日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成15年度日本調理科学会大会
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  • 藤井 彩香, 長尾 慶子
    セッションID: 1A-a1
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】昨年度の本大会において、伝熱実験用でんぷんモデル系について、加熱温度に対応させた力学的性質を検討し、高水分モデルの保形性においてでんぷんの寄与が大であることを報告した。引き続き、今回は各種でんぷんゲルに注目し、加熱温度に対応させたクリープ測定と、温度制御装置を付設した検鏡により各種デンプンの特性を追跡・抽出する。
    【方法】5%じゃがいもでんぷん糊液中に、5種類の生でんぷんをそれぞれ分散させた50%ゲルを試料とし、加熱温度に対応させた弾性率Eおよび粘性率ηについて比較した。さらに光学顕微鏡の試料台に付設した温度制御装置により、加熱温度に対応した各種でんぷんの膨潤・糊化・崩壊の状況を顕微鏡接眼部に接続したCCDカメラで撮影し、検鏡像をモニターで観察するとともに、ビデオに記録した。
    【結果】糊化温度が比較的高いとうもろこしでんぷんは弾性率E、粘性率ηともに上昇ピークが他のでんぷんより遅れて発現した。また、うるち種とうもろこしでんぷんの方がもち種とうもろこしでんぷんより粘性率ηのピークが高い傾向が見られ、一方、同じうるち種のとうもろこしでんぷんと米でんぷんでは、弾性率E、粘性率ηともにピーク値は近似しているが、その発現温度は米でんぷんの方が低かった。これらでんぷんゲルの力学的性質と、でんぷんモデル系のそれとが、ほぼ同様の傾向にあることが認められ、でんぷんモデル系の力学的性質に及ぼすでんぷん糊化の影響が確認された。検鏡においては、力学的性質に対応したでんぷん粒子の挙動とともに、糊化付近の細かい温度変化に対応したでんぷん粒子の動態が観察された。
  • 平島 円, 高橋 亮, 西成 勝好
    セッションID: 1A-a2
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】ショ糖は澱粉製品に多用されている調味料のひとつである。ショ糖を澱粉製品に添加する多くの場合,ショ糖は澱粉の糊化前に添加されており,澱粉にショ糖を添加することによる影響についての多くの研究においてもショ糖は澱粉の糊化前に添加されている。本研究ではショ糖を澱粉の糊化前と糊化後に添加することにより,澱粉糊の粘弾性に与える影響の違いについて検討した。
    【方法】3.0wt%のコーンスターチに目的の濃度のショ糖溶液に分散させ,97°Cで1時間加熱後,25°Cに冷却したものを糊化前にショ糖添加の試料とした。また,コーンスターチと蒸留水のみで加熱したコーンスターチ糊液に目的の濃度のショ糖を添加し,冷却したものを糊化後にショ糖添加の試料とした。静的および動的粘弾性測定より定常ずり粘度,貯蔵弾性率,損失弾性率,動的粘度を求めた。また,澱粉の糊化状態を調べるために示差走査熱量(DSC)測定と顕微鏡観察を行った。
    【結果】澱粉の糊化前にショ糖を添加した試料ではショ糖添加濃度の増加に伴い,ショ糖濃度20wt%以下では粘度は増加したが,それ以上の添加では粘度は減少した。ショ糖濃度20wt%で澱粉粒子の膨潤が促進されたために粘度が最大となった。しかし,高濃度のショ糖添加では澱粉の糊化温度がショ糖添加濃度の増加に伴い高温側に移行したために,糊化が充分に起こらず,粘度の減少が起こった。実際に澱粉粒子の大きさも小さく,澱粉粒子から溶出してくるアミロースおよびアミロペクチン鎖はみられなかった。澱粉の糊化後にショ糖を添加した試料では20wt%以上の高濃度のショ糖添加においても粘度の低下はみられず,ショ糖濃度の増加に伴い,粘度は増加した。澱粉粒子は膨潤し,アミロースおよびアミロペクチン鎖が溶出していた。したがって,高濃度のショ糖を澱粉糊液に添加する場合,澱粉の糊化後に添加した方が澱粉の増粘効果が得られることがわかった。
  • 伊藤 知子, 磯部 由香, 成田 美代
    セッションID: 1A-a3
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    <目的> 昨年度までの研究により、ツタンカーメンエンドウは、その色素成分がエンドウより高いDPPHラジカル捕捉能を有すること、また、デンプン含量などから、餡原料としての利用が可能であることを明らかにした。細胞状食品である餡の物性には、その細胞内に含まれるデンプンの糊化状態が関わっている。本研究では、機能性(抗酸化性)を有する餡の製造を最終目的とし、ツタンカーメンエンドウの子葉細胞中に含まれるデンプン(細胞内デンプン)の糊化状態を、単離したデンプンと比較し、製餡適性についてさらに詳細な検討を行った。
    <方法> ツタンカーメンエンドウの子葉を酸およびアルカリ処理することにより、子葉細胞を分離し、これを細胞内デンプンのモデルとした。また単離デンプンを調製した。これまでの小豆などの場合**と同様に、十分量の水の存在下で60、70、80、90℃で加熱し、デンプンの膨潤力、溶解度、偏光十字消失割合を測定、細胞内デンプンの糊化状態について総合的に検討を行った。
    <結果> ツタンカーメンエンドウは未熟豆の状態であるので、小豆など餡原料となる乾燥豆と比較して、子葉細胞の分離が容易であった。細胞内デンプン濃度は高く、小豆など餡原料豆とほぼ同様に、細胞内デンプンは糊化抑制されることが明らかになった。製餡適性があることが強く示唆された。細胞壁の性状は、小豆と比較して強靭ではなく、低分子化したデンプンの溶解が認められたものの、糊化したデンプンは細胞内にとどまっていることが観察された。
    *日本調理科学会平成14年度大会発表要旨集 p19(2002)
    **藤村・釘宮:日食工誌、40、490-495(1993)
  • 千田 麻美子, 川野 亜紀, 高橋 智子, 大越 ひろ
    セッションID: 1A-a4
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】 リゾットはイタリアの米料理であるが、そのテクスチャーとおいしさに関する報告はほとんど見られない。そこで、本研究ではリゾットのテクスチャーとおいしさに及ぼす米品種の影響について検討した。【方法】 日本米(Aこしひかり)およびイタリア米3種(Bウ゛ィアローネナノ,Cカルナローニ,Dアルボーリオ)の計4種を材料として用いた。調製方法は日本イタリア料理協会会員を対象に行ったアンケート調査を参考に、実験室レベルで調製可能なモデルを検討した。リゾットのテクスチャーとしては、調製後30分までの変化について、リゾット全体(全粒法)のテクスチャー特性の硬さ,凝集性,付着エネルギーおよび、米粒一粒あたり(一粒法)の破断荷重を測定した。また、シェッフェの一対比較芳賀変法を用い、調製後のリゾットについて、かたさ、存在感、べたつき感、好ましさの4項目について評価してもらった。【結果】 4種の米を用いたリゾットは、いずれも調製直後から経時的に、テクスチャー特性の硬さは増加傾向を示し、米一粒の破断荷重はやや減少傾向を示した。付着エネルギーは放置時間に伴い4試料とも増加傾向を示したが、Aこしひかりを用いたリゾットが他のイタリア米3種のものより大となった。しかし、Dアルボーリオを用いたリゾットは他のイタリア米のものより付着エネルギーの増加が顕著であった。官能検査の結果、AこしひかりとCカルナローニで調製したリゾットが好まれた。
  • 貝沼 やす子, 福田 靖子
    セッションID: 1A-a5
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    [目的] 竹炭を水に浸漬して得られた液は高いpHを示し、この液で炊飯した米飯は米デンプンの糊化が促進され、やわらかく老化しにくい状態に炊きあがること、金時豆のゆで水として用いると軟化が促進されて赤みも強くなることをすでに報告した。本研究ではこれらの成果をふまえて、米と豆を使用する赤飯の調理に竹炭水を利用する効果について検討した。すぎ木炭についても併せて検討を行った。[方法] 水および竹炭・木炭の浸漬液を用いて得たささげのゆで汁(5分、10分、15分)にもち米を60分間浸漬させた後、90℃まで加熱してささげのゆで汁を完全に吸わせてから蒸し加熱(20分、30分)を行った。測定した項目は浸出液、ささげのゆで汁、赤飯の色差計によるL、a、b値、飯粒および飯塊のテクスチャー(かたさ応力・凝集性・付着性)測定、飯塊の破断強度測定、官能検査による評価などである。[結果] 竹炭水使用のささげのゆで汁は5分加熱ですでに高いa値を示し、短時間で赤色の強いゆで汁が得られた。木炭水使用の場合は、竹炭水使用に比較してa値が低かったが、10分、15分加熱では水よりも濃い赤色となった。赤飯の色はささげのゆで汁の色がそのまま反映されており、水→木炭水→竹炭水の順でより赤色の強い赤飯が得られた。竹炭水でゆでたささげは腹切れせず、やわらかく仕上がる傾向がみられた。竹炭水使用による飯粒テクスチャーへの影響は小さかった。飯塊では竹炭水使用により破断応力、破断エネルギーは大きくなった。官能検査の結果、竹炭水を使用した赤飯は明らかに赤色が強いと評価されたが、テクスチャーも含めた総合評価には差がみられなかった。
  • 中嶋 加代子, 丸山 悦子
    セッションID: 1A-a6
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】 新形質米と総称されている新しい形態や特質を有する米は、新しい米需要を喚起すると共に、その特性は生活習慣病の予防や健康の維持に役立つことが期待されている。新形質米は歴史が新しく、利用例とくに調理例の報告は少ない。今回は、新形質米の一種である色素米および香り米の調理法について検討した。【方法】 試料として色素米は「朝紫」という品種を用い、香り米は「はぎのかおり」という品種を用いた。「朝紫」は、もち米の一種であり、「はぎのかおり」は、うるち米の一種である。両者とも玄米を用いてその特性を生かすことに着目した。【結果】 玄米の水洗に際しては、玄米をボールに入れ5倍量の水を加えて、手早く5回攪拌した後、ザルに移して水をきった。これらの操作は短時間に行うことを原則とし、これを3回繰り返した後、水をたっぷり入れて手早く攪拌し、すぐにザルに移してよく水きりをした。これをガス圧力鍋(イワタニ・フィスラー社製)に移し、水(色素米は米容量の1.1倍の加水量・香り米は米容量の1.2倍の加水量)と食塩少々を加えてかき混ぜ、蓋をしてすぐガスコンロ(業務用)で加熱した。圧力がかかるまでは中火で加熱し、圧力がかかった後は弱火(圧力が低下しない程度の弱火)にして20分間加熱し、消火した。消火直後ガスコンロから降ろし、圧力が自然に下がるまで放置した。圧力低下直後、蓋を開けて粘らないように混ぜ、ご飯を使用するまで乾いた布きんをかけておいた。これを各種調理に使用し、適する料理と適さない料理があることが分かった。
  • 大家 千恵子, 高崎 房子, 原 たつえ
    セッションID: 1A-a7
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    〔目的〕日本人の穀類摂取量が年々減少し、それに平行して食物繊維の摂取量も減少している。大麦の食物繊維が精白米の約10倍あることに着目し、大麦の理化学的性質の基礎的知見を得るためにこの研究に着手した。〔方法〕大麦は、押麦と米粒麦の2種類を用いた。比較のためにコシヒカリを用いた。米、大麦の形状試験、吸水率、アミロース含量、炊飯米の炊飯特性分析、物性測定、官能評価を行い、種類間の差異を検討するとともに、どのような炊飯方法が好まれ、食物繊維の摂取に有効なのかを検討した。〔結果〕水分含量は押麦11.6%、米粒麦12.3%、コシヒカリ13.2%であった。吸水率は、2時間後では米粒麦78.2%、押麦73.2%、コシヒカリ22.2%で、大麦は米の3.3_から_3.5倍の吸水があった。アミロース含量は、コシヒカリ14.2%、押麦25.2%、米粒麦23.2%で、大麦のほうが米よりもアミロースを多く含む。炊飯特性の加熱吸水率と膨張容積は米粒麦>押麦>コシヒカリの順であった。pHは、押麦5.01、米粒麦5.02、コシヒカリ5.91であった。物性測定では、炊飯直後の1粒飯の破断エネルギーは押麦が一番高く即ち硬く次に米粒麦、コシヒカリの順であった。付着性では、6時間電気炊飯器で保存すると大麦はコシヒカリよりも著しく低下した。官能検査では、コントロール(米のみで大麦を混ぜないもの)が最も好まれ、次に大麦10%混合、大麦20%混合、大麦30%混合の順であった。大麦の添加量が多くなると嗜好は低下した。
  • 佐々木 啓介, 三津本 充
    セッションID: 1B-a1
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】食肉の加熱後品質を生肉の段階で予測するためには、加熱過程での成分や性状の変化を解析し、その法則を明らかにする必要がある。今回は、ブタの胸最長筋(ロース)を煮て加熱した場合ににおける、肉および煮汁中のうま味関連成分濃度の変化を検討した。【方法】ブタの胸最長筋(n=5)を一辺3cmの角切りとし、これを50mLの純水または1%食塩水中で、93±2℃で10、30、60、および180分間加熱した。加熱後の肉について加熱収量、Warnar-Brazlerの剪断力価(WBSFV)、およびうま味関連成分として肉及び煮汁中の遊離アミノ酸(AA)、グルタミン酸(Glu)、イノシン酸(IMP)、オリゴペプチド(Pep)濃度をそれぞれ測定した。測定値について、加熱時間と加塩の有無を主効果として分散分析を行った。【結果】加熱収量は加熱30分まで経時的に低下した。WBSFVは加熱60分まで上昇したが、加熱180分では加熱10分よりも低い値を示した。AAおよびGluについては、肉中と煮汁中の和である総量については変化せず、肉と煮汁での分配のみが変化した。IMPについては、加熱10分で加熱前よりも総量が有意に(P<0.05)増加したが、その後は肉と煮汁での分配のみが変化した。Pepについては、総量が加熱により経時的に有意に(P<0.05)増加した。加塩の効果、および加熱時間と加塩の相互効果については、全ての測定項目において有意ではなかった(P>0.05)。これらの結果、食肉加熱中のうま味関連成分濃度は、AAおよびIMPについては肉外への流出が変化の中心であり、Pepについてはその総量が増加することが確かめられた。
  • 洪許 于絹, 石井 克枝
    セッションID: 1B-a2
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】台湾の家庭では薬膳スープを作り、食されている。四物湯はその中でもよく作られているスープである。本研究は台湾の家庭の調理方法により、加熱時間による呈味と呈味成分の変化を調べるともに、日本人を対象に嗜好調査を行った。
    【方法】生薬は台湾の漢方専門店で購入し、鶏肉は市販手羽元を用いた。四物湯の調製は鶏肉480gと生薬(当帰・熟地・川芎・芍薬)47gと純水1150ml(台湾ではこの1/3量を使用するのが一般的)を加えて加熱した。加熱時間は30、45、60、90分とした。加熱には「大同電鍋」(間接釜式の電気炊飯器)を用いた。スープは加熱終了後1000mlに定容した。呈味成分の測定試料は一定量のスープを同量のn-ヘキサンで脱脂し、終濃度80%のエタノールで除タンパク後、減圧蒸留した。呈味成分はIMP、イノシン、ヒポキサンチン(HPLC)、還元糖(ソモギ・ネルソン法)、乳酸(酵素法)、タンパク質(Lowry法)を測定し、さらに、スープの官能検査(2点識別・嗜好法変法)を行った。
    【結果】IMPは45分のスープにもっとも多く含まれ、タンパク 質や還元糖は90分のスープで多く、乳酸は60、90分で多い傾向がみられた。呈味成分全体としてみると、60分スープの量がもっとも多かった。官能検査では45分のスープを基本として比較した。30分はうま味やこくがなく、60分はうま味やこくが弱い傾向であったが有意差はなく、90分はうま味やこくが少なく好ましくないと評価された。官能検査では、45分のスープが最もおいしいと評価された。台湾の家庭では加熱時間を経験的におよそ1時間としており、その加熱時間の妥当性が明らかになった。
  • 安部 テル子, 山内 美穂, 村本 真紀
    セッションID: 1B-a3
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    目的:スープストックの材料として、動物の骨やすね肉の他に、香味野菜などが使用される。これらの植物性食品からストック中に抽出される呈味成分としては、グルタミン酸や糖質などが期待される。市販スープには、糖を添加したものが多く見られる。砂糖、乳糖、などが表示されている。市販スープの糖の分析を行い、かなりの量の糖が添加されていることを確認した。そこで、本研究室調製のスープストックと、市販固形スープに糖を添加し、糖が味覚におよぼす影響を検討した。方法:糖の分析は、高速液体クロマトグラフィーにて行った。また、スープストックは、鶏骨、牛すね肉、香味野菜等を使用し、香味野菜のうち甘味の強いたまねぎ等を加えたストックと加えないストック、およびスクロースを添加したものを調製し、味覚試験を行った。固形スープも同様にした。結果:市販缶詰スープのうち、すっぽんスープ、かにスープでは、測定したフルクトース、マルトース、イソマルトース等がほぼ同程度検出されたが、チゲ、ビーフコンソメでは、グルコースとスクロースが、またオニオンスープからはフルクトースとグルコース等が多く検出され、トムヤンクンからはきわめて多くのスクロースが検出された。砂糖の添加は多くの製品には表示されていたが、グルコースの表示はなく、含量が高いものがあった。味覚試験の結果、牛すね肉スープでは、砂糖を添加することは甘味野菜の添加と同様に嗜好によい結果を与えた。固形コンソメスープでは、砂糖の添加で、スープはより好まれるようになったが、甘味野菜は、スープの総合評価によい効果をもたらさなかった。
  • 永塚 規衣, 河村 フジ子, 長尾 慶子
    セッションID: 1B-a4
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】煮こごりは日本の伝統的な寄せ物料理であり、煮汁中に種々の成分が溶出する為、栄養的にも優れていると考えられる。本研究では、今までのゼラチンの基礎的研究を土台として、特に煮汁に溶出したコラーゲンの可溶化と調味料との関係に注目し、各種調製条件の違いが煮こごりの物性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】材料は牛肉、豚肉、鶏肉を用いた。それぞれ約1cm角切り50gに6割の水(30ml)を加えて600Wの電熱器で加熱、沸騰後の火加減を300Wに調節して、10_から_120分の定時間加熱した。加熱終了後、各試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した。各試料ゾルの透過色、pH、動的粘弾性、NMRの測定を行った。次いで各試料を内径32mm、高さ15mmのペトリ皿に分注し、冷蔵庫で24時間保存してゲル化させ、破断特性を比較した。上記材料のうち、鍋物調理に一般的な鶏肉を取り上げ、調味料添加の影響を検討した。砂糖、醤油、酢など調味料は内割りで煮汁の10%添加し、測定方法は上記と同様に行った。
    【結果】煮こごりの材料によりゲル化の状況に違いが見られ、特に牛肉は煮こごりゲルを形成しにくかった。煮こごりの滑らかな口当たりは、肉基質たんぱく質であるコラーゲンが分解して得られたゼラチンのゲル化強度によるところが大きいといわれていることから、各種材料(牛肉、豚肉、鶏肉)のたんぱく質中のコラーゲンの結合の仕方が異なると推測される。また、鶏肉の加熱実験においては部位による煮こごりのゲル形成に差が見られた。さらに、調味料を加熱初期から添加した場合と加熱途中で添加した場合との間でも煮こごりの物性が異なることが明らかとなった。
  • 木下 暁子, 松本 美鈴, 香西 みどり, 畑江 敬子
    セッションID: 1B-a5
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】結合組織を多く含み硬い部位である牛すじを、赤ワインおよび白ワインで加熱すると、水の場合よりも短時間で食べられる軟らかさになることを先に報告した。本研究ではワインの成分に注目し、牛すじの加熱軟化にどの成分が影響しているか知ることを目的とした。
    【方法】合成赤ワインは、エタノール、酒石酸、タンニン、ブドウ果皮抽出物とし、合成白ワインは、エタノール、酒石酸として、ワインに含まれる割合に混合した。牛すじの筋周膜部から脂肪と筋肉を除いたすじ部分を1.5cm×5cmに成形した。これを約9gずつ、水・合成赤ワインまたは合成白ワイン720ml中で、電気コンロにより沸騰まで約13分加熱し、前回同様沸騰を2時間継続した。生肉及び沸騰後20分毎にすじ肉を取り出し、重量・水分(常圧加熱乾燥法)・破断荷重(クリープメーター,山電RE3305)を測定した。その後、合成ワイン成分から1成分ずつ除くオミッション試験を行い、牛すじの加熱軟化を早めるワイン成分を検討した。
    【結果】合成ワインの温度履歴はワインと同一であった。ワインと同様に合成ワインも牛すじの軟化を早めた。オミッション試験では、酒石酸を除いた場合に他の成分に比べて加熱中の重量変化が見られず、水分含量も有意に低かった。また、牛すじの軟化を早める効果もみられなかったことから、合成ワイン成分の中では、酒石酸が牛すじの軟化に最も影響していると考えた。さらに、合成赤ワインの成分を、エタノール、酒石酸、カフェー酸、ブドウ果皮種子抽出物に変えた場合、合成白ワインの成分を、エタノール、酒石酸、カフェー酸に変えた場合についても軟化効果を検討中である。
  • 金 娟廷, 川野 亜紀, 高橋 智子, 大越 ひろ
    セッションID: 1B-a6
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    <目的> 高齢者のタンパク質・エネルギー低栄養状態(Protein Energy Malnutrition,PEM)を改善するため、良質のたんぱく質の給源として高齢者の食事に食肉が多く利用されることを望む。そこで、高齢者にとって食べやすい食肉開発を目的として豚ロース肉に対して高圧処理を行い、物性及び飲み込み易さなどの検討を行った。<方法> 豚肉ロース芯部位を用い、前処理として、0.4mol/lの重曹溶液あるいは脱イオン水に20℃で40分間、浸漬を行った。浸漬した重曹処理肉及び重曹無処理肉は100MPa,200MPa,400MPaの3段階で高圧処理を行った。ただし、高圧処理を行わなかったものを、0MPaとした。加圧後、80℃で、30分間、加熱した。測定項目は水分含有率、pH、重量減少率、テクスチャー特性の硬さ、一般生菌数、色の変化とした。また、官能評価の手法を用いて、重曹処理及び高圧処理を行った4種類の試料肉について、咀嚼しやすさ、飲み込みやすさ及びおいしさを評価した。<結果> 高圧処理を行うことにより、いずれの試料肉も圧力が増加するにつれ水分含有率は増加し、重量減少率は低下し、テクスチャー特性の硬さも低くなった。一般生菌数は、熱と共に400MPaの圧力をかけることで全く検出されなくなった。白色度(W)は重曹処理肉及び重曹無処理肉のいずれも200MPaまでは変化がほとんど認められなかったが、400MPaで急激に増加した。官能評価を行った結果、重曹処理後に高圧処理を行った試料肉は他の試料肉と比べ、やわらかく、噛み応えがなく、飲み込みやすく、残留感も少なく、さらに、おいしいという結果が得られた。
  • 宮内 康衣, 武田 吏恵, 横山 恵理, 市川 朝子, 下村 道子
    セッションID: 1B-a7
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】魚肉の味噌漬けは、どのくらいの漬け込み期間のものが最も嗜好性が高いのかを知るために、魚肉の物性測定や成分分析を行い、魚種による違いも含めて嗜好性との関連を調べようとした。【方法】試料は冷凍フィレ肉のサワラ(水分73.9%)と銀ムツ(水分62.8%)を用いた。味噌床は配合割合を変えた味噌床I、味噌床IIの2種類を用い、味噌、砂糖、清酒、水の割合をそれぞれ50:15:10:25と、80:8:2:10にした。魚肉を体長方向に1.5cm厚さに切り、魚肉重量の60%の味噌床に漬け、4℃で1日から7日間保存した。それらの魚肉を中心温度が75℃になるまでオーブントースターで加熱後、重量,水分,pH,レオメーター(山電RE-33005)による破断強度測定,官能検査,アミノ酸分析等を行った。【結果および考察】味噌漬け魚肉の重量は、漬け込み後減少し、その後増加した。水分は漬け込み初期に減少し、3日後からはほぼ平衡状態であった。塩分及び糖度は保存日数が長くなるにつれ上昇した。魚肉中の遊離アミノ酸は,味噌床に漬け込むことで徐々に味噌床のアミノ酸組成に近くなり、その量はいずれも増加した。加熱魚肉の硬さはサワラでは漬け込み後しだいに高くなり、5日後が最も硬く、7日後には低下した。銀ムツでは、7日後が最も硬かった。官能検査で、サワラは5日後、銀ムツは7日後が最も好まれ、この結果は魚肉の物性及び成分と相関があると考えられた。以上の結果から、魚肉を味噌漬けにすることで保存性が高まるだけでなく、味噌の成分が魚肉に移行することで物性と味が変化し、また、魚種によって好まれる漬け込み期間に違いがみられた。
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    セッションID: 1B-a8
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    目的 肉のタンパク質が熱変性した状態を分子量の異なる2種類の酸性色素を用いた染色により識別し得るかを調べ食品組織化学的方法により加熱状態を判断することが可能であるかを確かめた。方法 材料にはトリ肉を使用した。トリ肉は一口大(3×3×1.5cm)に切り170℃のフライヤーで1分間および4分間から揚げにした後直ちに中心温度を測定して放冷したものを試料とした。試料は10%ホルマリン液で固定後パラフィン切片を作製してPicrosirius(PS), Naphtol green B_-_Sirius red F3B(NGB_-_SR), Hematoxylin_-_Eosin(H_-_E)により染色した。結果 未加熱肉では分子量の小さい色素に染まる筋線維と分子量の大きい色素に共染する筋線維があった。加熱表面の筋線維は分子量の小さいPAおよびNGBの色素に強く染まった。加熱時間が長い試料は、表面から内部への染色範囲が広がっていた。加熱肉の内部の染色性は未加熱肉とは異なり、PS染色ではPAおよびSRの色素に共染しNGB_-_SR染色ではSRの色素に染まった.膠原線維はSRに強く染まりその染色性は加熱しても変化がなかった。膠原線維は未加熱肉では複屈折性を示すが加熱時間が長くなると複屈折性を示す部位は少なくなり4分間加熱した標本ではほとんど消失した。 トリ肉の加熱および非加熱の状態は、筋線維の染色性の変化および膠原線維の複屈折性の変化から視覚的に判断することが可能である。
  • 橋本 多美子, 遠藤 千鶴, 多田 文代, 光崎 龍子
    セッションID: 1C-a1
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    目的:施設入所高齢者の食物繊維摂取状況を調査した結果1)、食物繊維の摂取はエネルギ-1000kcalに対して8.8g前後であり、便秘傾向にある人が平均7割を超えていた。そこで、排便効果をもたらすと言われている食物繊維を高齢者に食べやすい形状に調製し、これらを食事の一環である間食に取り入れることにより便通の状態を喫食前後で比較した。方法:高齢者に食べやすい形状としてゼリーを選び、大豆をベースに食物繊維としてポリデキストロースを10g添加し、高齢者咀嚼・嚥下困難者用に調製した。調査期間は平成14年8月19日から9月13日までの26日間である。調査対象者は介護老人保健施設で一般食を喫食している27名で、調査内容は食事摂取状況、便の回数および相対的な便量、下痢・浣腸剤使用の有無、ゼリーの嗜好調査などである。結果:対象者の内訳は男性6名、女性21名で、年齢は男性が77_から_98歳、女性は73_から_97歳であった。生活活動区分は、歩行器使用が男性2名、女性5名、車椅子使用は男性3名、女性11名、寝たきり男性が1名、女性が5名であった。ゼリー摂取前の食物繊維供給量は12.1_から_18.2gで、摂取量は9.1_から_16.5gであった。一方、ゼリー摂取期間の食物繊維供給量は21.1-26.8gで、摂取量は15.6-21.3gであった。ゼリーの嗜好調査では、美味しいと答えた人が48.2%、普通44.4%、美味しくない7.4%であった。ゼリー喫食後の排便回数の増加割合は全体で19名(70.4%)であり、また下剤・浣腸剤の使用も減少が見られたことから、食物繊維10g添加のゼリーは高齢者の排便に効果を示した。1)橋本多美子他:第49回日本家政学会中国四国支部研究発表会要旨集p.8(2002)
  • 竜口 和恵, 吉元 誠, 石黒 浩二, 山川 理
    セッションID: 1C-a2
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕昨年の本学会で黄色系、オレンジ色系、紫色系の各色系統のサツマイモでピューレーを作成し、これらを利用した調理について発表したが、紫色のアントシアン系サツマイモの調理は限られていた。一方、種々の生体調節機能を持つポリフェノールの一つとしてアントシアニン色素は注目を集めている。そこで健康上も有益なアントシアニンの色を活かしたサツマイモピューレーを用いた調理を試みた。〔方法〕アントシアン系サツマイモは九州沖縄農業研究センター・畑地利用部で栽培・育成された7系統を用いた。その中でピューレー適性が良いと判断された九系174と九系195についてピューレーを作成し調理をおこなった。ピューレーの粘度は回転振動型粘度計(山一電気・ビスコメイトVM-19)で約2,500cpに調整し、色調は色差計(日本電色・ND1010)を用いて測定した。〔結果〕アントシアニン色素はpHが酸性域では赤、中性域で紫、アルカリ域で黒青_から_黒緑に色調が変化するが、その変化はサツマイモの系統により少しずつ異なっていた。この色の変化を利用してソース、スープ、小麦粉まんじゅうなどを作った。中性域のスープの紫色については少し抵抗が見られたが、酸性にした赤いソースは受容された。またBPを用いた小麦粉まんじゅうにピューレーを用いると、加えたヨモギなどの緑色も鮮やかになり、サツマイモの甘さも加わって好評であった。
  • 石澤 恵美子, 坂本 恵
    セッションID: 1C-a3
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ハスカップは不老長寿の実として珍重され、抗酸化作用をもつ食品として注目されている。栽培は千歳市から北海道勇払原野にかけておこなわれており、6月から7月が旬である。その果実はジャム・各種菓子類の原料として利用されている。また地域によっては塩漬けが作られ保存食として利用されているが認知度は低いのが現状である。そこで今回、ハスカップを利用した調理をおこなったので報告する。方法1. 試料および試料調整千歳産ハスカップを試料とし2種類(A・B)調整した。Aは60%の砂糖を添加後、分離液と果実に分け10%の食塩に2日間漬けこんだ。Bは10%の食塩を添加し5日間漬け込んだ。           2.料理作成と官能検査  A・Bのハスカップと分離液を利用した料理を作成し、北海道文教大学人間科学部料理研究会の学生21名に官能検査をおこない集計した。結果米料理(おにぎり、チャーハン)では好きと回答した人がおにぎり14名(66.7%)、チャーハン17名(81.0%)であった。麺料理(スパゲティー)では好きと回答した人が2名(9.5%)であった。肉料理(豚冷しゃぶのつけだれ)では好きと回答した人が17名(81.0%)であった。魚介類(鱒のハスカップソース焼き、ハスカップ入りタルタルソース)では好きと回答した人がソース焼き10名(47.6%)、タルタルソース15名(71.4%)であった。野菜料理(長芋の和え物、ハスカップ入りフレンチドレッシング)では好きと回答した人が和え物8名(38.1%)、ドレッシング2名(9.5%)であった。デザート(ゼリー)では好きと回答した人が15名(71.4%)であった。   以上の結果により、ハスカップは米料理・マヨネーズとは最適であるが、ドレッシングとしては好まれなかった。
  • 魚住 惠, 塚本 知玄, 小野 伴忠
    セッションID: 1C-a4
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>植物性食品の加熱軟化には、細胞壁構造物質の変化が関与していることが知られている。演者は、先に、大豆茹で汁にはこの軟化を促進する作用があることを報告したが、本研究では、大豆茹で汁の加熱軟化促進作用の要因について検討し、植物性食品の加熱調理におけるテクスチャーコントロール、煮崩れ防止等に役立つ基礎的知見を得ることを目的として実験を行なった。
    <方法>加熱軟化の対象として、人参を用い、大豆茹で汁画分により加熱軟化させ、咀嚼試験をおこなった。さらに、各画分に含まれていると考えられた成分を用いて、各種溶液を調製し、同様に人参を用いた加熱軟化によるモデル実験をおこない、先の咀嚼試験の結果と比較した。大豆茹で汁中にもっとも高濃度で含まれているミネラルであるKは、基本的に植物性食品の加熱軟化を促進すると考えられるが、モデル実験には、基準溶液として大豆茹で汁と同濃度のKを含むKCl溶液を用いた。さらに、大豆茹で汁に大量に含まれる糖類の影響、また、それらの相互作用について検討した。
    <結果>大豆茹で汁画分のうち、人参の加熱軟化を促進する中心となる画分は、脱アニオン画分であり、逆にカチオンを除去することにより、軟化促進効果は、認められなくなった。しかし、大豆茹で汁に含まれるK濃度と同濃度のKCl水溶液の軟化促進効果は、大豆茹で汁よりも小さかった。KCl溶液に各種糖を添加することにより、加熱軟化促進効果が変化した。蔗糖は、KCl溶液の軟化促進効果を増大させた。
  • 三宅 義明, 平光 正典, 坂井田 和裕, 澤崎 絵美, 横越 英彦
    セッションID: 1C-a5
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:カルシウム、鉄分のミネラルは、世代によっては一日所要量を満たしていない点から、これらを含有する食品の積極的な摂取が望まれている。一方、カルシウム、鉄分は、多くの食品に含まれているが、溶出性、体内吸収性が低い点が指摘されている。そこで、酸性調味料の一つであるレモン果汁に着目し、食品からのカルシウム、鉄分の可溶化、溶出性の向上を検討した。さらに、ラット摂食試験により、カルシウムの体内吸収性に対するレモン果汁の影響を調べた。
    方法:コマツナ、チリメンジャコ、サンマなどの食材を、フードプロセッサーで粉砕した。各粉砕物1gに比較対照区として蒸留水、レモン果汁、および6%クエン酸溶液(レモン果汁と同濃度)の各20mlを加え、37℃、1時間振盪後、原子吸光光度計にて溶液中のCa、Fe量を測定した。また、ラット試験では、0.3%Ca配合食餌で1%レモン果汁または蒸留水(対照区)を飲水により、1ヶ月間飼育し、糞、尿中Caの定量により、見かけのCa吸収率、保持率を算出した。
    結果:すべての食材で、蒸留水よりクエン酸溶液、レモン果汁の方がCa、Feの溶出量が増大しており、レモン果汁の方がクエン酸溶液より少し高かった。また、ラット試験では、蒸留水の飲水に比べてレモン果汁の方が、Ca吸収率、保持率が高まっていた。以上のことから、レモン果汁は、食品中からのCa、Feのミネラルの溶出性を高める効果があり、Caについては体内吸収の向上性が見られた。
  • 佐藤 理栄, 福島 正子, 竹山 恵美子, 松本 孝
    セッションID: 1C-a6
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】多量のアルミニウム摂取は,体内蓄積量を増加させ神経毒性を発現する可能性がある。一方,食物繊維には金属を結合し排泄する作用がある。そこで,食物繊維のアルミニウム結合能とそれらのpHによる変化を調べ,生体内におけるアルミ二ウムの挙動について検討した。また,共存する可能性の高い鉄およびアルミニウムイオンと食物繊維の競合的結合について検討した。
    【方法】試料は野菜・海藻類などの食品と市販の多糖を用いた。食物繊維はProsky変法によりSDFとIDFに分画し,標品とあわせてそれぞれ5日間透析し凍結乾燥した。アルミニウムおよび鉄イオンは,0.2M-HNO3に溶解した化学分析用標準液(1000ppm)を用いた。結合量は,金属イオンを試料に添加し,0.1N-HNO3でpH調整した後37℃で1h振盪し,遠心分離後上澄み中のイオン量を原子吸光光度計で測定した。添加した金属イオンから残存イオン量を差し引き結合量を求めた。粘性はB型回転粘度計で測定した。
    【結果】SDFではpH3.5において,アロエとエリンギのアルミニウム結合量が鉄より高くなったが,オクラ,モロヘイヤ,ヒジキでは鉄より低くなった。アロエ・エリンギIDFでは,鉄の結合量がアルミニウムより高かった。pH2.0にすると結合量はSDF・IDFともに低下したが,いずれの試料もアルミニウムより鉄の方が高い値を示した。また,アルギン酸ナトリウム水溶液のpHを下げると粘性が低下し,アルミニウムおよび鉄吸着量も減少した。
  • 松井 正枝, 中平 真由巳, 高村 仁知, 的場 輝佳
    セッションID: 1C-a7
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
     アルミニウムは,食品関係の器具容器の素材として広く用いられています.アルミニウム摂取とアルツハイマ_-_症の間に因果関係があるのではないかと指摘する論文がAlfreyらによって発表されて以来,これに関する多くの研究が報告されている.しかし,アルミニウム製調理器具からのアルミニウム溶出に関する報告は多いが,実際に食する料理中のアルミニウム溶出量を測定した報告は少ない.前回の我々の報告において,家庭で行う調理条件で酸性およびアルカリ性の際立った料理を選び,料理中のタンパク質や油のアルミニウム溶出への影響を見るために検討を行い,タンパク質,油の存在は,アルミニウムの溶出を抑制する効果があるという結果を得た.そこで今回は,酸性の料理である,ジャム,およびアルカリ性の料理であるインスタントラーメンを用いアミノ酸のアルミニウム溶出に及ぼす影響を見た.アミノ酸には,グルタミン酸とイノシン酸を用いた. 使用するアルミニウム鍋は,アルミニウム製調理器具から溶出するアルミニウムについてのいくつかの報告があるが,いずれも未使用鍋を用いたものであるため,未使用鍋と繰り返し使用鍋のアルミニウム溶出におよぼす影響について検討を行った.その結果,酸性,アルカリ性の料理共にアルミニウム鍋を繰り返し使用してもアルミニウム溶出量に影響はなかった.アルマイト鍋でも同様の結果を得た.次に,酸性の料理であるあんずジャムおよび干しあんずジャム調理中にアミノ酸を加えることにより,アルミニウムの溶出が抑えられた.アルカリ性であるインスタントラーメンでは,加熱前後の調味料添加によるアルミニウム溶出への影響を検討した結果,加熱前に調味料を添加した時アルミニウムの溶出が抑えられた.今回の実験では、アミノ酸添加量を0.1,0.5 %としたが,アミノ酸の添加量を0.1から0.5%に増やしても効果に差はなかった.
  • -骨密度及び骨強度を中心として-
    吉岡 慶子, 山田 愛, 関 あずさ, 和田 俊, 山元 寅男
    セッションID: 1C-a8
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】カルシウム(Ca)摂取の給源として、魚介由来のCaであるイカ甲羅Caを用い、大腿骨中Ca含量、骨密度測定及び組織観察を行い、さらに、脛骨の骨密度及び骨強度を調べ、これらのCaの種類と油脂の摂取がラットの骨代謝に及ぼす影響を確認し、添加カルシウムとしての有効性を検討した。【方法】4週齢のWistar系雄性ラットを用い、10日間標準飼料(AIN-93G)で予備飼育後、A_から_D群に分け、4週間飼育した。実験飼料はAIN-93GからCa及び油脂を除き基準飼料とし、A:基準飼料+Ca(AIN-93G-Ca)+コーン油、B:基準飼料+Ca+魚油、C:基準飼料+イカ甲羅Ca(イカCa)+コーン油、D:基準飼料+イカCa+魚油とした。骨中のCa含量はo-CPC法、無機リン量は酵素法で定量し、血漿中のCa、無機リン量、ALPを測定した。骨密度は大腿骨と脛骨をpQCT法で骨幹端部と骨幹部を測定し、SSIを算出した。また、脛骨の骨幹部3点曲げ及び近位部圧縮試験を行い、骨の強度を測定した。組織標本は常法に従い作成し観察した。【結果・考察】大腿骨中Ca含量はD群で有意に高値を示した(p<0.01)。総骨密度ではA群に対し、B、C群に対しDは共に高値を示した。海綿骨骨密度はA群に対し、B、Dは有意に高値であり、皮質骨ではAとD群、CとD群共に有意であった。脛骨骨密度では大腿骨とほぼ同様の傾向を示した。脛骨骨幹部及び近位部の3点曲げもしくは圧縮試験では、共にA群に対しB、C、D群で高値を示し、CとD群で骨強度の増加が認められた。組織観察では皮質骨幅の増加等これらの計測値を反映する所見を認めた。Caの種類と油脂の摂取では、大腿骨中Ca含量ではCaと油脂の間に交互作用が認められ(p<0.05)、Ca間に有意性が認められた。総骨密度では交互作用は認めなかったが、油脂間では魚油が有意であった。イカ甲羅Caは骨形成に効果的であり、魚油の併用投与により促進され、添加カルシウムとして食品への利用が期待される。
  • さつまいもの伝播と利用(1)
    進藤 智子, 徳田 和子, 福司山 エツ子, 竹山 小菊, 外西 壽鶴子
    セッションID: 1D-a1
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】さつまいもは、本県が全国一の生産地で、青果用、加工用、工業用原料として利用されている。食材も多様化し、地域性が次第に失われつつあるが、食材として、でんぷん以外のミネラル、ビタミン等の優れた栄養機能性もあり、郷土の食文化の原点でもあるこのさつまいもの変遷とその活用を検討する。【方法】鹿児島県農政部及び農業試験場、著者からの聞き取り調査による資料収集、さらに文献(歴史書、専門書、石碑)や生産現地調査を行った。【結果】さつまいもの原産地は中南米で、伝播ルートの有力な説は、(1)クマラ・ルート(2)バタタ・ルート(3)カモテ・ルートである。(1)では紀元前1000年頃から十数世紀に及ぶ伝播であるのに対し、(2)(3)は、1492年コロンブスの新大陸の発見以降であり、急速に伝わっている。日本への伝播は、中国から琉球へ伝えられており、鹿児島へは、1611年、薩摩藩主島津家久が琉球出兵した時、将兵が持ち帰ったのが最初で、1698年種子島の島主久基は琉球王の尚貞王から送られた甘薯を基に栽培を普及した。のちに、久基は、島津の家老となり、農政担当として薩摩全域に広めた。1705年山川の漁師前田利右衛門が琉球より持ち帰り、伝授した説もある。さつまいもは、嗜好品として伝来したが、享保、天明、天保の飢饉の際、救荒作物として農民の飢えを凌いだ功績が大きく、その真価が評価され、全国へ普及した。本県では、庶民の常食から、代用、補給食へと変化し、最近では、多種多様な工業用原料として利用され、一方では、嗜好品としても見直され、青果用も伸びている。
  • さつまいもの品種の変遷とその利用
    竹原 小菊, 福司山 エツ子, 外西 壽鶴子, 徳田 和子, 進藤 智子
    セッションID: 1D-a2
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的・方法】前報と同様であるが、品種の変遷とその利用について報告する。【結果】さつまいもは伝来して約400年、鹿児島ではその伝来に基づいて「唐芋」と呼び慣らされてきており、初期の頃は嗜好品として珍重され、長い歴史の中で飢饉の際には救荒作物として、第二次世界大戦中は、ガソリン代用燃料としてアルコールが生産され戦後にかけては、代替主食として大きな役割を果たし、品種の変遷と利用は当時の時代背景もあった。明治・大正時代には「つるなし源氏」「七福」「隼人いも」「ベルベット」などが栽培されていたが、昭和17年、食味はよくないが多収穫の「農林2号」が鹿児島県農業試験場で交配によって育種され、長く栽培され続けた。 戦後、その利用に適した品種が研究改良され、昭和34年には食味良く、収量の多い「高系14号」が県の奨励品種として普及し始め、昭和42年に育種された「コガネセンガン」は、本県で最も多く栽培され、でんぷん原料用、焼酎用、加工用、青果用まで幅広い用途で使用されている。その後、青果用の主力品種である「ベニサツマ」、でんぷん用の「シロロユタカ」「シロサツマ」などが育種され、5品種で98%を占めている。 最近では用途別の品種分化が益々進み、カロチン含量の高い「ベニハヤト」、焼酎用の「ジョイホワイト」、色素原料用の「アヤムラサキ」、ジュース用の「ジェイレッド」などが栽培されている。加工品の開発には、農産物加工研究指導センターや民間企業の働きに大きなものがある。また、種子島在来種の「安納紅」「安納こがね」「種子島ろまん」「種子島ゴールド」は、その特性を活かした栽培の拡大が期待されている。
  • 今田 節子, 青木 三恵子, 有元 祥三, 大野 婦美子, 笠井 八重子, 佐々木 敦子, 寺本 あい, 西崎 純代, 人見 哲子, 平野 ...
    セッションID: 1D-a3
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】豆類・いも類の種類と大豆料理を指標に,現在の岡山県における食習慣の地域性とその背景を探った。【方法】岡山県の生活環境を考慮して調査地20カ所を選び,232名の主婦から現在使用している豆類・いも類の種類と調理法などについて,アンケートおよび聞き取り調査を実施した。調査対象者は30,40才代27%,50才代32%,60才以上40%であった。【結果】地域差が認められた食習慣をまとめると,(1)ささげや花豆は県南部地域で,青大豆は県中・北部地域で比較的出現が多く,干しずいきやむかご,こんにゃく芋,多種類の山芋類は県中・北部とそれに隣接する地域でみられ,自給中心であった。(2)豆腐は県中・北部地域で,こんにゃくは県中・北部とそれに隣接する地域で,現在でも手作りする習慣が存在していた。(3)大豆料理の種類は県中・北部地域に多く,呉汁,醤油豆,豆ご飯やおこわなどの伝統的な料理と揚げ物,サラダ,ハンバーグ,コロッケ,カレーなどの洋風料理の両方がみられた。(4)黒大豆料理も県中・北部地域に種類が多く,黒大豆のすしや巻きずし,揚げ物,黒豆ジュースやゼリー,黒豆豆腐,黒豆味噌やひしお,醤油漬けなど多彩であった。そして,仏事の黒大豆飯やおこわは県南部地域に,正月や祭りの黒大豆のすし類は県中・北部地域に多いという地域差を示した。(5)以上の結果より,岡山県の豆類・いも類の食習慣は,吉備高原を境として県中・北部と県南地域,そして両地域に隣接する3地域に大別できた。そこには栽培に適した環境,稲作転作や地域活性化事業などの政策,健康志向を反映した栄養委員や農協婦人部の活動や交流,調査対象者の年令や家族構成などが影響していた。
  • 坂本 裕子, 小西 春江
    セッションID: 1D-a4
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 県中央部に琵琶湖を有する滋賀県の湖南(大津市堅田)、湖東(蒲生郡蒲生町)、湖西(高島郡高島町)、湖北(東浅井郡湖北町)の各地域における豆といもの利用状況について比較検討した。[方法] 日本調理科学会特別研究として平成13年7月から14年1月に、4地域の調理担当者(堅田10世帯、蒲生町8世帯、高島町7世帯、湖北町7世帯)に聞きとり調査を行い、豆といもの利用状況と料理を13に分類した調理方法について調べた。[結果] 調査対象者の平均年齢は58.2歳で、家族数の平均は4.8人であった。購入者が多く、平均年齢が若い堅田、平均年齢が最も高い蒲生町、家族数が最も少ない高島町、生産者が多い湖北町という特徴があった。豆について 出現数の世帯平均は堅田38.8、蒲生町36.4、高島町34.8、湖北町49.9で、堅田、高島町、湖北町では豆腐、揚げ類、大豆、小豆の順に多かったが、蒲生町では揚げ類、豆腐、小豆、いんげんまめの順であった。乾燥豆と野菜豆の別でみると、堅田、蒲生町、湖北町では乾燥豆が74%、野菜豆がともに26%の利用であったのに対し、高島町では乾燥豆が79%と若干多かった。行事食に堅田、湖北町ではきな粉、小豆、凍り豆腐、いんげんまめ(乾)の利用が多くみられたが、蒲生町、高島町では小豆以外の利用度は高くなかった。料理分類をみると豆全体では煮物が最も多く、蒲生町で48.2%、最も少ない湖北町で41.3%であった。次いで四地域とも飯・麺料理への利用が多かった。いもについて 出現数の世帯平均は堅田28.7、蒲生町22.0、高島町22.6、湖北町33.6で、ともにじゃがいもが最も多かった。四地域ともに煮物が一番多いが(34.0から39.0%)、二番目に堅田と湖北町では揚げ物が(13.2、15.7%)、蒲生町と高島町では和え物が(13.0、11.0%)出現していた。
  • 吉田 恵子, 渡辺 敦子, 荒田 玲子
    セッションID: 1D-a5
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕平成13・14年調理科学会特別研究の一環として調査を行った茨城県内三地域でのいも・豆類の使用頻度、これらの料理についてまとめ比較検討した。さらに我々は学会の調査とは別個にアンケート調査をおこない、これらの料理の次世代への継承を調べた。今回の学会での調査は現状把握としてのデータとしては有意義なものであると思うが、私たち調理科学会会員としては、調査した料理の継承についても検討する必要があると考えこの調査を行った。〔方法〕学会でのアンケート調査で集計した各地域ごとに代表的ないも・豆料理をあげ、それぞれについて次世代への継承の意志を回答させた。継承したいと答えた料理については、現状を聞きさらに継承についてどのような考えをもっているかを答えさせた。回収後単純集計を行った。〔結果〕茨城県は南北に長い県であり、調査を行った県北(大子町)県南(土浦市)県西(三和町)では三地域で特色のある結果が得られた。また調査対象者の平均年齢60歳ということで、いも・豆類を使用した料理は伝統料理や、郷土料理なども多くみられた。これらの料理の継承については、ほとんどの料理について次世代へ継承の意志があると答えた。そのなかで三地域ともによく作られていた料理はけんちん汁、ふかしいも、赤飯であった。これらについて現状と継承への考えを検討した。次世代に伝え今も作っていると答えた家庭が多かったが、継承については大子町では伝えたいが現実にはいないので無理という回答が多く、土浦市、三和町では将来は作るであろうという回答であった。
  • 片寄 眞木子, 正井 千代子, 川原崎 淑子, 富永 しのぶ, 東根 裕子
    セッションID: 1D-a6
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    「目的」兵庫県中東部高地の丹波地域、東南部の平地にある尼崎市、および中南部の加古川流域に位置する加古川地域の豆類といも類の利用状況を調査し、3地域を比較することを目的とした。平成13・14年度日本調理科学会特別研究_-_豆・いも類利用の地域性_-_の一環として実施したものである。「方法」調査時期は平成13年7月から10月。篠山市と三田市(丹波と称す)の13世帯、尼崎市(尼崎と称す)の12世帯、加古川市と加古郡播磨町(加古川と称す)の12世帯の主婦に面接し、豆といもの利用状況(食材名、入手方法、料理・加工名、主・副・間食、日常・行事、季節性等)について聞き取り調査を行った。料理を13分類して集計し検討した。「結果」 1)人口密度/km2は丹波328、尼崎9363、加古川2912で、対象者の平均年齢・家族数は丹波47.8歳・4.9人、尼崎62.1歳・4.3人、加古川58.3歳・3.0人であった。2)豆の料理・加工の出現数と(出現率%上位の食材)は、丹波407(豆腐18、大豆12、さやいんげん10)、尼崎417(豆腐18、さやいんげん9、揚げ類9 )、加古川345(豆腐20、揚げ類12、大豆10)であった。丹波では自家栽培、黒豆の利用が多い。3)豆の料理分類では、丹波は煮物、菓子、飯物、調味料、尼崎は煮物、調味料、飯物、菓子、加古川は煮物、飯物、汁物、菓子の順であった。4)いもの料理・加工の出現数は丹波298、尼崎277、加古川182で、地域によって2位以下の順位は異なるが上位5位の食材はじゃがいも、さつまいも、やまのいも、里芋、こんにゃく(加工品)であった。5)いもの料理分類では、3地域とも煮物、揚物、汁物の順に多く出現して60から70%を占め、次いで和物、焼物、飯物であった。
  • 澤田 崇子, 塩谷 知華, 瀬戸 美江
    セッションID: 1D-a7
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕 近年、日本は急速に高齢化社会を迎え65歳以上の人口は増加の一途をたどっている。高齢者が健康で長寿をまっとうすることは、高齢者自身やその家族さらには彼らを支える社会において大きな問題である。そこで本研究では、高齢者の「食事」にどのようなサポートが必要かを知るための手段として、世帯構成の違いによる高齢者の食事への満足度および調理担当者が高齢者への食事作りにおいて行っている工夫や配慮をアンケート調査し、さらに食生活調査、生活時間調査、生活活動量の調査を行った。〔方法〕 アンケート調査は、短期大学学生の祖父母で65歳以上の高齢者142人、および家庭で主に調理を担当している95人を対象に行った。食生活調査は、ある三世代家族を対象とし、2002年2月から3月中の7日間または14日間、秤量法を用いて行い、生活時間調査は2002年3月のある1日を調査した。また、生活活動量は、その世帯の65歳以上の高齢者を対象に、起床から就寝まで万歩計を使用してもらい調査した。〔結果〕 _丸1_ 食事への満足度については、高齢者の単独世帯、高齢者夫婦のみの世帯、三世代同居世帯のうち、高齢者夫婦のみの世帯が最も高かった。_丸2_ 調理担当者は高齢者の好む料理を作ることに配慮・工夫していることが認められたが、それに対する満足度は高いものではなかった。_丸3_ 食生活調査からは、高齢者の単独世帯および高齢者夫婦のみの世帯では、栄養所要量に対する充足度が低いのではないかと推測された。
  • 大高 陽子, 日和 智子, 饗庭 照美, 浅野 恭代, 大谷 貴美子, 岡田 真理子, 奥田 展子, 川井 孝子, 田口 邦子, 田中 順子 ...
    セッションID: 1D-a8
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】高齢者が自立した食生活を送ることは、自身のQOLを高めるために重要である。本研究は高齢化が深刻な社会問題となっている日本と韓国において、食に関して学ぶ機会や、料理に携わる機会が少なかったと考えられる、50歳以上の男性に焦点を当て、食生活の自立度を調査し、高齢期における望ましい食生活を形成するためのあり方について社会や教育の現場に提言していくことを目的とし調査を行ったものである。【方法】日本及び韓国において、食生活についての意識や、食事作りへの関わり方、調理能力、将来設計に関するアンケートを50歳以上の男性(日本N=520、韓国N=298)を対象に行った。また男性を客観的に評価をする為に50歳以上の夫を持つ女性(日本N=361、韓国N=275)に対しても同様の調査を行った。統計処理にはSPSS10.0ver.およびEXCELを使用した。【結果】日韓ともに自己評価と客観評価とでは食い違いがあり、50歳以上の男性は食事作りの面で自立しているとはいえなかった。子供の頃に母親の手伝いをしていた男性ほど調理に対する苦手意識がなく、現在も普段の食事作りに参加し、台所仕事以外の他の家事への協力も認められた。また、作る事のできるメニュー数は自己評価、客観評価ともに韓国よりも日本の男性の方が多く、韓国の女性の方が日本女性よりも男性が台所に入ることに対する抵抗があった。男性が台所に入ることに抵抗感がある妻を持つ男性ほど食事作りをしていないことから、男性が料理をすることに対する女性側の意識も変えなければならないと考えられた。
    山田克子2)、米田泰子2)、和辻敏子2)
  • 小板 由美子, 宮木 恵美, 永島 伸浩
    セッションID: 2A-a1
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 埼玉県比企郡吉見町は、県内の内地小麦・米の生産地の一つである。小麦は製粉後うどん等に利用されているが、生地の弾力性がやや低く、市販の小麦粉のような調理利用はあまり進んでいない。古くより、この地粉に輸入小麦粉を混合し、他の調理加工品も検討されているが、地粉としてのメリットは見出されていない。今回、この地粉に粘弾性に優れたもち米粉を混合し、うどん及びフレッシュパスタへの応用について試みた。【方法】 1)試料は、平成14年度埼玉県吉見町産の小麦(農林61号)及び糯米(みやこがね)を製粉して実験に用いた。2)実験項目;小麦粉及びもち米を製粉後、小麦粉、もち米(生米、加熱調理後を含む)を用いて種々の割合に調製後、うどん及びパスタに調製し、加熱調理した場合の種々の特性について調べた。1 煮溶け率、2 組織観察、3 レオナー((株)山電RE_-_33005型)による破断特性等の測定、4 食味特性について検討した。【結果】うどん生地調製後、加熱前の生地では、強力粉に比べて伸展性が低く、切れやすい特性であった。地粉にもち粉を添加した生地では、加熱前では破断応力が大となるが、加熱後は伸展性が大きくなり、もちもちとした食感が得られた。パスタもうどん生地と同様の傾向が認められ、もち粉を添加することにより地粉の新しい利用が可能となった。
  • 宮木 恵美, 小板 由美子, 永島 伸浩
    セッションID: 2A-a2
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 埼玉県比企郡吉見町は県内の内地小麦・米の産地である。小麦は製粉後うどん等に利用されているが、生地の粘弾性がやや低く、市販の小麦粉のような調理利用はあまり進んでいない。古くより、この地粉に輸入小麦粉を混合し、他の調理加工品も検討されているが、地粉としてのメリットは見出されていない。今回、この地粉に粘弾性にすぐれたもち米粉を混合し、従来の小麦粉生地との比較を試みた。【方法】 試料は平成14年度埼玉県吉見町産の小麦(農林61号)および糯米(みやこがね)を製粉して、実験に用いた。実験項目;小麦粉の一般成分、グルテン含量(湿麩量、乾麩量)、粒度分布、ファリノおよびビスコグラフによる小麦粉およびもち粉(加熱後の試料も含む)混合試料の物性、ドウ生地に調製後、_丸1_煮溶け率、_丸2_組織観察、_丸3_レオナー((株)山電RE_-_33005型)による破断特性等について検討した。【結果】 グルテン含量の結果、地粉は湿麩量、乾麩量ともに強力粉、薄力粉より低かった。ファリノグラフの結果、水添加後の粘度上昇が低かった。小麦粉に水、食塩を加えて生地に整形後測った結果、地粉は伸展性が小さく、破断エネルギーが低かった。生地を加熱した場合では地粉にもち粉を加えると伸展性、破断応力が改良され、もちもちとした食感が得られた。
  • 中里 トシ子, 川瀬 真貴子, 岡崎 有希子
    セッションID: 2A-a3
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:近年、健康食品への関心が高まっている。玄米は小麦粉に比べ良質の蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など健康保持に役立つ多くの栄養成分をバランス良く含んでおり、成人病予防に有効とされている。そこで、今回は玄米粉(リブレフラワー)を小麦粉の一部と置換した蒸しパンを試作し、その性状および食味におよぼす影響について検討した。 方法:試料はホロニックテクノロジーによって高熱焙煎し、微粉末化した玄米粉(リブレフラワー)を用いた。材料の配合は、粉{強力粉60g+(薄力粉+玄米粉)140g}200gに対し、砂糖20g、塩1g、植物油20g、ドライイースト4g、ぬるま湯100ml、B.P 3gとし、粉に対する玄米粉の置換率は0%、10%、20%とし薄力粉と置換した。生地の調製はレディースニーダーで行った。型入れ後二次発酵し、蒸し器で加熱した。蒸し上がり後、常法により、比容積、水分量、色調を測定し、クリープメーターにより、硬さ応力、凝集性を測定した。また、官能検査及び写真撮影を行い、パン生地の膨化率を測定した。 結果:玄米粉の置換率20%の生地の膨化率が低かった。比容積および凝集性は、玄米粉の置換率0%と10%の蒸しパンとの間では有意差がなく、置換率20%の蒸しパンは低い値を示した。水分量は玄米粉の置換率0%の蒸しパンが最も高い値を示した。硬さ応力は玄米粉の置換率増加に伴い、高い値を示した。断面色調のL*値は玄米粉の置換率増加に伴い低い値を示した。a*値、b*値はいずれも玄米粉の置換率増加に伴い値が高くなった。官能検査の結果は総合評価において玄米粉の置換率10%の蒸しパンが最も好まれた。
  • 綿貫 亜紀, 原 安夫, 新井 映子
    セッションID: 2A-a4
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】さきに1)2),水道水を電気分解して得た電解生成水を直捏法および中種法による製パンに使用すると,水道水を使用したものとは異なる特性を持つ食パンが得られることを報告した.本研究では,近年,米の消費拡大のために学校給食等に普及し始めた米粉パンに着目し,電解生成水を米粉パンの製造に使用した場合の有効性を検討することとした.
    【方法】パン材料にはグルテン添加微粉砕米粉,食塩,上白糖,ショートニング,ドライイーストを使用し,供試水には木次町水道水(pH 6.4)と,水道水をホシザキ電機(株)製電解水生成装置HOX-40Aにて電気分解して得られた酸性電解水(pH 3.5)およびアルカリ性電解水(pH 10.0)を使用した.製パン方法は,直捏法によった.製品の特性評価は,色,比容積, すだちの画像解析,テクスチャーおよび官能検査によった.
    【結果】酸性電解水およびアルカリ性電解水を使用すると,水道水を使用した場合よりもやわらかく,かつ弾力のあるパンとなった.官能検査において,電解生成水を使用したパンは,水道水を使用したパンよりもクラムのきめが細かく,総合的に好まれる傾向を示した.比容積は,アルカリ性電解水を使用した場合,やや大となった.以上の結果より,電解生成水の使用は,米粉パンの特性改変に寄与する可能性が示唆された.
    1)Onishi et al.:Food Sci.Technol.Res., 5,388(1999).2)綿貫ほか 日本調理科学会平成14年度大会講演要旨集 p.49
  • 橋場 浩子, 根本 勢子, 高木 史恵
    セッションID: 2A-a5
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    [目的]日本の米消費量は年々減少し、農林水産省をはじめ多くの機関で米の消費拡大を目指す活動がされている。その一環として超微粒粉末の米粉が開発され、これにグルテンを添加したものが市販されている。この米粉を小麦粉の代替として調製したマフィンは、小麦粉マフィンよりも膨化率が小さく硬かった。そこで小麦粉マフィンの膨化および硬化抑制に効果のあったトレハロースを添加し、その影響をみることを目的とした。[方法]マフィンの配合割合は米粉100gに対して、砂糖30g、ベーキングパウダー4g、食塩0.8g、牛乳50g、バター50gとし、砂糖の0_から_15%をトレハロースで置換して同等の甘味を持つマフィン生地を調製した。これらを50gづつマフィン型に秤取し焙焼し、膨化率、水分、水分活性、テクスチャー、色差を測定し、あわせて官能評価も行った。[結果]米粉マフィンの膨化率はトレハロースの添加に伴って増加する傾向がみられた。米粉マフィンの水分および水分活性は保存日数が増すにつれ、低下していった。また保存日数が増すにつれ、米粉マフィンは硬くなっていったが、トレハロースを10%添加したものは硬くなりにくかった。
  • 大迫 早苗, 永島  伸浩
    セッションID: 2A-a6
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕 キヌアは中南米を原産とするアカザ科の1年草の植物で、種実はイネ科の穀類と比べてたんぱく質、脂質、ビタミン、無機質、食物繊維の含有量が多く含むことから最近注目されている食品素材である。また穀物アレルギー疾患に悩む人たちに有効であることが報告されている。そこで、キヌア粉の調理への利用域を広げるために小麦粉の一部をキヌア粉で代替としたスポンジケーキを調製し、物性の測定および官能検査を行い食味に及ぼす影響について検討した。〔方法〕 試料として大日本明治製糖_K.K._のキヌア粉末および焙煎粉末のものを使用した。小麦粉との代替率を10%_から_30%としてスポンジケーキを調製し、比容積、断面組織の観察、物性測定にはレオナー(山電製3305型)を用い、テクスチャー、破断特性、経時的変化について測定した。官能検査は評点法で行った。〔結果〕 キヌア粉末および焙煎粉末の添加量10%、20%と増加するにつれ比容積は大きくなる傾向を示したが、30%になると急激に小さくなった。硬さは30%で硬く、凝集性は小さくなった。断面組織の観察では特に変化は見られなかった。官能評価では外観、香り、味、総合評価においてキヌア粉の代替率が高くなるにつれて低い評価となった。評価を低くする大きな要因として特有の香りがきつくなり好まれなかった。その中で10%、20%添加したものは小麦粉で調製した試料にないキヌア粉独特のツブツブとした食感が好まれた。焙煎した粉末において顕著に認められた。
  • 木村 友子, 佐々木 弘子, 亀田 清, 菅原 龍幸
    セッションID: 2A-a7
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】漉し餡の加工過程で多量の小豆種皮が産業廃棄物として処理されているが,高繊維材であり抗酸化力も期待されることから有効利用する目的で、小豆種皮を加工し乾燥粉末(素材A)とし、素材A添加アメリカマフィンを試作した。また、保水剤として蒟蒻ゲルを添加し、マフィンの品質に及ぼす影響を検討した。【方法】小豆種皮粉は小豆種皮を常圧乾燥機にて65℃、24時間で乾燥後,粉砕機にて製粉し粒度200μm以下に製粉した(素材A)。また素材Aの除臭を目的に、超音波15分間洗浄処理を施し、素材B(ペースト状)とした。マフィンの調製は薄力粉100gバター30g、砂糖28g、卵30g、スキムミルク8g、蒸留水71g、B.P3g基本割合とし、また薄力粉の10_から_30%相当の素材A,B及び蒟蒻ゲル4_から_12%で置換した各種生地を電動ミキサー(愛工舎製)で調製し,マフィン型に60gずつ流し入れガスオーブンを用い170℃で20分間焙焼した。素材A,Bの一般成分、食物繊維(プロスキー変法)、マフィンの色調,生地の比重、比容積,重量減少率、物理的学特性(クリープメータ)、走査型電子顕微鏡の組織構造観察及び官能評価を行った。【結果】素材Aはマフィンの副材料として20%まで薄力粉と置換できた。この製品は無添加品に比べ、小豆色を呈し、比容積は若干減少し、破断応力値とテクスチャーの硬さが増し、凝集性が低下しパサつく食感を示した。また、食物繊維含量が増し、組織観察は小豆皮片を認め構造が緻密になった。素材AとBの20%添加品の比較ではB製品の方が軟らかく嗜好的に好まれた。素材A20%添加品での蒟蒻ゲルの最適添加量は6%で、素材A20%添加品に比べ、弾力性が増し食味も優れ、3日間の保存試験では保水性を認め、品質変化を抑制することが示唆された。
  • 小谷 スミ子, 柴 朋子
    セッションID: 2A-a8
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 旧厚生省研究班の報告(2000)によると小麦粉を原因とするアレルギー症例は卵、牛乳に次いで多い。小麦粉はパン、うどん、パスタなど主食として欠かせないものである。そこで利用頻度の高いパンに着目し、家庭で簡単においしく作れる低アレルゲンパンの調製方法を検討した。食味については官能検査で評価した。方法 材料として強力粉(日清フーズ(株))、あわ粉・低アレルギー小麦粉(辻安全食品(株))、低アレルゲン化小麦粉バッター((株)オーム乳業)を用い、ナショナルホームベーカリーSD-BT101,102の基本配合割合でパンを調製した。製品の測定項目は高さと比容積(ml/g)、官能検査は5段階評点法で行い、評価項目は色、味、香り、きめ、硬さ、弾力、総合評価など、二元配置法による分散分析で解析を行った。結果 1.あわ粉添加による低アレルゲン食パン:強力粉にあわ粉を5, 10, 20, 30, 40, 100%添加したところ、添加量に従い高さ、比容積は小さくなり、あわ粉特有の苦味と匂いが強くなった。食べられる限界は30%添加であった。2.低アレルギー小麦粉による低アレルゲン食パン:低アレルギー小麦粉(湿麩量18.5%以下、タンパク質量8%以下)に低下させたものである。水の量を71%から65%に減らすことで十分膨化した。官能検査のいずれの項目において良好な評価が得られた。3.低アレルゲン化小麦粉バッターによる低アレルゲン蒸しパン:低アレルゲン化小麦粉バッター(抗原残存度5%以下)を用いて調製した食パンは膨化せず、バッターの不快な苦味と匂いが強調され食味の悪いものであったため蒸しパンを調製した。付着感があるものの紅茶、黒糖添加により食味が改善された。
  • 堀内 理恵, 伊藤 みどり, 杉原 好枝, 福田 満
    セッションID: 2A-a9
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】豆腐等の大豆加工食品の生産にともなって毎年生じる大量のオカラ(約80万トン)の大部分は,食品として利用されることなく飼料や産業廃棄物として処理されている。オカラは大豆タンパク質・食物繊維・イソフラボンを含むため生活習慣病予防効果が期待されるので,食品素材としてのオカラの利用が得策と考えた。本研究では,オカラ添加が食パンの比容積に与える影響を検討した。【方法】パンの膨化率に与える乾燥オカラの影響を明らかにするため,ドウのガス発生量,オカラ添加食パンの水分含量を測定した。さらにオカラ添加食パンへのアスコルビン酸・乳化剤・グルテンの添加効果について調べた。(1)物性については比容積測定,テクスチャー試験器による硬さ・凝集性の測定,クリープメーターによる破断応力の測定_(2)組織構造については走査型電子顕微鏡(SEM)による組織構造観察,(3)食味特性については約30名のパネルによる官能検査を行った。【結果】オカラ添加によりドウのガス発生が促進されたが,食物繊維・大豆タンパクの影響でグルテン形成が抑制され,オカラ添加食パンの膨化率は低下し,食パンは硬くなった。オカラ添加食パンの水分含量はオカラ無添加食パンに等しくオカラによる保水効果は認められなかった。膨化率においてはアスコルビン酸の添加効果は認められなかったが,乳化剤・グルテンの添加により10%オカラ添加食パンの比容積はオカラ無添加食パンに等しくなるまで回復した。オカラ添加により食物繊維,大豆タンパク質,イソフラボンが補給されるので,生活習慣病予防に適した食品として実用性があると推測される。
  • 出雲 悦子, 山田 節子, 鈴木 景子
    セッションID: 2A-a10
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
     目的 米糠は、食物繊維や無機質、ビタミンB、ナイアシンなどに富み、糠漬けとしての利用は、栄養的にも有用な方法と考えられている。しかし米糠そのものを食品として利用することは少ないようである。そこで米糠を食品素材として利用したいと考え、パンへの添加を試み、パンの性状や食味にどのような影響があるかについて検討した。 方法 米糠は秋田県産あきたこまちの玄米を精白したものを煎ってから用いた。試料は米糠無添加のものをコントロールとし、小麦粉の10%、20%、30%、40%を米糠に代替したものを用いた。各試料とも1個50gの丸型のパンを作成し、1日経過後、重量、体積、内相の色差及び硬さの測定、官能検査に用いた。体積は菜種法、色は色彩色差計(CR_-_200ミノルタ)硬さは単軸圧縮・引張型レオメーター(RE3305山電)を用いた。官能検査は女子学生31名をパネルとし、外観、内相の色、風味、味、硬さ、総合評価の6項目について7段階評点法により行った。 結果 体積は米糠の代替率が増加するにつれて小さくなった。比客積においては、代替率10%と20%の間に差はみられなかった。内相の色差は、米糠の代替率が増加するにつれて明度が減少し、赤味度、黄味度が共に増加した。硬さについては米糠の代替率が増加するにつれて硬くなる傾向がみられた。しかし10%のパンはコントロールの間に差がみられなかった。官能検査の結果は、外観においては試料間に差はみられず、色においては各々の試料間に有意差が認められた。風味においては代替率30%以上のパンは好ましくないという結果が得られた。
  • 室田 壽子, 中野 輝子
    セッションID: 2A-p1
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    {目的} 新食糧資源として注目されるアマランスはヒユ科に属する植物でたん白質、脂質、ミネラル、食物繊維の含有量が多い。たんぱく質はアレルギーを起こしにくいとされ、パン、クッキー、朝食用シリアル、食酢など加工食品に利用されている。前回に引き続き小麦粉の一部をアマランス粉に代替したゴマケーキ(本学調理学実習で最も好まれるケーキの1つ 芝麻カオ)を試作しテクスチャー特性と官能評価に及ぼす影響を調べた。 {方法} 材料配合割合は全卵200g、上白糖80g、すりゴマ70g、小麦粉30gのものを対照とし、(0%)、小麦粉の20%、40%、60%をアマランス粉で代替した。アマランス粉は森永製菓製(リパーゼ失活の条件でローストし短時間で粉砕、冷却し脱酸素剤を封入し冷蔵保存したもの)を使用した.生地比重、ケーキ比容積、水分、色差とレオナー(山電製)を用いてテクスチャーの測定を行った。官能検査は評点法を用いた:。{結果}生地比重は、アマランス粉代替率の増加に伴い大きくなり、比容積は0%が大きく40%を過ぎると小さくなった。硬さは代替率の増加に伴い硬くなった。一方凝集性は代替率の増加するほど小さくなった。ケーキの色差は表面は代替率増加に伴い明度は低く、黄味度は減少し赤みを帯びて色差は大きくなった。内相についても同様であった。官能評価は香りと総合評価において代替率40%が有意に高い評価となった。
  • 菊田 千景, 蒲 尚子, 藤田 修三, 杉本 温美
    セッションID: 2A-p2
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    「目的」小麦粉の代替として、アミロース含量の異なる三品種のトウモロコシ澱粉[普通株のトウモロコシ澱粉(n-corn starch)、高アミローストウモロコシ澱粉(high-amylose corn starch)、モチトウモロコシ澱粉(waxy-corn starch):以下これらを(NS)(HAS)(WS)と略す]を用いてスポンジケーキを焼成し、澱粉の性質の違いがスポンジケーキの性状に及ぼす影響を調べた。「方法」顕微鏡観察、ヨウ素吸収曲線、膨潤度・溶解度、DSCによる糊化特性、RVAによる粘度測定ならびにX線回折を行って澱粉の性質を調べた。スポンジケーキの配合割合は、粉材料100g、卵100g(卵白66g、卵黄34g)、砂糖100g、水10gで、粉材料として小麦粉、NS、WS、HAS、MIX(WS:HAS=1:1)の5種類を用いた。焼成したスポンジケーキについて菜種置換法で比容積を、BAP法で糊化度を測定すると共に、X線回折を行って糊化の状態を調べた。さらに評点法を用いて官能検査を行った。「結果」比容積はNS>小麦粉>MIX>WS>HASの順で、MIXはWS、HASより増加した。糊化度は0日目で小麦粉63.9%、NS32.2%、HAS24.9%、WS47.0%、MIX54.2%で、MIXはWS、HASよりも糊化度が高くなった。また、いずれも保存日数が増すにつれて減少傾向を示した。官能検査では、きめの粗さ、きめの均一さについては、いずれの試料間にも有意差はなかったが、きめの均一さや口に含んだ時の感触は澱粉を用いた方が評価は高く、なかでもMIXが一番高い評点を得た。かたさは、小麦粉>WS>MIX>HASの順となった。総合評価より、MIX、小麦粉、WS、HASの順で好まれた。
  • 平尾 和子, 反町 秀子, 梅國 智子, 濱西 知子, 高橋 節子
    セッションID: 2A-p3
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】雑穀の一つであるアワは食物繊維を豊富に含むことから動脈硬化や高血圧、肥満などの成人病を予防する食品として期待されている。本報告ではアワ粉の膨化調理への応用として蒸しカステラを取り上げ、アワ粉の添加が物性ならびに食味特性に及ぼす影響について検討した。また新甘味料トレハロースを添加し、物性ならびに食味特性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】試料は岩手県産の黄アワ(全粒粉)を用い、米粉に対する添加率を10、20、30%として米粉100%と比較した。また、トレハロースはショ糖の25、50、75%添加について比較した。蒸しカステラの調製は米粉ならびに糖を各々総重量の31%、鶏卵を38%とし、攪拌後型に流し入れ20分間加熱した。凍結・解凍安定性は_-_20℃で22時間凍結、室温2時間解凍を1サイクルとして1、3および7サイクル後の物性を調製直後と比較した。測定は菜種法による膨化倍率、水分含量、そして改良型テンシプレッサーにより物性を測定した。また、官能評価は評点法により本学学生並びに教員の11名をパネルとして行った。
    【結果】アワ粉10%添加の蒸しカステラは対照より高い膨化倍率を示し、しなやかさ・こしは対照と同程度の値を示した。また、凍結・解凍後のしなやかさは無添加と同様の低下を示した。アワ粉の添加率が20%を超えると膨化倍率・しなやかさ・こしは低下を示した。アワ粉10%添加蒸しカステラにトレハロースを50%用いた場合、しなやかさ・こしはショ糖100%と近似の値を示した。また米粉100%にトレハロースを75%用いた場合は組織の形成が困難であった。
  • 手塚 尚子, 高橋 節子
    セッションID: 2A-p4
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】雑穀であるアワは近年、健康食材またアレルギー疾患用食材としての有用性からその価値が見直されてきている。前報においてはアワ澱粉の調製法とその理化学的性質について報告した。本報告ではアワ粉の調理・加工への利用として、各種調味料添加の影響について米粉・小麦粉と比較した。また、膨化調理としてアワ粉添加の食パンを調製し、物性ならびに食味特性について検討した。
    【方法】試料は岩手県産の黄アワ(粳種)を用い、米粉・小麦粉を対照とした。加熱糊化時の粘度はアワ粉濃度12.3%とし、ラピッドビスコアナライザーを用いて測定した。調味料添加としてショ糖は液量の10、20および30%、食塩は0.5、1および2%添加について比較し、得られた糊液の物性測定を行った。食パンは強力粉(カメリヤ・日清製粉製)にアワ粉を10、20および30%添加して家庭用製パン機(リーガル・ジャパン株式会社製)を用いて調製し、膨化倍率および物性測定を行った。官能評価は評点法により「特性」ならびに「嗜好」について本学学生および教員の13名をパネルとして行った。
    【結果】アワ粉にショ糖添加では、粘度測定時のブレークダウンおよびセットバックが低下し、熱安定性が大となりゲルの硬さは低下した。食塩添加ゲルの硬さ・付着性は大となり特に0.5%添加が大きい値を示した。米粉の場合はショ糖・食塩添加のいずれにおいてもセットバックが増加した。食パンの膨化倍率はアワ粉の添加により低下し、添加量が増すに従い低下が大であったが、アワ粉10%添加パンの硬さは無添加と近似であった。20および30%添加パンの硬さは大であり、しなやかさ・こしの低下が明らかであった。
  • 平尾 和子, 西澤 恭子, 濱西 知子, 高橋 節子
    セッションID: 2A-p5
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】雑穀の調理への利用の試みとして、前報ではヒエ粉の添加が団子の物性に及ぼす影響について報告した。本報告ではアワ粉を用いて団子を調製し、アワ粉の添加が物性ならびに食味特性に及ぼす影響について検討した。糖添加については、トレハロースを用いた場合の低温保存安定性についてショ糖と比較し物性面から検討を行った。
    【方法】アワ粉は岩手県産黄アワ(粳種)を用い、米粉への添加は10,20および30%とし、米粉100%の場合と比較した。米粉およびアワ粉の粘度はラピットビスコアナライザー(RVA)により求め、ゲルのテクスチャーはテンシプレッサーを用いて測定した。団子の調製は米粉50gに対して70%の熱湯を加え、混捏後15分間の蒸し加熱を行った。加熱後成形し1時間放冷したのち、5℃で1,3および7日間保存した試料について、カードメーターを用いて物性測定を行った。トレハロースは米粉重量に対して20%添加とし、ショ糖と比較した。官能評価は評点法により「特性」および「嗜好」について検討した。
    【結果】団子の侵入度試験から、アワ粉を添加することにより硬さは大となり、添加率の上昇に伴い増加が認められた。破断力はアワ粉10%添加により僅かに低下を示したが、アワ粉30%添加は米粉100%と近似の値であった。トレハロースの添加はショ糖と同様団子の硬さ・破断力を低下させたが、低温保存時におけるトレハロースの老化抑制効果は認められなかった。官能評価の「特性」において、アワ粉を添加した団子は添加率が増すに従い、色・香り・味の項目で有意にあると評価され、「嗜好」においては、アワ粉10%添加団子が高い嗜好性を示した。
  • 平尾 和子, 米山 陽子, 松永 直子, 濱西 知子, 高橋 節子
    セッションID: 2A-p6
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    [目的]くず餅は葛粉を用いて作られる伝統的和菓子である。葛粉、小麦粉、小麦澱粉あるいは馬鈴薯澱粉を配合して調製されるが、本葛粉が高価であるため、今日では甘藷澱粉が代替品として用いられている。サゴ澱粉は膨潤・溶解しやすく、透明性が高く、ゲル形成性に優れている。そこで本研究ではサゴ澱粉を用いてくず餅を調製し、室温、冷蔵保存ならびに凍結・解凍安定性について検討を行うため、物性測定ならびに官能評価を行った。
    [方法]試料はサゴ澱粉を用い、比較として小麦澱粉、甘藷澱粉を用いた。くず餅の調製は仕上がり総重量に対し澱粉19%、薄力粉4%、水77%を混合し、加熱して半糊化させたのち型に入れ、20分間蒸し加熱を行った。物性測定は室温(2日間の経時変化)、冷蔵保存(5℃,3日間)ならびに凍結・解凍(_-_20℃,22時間凍結後、室温で2時間解凍を1サイクルとする)試料について行った。官能評価は評点法を用いて検討した。
    [結果]サゴ澱粉を用いたくず餅は甘藷澱粉および小麦澱粉を用いたものに比べて硬さ、付着性の値が小さいことから、軟らかく、べたつきの少ない性質を示した。室温、冷蔵保存および凍結・解凍サイクル試料において、サゴ澱粉を用いたくず餅は小麦澱粉を用いたものに次いで物性の変化が少なかった。官能評価から、調製直後のくず餅は特性において色、硬さ、弾力性に有意の差がみられ、嗜好ではサゴ澱粉を用いたくず餅が つや、硬さ、弾力性、歯切れ、べたつきで高い嗜好性を示した。また、凍結・解凍3サイクル後のサゴ澱粉を用いたくず餅はつや、色、弾力性が有意にあると評価され、嗜好においてもつや、色、弾力性、総合評価の項目において有意に好まれる結果を示した。
  • 小川 宣子, 長屋 郁子, 山中 なつみ
    セッションID: 2A-p7
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    目的:卵がパンの性状に及ぼす影響を明らかにするため本研究では卵黄の役割について調べた。材料及び方法:水分・脂質含量を同じに調整した卵黄を添加していないドウ(以下無添加ドウ)と卵黄を添加したドウ(以下卵黄添加ドウ)を比較した。材料(強力粉,ドライイースト,砂糖,食塩,スキムミルク,蒸留水,油,卵黄)を混捏後,分割,30℃で55分間1次発酵を行ったドウについて、色,硬さ,瞬間弾性率(E0)と定常粘性率(ηN) から調べた。一次発酵後、ガス抜きをし、ベンチタイムと2次発酵を30℃で55分間行ったドウについて引っ張り強度、走査電子顕微鏡により断面構造を調べた。また、2次発酵後、190℃で10分間焙焼したパンについて、表面と断面の色,膨化体積,硬さ,E0とηN,気泡の大きさからきめを調べ,表面・断面構造を観察した。合わせて3点識別嗜好法による官能検査を行った。結果:卵黄添加ドウの色は無添加ドウより有意(P<0.01)に赤み,黄みがあり、これはパンでも同様であった。卵黄添加ドウは無添加ドウより硬さ,E0,引っ張り強度が小さく、ηNが大きかったことから卵黄添加ドウは無添加ドウに比べ軟らかく、粘性があり、伸びやすいドウであった。これは卵黄添加ドウの網目構造が密であったことによると考えられた。卵黄添加パンは無添加パンより硬さ,E0,ηNが小さく、柔らかいパンであった。また、卵黄添加パンの方が膨化はよく、これは画像処理、断面構造から卵黄添加パンの方が気泡の体積が大きいこととの関係が考えられた。官能検査の結果は、卵黄添加パンの方が無添加パンに比べ柔らかく、好まれるパンであった。
  • ---鶏卵アレルギー患者を対象とした----
    楠瀬 千春, 藤井 淑子
    セッションID: 2A-p8
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    目的カップケーキ・スポンジケーキのような気孔構造を有する焼き菓子は、基本的に卵泡沫を加熱膨張させ、小麦粉含有澱粉の糊化によりスポンジ状の組織を固定化して調製される。近年、増加傾向にある食物アレルギーのうち、鶏卵アレルギー患者を対象とし、鶏卵食物アレルギー疾患用ケーキを調製することを目的とした。そのために、鶏卵泡沫の全量を牛乳由来の乳精(ホエー)泡沫に置き換えてスポンジケーキを調製した。
    方法乳精(ホエー)の成分は、乳糖76.4、たんぱく質12.5、水分2.62%(雪印製菓原粉K)。ホエー100gとイオン交換水100gを40℃に加温し、溶解しながらハンドミキサー(NationalMK-2000)で攪拌して泡沫(フォーム)を得た。泡沫の安定性、伸張性を増大させるために、ホエー溶液の液温、攪拌条件、添加材料(水、蔗糖)の配合量を検討した。この泡沫に薄力粉を添加した生地(バッター)をオーブンで焼成し、粉の配合量、焼成条件を検討した。焼成後のスポンジ組織の形成状態をSEM観察し、官能評価した。
    結果ホエー泡沫は、鶏卵泡沫に比較して滑らかで安定性が高く、少量の蔗糖添加すると、これらの性状は更に向上した。鶏卵泡沫は、時間経過に伴って離水量が増加するが、ホエー泡沫は3時間経過後も離水を起こさなかった。カップケーキには密度0.30g/mlが最適な泡沫であったが、この密度を0.22g/mlまで下げることにより、12cm径のスポンジケーキの焼成が可能となった。しかし、このスポンジケ-キの膨化率は小さく、ホエー泡沫の膨張力は、鶏卵泡沫に劣ることを示している。生地の膨張力を助長するために薄力粉配合量の減量、焼成温度と時間の条件などを検討し、鶏卵スポンジケーキに匹敵する値を得た。
  • 伊藤 正江, 横山 次郎, 瀬尾 宗代, 横森 和代, 江藤 義春
    セッションID: 2A-p9
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
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    【目的】ヨード卵・光は、長年の研究で乳がんの予防、血中脂質や血糖などに対する改善効果が確認されている。しかし、その調理特性については経験的に認められているが科学的な検討は少ない。本研究では、各種加工食品の膨化に及ぼすヨード卵・光の影響について普通卵と比較検討した。【方法】試料は、産卵3日後の3種類の鶏卵(ヨード卵・赤玉・白玉)を使用し、調理・加工した。試作した試料は、食パン、パウンドケーキ、マフィンである。それらに添加する油脂量に変化をつけ、膨化率と官能検査を行い比較検討した。【結果】膨化率は、食パンでは差は見られなかったが、パウンドケーキ、マフィンについては、有意にヨード卵・光の膨化率が高い傾向がみられた。官能検査では、ヨード卵・光で試作したものは、色が美しく口当たりはやや重厚という評価であった。焼き菓子等に添加する油脂量の多い調理・加工食品では、ヨード卵は他の卵より使用量を減らして作った方がより良いことが示唆された。
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