日本補綴歯科学会誌
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9 巻, 2 号
平成29年4月
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
依頼論文
◆企画:第125回学術大会/専門医研修会「印象・咬合採得までに部分欠損歯列をどう診るか?」
  • 山下 秀一郎
    2017 年 9 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     パーシャルデンチャーで咬合を回復する場合,残存歯との間に調和のとれた咬合関係が必要であり,口腔健康を維持する上で重要な鍵となる.特に遊離端義歯症例においては,咬合時の負荷は被圧変位量の異なる支台歯と顎堤粘膜の両者に対して伝達され,複雑な動態を示す.安定した咬合を確立するためには,初診時の咬合状態を確実に把握すること,さらに,欠損様式に合わせて適切な義歯の設計を行うことが,重要な要件となる.本稿では,欠損に伴い崩壊した咬合状態を定量的に評価する手法として,側面頭部エックス線規格写真に基づく咬合高径の評価について,さらに,義歯の設計に関する基本的概念,特に義歯の動揺の最小化について解説を行う.

◆企画:第125回学術大会/モーニングセミナー「ファイバーコアの位置づけ」
  • 坪田 有史
    2017 年 9 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     支台築造は補綴装置を装着するために臨床的意義が高い処置である.2016 年1月に「ジーシー ファイバーポスト(ジーシー)」が特定保険医療材料に承認され,ファイバーポストコアが広く国民に臨床応用できる支台築造法の一つとして選択可能となった.一方,鋳造支台築造と比較してレジン支台築造には有利な点が多く,ファイバーポストコアは歯根破折の防止を含め,多くの長所を有した支台築造法と考えられる.しかし,現時点の臨床研究では.支台築造法に関する明確な結論が導かれていない.ファイバーポストコアの臨床応用に際し,複数のリスク因子があり,歯科接着の因子を含め,各リスク因子に十分な配慮が必要である.

◆企画:第125回学術大会/臨床リレーセッション2, 3「インターディシプリナリーデンティストリー -補綴歯科専門医は他分野から何を求められているか-」
◆企画:第125 回学術大会/臨床リレーセッション2「インターディシプリナリーデンティストリー -補綴歯科専門医は他分野から何を求められているか- 口腔外科,矯正の立場から」
  • 船登 彰芳
    2017 年 9 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     補綴主導型インプラント治療が国内においても根付いて久しい.この概念が意味するものは天然歯と調和のとれた補綴装置をインプラントに装着するために,3次元的に正しい位置にインプラントを埋入することが大前提となる.しかし多くの症例では埋入部位に水平的・垂直的骨量不足から骨造成が必要となる.骨造成を行う手法としては,臨床家にとって最も汎用性の高い手技はGBRであると言える.GBRの原理は,①1次創閉鎖の達成,②骨組織再生の場の体積の確保,③骨組織再生の場の安定性の確保および④血管新生の担保に集約される.今回GBRの原理・それに使用されるマテリアル・手技を再確認し,その実際の症例とその予後を検証する.

  • 前田 早智子
    2017 年 9 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     インターディシプリナリー治療(IDT)は,複数の治療オプションを適用するだけでなく各専門家がその症例に最適な結果が得られるようにチームを組んで行う治療である.歯の欠損や補綴が多いIDT症例には不正咬合が影響している可能性があり,その場合矯正治療が欠かせない.補綴医に期待することは,(1)補綴医と矯正医が治療の初めから一緒に関わること,(2)治療全体の理念と具体的な治療ゴールの両方で同じものを共有すること,(3)全員がチームとして協力することである.そのために,補綴医は,診断時に顎顔面および歯列の不正咬合を見つけて何らかの悪影響を及ぼしている可能性を見つけてほしい.そして矯正で何ができるかを知ってほしい.

  • -補綴歯科専門医として何を考え何をするべきか-
    細川 隆司, 正木 千尋, 向坊 太郎, 近藤 祐介, 柄 慎太郎
    2017 年 9 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     いわゆる骨造成処置によって,補綴治療を最適化できるにもかかわらず,補綴医の正しい理解が不足しているために,適切な治療介入が行われていない可能性が指摘されている.

     また,補綴前処置としての様々な矯正治療も,必ずしも一般に広く行われてはいない.この理由として,補綴医の矯正治療に関する理解不足が一つの要因となっている可能性がある.

     このような観点から,補綴前処置として「失われた骨を理想的な形に回復すること」と「歯を理想的な位置に動かすこと」に焦点を当て,論点を整理し,補綴歯科専門医の役割について考えてみたい.

     なお,本総説は,第125回日本補綴歯科学会学術大会臨床リレーセッションの講演内容をまとめたものである.

◆企画:第125 回学術大会/臨床リレーセッション3「インターディシプリナリーデンティストリー -補綴歯科専門医は他分野から何を求められているか- 歯周,歯内療法の立場から」
  • 鈴木 真名
    2017 年 9 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     精度の高い審美修復治療を実現するには,基本治療に加え,歯や歯周組織の色調・形態をさまざまな角度から捉えて施術することが重要である.1人の患者に対して他分野の専門医がその知識と技術を持ち寄り施術にあたるインターディシプリナリーアプローチは,審美修復治療に大変有効なスタイルといえよう1,2).本稿では,審美修復治療にあたり補綴医,矯正医とともにインターディシプリナリーアプローチを行った症例を提示し,歯周病専門医の視点から考察してみたい.

  • 木ノ本 喜史
    2017 年 9 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     良好な根管充填が完了した歯であっても歯冠側から根管内に漏洩が生じると,修復前には認めなかった根尖性歯周炎が発症する.この現象はコロナルリーケージと呼ばれており,修復の再治療が必要となる原因の一つである.最終修復までの仮封の期間や支台築造装着までの根管の汚染,修復後の二次う蝕等がコロナルリーケージに影響を及ぼす.根管充填がしっかり達成されていれば,根尖へ感染は波及しないわけではなく,修復後にも根尖に感染が生じる可能性がある.歯内療法においては当然のことであるが,修復処置においても根管の感染を意識した処置が必須である.

  • 窪木 拓男, 大島 正充, 大野 充昭
    2017 年 9 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

     補綴歯科治療は,包括歯科診療の中では最終処置に位置づけられる.口腔インプラントが積極的に応用されるようになった現代においても,審美ゾーンにおける硬軟両組織に支えられた補綴装置の審美性や機能性を長期に渡って維持するのは容易でない.やはり,第一義的に健全な歯根膜を持つ残存歯を保存し,それを利用することによって審美性を維持・回復する方策を忘れてはならない.しかし,必要があれば,結合組織移植やGBR,歯周形成外科処置を組み合わせて,患者の求める審美性や機能性を得る必要もあるだろう.本節では,補綴歯科専門医が自ら,もしくは専門医間の連携診療体制の構築を基に,目指すべき硬軟両組織マネージメントの考え方について述べたい.

原著論文
  • 山瀬 勝, 曽布川 裕介, 石田 鉄光, 岡田 智雄
    2017 年 9 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    目的:日本歯科大学附属病院におけるCAD/CAMレジンクラウンの臨床応用実態を把握するために,小臼歯に装着された補綴装置の装着本数を調査した.

    方法:平成26年4月から平成28年3月までの24カ月間に日本歯科大学附属病院で装着されたCAD/CAMレジンクラウン,硬質レジンジャケットクラウンおよび全部金属冠の本数を調査した.CAD/CAMレジンクラウンについてはトラブルの割合を調査し,その原因を検証するため装着操作に関するアンケート調査を行った.

    結果:CAD/CAMレジンクラウン,硬質レジンジャケットクラウン,全部金属冠の装着数はそれぞれ474個,196個,818個であった.CAD/CAMレジンクラウンの装着本数は徐々に増加し,平成28年3月では小臼歯補綴の51.3%を占めた.脱離・破折といったCAD/CAMレジンクラウンのトラブルの割合は5.7% であった.装着操作についてはサンドブラスト処理が37.8% の症例でしか行われていなかった.

    結論:CAD/CAMレジンクラウンの装着数は増加しており,小臼歯の補綴装置として認知されてきていることが示唆された.しかし脱離・破折症例も認められたため,適応症の選択や接着操作に留意することが示唆された.

専門医症例報告
  • 関根 貴仁
    2017 年 9 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は30歳の女性.咀嚼困難と外観不良を主訴に本院を受診した.先天性欠如部位の部分床義歯に満足しておらず,口腔インプラント治療を選択した.予後不良な乳歯の抜去後,骨増生法を併用してインプラント体を埋入した.暫間補綴装置でアンテリアガイダンスを確立した後,最終上部構造としてインプラントレベルのオールセラミッククラウンを装着した.

    考察:顎骨幅径の不足は先天性欠如によるものかもしれない.顎堤粘膜が菲薄なため,裂開を回避するためGBRではなくベニアグラフトを選択した.

    結論:先天性欠如と乳歯晩期残存を有する症例に対して,骨増生法を併用した口腔インプラント治療は有用であった.

  • 稲野 眞治
    2017 年 9 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    症例の概要:66歳男性,咀嚼困難を主訴に来院した.上顎左側大臼歯欠損および第二小臼歯歯根破折を認めたため,抜歯後インプラント体を埋入した.暫間補綴装置にて咬合平面および側方誘導面の調整を行い,安定が得られた時点の咬合接触状態を反映させた最終補綴装置を装着した.

    考察:アンテリアガイダンスの欠如や過大な咬合力が疑われた本症例では,暫間補綴装置で咬耗の進行様相を十分観察し,最終補綴装置に反映したことで術後の安定を得られたと考えられた.

    結論:アンテリアガイダンスが欠如し過大な咬合力が疑われた上顎左側遊離端欠損症例に対し,暫間補綴装置にて得られた咬合接触状態を反映したインプラント補綴を用いることで良好な結果を得ることができた.

  • 田中 利佳
    2017 年 9 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    症例の概要:69歳の女性.右側の習慣性顎関節脱臼と咬合異常による咀嚼困難を主訴に来院した.オクルーザルスプリントを装着して咬合を改善し,左側下顎頭の運動制限を改善する目的で右側での咀嚼訓練を行った結果,咀嚼障害および脱臼の改善が認められたため,同じ顎位で暫間義歯に移行し最終補綴を行った.

    考察:脱臼の原因が反対側下顎頭の運動制限と考えられ,脱臼側での咀嚼障害を有する症例において,脱臼側での咀嚼訓練は有効な治療法の一つと考えられる.

    結論:咀嚼障害を伴う習慣性顎関節脱臼を有する症例に対して,咬合治療と咀嚼訓練を併用することにより,症状が改善し,良好な治療結果と患者の満足を得ることができた.

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