目的:本研究では,歯の接触を伴わない開閉口運動を連続して行うことが,閉口時の顆頭位に及ぼす影響について明らかにすることを目的として,顆頭点の三次元的位置を測定し,歯の接触を伴わない開閉口運動と顆頭位の関連性を検討した.
方法:被験者は有歯顎者32名とし,測定前に筋の圧痛の有無を診査した.その後,Win Jaw System
Ⓡにより連続開閉口運動前後の左右顆頭点の移動量を測定した.開口量は努力最大開口である大開口,被験者自身が自覚する中開口,中開口より小さい小開口の3条件とした.開閉口回数は開閉口前の0回,1,2,4,6,8,10,12,14,16,18,20回の12条件で行った.
各条件において,前後,左右,上下方向における顆頭点の移動量を測定した.筋の圧痛の有無,開口量,開閉口回数による顆頭点の移動量の違いについて分析を行った.
結果:顆頭点の移動量は,大開口のときに開閉口回数による有意差を認めた.筋の圧痛がない群では顆頭点の上下方向への移動量に,圧痛がある群では顆頭点の前後,上下方向への移動量に有意差が認められ,それぞれ開閉口回数が増加するにつれて移動量は増加する傾向を示した.
結論:顆頭点は大開口での歯の接触を伴わない開閉口運動を連続して行うことで移動し,開閉口回数が増加するにつれて移動量は増すことが明らかとなった.本研究の結果は咬合が関与する歯科治療を行う上で有用なものと考えられる.
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