日本補綴歯科学会誌
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6 巻, 2 号
【特集】シリーズ:補綴装置および歯の延命のために Part 2-外傷歯の治療と予後-
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
依頼論文
◆シリーズ:補綴装置および歯の延命のために Part 2-外傷歯の治療と予後-
◆日本補綴歯科学会第122回学術大会/臨床リレーセッション2 「インプラントと天然歯の共存を考える補綴治療計画」
  • 澤瀬 隆, 尾関 雅彦
    2014 年 6 巻 2 号 p. 142-143
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
  • 松下 恭之, 江崎 大輔, 古谷野 潔
    2014 年 6 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
     インプラント治療を始めた30年前にはインプラント部の咬合はやや低めで,また天然歯と連結することでインプラントを守るといった戦略が主流であった.近年ではインプラント自体のオッセオインテグレーションは得られているが,上部構造に関する問題で転医してくる患者が増加しているように感じている.一方,インプラント上部構造に問題はみられないが,残存天然歯を喪失していき,一口腔単位としては,治療介入が引き続き必要な状況にある症例も散見される.インプラントの信頼性が向上した現在,インプラントと天然歯の双方を守っていく共存の時代へと変化してきたように感じる.
  • 城戸 寛史
    2014 年 6 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
     インプラントの長期経過症例が増えるにしたがって,いままで想定してこなかった新たな問題に遭遇することがある.インプラントを含む歯列で,天然歯が脱落,または抜歯となり,歯の欠損が拡大するケースでは,インプラント治療を行った際には想定していなかった様々な問題を含むことがある.
     本論文では,インプラントを含む歯列において,咬合の再構成が必要となった際のオプションとして,CAD/CAMによって製作する磁性アタッチメント用のアバットメントと多くのインプラントシステムで共通して使用可能な汎用性の高いアバットメントの臨床応用について紹介する.
     CAD/CAMによって製作される磁性アタッチメント用アバットメントや中間アバットメントはインプラントの種類や角度,天然歯のコンディション,天然歯とインプラントの混在歯列の補綴処置を単純化し,インプラントと天然歯の共存に有効な治療法である可能性がある.
  • 田中 秀樹
    2014 年 6 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
     欠損補綴において天然歯との共存を考えた場合,残存歯の咬合負担能力も考慮に入れて,あらゆる角度で補綴設計していかなくてはならない.長期的に見た場合,インプラント補綴の隣在歯が抜歯になった場合は,またインプラント植立か,あるいはそのインプラントを利用した他の補綴治療かのどれかの選択になる.そこで現在は患者の年齢によっては,欠損補綴でインプラント治療を選択した場合も,再度の治療介入は常に念頭に置いてなくてはならない.このようなことから,残存天然歯の咬合負担能力と耐久性を診断し,患者のライフステージレベルで天然歯とインプラントの共存を考えたインプラント&補綴設計が重要となる.
  • 武田 孝之
    2014 年 6 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
     インプラント適用の大半の症例は部分欠損症例であり,補綴後の長期性を考える場合にはインプラントと天然歯の共存が前提となる.天然歯とインプラントの関係において,これまでに支持組織の異なる二者を同一補綴装置内に組み込むことの是非は問われてきたが,欠損歯列内で天然歯とインプラントの差が生み出す経年的変化を捉え,さらに,補綴後の口腔内全体の長期性に着目した報告は少ない.
     欠損歯列のレベル,リスクを把握し,補綴治療計画に反映することが重要であるため,本論文では15年経過例からインプラントおよび天然歯の併発症を観察し,さらに,インプラントの果たすべき役割,使用法を考察する.
原著論文
  • 渡部 真也, 豊下 祥史, 川西 克弥, 會田 英紀, 越野 寿
    2014 年 6 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    目的:これまで,咬合・咀嚼機能と高次脳機能の関連性について多くの研究がなされているが,そのメカニズムの詳細は不明である.神経細胞の分化と成熟,樹状突起の分枝,シナプス新生や可塑性という段階を経て,神経回路の発達と機能発現が起こるには,脳由来神経栄養因子によるコレステロールの合成が強く関与している.本研究では,咀嚼動態の変化が,脳由来神経栄養因子の発現とコレステロール合成に及ぼす影響について検討した.
    方法:ラットに固形飼料と液体飼料を給餌する2群を設定し,8週間飼育した後,脳組織を小脳,延髄,視床下部,中脳・海馬・線条体の複合体,および大脳皮質の5つの部位に切離し,脳由来神経栄養因子の遺伝子発現量をリアルタイムRT-PCRにて測定した.次に大脳皮質における脳由来神経栄養因子のレセプターについて免疫染色を行った.さらに脳組織の各部位のコレステロール量を測定した.
    結果:固形飼料を給餌した群は液体飼料を給餌した群に比較して,大脳皮質における脳由来神経栄養因子の発現,そのレセプターの発現およびコレステロールの合成が有意に高かった.
    結論:本研究結果から,咀嚼が学習記憶機能に関与するとされる脳由来神経栄養因子を介するコレステロール合成に影響を与えることが示唆された.
専門医症例報告
  • 古屋 克典
    2014 年 6 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は69歳の男性.全部床義歯の違和感が強いことを主訴に来院した.顎堤条件は上下顎ともに優型であったが,舌を突出する悪習癖を認めた.本症例では旧義歯を複製し,治療用義歯として用いることとした.その治療用義歯を参考にした新義歯を製作した.
    考察:複製義歯を用いて,積極的に義歯の形態修正を行った.十分な治療期間を得たことにより,義歯に対する抵抗感を減らすことができたと考える.
    結論:可逆的な治療方法である,複製義歯を応用することで,トラブルを回避しながら治療を進めることができ,良好な結果を得ることができた.
  • 神山 美穂
    2014 年 6 巻 2 号 p. 180-183
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:慢性歯周炎を有した60歳女性.審美的要求が強く,骨造成を望まないため,オーバーデンチャーを提案したが,可撤性義歯に拒否反応を示したため,インプラント支持の術者可撤式補綴装置にて咬合再構成を行った.
    考察:本補綴装置はエレクトロフォーミングによって製作された内外冠構造により高い適合性が得られ,セメントを介在せずに十分な安定性が得られるため使用感は固定性と変わらずに患者の満足を得ることができた.一方,メインテナンスやトラブル対応時はリムーバーにて簡単に取り外すことができる.
    結論:審美的要求の高い患者に対して,3層構造からなる術者可撤式補綴装置を装着して,咀嚼・審美的な回復に効果的であった.
  • 原田 江里子
    2014 年 6 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:咀嚼障害があり下顎義歯の破折を繰り返す無歯顎症例に対し,幾つかの補強構造を付与し試みたが効果が得られなかった.
    考察:下顎義歯の破折が構造上の問題だけでなく全部床義歯に加わる機能力分散や偏在に原因の可能性があるのではないかと考え,中心位による咬合採得を行い筋圧平衡を配慮した人工歯排列と研磨面形態,および両側性咬合平衡の舌側化咬合接触を付与し全部床義歯を装着したところ,破折もなく良好な咀嚼機能が得られた.
    結論:下顎義歯の破折に関わる原因として,義歯厚みなど義歯の構造だけでなく全部床義歯の機能性に関わる下顎位や筋圧平衡さらに咬合平衡など全部床義歯の機能的な要素の重要性が示唆された.
  • 奥野 典子
    2014 年 6 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は初診時76歳の男性.義歯破損と右側咬筋の筋痛を主訴に来院した.大臼歯部の咬合支持喪失と残存歯の高度な咬耗を伴う,咬合高径の低下と診断した.治療用義歯にて咬合挙上を行い,筋痛の消失を確認した.その後,最終補綴装置として金属構造義歯を装着した.
    考察:咬合支持の喪失には金属構造義歯による補綴が有効であり,同時に咬合挙上を行うことで,筋痛にも対応出来たものと考えられる.
    結論:咬合高径の低下により筋痛を生じていた患者に対し,治療用義歯を用いて咬合高径を改善し,その後,最終補綴装置を装着することで良好な結果が得られた.
  • 笛木 賢治
    2014 年 6 巻 2 号 p. 192-195
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は59歳女性で,義歯の安定不良による咀嚼困難を主訴に来院した.予後不良の残存歯の抜歯後に残存歯の対咬接触を全て喪失し(Eichner C1),すれ違い咬合となり,下顎はテレスコープ義歯,上顎はクラスプ義歯による補綴処置を行った.
    考察:クラスプ義歯では義歯の安定が得にくい下顎にコーヌス・テレスコープ義歯を選択したことで安定が得られ,口腔関連QoLと咀嚼能力が改善し高い患者満足度が得られた.治療3年後において,咬合位と義歯の安定が維持された.
    結論:すれ違い咬合に対して,下顎へのテレスコープ義歯と上顎へのクラスプ義歯による補綴は有効である.
  • 岩佐 文則
    2014 年 6 巻 2 号 p. 196-199
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は30歳女性.上顎前歯部のラミネートべニアの変色と正中離開を主訴に来院し,同部の審美障害と診断された.また,起床時の咀嚼筋症状と咬耗から睡眠時ブラキシズムが強く疑われた.審美障害に対しては再度ラミネートべニア修復を行い,睡眠時ブラキシズムに対しては上顎オクルーザルスプリントにて対応し良好な予後が得られた.
    考察:睡眠時ブラキシズム患者であっても,上顎オクルーザルスプリントを製作し夜間装着することで,ラミネートべニアを用いた歯冠修復治療の良好な予後が得られると考えられた.
    結論:睡眠時ブラキシズムの的確な診断と合理的な対応を行うことが,予知性の高い補綴歯科治療を行う上で重要である.
  • 新田 悟
    2014 年 6 巻 2 号 p. 200-203
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は82歳の女性で下顎全部床義歯の維持力不足・安定不良による咀嚼障害を主訴に来院した.上顎歯列は全て固定性補綴装置が装着されており,下顎は無歯顎で臼歯部の骨吸収が著しかった.下顎前歯部に4本のインプラントを埋入し,バーアタッチメントを用いたオーバーデンチャーを装着した.
    考察:治療前後の山本の咀嚼能率評価表の比較から,インプラントオーバーデンチャーによる補綴治療を行うことで患者の咀嚼能率の改善が得られた.
    結論:顎堤の吸収が著しい下顎シングルデンチャーの症例にインプラントオーバーデンチャーは有効であり,長期的経過は良好であった.
  • 浅野 明子
    2014 年 6 巻 2 号 p. 204-207
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は73歳男性.繰り返す義歯の破折と上顎前歯の歯肉の痛みを主訴に来院した.左側の臼歯部は鋏状咬合のため咬合支持は喪失し,偏心運動も困難な状態であった.また下顎の前歯は上顎の口蓋側歯肉に咬みこんでいた.旧義歯を用いて咬合を拳上後,被蓋の改善を目的に歯冠軸を修正し左側の咬合支持を確立,その後義歯を装着した.
    考察:咬合を拳上することにより鋏状咬合の改善が達成され,同時にデンチャースペースを確保することができた.結果,長期にわたり安定した審美,機能を得られたと考える.
    結論:臼歯部での咬合支持を得られたことにより,患者の主訴を改善し高い満足を得ることができた.
  • 渋谷 友美
    2014 年 6 巻 2 号 p. 208-211
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は78歳の女性で上下顎無歯顎である.咀嚼障害を主訴として来院した.下顎に高度の顎堤吸収を認め,現義歯の維持,安定は不良であった.また舌房が狭く,人工歯排列位置と咬合様式の選択不良も考えられた.そこでピエゾグラフィを行い,人工歯排列位置,義歯研磨面形態を決定した.また咬合様式はリンガライズドオクルージョンとし新義歯の製作を行った.
    考察:ピエゾグラフィによって臼歯部人工歯排列を適切な位置に行い,咬合を舌側化させる咬合様式を選択することによって,本症例のように顎堤吸収の著しい場合においても義歯を安定させ,咀嚼機能を改善することができた.
    結論:高度顎堤吸収症例に対しピエゾグラフィの利用は,義歯の安定を得るのに有用であった.また総義歯製作時には,その顎堤条件や患者の食品の嗜好などを考慮して適切な咬合様式を選択することが重要である.
  • 猪飼 紘代
    2014 年 6 巻 2 号 p. 212-215
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は51歳の女性.広範なう蝕と,う蝕や金属冠による審美障害を主訴に来院した.保存不可能な歯を抜歯後,大臼歯部での咬合支持は消失した.可撤性義歯での再建を拒む患者に対し,短縮歯列でのプロビジョナルレストレーションによる経過観察中,顎関節・歯周組織・咬合に問題を生じることなく経過したため,最終補綴に移行した.
    考察:適切な診査・診断と,3~4カ月に1度の厳格なメインテナンスにより,現在まで,7年間問題なく経過したと考えている.
    結論: 短縮歯列は,すべての患者に適応できるわけではないが,入念な診断とメインテナンスのもと行えば,有効な治療の選択肢の1つとなることが示唆された.
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