日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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ISSN-L : 1883-4426
8 巻, 1 号
平成28年1月
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
ポジションペーパー
  • 近藤 尚知, 尾澤 昌悟, 澤瀬 隆, 横山 敦郎, 関根 秀志, 舞田 健夫, 鮎川 保則, 中野 環, 久保 隆靖, 細川 隆司, 友竹 ...
    2016 年8 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    インプラント治療が補綴歯科臨床の場で必要不可欠となった今日においても,未だ「インプラント支持固定性補綴装置に付与すべき咬合様式」のガイドラインまたは明確な基準は示されていない.本ポジションペーパーにおいては,その推奨されるべき一定の基準を示し,臨床上の指針として提案することを目的とした.本稿では,典型的な欠損形態である下顎大臼歯部欠損にインプラント支持補綴装置を装着した場合を想定している.口腔インプラントを適用した治療に関して経験豊富なエキスパートパネルを,(公社)日本補綴歯科学会会員から選出し,臨床の現場における事象を検証した結果として得られた意見を集積し,パネル会議で検討した.その結果,補綴装置の形態,咬合接触点の位置と数,側方運動時の咬合接触の有無,歯根膜の変位量の考慮,補綴装置咬合面の材料等に関する知見が得られ,推奨される一定の基準が示された.しかしながら,上記内容は明確な根拠に支持されるものではなく,治療効果と術後経過に関する研究が不十分であり,今後さらなる知見の集積と検証のもとに,ガイドラインを策定すべきである.
依頼論文
◆企画:第124回学術大会/専門医研修単位認定セミナー「全部床義歯補綴の統一見解」
  • 水口 俊介
    2016 年8 巻1 号 p. 10-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
  • 松田 謙一
    2016 年8 巻1 号 p. 12-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    全部床義歯臨床における印象法や咬合については,現在までに実に多くの考え方や手法が存在し,日々議論が止むことはない.今回はこれまで幾度も議論の中心となってきた,“印象”と“咬合”の2点に絞り,世界で最も広く用いられているであろう,バウチャーの無歯顎患者の補綴治療の初版(1940年)から第13版(2013年)までに記載されている内容を吟味し,それらの歴史的な変遷について抽出を行った.そして,現在の臨床における手法との違いを考察することで,多くの臨床家が行き当たるであろう,“印象”と“咬合”についての論点を提示し,それぞれについて,続く2名の先生に,専門的見解を述べていただく.
  • 鈴木 哲也, 大木 明子
    2016 年8 巻1 号 p. 18-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    松田論文で述べられる全部床義歯の印象採得に関わる問題提起に対して,1)印象圧については,加圧部位よりも無圧部位に留意した印象採得が臨床的には妥当であること,2)顎舌骨筋線を超えての床縁の延長は必須だが,その長さよりも研磨面形態に留意すること,3)後顎舌骨筋窩では舌のスムーズな運動を妨げないことを第一に考え,維持力を期待しての床縁の過度な延長は慎むことを現時点での見解とした.臨床においては,義歯の形態にも優先順位はあり,その時々で到達すべき目標を即座に判断する能力が補綴歯科専門医に求められる.そこで,印象採得の本質を理解していれば,術式ありきではない柔軟な診療が可能となる.
  • 市川 哲雄, 矢儀 一智
    2016 年8 巻1 号 p. 24-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,松田論文で述べられる二つの問題提起,「咬合採得のポイントは? 垂直的・水平的顎間関係の決定法-ゴシックアーチは必要か?」「義歯に与えるべき咬合は?-何を基準に選択するのか?」について,見解を述べることである.こと全部床義歯の咬合に関しては100年に及ぶ歴史とその学術的蓄積があり,現在も議論されているものの,最近の議論の多くは目標に向かう手段の議論である.しかし,全部床義歯の本質は変わりようなく,その本質的なものを見極めた上で臨床に臨むべきであると考える.
◆企画:第124回学術大会/臨床リレーセッション1「パーシャルデンチャーの設計を再考する」
◆企画:第124回学術大会/臨床スキルアップセミナー 「口腔機能の客観的評価としての舌圧測定:その意義,開発から展望まで」
  • 松山 美和
    2016 年8 巻1 号 p. 45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
  • 小野 高裕, 堀 一浩, 藤原 茂弘, 皆木 祥伴
    2016 年8 巻1 号 p. 46-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    舌は,咀嚼から嚥下にかけての過程において,巧緻な運動を行って食塊の形成と搬送に中心的な役割を果たしている.その運動性を評価する上で,舌と口蓋が接触することによって生じる舌圧は,有効な指標となる.健常者において一定のパターンを示す嚥下時の舌圧発現様相の崩れは,嚥下障害の出現と関連している.また,咀嚼の進行に伴う嚥下前の口腔から中咽頭への食塊の輸送には,咀嚼サイクル毎の舌圧発現の増加が関与している.舌圧や咀嚼能率を用いることによって,咀嚼・嚥下障害の程度を客観的に把握し,治療やリハビリテーションの合理化・能率化をはかることは,超高齢社会における歯科補綴治療のイノベーションに寄与すると思われる.
  • 津賀 一弘
    2016 年8 巻1 号 p. 52-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    舌圧検査は,簡便に実施できる客観的口腔機能数値評価である.現在,バルーン状口腔内用プローブを口蓋前方部と舌の間で随意的に最大の力で押し潰させ,内部の空気圧の変化を測定する機器(JMS 舌圧測定器)が医療機器承認を受け,医療・介護の分野で活用され始めている.その結果,加齢に伴う舌圧の低下や摂食機能の低下などが定量的に明らかになりつつある.検査結果の数値は即時に表示され,口腔機能の重要性の理解や訓練への動機づけのフィードバックに応用できる.検査結果を基に口腔機能を鍛える訓練器具(ペコぱんだ®)も開発されており,補綴診療におけるシステマティックな口腔機能向上プログラムの実施が可能となってきている.
専門医症例報告
  • 松原 秀樹
    2016 年8 巻1 号 p. 58-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者はインプラント外来初診時65歳の男性で,主訴は下顎右側臼歯部の根尖性歯周炎による咀嚼障害であった.口腔インプラントによる遊離端欠損部の回復と固定性ブリッジによる残存歯の補綴を併用して,安定した咬合関係の回復を図った.
    考察:メインテナンスでは,口腔インプラントによる固定性補綴装置と上下の固定性ブリッジにより,咬合の安定が図られたことから,良好な咬合関係が維持された.
    結論:咀嚼障害と咬合平面の不正が重なった症例に対して,遊離端欠損部に対するインプラントによる固定性補綴と残存歯の固定性ブリッジの併用で安定した咬合関係が回復できた.
  • 三橋 裕
    2016 年8 巻1 号 p. 62-65
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は,58歳の女性.他院にて金属アレルギーと診断され,また,上下顎左側臼歯部の金属冠が脱離し,審美性の不良を主訴に来院した.
    歯冠色を有したジルコニアクラウンおよびブリッジによって審美不良を改善するとともに,金属アレルギーを改善した.
    考察:治療終了3年経過しているが,咬合状態,歯周組織状態も良好であり,アレルギー反応はなくなった.金属アレルギー患者に対し金属を除去した後の材料としてジルコニアは有効であると考えられる.
    結論:審美性の改善と金属アレルギーを主訴とした患者に対して,ジルコニアクラウンによって,審美障害および金属アレルギー症状を改善することができた.
  • 深津 雄己
    2016 年8 巻1 号 p. 66-69
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:初診時73歳の男性で,上顎左側歯肉悪性腫瘍と診断され,腫瘍切除術前に口腔外科より紹介を受けた.術後15日目に早期顎義歯を装着し,術後1年創部の安定を待った後,最終顎義歯を製作した.その後,鼻腔への液体流入を訴えていたため,粘膜調整材を用いた動的印象により栓塞子部の機能印象を採得し,間接リラインを行うことで封鎖性を改善した.
    考察:動的印象と間接リラインによって栓塞子部の封鎖性を改善させる本法は,上顎顎義歯装着後の鼻腔への液体流入に対して有用であると考える.
    結論:上顎顎欠損患者に対して動的印象と間接リラインを行ったことで,鼻腔への液体流入は解消し,患者の満足が得られた.
  • 平井 秀明
    2016 年8 巻1 号 p. 70-73
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:65歳女性.上顎前歯部フレアアウトによる審美不良および右上4の咬合痛による咀嚼困難を主訴として来院した.初診時,上顎前歯部フレアアウトおよび歯間離開が認められた.まずMTM による上顎歯列弓の改善を行った後,プロビジョナルレストレーションの装着を行った.最終補綴装置には永久保定としてメタルボンドブリッジを装着した.
    考察:本症例では,MTMを行ったことで,審美的改善が可能であった.
    結論:歯間離開ならびにフレアアウトによって生じた審美障害・咀嚼障害症例に対し,MTMを行った後メタルボンドブリッジを装着し,良好な結果を得た.
  • 末永 華子
    2016 年8 巻1 号 p. 74-77
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は63歳の男性.上顎右側ブリッジの動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.中咽頭癌に対する70Gyの放射線治療の既往があり,唾液分泌障害を生じ,全ての残存歯に歯頸部う蝕・辺縁性歯周炎が認められたため,放射線顎骨壊死と清掃性に配慮して補綴処置を行った.
    考察:抜歯の可否を検討した上で,感染源となる可能性が高い歯牙を抜去することで,放射線骨壊死を惹起させることなく経過したと考えられる.
    結論:放射線晩期障害を有する症例に対し,放射線性顎骨壊死の予防・プラークコントロールの徹底により対応することにより,良好な治療結果を得た.
  • 重田 優子
    2016 年8 巻1 号 p. 78-81
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:35歳女性.外傷後の右側顎関節機能時疼痛,咀嚼障害を主訴に来院した.上顎骨骨折に伴う右側臼歯部の開咬により,咬合接触の不良および顎位の不安定が認められた.
    スプリントを用いて,顎位の安定および顎関節疼痛の緩解を図り,上顎臼歯部歯槽骨切り術を行った.その後,下顎臼歯部を中心に補綴処置を行い,設定顎位における咬合接触状態の改善を図った.
    考察:経過とともに若干の下顎の偏位と歯の挺出が認められたことから,術後における,外科的侵襲および機能的負荷に対する生体反応の重要性が示唆された.
    結論:外傷性臼歯部Open bite症例に対し,外科的・補綴的アプローチを適応した結果,良好な結果が得られた.
  • 藤井 俊朗
    2016 年8 巻1 号 p. 82-85
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:54歳男性.咀嚼困難を主訴に来院.悪習癖による咬耗を主要因とする咬合高径の低下と審美障害に対し,適切な咬合をプロビジョナル・レストレーションにより設定し,ゴシックアーチ描記法による下顎位の評価に則して,14カ月にわたり咬合調整を行い,機能および審美性を回復した最終補綴装置を装着し,術後経過良好である.
    考察:長期にわたる咬合の治療と顎運動検査による適切な下顎位の評価が有効なことを示し,妥当性のある新規咬合位の設定に繋がったと考える.
    結論:咬耗による不正咬合に対し,適切な咬合位の設定,咬合の検査は,最終補綴装置による機能・審美的障害の改善,ならびに,長期的な予後を確保する上で有効である.
  • 野村 太郎
    2016 年8 巻1 号 p. 86-89
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は57歳の男性.上顎右側ブリッジの動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.初診時の口腔内は,歯の欠損の放置や,咬耗等による咬合高径の低下,および咬合平面の不正を認めた.これらを改善するため咬合再構成を行った.
    考察:診断用ワックスアップにより下顎位を検討し,プロビジョナルレストレーションを製作し機能的に問題がない最終的な下顎位を模索し決定した.決定した下顎位で最終補綴装置を製作したことにより良好な予後が得られたと考えられる.
    結論:咬合再構成が必要な症例においては,十分な検査後に治療計画を立案し,可逆的治療により機能障害が生じないことを確認した後に最終補綴装置を製作することが重要である.
  • 野地 美代子
    2016 年8 巻1 号 p. 90-93
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:62歳の女性. 左側顎関節部の自発痛,咀嚼時痛ならびに咬筋,側頭筋,顎二腹筋の圧痛を認めたため,一次治療としてコンビネーションスプリント(C-splint)による咬合の回復と顎関節症症状の改善を図り,後に二次治療として歯冠修復ならびに可撤性部分床義歯による補綴処置を施した.
    考察:補綴処置終了から約6年経過した後も顎関節症症状の再発はなく,咀嚼機能等に対する患者の満足度は高く保たれている.
    結論:部分歯列欠損を有する顎関節症症例に対し,一次治療としてC-splintを用いて咬合の回復と顎関節症症状の改善を図ることは有効な治療手段である.
  • 小川 泰治
    2016 年8 巻1 号 p. 94-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は73歳女性で,前医での補綴治療後に生じた咬合時不快症状を主訴として来院した.残存歯および補綴装置には症状の原因となる所見を認めなかったが,咬合高径の過高が疑われた.そこで,咬合高径を修正した治療用義歯を製作し,不快症状の消失を確認した後に最終補綴を行った.
    考察:治療開始前と比較し,治療用義歯を用いて得られた不快症状の生じない垂直的顎間距離は3 mm 程度小さかった.前医での治療において,顔面計測法のみによって義歯の咬合高径が決定された可能性がある.
    結論:すれ違い咬合を呈する少数歯残存症例に対し,治療用義歯を用いて咬合高径を修正し,主訴の改善を図り安定した経過を得ることができた.
  • 古橋 明大
    2016 年8 巻1 号 p. 98-101
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は71歳の女性. 2009年2月,下顎義歯の維持不良による咀嚼困難を主訴に当科を受診された.下顎義歯の維持が不良となった上下無歯顎患者に対しフレンジテクニックを用いて総義歯を製作し,良好な結果を得たので報告する.
    考察:新義歯製作の際,ニュートラルゾーンを記録し義歯床研磨面の機能的形態を獲得したこと,またこれにより人工歯の排列位置が頬側に位置したが,リンガライズドオクルージョンを付与して義歯の力学的安定を得たことも,高い患者満足度の獲得と良好な予後に寄与したと考えられる.
    結論:フレンジテクニックを用いて上下総義歯を製作し,高い満足度を得ることができた.
  • 服部 佳功
    2016 年8 巻1 号 p. 102-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:15歳,男性.乳歯の咬耗による審美性不良を主訴に来院した.上顎の切歯と右側第二小臼歯の計5歯を除く永久歯が先天欠如し,非症候群性部分無歯症による審美障害・低位咬合と診断した.直ちにオクルーザルスプリントにて咬合を挙上し,乳歯の脱落が進むのを待って可撤性床義歯(オーバーデンチャー)による欠損補綴を行った.
    考察:先天性無歯症の欠損補綴では,審美・咀嚼機能の回復に加え,成長期の咬合管理が重要な目的となる.本症例では,乳歯脱落に先行して開始したスプリント治療とその後の欠損補綴により,咬合を適切に維持することができた.
    結論:先天性無歯症に対し,積極的な咬合管理の有効性が示唆された.
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