計が先行しており,レストを設置しないメタルレスの設計も行われている.本研究は,ノンクラスプデンチャーにおける金属レストの有無が義歯床下粘膜の負担圧分布に及ぼす影響について検討を行った.
    方法:下顎片側性中間欠損を想定したシミュレーション模型に三つの圧力センサーを設置した.実験義歯は,金属レスト付きノンクラスプデンチャー,レストも熱可塑性樹脂で製作したノンクラスプデンチャー,レストを設置しないノンクラスプデンチャーの3種とし,コントロールとして,金属レスト付きアクリルレジン床義歯,コバルトクロム製金属構造義歯の2種を製作した.擬似粘膜としてシリコーン印象材を介在させ,49.0 Nの荷重を加えた時の義歯床下粘膜の負担圧分布を測定した.得られたデータ(n=5)は一元配置分散分析後,Tukey の多重比較検定(危険率1%)を行った.
    結果:5種実験義歯のなかでは,金属構造義歯の負担圧は有意に小さく,レストも熱可塑性樹脂で製作したノンクラスプデンチャーが最も大きい値を示した.また,ノンクラスプデンチャーであっても金属レストを付与することによって負担圧が軽減された(p<0.01).
    結論:ノンクラスプデンチャーにおいて義歯床下粘膜の負担圧軽減には,金属レストの設置が必要であることが示唆された.
  • 後藤 東太, 山下 秀一郎, 中塚 佑介, 新村 弘子, 片瀨 剛士, 杉田 乃亮, 堀田 宏巳, 伊藤 充雄, 溝口 利英
    2012 年 4 巻 2 号 p. 201-210
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:本研究では,マイクロ波重合レジンの重合温度を直接かつ正確に測定し,重合温度の測定結果を電子レンジの出力にフィードバックすることで,重合温度をコントロールする新しいマイクロ波レジン重合法の開発を目的とした.
    方法:レジン重合時の温度測定には,温度センサーとして蛍光式ファイバー温度計を使用した.この測定結果を出力にフィードバックし,重合装置の出力をコントロールする重合法を新たに開発した(フィードバック重合法).この重合法と比較するために,500 W・3分間の重合法,60℃と100℃でそれぞれ40分間加熱する重合法,70℃・24時間の低温長時間重合法の3 条件の重合法を設定した.これらの4条件で製作した試験試料に対して,適合性および,その他の理工学的性質について分析を行った.
    結果:適合性試験,三点曲げ試験およびビッカース硬さ試験では,フィードバック重合法の値が他の重合方法と比較して同等かそれよりも良好な値を示した.一方,残留モノマー量測定試験と細胞毒性試験では,フィードバック重合法の値が低温長時間重合法に次いで不良な値を示した.
    結論:フィードバック重合法重合法は,一部の結果を除き,適合性ならびに機械的性質に優れた重合方法であることが明らかとなった.
専門医症例報告
  • 片瀬 志穂
    2012 年 4 巻 2 号 p. 211-214
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    症例の概要:患者は51歳女性.下顎左側小臼歯部辺縁歯肉の違和感,下顎左側大臼歯部欠損による咀嚼困難を主訴に来院.歯周治療後,ミリング・テクニックを用いた部分床義歯を装着し咬合の回復を図った.
    考察:装着後4年経過時に,支台歯の歯根破折が認められた.これは,高い機能力が発揮されたがゆえの弊害であったと考察される.しかし,QOLに関する客観的な評価は良好な結果を示しており,本症例における治療計画は妥当であったと判断される.
    結論:片側性に大臼歯の喪失した症例に対して,機能時の義歯の動きを抑制する目的でミリング・テクニックを用いたことは,咀嚼機能を回復し,QOLの向上にとって有効であった.
  • 柘植 琢磨
    2012 年 4 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    症例の概要:患者は糖尿病を有する60歳男性.慢性歯周炎に起因する上顎右側側切歯の動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.予後不良により抜歯を行い,接着ブリッジを製作し,装着した.その後,臼歯部欠損についても同方法による機能回復を行った.
    考察:接着ブリッジは咬合への配慮および調整が必要である.また,設計および材質は接着ブリッジの維持に寄与し,3年以上良好に機能した.適切な装着材料の選択,適確な接着操作および清掃性向上を促す設計も接着ブリッジの長期安定を可能とした.
    結論:糖尿病のような歯周病のリスクを伴う症例において,患者の満足を得ることができた.侵襲を少なくし,長期に良好な機能回復を導くことができた.
  • 青木 雅憲
    2012 年 4 巻 2 号 p. 219-222
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/07/28
    ジャーナル オープンアクセス
    症例の概要:20歳の女性.左側歯列低位による咬合不全を有し,2度にわたり矯正治療を行ったが左側の咬合を獲得できなかった.欠損部を含め左側の咬合支持の獲得を目標とし,硬質レジン前装連結冠と陶材焼付け鋳造冠ブリッジにて最終補綴を行った.
    考察:両側での咀嚼が可能となったことにより,咀嚼におけるQOLは向上した.また平衡側接触の除去や両側での咀嚼による右側歯牙の負担軽減,咀嚼筋作業肥大防止による対称な顔貌の維持,顎関節障害発生のリスク軽減においても効果的であったと思われる.
    結論:先天性咬合不全患者に対し,上下顎にわたる固定性補綴装置を装着することにより咀嚼機能が改善し,良好な経過を得ることができた.
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