日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成16年度日本調理科学会大会
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一般講演
  • 山本 奈美, 田村 咲江, 近藤 奈津子, 佐伯 梓, 田村 祐子
    セッションID: 2C-p2
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】いもや野菜などの植物性食品の場合、加熱による軟化には細胞間の接着状態の変化が関係することが知られているが、これまでに個々の食品ついての詳細な検討はされていない。そこで本研究ではカボチャとレンコンを試料として、加熱によるテクスチャー特性値の変化を調べるとともに割断後の組織の状態と咀嚼後の食塊を観察し、テクスチャーと組織構造の関係を検討した。
    【方法】カボチャ(北海道産及びニュージーランド産えびす)は直径2.5cm、高さ1.5cmの円柱状に成形し、レンコン(徳島産備中種)は幅3cmに切って蒸し加熱を行った。各加熱段階に達した時点で試料を取り出し、50℃でテクスチャー測定(山電レオナー33005、プランジャー直径1.5mm、クリアランス75%)及びクールステージ付きSEM(日立S-3000N)による組織観察を行った。食塊はヒトが直接咀嚼したものを観察した。
    【結果】カボチャは軟化開始温度が低く、試料の中心温度が50℃に達した段階でかたさ及びもろさの値が著しく低下し、割断面では細胞間の分離が認められた。それに比べるとレンコンは細胞間の接着が強固で、細胞壁が分離する程度にまで組織が軟化するためには長時間の加熱を要した。また、カボチャは細胞間隙が広く、細胞間には粘性物質が顕著に存在したが、レンコンではこれらはほとんど観察されなかった。カボチャ、レンコンともに十分軟化した試料の場合、咀嚼後の食塊においても細胞破壊は生じていなかった。したがって細胞内のでんぷんはテクスチャーに直接関与せず、むしろ細胞間に溶出した物質の存在が大きく影響することが示唆された。
  • 足立 麻理子, 森田 日出男, 大谷 貴美子, 南出 隆久
    セッションID: 2C-p3
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    目的:一般に冷凍には不向きである根菜類を予備加熱処理で組織を硬化させた後、高電圧をかけて食品の水分子を微細なまま凍結させる「高電圧ブライン凍結法」を用いて凍結処理し、冷凍適性の向上を検討した。
    方法:根菜類としてニンジン、ダイコン、レンコン、ゴボウの4種類を用い、対軸方向に対し直角にニンジンは1~1.2cm、ダイコンは2.5_から_3cm、レンコンは1~1.2cmの輪切りとし、ゴボウは4.5~5cmの厚さに切断後半割りにしてそれぞれ外果皮を剥いたものを試料とした。60℃および100℃で予備加熱処理後、脱気包装し、高電圧ブライン凍結法を用いて30分間凍結処理を行った後、-20℃の冷凍庫で約7日間保管し一定条件で解凍した。クリープメーター(レオナーRE-3305型/山電)による破断強度解析、ペクチンエステラーゼ(PE)活性の測定、カルシウム(Ca)の可溶化率の測定および走査型電子顕微鏡(日本電子製)による組織観察を行った。
    結果:(1)いずれの根菜類においても60℃の予備加熱で硬化現象が、100℃の予備加熱で軟化現象がみられたが、ニンジンおよびダイコンにおいて顕著に認められた。(2)高電圧処理を行い冷凍した試料の硬さはニンジンでは硬くなるが、他の根菜類は軟らかくなった。(3)組織の硬化をPE活性とCaの可溶化率の関連性を調べるとともに電子顕微鏡による組織構造からも検討した。(4)根菜類の冷凍適性を向上させるためには、60℃で予備加熱を行い組織を硬化させ、「高電圧ブライン凍結」することが有効であることがわかった。
  • 寺本 あい, 渕上 倫子
    セッションID: 2C-p4
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    目的 寒天ゲルは水分含量の多い食品であるため凍結による損傷が大きい。しかし、200MPaの高圧力下では-20℃でも凍結しないことを利用し急速凍結(圧力移動凍結)すると、凍結損傷が軽減できことが知られている。本研究では、高粘弾性寒天(大和:伊那食品製)と従来の寒天(寒天クック:伊那食品製)について比較検討し、ゲルの性質の違いを調べた。また、高圧力下での冷凍、および糖添加が寒天ゲルの凍結損傷防止へ果たす役割について検討した。
    方法 1.5%寒天濃度、0、5、10、20%蔗糖濃度の寒天ゲルの円盤(15mmφ×10mm)を真空包装後、食品高圧処理装置(神戸製鋼所製 Dr.Chef)を用いて-20℃、0.1、100、200、600、686 MPaで63分冷凍後、圧力解除し-30℃保存後、20℃で自然解凍した。解凍後のゲルの外観を観察し、離漿率を測定した。さらに、クリープメータ(山電製)で破断強度解析し、氷結晶とゲルの様相をクライオ-走査型電子顕微鏡(日立S-4500)で観察した。
    結果 未処理のゲルでは、大和はクックに比べ破断強度が1/2以下と軟らかく低強度であった。しかし、本実験の測定条件では両ゲルの破断歪率に大差はなく、高粘弾性という大和の特徴は顕著でなかった。微細構造は、蔗糖無添加ゲルで大和の方が緩やかなネットワークが観られた。両ゲルとも、-20℃、200MPaで圧力移動凍結すると、比較的良好な品質であった。また、蔗糖濃度の増加に伴い、冷凍耐性が向上した。冷凍後の両ゲルの比較では、大和はクックに比べ離漿率が1/2以下と低く、破断応力、破断歪率も大和の方が未処理のゲルに近く、冷凍耐性が良いことが明らかとなった。
  • こんにゃく精粉や砂糖、増粘多糖類の混合割合によるゼリー強度の違い
    坂手 美絵, 藤山 咲子, 藤井 わか子
    セッションID: 2C-p5
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】こんにゃくは食物繊維を豊富に含んだ低カロリー食品であることが注目され、伝統食の一つであるだけでなく、最近では健康・ダイエット志向の高まりを背景に様々なこんにゃく製品が発売されている。その中でも特有な弾力と歯ごたえ、おいしさ等により好まれているのがこんにゃくゼリーである。そこで、本研究ではこのこんにゃくゼリーに着目し、学生の意識と摂取状況を調査し、また、こんにゃく精粉使用のゼリーを作り、物性測定、官能検査を行い、好ましいこんにゃく精粉入りゼリーについて検討した。
    【方法】アンケートは本学生347名に対して2004年5月に実施した。ゼリーの配合は、精粉(コンニャクマンナン)、カラギーナン、砂糖の添加量を変え、炭酸NaでpH11にし、調整した。測定は、レオメーター(サン科学)を使用し、測定条件はサンプル高さ:30.0mm(プリン型内) プランジャー:歯型 クリアランス:90% 測定速度:60mm/min 荷重:2kgとした。
    【結果】アンケートの結果、こんにゃく料理をよく食べる人は5%で、ほとんど食べない人が35%という結果である反面、こんにゃくゼリーを知っていて食べたことのある人は98%で、コンニャクマンナン入り製品を知っている人が63%と多くなっている。現在のダイエット志向の現象とも考えられる。そこで、コンニャク粉(精粉)を使用したゼリーを作成した。ゲル強度はカラギーナン濃度、精粉濃度、砂糖濃度が高くなるにつれて大きくなった。官能検査では、精粉1.5%、砂糖25%のゼリーでカラギーナン濃度が3%の時、弾力性、硬さ、ゼリーとしての好ましさ(p<0.01)、噛みごたえと舌触り(p<0.05)の項目で好まれた。
  • 渡辺 敦子, 大越 ひろ
    セッションID: 2C-p6
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】茨城県北部の大子町では、こんにゃくを凍結乾燥させた「凍みこんにゃく」が作られている。その製造工程において、薄切りにしたこんにゃく切片を高濃度の石灰液に1週間浸漬する工程がある。このことにより、こんにゃくが硬くなり、次の工程である田に干すことを容易にしている。事実、石灰液に浸漬したこんにゃくは硬くなり、曲げると脆性的に破壊する。そこで本研究では、濃度の異なる石灰液に浸漬したこんにゃくの力学特性と走査型電顕(SEM)像の示す構造を調べ、その関連性について検討した。
    【方法】コンニャクゲルの調製は、太田・前梶の低温でコンニャクゲルに凝固剤を添加し、これを試料型枠ごと遠心分離して脱気した後加熱凝固させる方法1)により調製した。調製したコンニャクゲルを濃度の異なる石灰液(0,0.15,0.60%)に10日間浸漬して試料とした。テクスチャー特性は、簡易テクスチャー試験器(山電KK TPU-1)で測定した。SEM像の観察は、日立SEMEDX-N走査型電子顕微鏡(40倍,150倍,300倍)で行なった。
    【結果】石灰液に浸漬したコンニャクゲルのテクスチャー特性についてみると、硬さは、0.15%に浸漬すると一度小となり、0.60%に石灰液の濃度を増加させると、大となった。付着性には、石灰濃度による相違はみられず、凝集性は、逆に濃度の上昇にともない減少した。 石灰液に浸漬する影響をSEM像で比較すると、石灰液に1週間浸漬したコンニャクゲルでは、浸漬前のコンニャクゲルにみられないCa結晶が空洞部分に付着している様子が観察された。以上のことから、石灰液への浸漬が力学特性と構造に影響を与えていることが明らかとなった。1)太田・前梶:日本農芸化学会誌,54,741~746(1980)
  • 今井 悦子, 佐藤 寿美子
    セッションID: 2C-p7
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    目的 食品の厚さが薄いなど形状上の理由で、機器による物性測定がしにくい食品について、咀嚼筋の筋電位測定を行うことにより、テクスチャーの特徴をどれだけ表わすことができるか検討した。
    方法 全47食品について、官能評価(7段階評価尺度法)と筋電位測定を行った。全食品のうち、物性測定可能と判断した23食品は破断試験(レオナー)も行った。結果の解析には、相関分析、主成分分析および重回帰分析(SPSS)を行った。
    結果 官能評価値と筋電位特性値の相関関係を検討したところ、かたさ、噛み切りやすさおよび弾力はいくつかの筋電位特性値との間に相関があったが、歯へのくっつきやすさはひと噛み時間のみと相関があった。また、官能評価値と破断特性値では、かたさと弾力はいくつかの破断特性値と相関が高かったが、噛み切りやすさと歯へのくっつきやすさはどの破断特性値とも相関はなかった。この結果から、噛み切りやすさと歯へのくっつきやすさは破断測定では推察しにくく、筋電位測定では可能であると考えられた。そこで破断試験を行った23食品を対象とし、官能評価値への筋電位特性値と破断特性値の寄与の程度を検討(主成分分析ののち重回帰分析を行った)した結果、破断特性値の寄与は低いことが分かった。その結果を受け、最後に全47食品について筋電位特性値だけで官能評価値をどの程度説明できるか重回帰分析により検討した結果、65%程度であることが分かった。従来の機器による物性測定ができなかった食品でも、筋電位測定を行えば食品テクスチャーの解明に十分役立つ可能性があることが示唆された。
  • 藤山 咲子, 坂手 美絵, 藤井 わか子
    セッションID: 2C-p8
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】食物をよく噛むということは健康を維持、増進するためになくてはならない大切な行為である。しかし、現代では柔らかいものが好まれ、硬いものを「噛む」という行為に対する関心は薄れている。そこで、本研究では大学生の食生活と咀嚼力に着目し、アンケート調査を実施し、また、食物繊維量の異なる野菜で咀嚼量の違いを調べ、検討した。
    【方法】2004年5月に短期大学と大学の学生347人(回収率100%)にアンケート用紙を配布した。質問内容は、食品摂取頻度、食生活習慣、野菜の摂取頻度、咀嚼力等について行った。また、咀嚼実験はパネラー10名で、大根、ごぼうをゆでて各3回の咀嚼時間と咀嚼回数を測定した。
    【結果】食物繊維を比較的多く含む食品の摂取頻度を調査した結果、芋類、大豆や黒豆などの豆類、果実類、海藻類、きのこ類のいずれの食品についても毎日食べる人は少なく、週に1~2回程度が最も多かった。野菜類を毎日食べる人は48%であり、れんこん、セロリー、たけのこをよく食べる人の割合はそれぞれ11%、10%、29%であった。さらに、ごぼうを週1回も食べていない人の割合は80%であったことから、食物繊維の多い野菜の摂取が少ないことがわかった。また、食物を噛んでいないと感じている人は45%であり、逆によく噛んでいると感じている人は27%であった。硬いものをよく食べる人は5%にすぎず、硬いものを食べる頻度が低い人ほど普段の食事で食物をあまりよく噛んでいない傾向であった(p<0.05)。そこで、大根とごぼうで咀嚼時間や咀嚼回数の違いを見るために咀嚼実験を行ったところ、咀嚼回数、時間は大根よりごぼうの方が多くなった(p<0.001)。
  • 西堀 すき江, 川合 三恵子
    セッションID: 2C-p9
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】「健康日本21」の中に「野菜の摂取量の増加」の指標の目安があり、1日の摂取量を現在(平成9年)の292gから、2010年には350g以上にすることとある。また、「カルシウムに富む食品の摂取量の増加」の指標の目明日として、緑黄色野菜の1日当たりの摂取量を現在の98gから、2010年には120g以上にすることとある。このことから、生活習慣病予防には、野菜の摂取、特に緑黄色野菜の摂取が大きく寄与すると考え、現在の不足分を補うという観点から、多くのサプリメントが販売されている。今回は、緑黄色野菜とその他の野菜を偏って摂取した場合の血液レオロジーに及ぼす影響を検討した。
    【方法】ヘルシンキ宣言に従い、実験についての十分な説明を行った後、実験に参加した20名を被験者とし、1週間の連続摂取実験を行った。野菜の摂取に関する群分けは、約200種類の野菜を活性酸素消去活性で分類した表を用い、1日1000点以上の緑色野菜を摂取する群と、その他の野菜を摂取する群に分けた。健康食品のイメージの高いゴマについては、それぞれの群に付加試験を行った。血液レオロジーの測定は、実験開始前と1週間摂取後の2回採血行い、血流は日立原町製MC-FAN、血小板凝集阻害はMCメディカル社製ヘマトレーサーにより測定した。
    【結果】今回の野菜連続摂取実験に参加した被験者全員の血流改善効果は平均で4.48%であった。緑黄色野菜摂取群は5.85%、その他の野菜摂取群は2.26%の血流改善効果があった。ゴマ摂取に関しては、1日に20gと付加量が多かったこともあり、血流改善効果は認められなかった。
  • 菊沢 歩, 出川 洋子, 柴沼 清, 田中 紀子
    セッションID: 2C-p10
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    目的:各種の食品および調理に多用されている砂糖は,デンプンに比べ過剰に摂取すると肥満を引き起こしやすいことが知られている。L-アラビノースは天然由来のペントースで小腸スクラーゼ活性を特異的に阻害する生理作用がある。このため砂糖に添加することにより,砂糖の過剰摂取に起因する肥満を抑制する効果が期待される。本研究では内臓脂肪型肥満・2型糖尿病モデルであるOLETF(Otsuka Long Evans Tokushima Fatty)ラットを用い,L-アラビノース摂取による肥満抑制や糖尿病改善について検討するとともに,それに伴う骨格筋線維組成の変化およびエネルギー消費の推移等について調べた。
    方法:OLETFラットを20%スクロース食を与えるC群と,20%スクロース+1.5% L-アラビノース食を与えるA群に分け,29週令まで飼育した。飼育終了前に連続24時間のエネルギー消費量,呼吸商(RQ)を算出した。また,OGTT,尿中グルコース値を測定した。飼育終了後採血し,腹腔内脂肪と骨格筋を取り出した。長指伸筋(EDL),ひらめ筋(SOL),大腿直筋(RF)をI,IIA,IIB型線維に分類し,それぞれの線維数をカウントした。また,血清TG値および筋肉TG値を測定した。
    結果:C群に比べてA群の体重は有意に低くなり,このとき内臓脂肪の重量および細胞面積は小さくなっていた。OGTTはグルコース負荷後,120分での血糖値はA群で低下した。筋線維組成は,RFでI型が有意に増加した。筋肉TG値は減少し,RQ値は脂質燃焼比が高くなる傾向が見られた。以上より,L-アラビノースによって砂糖の過剰摂取による肥満が抑制され,これは筋線維が脂肪を燃やしやすい組成へ変化し,内臓脂肪の減少を引き起こすことによるものであると示唆された。L-アラビノースの味質は砂糖に近く,食品に添加しても従来の味性を変化させることがないため広い用途が期待される。
  • 長野 宏子, 柳 陳堅, 鈴木 徹
    セッションID: 2C-p11
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】伝統発酵食品に普遍的に存在する微生物の中から、プロテアーゼ活性の強い微生物を分離した。これらのBacillus属の16s rRNA遺伝子による系統解析と、これら微生物の産生するプロテアーゼの基質特異性を検討した。
    【方法】(1)発酵食品から分離したBacillus属を培養し、菌体を16s rRNA遺伝子の解析に用いた。(2)培養上清をアミコンYM-30で限外ろ過した粗酵素を用い、基質(グリアジン、αs-カゼイン、コラーゲン、アルブミン)特異性試験を行った。(3)粗酵素及び市販酵素を用い、酵素作用条件を変え、酸カゼインへの作用部位を、FPLC及びプロテインシークエンサーにより分析した。
    【結果】(1)コラーゲン培地上にハローを形成した微生物Bacillus subtilisは、タイプカルチャーと高いホモロジーを持っていた。(2)Bacillus属の基質に対する酵素活性は異なり、M2-4株やM3-5株の活性は強いものであった。(3)酸カゼインに対するする分解特異性は、市販酵素B. subtilisに比較し、新たにGly、Val,Ileの部位を分解した。また、(4)基質に対する作用パターンや作用部位は、B. subtilisとはことなり、市販酵素Aspelgillus oryzaeと類似したものであり、ユニークな酵素であることが明らかになった。
  • 品川 弘子, 西山 隆造, 津久井 亜紀夫, 林 一也, 小崎 道雄
    セッションID: 2C-p12
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    [目的]  京都名産のしば漬は、ナスと赤シソを塩漬けにした日本の伝統漬物の一つである。鮮やかな赤紫を呈し、独特な酸味とシソの香りを特徴とする。京都大原では、樽出しの際に色が薄い、あるいは褐変したしば漬が時々出現し問題になっている。そこで、品質改良を目的とし、しば漬の主要乳酸菌Lactobacillus plantarum1)を漬込み初期に添加したしば漬(P)と、添加しないしば漬(N)とを比較し、品質に与える添加効果について検討した。
    [方法]  PおよびNのしば漬はミニプラント法2)を用い、各30個を20日間漬けた。その間の製品について、pH、酸度、ハンター尺度のL・a・b のほか、HPLC分析により有機酸組成を調べ、分光光度計により最大吸光度(E525)を測定した。搾汁を平板培養し、分離乳酸菌株の細胞形態や発酵形式を調べた。また、各製品について官能評価を行った。
    [結果] Nは20日間漬け込んだ30試料のうち5試料に異常品が生じたが、Pには異常品は観察されなかった。異常品以外は、鮮やかな赤紫色を呈しハンターのグラフ上では赤紫側に位置し、525nmに最大吸収スペクトルが得られた。20日目のpHは3.38を示し、有機酸は乳酸(85%)に次いで酢酸(9%)のほか、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸が検出された。一方異常品はリンゴ酸を含まず、酪酸や吉草酸が認められた。Pの乳酸菌数およびホモ発酵型は全期間を通してNより高かった。官能評価値は、風味と総合評価についてPが有意に高かった。  1)品川弘子ら:食科工、43、5、582-585(1996)  2)Shinagawa H. et al.:J. Home Ecom. JPN. ,48, 12, 1071-1076(1996)
  • 長島 万弓, 石山 絹子, 七野 知子, 安本(白戸) 知子, 福田 靖子
    セッションID: 2D-a1
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    [目的] 発芽玄米の例にもあるように食品素材の発芽による機能性向上が研究されるようになり、ゴマについてはすでに「発芽ごま」として市販化されているが、その機能性向上についての科学的根拠は明らかとされていない。今回この「発芽ごま」の発芽前後のサンプルを比較し、ゴマの機能性と食味に及ぼす発芽の影響について検討した。
    [方法] 市販されているものと同種のトルコ産金ゴマを試料とし、発芽前と発芽48時間後(市販「発芽ごま」と同条件)のゴマを、それぞれ焙煎したサンプルとして入手した。両サンプルの一部は粉砕後溶媒抽出をおこない、一部は官能検査に用いた。抽出物はHPLCによりゴマリグナンの定量分析を行うとともに、DPPHラジカル捕捉能を測定した。高リグナン新品種「ごまぞう」についても同様の実験を行い比較した。
    [結果] 市販品と同種の金ゴマについては、発芽前にはほとんど検出されなかった抗酸化性リグナン・セサミノールが発芽48時間後には検出されるようになり、DPPHラジカル捕捉能も約2倍に向上することが明らかとなった。「ごまぞう」に関しても同様にセサミノールの増加がみられたが、今回の発芽条件においては金ゴマのほうが「ごまぞう」よりも約1.5倍多く生成されることが確認できた。さらに発芽の初期段階でUV吸収を有する高極性成分の存在が認められたが、この構造等については現在検討中である。また、官能検査では未発芽ごまに比べて発芽ごまには甘味の増加が認められた.
  • 森山 三千江, 大羽 和子
    セッションID: 2D-a2
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    〔目的〕 我々はすでにスプラウト類にはビタミンC(VC)が豊富で、ラジカル捕捉活性も高いがリスクファクターである硝酸も含んでいることを発表した。そこで、種々のスプラウト類を用いてVC量やラジカル捕捉活性は高く、硝酸量を減らす調理方法を検討した。また、同時にブロッコリーパウダーと新鮮なスプラウトの成分についても比較した。
    〔方法〕 市販および生産農園から直送されたスプラウトの生および調理後のVC量はDNP法で、硝酸量はイオン交換カラムを用いHPLCで分離し定量した。ラジカル捕捉活性は1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)法を用い、ポリフェノール量はFolin-Denis法で定量した。
    〔結果および考察〕 5秒間茹でたものの総VC量は生の値の7割から9割残存していたが、その後60秒まで茹でると減少率が高くなった。ラジカル捕捉活性は5秒間茹でたものでは生の8、9割の活性が残存し、60秒後には減少の多いものも見られた。一方、ポリフェノール量は茹で調理によってほとんど変化しなかった。リスクファクターである硝酸は生育期間の短いスプラウトでは5秒間茹でた後に減少が大きかった。生育期間の長い茎のしっかりしたものでも60秒間茹でると約半量まで減少した。そのため硝酸量を減らし、VC量やラジカル捕捉活性の残存率を高くする調理法としては、生育期間の短いものでは数秒茹で、生育期間の長いものでは約1分間茹でるのが好ましいと考えられる。また、発芽ブロッコリーパウダーの成分を新鮮ブロッコリースプラウト当たりに換算すると、総VC量は新鮮なものより少なく殆ど酸化型になっていたが、硝酸量は少なく、ラジカル捕捉活性は他のスプラウトと比較しても差は見られなかった。したがって、スープやサラダにふりかけて簡単に利用する方法も良いと思われる。
  • 村上 恵, 中田 理恵子, 村上 哲男
    セッションID: 2D-a3
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】調味料のラジカル捕捉活性については、醤油に関する一部のものを除いてはほとんど研究されていない。そこで、本研究では日常の食生活でよく用いられるだし汁、調味料を用いてラジカル捕捉活性の検討を行った。
    【方法】市販されているかつお節、昆布、削り節を用いて調理の基本操作に従い、2%および10%濃度のだしを取り、サンプルとした。みりん、醤油(濃口、薄口)は希釈し使用した。みりんは加熱し、アルコール分をとばした煮きりみりんも用いた。各サンプルのラジカル捕捉活性はDPPH-HPLC法で測定した。ラジカル捕捉活性に関わる成分を検索するため、各サンプルのアミノ酸分析及び褐変化度(420nm)についても測定を行った。
    【結果】全てのサンプルにおいてラジカル捕捉活性が認められた。濃口醤油は、1652μM Trolox当量と最も高い活性を示した。醤油以外では、10%かつお節だしが50μM Trolox当量、煮きりみりんは35μM Trolox当量の活性を示した。だし汁や調味料に含まれるアミノ酸や核酸にはラジカル捕捉活性は認められなかった。しかし、褐変化度(420nm)とラジカル捕捉活性には相関が認められた。【結論】以上の結果より、ラジカル捕捉活性にはアミノカルボニル反応生成物の関与が示唆された。
  • 石渡 仁子, 山口 智子, 高村 仁知, 的場 輝佳
    セッションID: 2D-a4
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】栄養飲料として重宝されてきた牛乳や乳飲料に含まれる機能性成分の研究は多いが,抗酸化性についての研究は少ない。本研究では,市販乳製品の抗酸化性を明らかにするため, ラジカル捕捉活性および活性成分を比較検討した。
    【方法】乳製品として,牛乳10種, ヨーグルト10種, チーズ10種を奈良市内のスーパーマーケットで購入した。製品中のラジカル捕捉活性は,1,1-diphenyl-2-picryl- hydrazyl (DPPH)ラジカル捕捉活性と酸素ラジカル捕捉活性について測定した。また,ビタミンCはHPLCを用いて還元型のみを分別定量し,総ポリフェノールの定量はFolin-Ciocalteu法で測定した。また,アミラーゼとペプシン,パンクレアチンを用いた人工消化による変化も併せて測定した。
    【結果】コーヒー,ココア,茶,野菜,および果実を添加した乳製品はいずれも牛乳のみの製品と比較して,DPPHラジカル捕捉活性と酸素ラジカル捕捉活性および総ポリフェノール量が有意に高かった。また,乳製品のラジカル捕捉活性とポリフェノール量の間には高い相関がみられた。また,人工消化により,乳製品のDPPHラジカル捕捉活性は減少し,酸素ラジカル捕捉活性は増加する傾向を示した。
  • 惣菜適性について
    石田 丈博, 福井 裕, 松田 秀喜, 的場 輝佳
    セッションID: 2D-a5
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    [目的] 調理における本みりんの抗酸化性に関しては、みりん干しにおいて、みりん風調味料よりも本みりんを使用した場合に、顕著な過酸化物価(POV)の抑制効果が示されている1) 。本研究では、加熱調理時の本みりんの抗酸化性について検証した。同時に調理時の調味液モデルでのDPPHラジカル消去活性についても考察した。
    [方法] (1)試料は、水、本みりん25%溶液、本みりん25%溶液を加熱してエタノールを除去後、水を加えもとの液量に調整したもの、3.5%エタノール溶液の4種類を用いた。(2)対象食品は、イワシ煮魚およびつみれを用いた。(3)これらの調理前後のTBA価およびDPPHラジカル消去活性の変化を測定した。さらに醤油と本みりんを混合、加熱した場合の抗酸化性について測定を行った。
    [結果](1)イワシ煮魚および煮汁或いはつみれのDPPHラジカル消去活性は、本みりんおよび本みりんエタノール除去物で調理した場合、加熱調理後著しく上昇した。(2)イワシ煮魚及びつみれのTBA価に関しては、水およびエタノールで調理した場合は加熱調理前に比べて加熱調理後上昇したが、本みりんおよび本みりんエタノール除去物で調理した場合は上昇が抑制された。(3)醤油と本みりんを混合、半量になるまで煮詰めたものは、半量まで煮詰めた醤油と本みりんを混合した場合に比べて、DPPHラジカル消去活性が高かった。本みりんを加熱調理に用いると加熱中に抗酸化活性が高まり、脂質酸化抑制効果の上昇傾向が示された。
    1)石崎ら、日本醸造協会誌98(12),861-868(2003)
  • 冷凍加工適性について
    石田 丈博, 福井 裕, 松田 秀喜, 的場 輝佳
    セッションID: 2D-a6
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]調理での本みりんの抗酸化性に関して、本みりん使用みりん干しはみりん風調味料使用品よりも高い過酸化物価(POV)の抑制効果が示されている1)。本研究では、POVの経時変化を測定し、代表的な不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)とオレイン酸に対する本みりんの酸化抑制効果をみりん風調味料および砂糖の効果と比較検討した。同じく、これら不飽和脂肪酸を多く含む素材使用の加工食品に対する冷凍保存下での本みりんの酸化抑制効果を、いわしつみれなどのPOVの経時変化を測定し、比較検討を行った。
    [方法](1)不飽和脂肪酸に対する本みりんの酸化抑制効果は、キサンタンガム1%を含む本みりん25%溶液、みりん風調味料17.5%溶液、砂糖8.3%溶液にEPA、オレイン酸を濃度が各々100mg/1.5ml、200mg/1.5mlになるように懸濁し、40℃恒温下で保存し、POVを測定した。(2)加工食品に対する冷凍保存下での本みりんの酸化抑制効果は、本みりん、みりん風調味料、砂糖を配合したいわしつみれ、ぶり照り焼き、豚肉団子、牛肉ハンバーグを作製し、-30℃で保存。自然解凍した試料のPOVを測定した。
    [結果]EPA、オレイン酸のPOVは、本みりん使用の場合がみりん風調味料および砂糖使用の場合に比べて上昇が抑制されていた。冷凍保存したいわしつみれ、ぶり照り焼き、豚肉団子、牛肉ハンバーグのPOVは、本みりんを使用したものがみりん風調味料および砂糖を使用したものに比べて上昇が抑制されていた。冷凍加工食品において、本みりんを使用して調理すると、みりん風調味料および砂糖を使用して調理するのに比べて高い脂質の酸化抑制効果が示された。
    1)石崎ら、日本醸造協会誌98(12),861-868(2003)
  • 大矢 智子, 熊田 早紀, 明神 千穂, 庄子 佳文子, 稲熊 隆博, 山口 智子, 高村 仁知, 的場 輝佳
    セッションID: 2D-a7
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】野菜類には活性酸素・フリーラジカルを消去し、ガンや生活習慣病を予防するポリフェノールやアスコルビン酸などの成分が多く含まれている。野菜は生食するよりも加熱調理した方が、より多く摂取することができる。本研究では、イタリアの代表的な野菜料理であるミネストローネを取り上げ、その調理過程におけるラジカル捕捉活性の変化について、アスコルビン酸量と総ポリフェノール量の変化と併せて検討した。また、加熱方法による違いについても検討した。
    【方法】トマト・キャベツ・タマネギ・ズッキーニ・ナスを素材とし、調味料としてコンソメ・塩・コショウを用いたミネストローネを、ガスコンロおよび電子レンジで調理した。調理前後の素材とスープについて、ラジカル捕捉活性をDPPH-HPLC法により、総ポリフェノール量をFolin-Ciocalteu法により、アスコルビン酸量をHPLC法により測定した。
    【結果】調理後のミネストローネのラジカル捕捉活性は、生の素材に比べて約80%に減少した。また、ミネストローネのアスコルビン酸量は生の素材に比べて約45%に減少したが、総ポリフェノール量は約85%残存していた。活性成分の約半分はスープ中に存在していた。5種類の素材の中で、トマトにおいてラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、および総ポリフェノール量の変動が大きく、最も加熱による影響を受けやすい野菜であることがわかった。ガスおよび電子レンジによる加熱を比較した結果、両者の違いはほとんどみられなかった。現在、個々の野菜に対する各調味料の影響を検討中である。
  • 平岩 理栄, 福田 靖子, 香西 みどり, 畑江 敬子
    セッションID: 2D-a8
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、抗酸化成分の活性発現にも相乗効果の存在が、明らかになってきた。著者らは、生および加熱した貝類にラジカル消去活性があることを見出した。しかし、貝類と他の食品とを組み合わせた場合の抗酸化能を検討した報告は見当たらない。そこで、貝類の中でも活性の強かったホタテガイを用い、副素材食品と合わせて、あるいは単独で加熱した場合のラジカル消去活性を比較することを目的とした。
    【方法】実験日の朝入手した活ホタテガイを即殺後、ホタテガイおよび副素材食品単独、またはホタテガイと副素材食品を共にナイロンポリ袋に入れ沸騰水中で中心部温度が70℃になる6.5分間加熱し、水抽出を行い、凍結乾燥し試料液とした。副素材食品は、通常ホタテガイの調理で使用する、ハーブ類(オレガノ、ローズマリー、バジル)、ニンニク、レモン果汁、白ワイン、および穀物酢とした。ラジカル消去活性の測定には、迅速かつ精度の高い分析が可能で、ラジカルによるフルオレセインの蛍光度の減少度から、OH消去活性を求めるORAC法を用いた。
    【結果】ローズマリー、白ワイン、レモン果汁、穀物酢においては、ホタテガイと共に加熱した方が、それぞれを単独で加熱するより、いずれも活性が高くなった。ホタテガイエキス中のラジカル消去ペプチドと、アスコルビン酸やクエン酸などの有機酸が、相乗効果を示す可能性があると考えられた。また、貝類の調理で複数の食品を組み合わせることにより、高い抗酸化活性が得られることが示唆された。
  • 三好 隆行, 石原 克之, 古賀 秀徳
    セッションID: 2D-a9
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アミノ・カルボニル反応によって生成する褐変反応生成物にはフリーラジカル消去活性があることが種々の加工食品において報告されている。また油系食品のポテトチップスにおいてもOHラジカル消去活性があると報告されている。そこで本研究ではポテトチップスから抽出した褐変反応生成物を分画し、各画分のDPPHラジカル消去活性を比較、さらにフライ調理時間による褐変反応生成物含量およびそのDPPHラジカル消去活性への影響について検討した。
    【方法】ポテトチップスをn-ヘキサンで脱脂し、蒸留水を加えて得られた抽出液を限外ろ過(分子量20,000以上、20,000から3,000、3,000以下)で分画し、各画分を凍結乾燥した。その単位重量あたりの褐変度およびDPPHラジカル消去活性を測定。褐変度は420nmにおける吸光度を用いた。さらにSephadex LH-20ゲルろ過クロマトグラフィーによって分画し、得られた各画分のラジカル消去活性を測定した。またフライ時間を長くしたオーバークッキング試料を調製し、同様に抽出・分画・測定を実施した。
    【結果】単位重量当り最も褐変度および活性の高かったのは分子量20,000から3,000の画分であった。また3,000以下画分で回収量が最も多く、全活性としては最も高い画分であった。さらに3,000以下画分をゲルろ過クロマトグラフィーによって分画したところ、低分子量域の褐変反応生成物に強いラジカル消去活性が確認された。またフライ調理時間を長くしたポテトチップスでは褐変反応生成物によるDPPHラジカル消去活性が増加した。
  • 坂本 千科絵, 肥田 夏希, 山本 絢子, 油谷 理江, 細川 敬三, 大谷 貴美子
    セッションID: 2D-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    (目的) 私達人間は動物と異なり,食物を摂取する際には調理を行う。従って,食品中に含まれている目的とする成分を有効に摂取しようと思えば,各食品に適した調理操作の選択が必要とされる。昨年度本大会で,ブロッコリー中のラジカル捕捉活性を持つ物質を抽出する条件を検討し報告した。今回は,その抽出条件を用いて,調理操作および加熱時間の違いによるラジカル捕捉活性およびポリフェノール含量の変動を報告する。
    (方法)調理操作としては,1.ゆでる,2.1%食塩水でゆでる,3.蒸す,4.電子レンジ加熱を用い,1_から_3に関しては,加熱時間を3,5,10分間,4では,1000W_-_1分,600W_-_1分40秒とした。このように調理を行ったブロッコリーをTris-HClおよびメタノールで抽出した。抽出液のポリフェノール含量はFolin-Ciocalteu法,ラジカル捕捉活性はDPPH法で測定した。併せて,調理操作によって損失されるビタミンCをHPLC法で測定しラジカル捕捉活性の補正を行った。
    (結果)ラジカル捕捉活性(Trolox当量)を比較し調理操作別に分類した場合,1,2と3,4に大別することができる。また,どの調理操作においても加熱時間が長くなるほどラジカル捕捉活性が高くなった。ポリフェノール含量も同様の傾向を示した。Tris-HCl抽出液で,加熱時間に伴いラジカル捕捉活性,ポリフェノール含量が高くなる要因は現在検討中である。
  • 渡部 絵里香, 数野 千恵子
    セッションID: 2D-p1
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、スーパーマーケットなどでペットボトルで水を販売しているが、アルカリイオン水を生成する装置も見られるようになった。そこで、水道水を電解水生成装置で電解して得られたアルカリ性水及び酸性水を用いて、水でもどした後、煮る調理を行う乾燥食材について適用したので、その結果を報告する。
    【方法】1.適用食品 1)植物性食品・・・かんぴょう、切干大根、高野豆腐、しいたけ、きくらげ、ぜんまい、山くらげ、芋がら、春雨、寒天、わかめ、金時豆、パスタ、タピオカ等 2)動物性食品・・・塩くらげ、ふかひれ、貝柱等  2.それぞれの食材を包装表示に記載されている条件で、アルカリ性水、水道水、酸性水で戻した後、それぞれの水で煮る調理を行い、適しているかについて検討した。
    【結果】アルカリ性水が適していると考えられる食材としては切干大根、寒天、しいたけ及び貝柱等。水道水が適していると考えられる食材としては豆、タピオカ、かんぴょう、わかめ等。酸性水が適していると考えられる食材としては寒天、芋がら等があった。また、アクの成分がアルカリ性水では溶出しやすいことから、食味がよくなる食品と、食品特有の味が薄くなる食品があることがわかった。同一量の調味料で煮物を調製した場合、アルカリ性水と水道水の煮物で、味や食感に違いが見られた。 アルカり性水の場合は、水道水の条件で使用すると、やわらかくなる傾向が見られ、水道水より短時間で戻すことが可能であった。そこでアルカリ性水で短時間処理したものと水道水で処理したものについて味や食感を比較したので、その結果を合わせて報告する。
  • 豊田 美穂, 照井 滋, 石田 裕, 鈴野 弘子
    セッションID: 2D-p2
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】水は料理には欠かせないものであるが、ミネラル等を含んでいるにもかかわらず食品成分表には記載がなく食材として扱われていない。しかし、近年ボトリングされた水が多く市場に出回り、飲用だけではなく、利用領域は調理にも広がりをみせている。その代表的な使用例は、炊飯とだし汁であるが、だし汁に関しての報告はほとんどみられない。そこで、水の種類が調理に与える影響を検討する目的で、水道水および数種の市販されている硬度の異なる水を用いて昆布だし汁を調製し、官能検査および成分の分析を行った。
    【方法】1.試料:水道水と市販の超軟水、軟水、硬水を用いた。2.だし汁の調製:水に対して2%の日高昆布を用い、20℃において1、3、6、18時間抽出した。3.測定:だし汁または抽出後の昆布に対して以下の実験を行った。1)官能検査 2)抽出後昆布の水分の測定 3)原子吸光法によるCa、Mg、Na、Kの測定 4)GC法によるグルタミン酸の測定 5)pHの測定 6)分光測色計による色調の測定
    【結果】だし汁の官能検査では、旨味の強さに有意な差が認められたが、色、香り、塩味、苦味には認められなかった。だし抽出後の昆布の水分含有率は、硬水が最も低かった。昆布から溶出するミネラル量はNa、Kが多く、Ca、Mgは少なかった。また、Na、Kは硬水に比べ水道水、超軟水、軟水で溶出率が高く、CaはもともとCaを多く含んでいる硬水の場合、元の水よりだし汁のCa量が少なくなり、昆布への吸着が考えられた。だし汁中のグルタミン酸量は、水の種類によって差がみられた。
  • 松本 美鈴
    セッションID: 2D-p3
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】あらい料理の特徴は、極めて活きのよい魚介類を用いることである。しかし、この特殊性が、あらいの利用範囲を限定している。本研究では、鮮度の異なる魚肉からあらいを調製し、あらい処理条件が筋肉収縮に及ぼす影響を検討することにした。
    【方法】即殺したスズキから背側普通筋を切り出し、フィルムで包装し、5℃で2日間貯蔵した。経時的に筋肉をサンプリングし、3mm幅にスライスし、あらい処理に供した。あらい処理条件は、次の5つである。(1)18℃の脱イオン水中で3分間撹拌、(2)47℃の脱イオン水中で20秒間撹拌、(3)18℃の100mMCaCl水溶液中で3分間撹拌、(4)18℃の10mMCaCl水溶液中で3分間撹拌、(5)18℃の1mMCaCl水溶液中で3分間撹拌。調製した各種あらいの筋肉収縮は、明度、硬直度、レオナーによる破断試験により評価した。また、各種あらいを6%過塩素酸溶液で抽出しエキスを調製し、アデノシン三リン酸および乳酸を定量した。
    【結果】即殺直後および6時間貯蔵した筋肉からは、いずれの処理条件でも、あらいを調製できた。しかし、筋肉の収縮程度は、処理条件により異なった。47℃処理あらい、100mMおよび10mMCaCl処理あらいにおいて、筋肉の硬直が強く、破断荷重が大きかった。1日貯蔵した筋肉では、100mMおよび10mMCaCl処理あらいにおいて、硬直が認められた。2日間貯蔵した筋肉からは、全ての条件であらいを調製することができなかった。あらい処理に用いる水に10mM濃度以上のカルシウムを添加すれば、極めて活きの良い魚を用いなくてもあらいを調製できることが明らかとなった。
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    セッションID: 2D-p4
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    「目的」廃鶏はブロイラーよりも長期間飼育されているため肉は硬くしまり味が良いといわれている。硬い肉を軟化させる方法を見出すため廃鶏の肉を食品組織学的に調べ、廃鶏の肉はブロイラーの肉よりも筋束を取り巻く膠原線維の量が多い傾向にあった。本研究では筋束の大きさに差があるかについて調べた。
    「方法」材料には廃鶏とブロイラーのムネ肉およびモモ肉を使用した。材料は5mmの厚さに切り10%ホルマリン液で固定後パラフィンに包埋して薄切した。切片は過ヨウ素酸シッフ(PAS)およびピクロシリウス(PS)で染色した。筋束の大きさは写真により長径および短径を測定した。
    「結果」ムネ肉における筋束の長径は廃鶏よりもブロイラーの方が大きかった。ムネ肉の短径およびモモ肉の長径と短径では廃鶏とブロイラー間に差は認められなかった。長径の短径に対する比は、ムネ肉では廃鶏で3.5:1、ブロイラーで4.2:1およびモモ肉では、廃鶏で2.6:1、ブロイラーで1.8:1であった。ムネ肉の比率はブロイラーが大きくモモ肉では廃鶏が大きかった。これらのことは、筋束の大きさおよび形状は肉の硬さに必ずしも関連しないことを示している。廃鶏およびブロイラーの筋線維にはグリコーゲンは確認できなかった。
  • 金  娟廷, 川野 亜紀, 矢島  和枝, 高橋 智子, 大越 ひろ
    セッションID: 2D-p5
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>本研究では、軟化処理及び高圧処理を行った豚ロース試料肉について、物性測定などの客観的評価および食べ易さの官能評価を行うことにより、高齢者にとって食べやすい食肉の要因について検討した。
     <方法>豚肉ロース芯部位を用い、0.4mol/lの重曹溶液あるいは脱イオン水に20℃で40分間浸漬後、いずれも400MPaで高圧処理を行った。ただし、高圧処理を行わなかったものを、0MPaとした。加圧後、中心温度80℃で30分間加熱し、試料肉とした。重曹溶液浸漬及び高圧処理を行った4種類の試料肉について、水分含有率、重量減少率、テクスチャー特性の硬さ、および食べやすさの官能評価を行った。併せて、一般生菌数、肉色の変化、遊離アミノ酸含有量およびSEMによる肉表面構造の観察を行った。
     <結果>高圧処理を行うことにより、いずれの試料肉も水分含有率は増加し、重量減少率は低下し、またテクスチャー特性の硬さは軟らかくなった。一般生菌数は、肉を加圧および加熱することで、検出されなくなった。食べやすさの官能評価を行った結果、重曹溶液浸漬後に高圧処理を行った試料肉は他の試料肉と比べ、やわらかく、肉食塊は飲み込みやすく、残留感も少なく、さらに、おいしいという評価が得られた。加圧・加熱中に流出した肉汁中の遊離アミノ酸含有量は、重曹溶液浸漬肉より軟化未処理肉(脱イオン水浸漬)のほうが多い傾向を示した。SEMによる表面構造の観察では、軟化未処理および高圧未処理の試料肉は加熱により筋膜の間隙が顕著に生じたが、重曹溶液浸漬および高圧処理を行った試料肉には、筋膜の間隙は生じなかった。
  • 橘高(桂) 博美, 中東 美記, 渡辺 文雄, 中野 長久
    セッションID: 2D-p6
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 調理された魚介類におけるビタミンB12(B12)含量については、5訂日本食品成分表に記載があり、B12はあまり損失していないとされている。しかし、調理された魚介類に含まれるB12の消化吸収率についてはこれまで報告がなく、興味が持たれる。そこで我々は、魚介類の中でもB12の主たる供給源の一つである“サバ”について、水煮(常圧加熱)および加圧加熱調理がB12の消化吸収率へ与える影響について検討した。
    <方法> サバは、常圧条件下(100℃)および加圧条件下(120℃)で0、20、60分加熱した後、遠心分離を行い、上清と沈殿に分けた。沈殿は胃内での消化を想定して試験管内においてHCl存在下でペプシンを30分間、37℃で反応させた。前述の上清試料および人工消化試験後の沈殿試料についてB12を安定化させるためにそれぞれシアノ化し、B12量を微生物法によって定量した。その定量結果を比較し、胃内の消化試験の後に増加するB12測定量を消化吸収されやすさの判断基準とした。
    <結果・考察> まず、水煮(常圧加熱)調理を行ったところ、人工消化試験をせずに測定されたサバ含有B12においては0分と比較し60分加熱してもほぼ変化が見られなかった。また、サバの人工消化試験後のB12の測定値は20分加熱では生の約2倍量、60分加熱によって生の約2.5倍量に増加した。一方、加圧加熱調理を行ったところ、人工消化試験をせずに測定されたサバ含有B12においては加熱時間が長くなるにつれて煮汁への溶出が増加し、60分加熱では約半分のB12が煮汁に溶出した。さらに人工消化試験後の測定値は20分加熱では約2倍量、60分加熱では約1.5倍量であった。これらの結果から、水煮(常圧加熱)および加圧加熱調理はサバのB12消化吸収を高めると考えられた。
  • 村上 亜由美, 川口 真規子, 末 信一朗
    セッションID: 2D-p7
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] サバ糠漬けは,塩漬けの後,ぬか床に漬け半年から1年間発酵させて製造する。保存性は高く,独特の風味を持っているが,塩分含量は高い。そこで,製品の低塩化を目的として,あらかじめ一定条件下で発酵させた糠を用いてサバ糠漬けを製造する方法,並びに塩漬け工程に代わる下処理方法について検討した。
    [方法] 調味料を合わせた糠に,乳酸1%と食塩3%を添加し,重石をして25℃で保存した。0,2,4,8週間目に下処理をしたサバの切り身と糠を層にし,引き続き5ヶ月間保存した。これと比較するため,食塩添加量を6%としたもの,サバ糠漬けを製造した時にできた糠を10%添加したもの,保存温度を30℃にしたものを作製した。サバの下処理は,食塩5%(サバ重量)または食品用脱水シート(昭和電工(株)製)を用いて行った。糠及びサバの熱水抽出液でのpH,糖度,乳酸量,ペプチド量を測定し,発酵の指標とした。
    [結果] サバのペプチド量と糖度は,調味糠の発酵期間0,2週間において,シート下処理では塩下処理より高値であった。サバの乳酸量は,どの発酵期間においても,シート下処理では塩下処理より高値であった。サバのpHは,発酵前より下がり,発酵期間及び試料間の差は,ほとんどみられなかった。また,調味糠の発酵期間をサバ糠漬けの呈味成分との関連があるペプチド量において検討すると,シート下処理では2週間,塩下処理では4週間で最も高値となり,最適発酵期間である可能性が示唆された。
  • 山崎 歌織, 外西 壽鶴子, 御木 英昌
    セッションID: 2D-p8
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】味噌漬による生魚肉の保存期間延長について凍結保存を試み、魚肉の保存性とおいしさおよび成分について筋肉組織の形態学的変化から検討を行った。
    【方法】凍結カツオ肉(フィレー)を解凍(5℃,約10h)後、1.5cm厚さの切り身(20±1g)にし、同量の麦味噌(塩分約10.5%)で覆い食品包装用ラップフィルム(ラップ)で包み5℃で冷蔵して味噌漬生かつお肉試料とした。対照として味噌漬をしていない解凍カツオ切り身をラップで覆い凍結(-20℃)保存して凍結生かつお肉試料とした。それぞれの試料を3から30日保存後、試料の肉片から厚さ10μmのパラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン法で染めた標本を検鏡(×100)し、魚肉の保存状態を組織化学的方法で調べた。
    【結果】味噌漬生かつお肉の組織を顕微鏡で観察した結果、骨格筋細胞の筋原線維にはほとんど変化がみられず、基本的な骨格筋細胞の形態が良好に保持されていた。それに対し、凍結生かつお肉では、骨格筋の筋原線維は部分的に融解され、核は染色されなかった。また、骨格筋の筋線維の細胞内に氷結晶が成長した跡の隙間がみられた。一方、味噌漬後に凍結保存したかつお肉(味噌漬凍結生かつお肉)についても、味噌漬生かつお肉同様に骨格筋細胞の筋原線維と核の融解はほとんど認められなかった。従って、凍結生かつお肉よりも味噌漬生かつお肉および味噌漬凍結生かつお肉が保存性に優れていたことは、味噌漬による脱水効果によって大きな氷結晶が組織内に成長できない凍結環境になる物理化学的要因が考えられた。なお、各試料の保存性とおいしさを魚肉組織の形態との関連で検討するため、現在官能評価を試みている。
  • 宇野 和明, ワライ クリーチャヤ, 宇野 良子, 青木 恭彦
    セッションID: 2D-p9
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 我が国において代表的な輸入エビであるブラックタイガー(Penaeus monodon, 和名:ウシエビ)は東南アジア諸国において養殖されている。近年、養殖ブラックタイガーに発生する疾病の予防・治療薬として、抗生物質のオキシテトラサイクリン(OTC)が広く用いられており、その体内残留が食品安全上懸念されている。そこで、本研究ではブラックタイガーにおけるOTCの残留特性を明らかにするとともに、加熱調理がエビ体内に残留する薬物に及ぼす影響を検討した。
    【方法】 供試エビとして、タイ国サムットサコーン県産のブラックタイガー(平均体重23 g)を用いた。投薬方法として、OTCを餌料に混ぜ、投与量が50 mg/kgとなるようにカテーテルで供試エビに経口投与した。投薬後、所定時間ごとに5尾ずつ取り上げ、それらの組織をHPLC分析に供した。さらに、OTCが残留する組織について加熱調理(茹でる、焼く、揚げる)を行い、調理後、それらをHPLC分析に供した。
    【結果】 OTC濃度は血リンパ及び筋肉において投薬後4時間及び10時間に最高濃度に達し、投与後120時間には残留基準値(0.2 ppm)以下になった。一方、殻では投薬後からサンプリング終了時まで高濃度で推移し、消失相は認められなかった。残留OTCは加熱調理により、筋肉では約50%消失したが、殻では20%程度しか消失しなかった。加熱時間を長くすることにより残留OTCは80%程度まで消失したが、その組織は食するに適さなかった。なお、本研究は科学研究費補助金基盤研究(C)(No. 14580166)により行われた。
  • 辻原 命子, 石山 絹子, 貝沼 やす子, 福田 靖子
    セッションID: 2D-p10
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年, 炭の調理学的効果として炊飯米の味の向上や天ぷら油の酸化防止効果など種々みいだされているが, 炭の生体におよぼす影響についての報告はほとんどない。そこで本実験では, 生活具として利用が減少し森林への侵食が懸念される竹の利用の拡大のために, 竹炭からK+をはじめ, Ca2+やMg2+など多くの微量元素を含む竹炭浸漬液(pH9.0~9.2)を調製してラットに飲水として投与し, 生体内脂質過酸化酸化物への影響を調べることを目的とした。
    方法 6週齢のウィスター系雄ラット(日本エスエルシー(株))を用い, 対照群, 竹炭10%浸漬液群, 竹炭2%浸漬液群の3群に分けた。 飲水は, 対照群(CRL)には蒸留水を, 竹炭10%浸漬液群(CH10%)には, 竹炭10%を蒸留水に24時間浸漬した竹炭浸漬液を, 竹炭2%浸漬液群(CH-2%)には, 竹炭2%を蒸留水に24時間浸漬した竹炭浸漬液をそれぞれ50mL/匹/日投与した。飼育終了後10時間絶食にした後解剖し, 血液を採取, 肝臓および腎臓を摘出して血清のTBA反応陽性物質(TBARS), 総コレステロール濃度, トリグリセリド値および肝臓と腎臓のTBA反応陽性物質(TBARS)を測定した。
    結果 血清総コレステロール濃度は, 対照群に比べてCH-10%群およびCH-2%群が有意に低下した。 血清トリグリセリド値は, 対照群に比べてCH-10%群とCH-2%群で有意に減少した。 CH-10%群とCH-2%群の血清TBARSは, 対照群に比べて低下の傾向であった。 肝TBARSは, 対照群に比べてCH-10%群とCH-2%群で有意に低下したことから, 竹炭浸漬液の飲水としての効果が期待される。
  • 三宅 義明, 平光 正典, 前川 哲夫
    セッションID: 2D-p11
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【目的】ユズ、カボス、レモン等の香酸をもつ柑橘(カンキツ)果実は、高い酸味と爽快な香りから、様々な食品に利用されている。カンキツ果実のフラボノイドは、抗酸化性、抗腫瘍性などがあり、生活習慣病予防の面から注目されている。そこで、香酸カンキツのフラボノイドの食品学、調理学的な特徴を調べることを目的に、各種果実のフラボノイドの分布特徴を調べ、さらに、レモン果実を題材にフラボノイドの溶出性を検討した。
    【方法】香酸カンキツ果実は、市販品の購入か、三重県紀南果樹研究室の分譲により入手した。果実を圧搾法により果汁と果皮に分け、果汁はパルプを除去し、果皮は粉砕物をエタノールにて抽出して試料を調製した。フラボノイド含量はHPLCにより、抗酸化性はDPPHラジカル捕捉法により測定した。切断したレモン果実を加温や冷温の水、エタノール水溶液に浸漬し、溶出液したフラボノイド量をHPLCにて経時的に測定した。
    【結果】香酸カンキツ果実は、フラバノン配糖体のルチノース型またはヘスペリジオース型の含量から、または、ポリメトキシフラボノイド含量から分類できた。レモン、ダイダイなどが高い抗酸化活性を示した。レモン果実のフラボノイドは、全般に、水溶液よりエタノルール水溶液の方が、また、加温水の方が冷却水より溶出性に優れていた。香酸カンキツ果実のフラボノイドは果皮に多く、成分により溶液への溶出性の相違が見られた。
  • 芳賀 麻衣子, 西村 ひとみ, 関 洋子, 新野 靖
    セッションID: 2D-p12
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    【まえがき】 にがりは、最近の健康ブームで販売量を伸ばしており、豆腐製造のみならず、炊飯、調理にも用いられ、希釈されたものは飲料として販売されている。にがりは製塩において塩を採り切った残りの液であり、MgやNaなどの塩化物を主とした高塩分濃度溶液であるが、その品質規格はなく、成分表示がされていないものも多く、品質の実態は明らかでない。そこで、市販のにがり商品を収集して品質の実態調査を行った。
    【試験方法】 にがり13点について、主成分(Cl,SO4,Ca,Mg,K)を「塩試験方法」((財)塩事業センター)により定量した。微量成分はPO4,As,Co,Cd,Cu,Hg,Mn,Mo,Ni,Pb,Ti,V,Znを対象とし、PO4はモリブデンブルー法、As,Hgは水素化物/ICP-AES法、その他の金属元素はキレートディスク濃縮/ICP-AES法で定量した。
    【結果】にがりには、海水をそのまま濃縮したにがりと海水をイオン交換膜で濃縮したにがりがあるが、両者の間にはCa濃度に大きな差があり、後者のにがり商品に高濃度で含まれていた。各商品の全塩分濃度は26.7%から32.3%と大きな差はないが、その中のMg濃度は1.0%から5.0%、NaCl濃度は2.4%から21.9%と商品によって濃縮度がまちまちであり、同量使用した場合、調理品の仕上がりや味覚などへの影響が考えられた。微量成分では、Zn,Cu,Ni,Fe,およびMnを多く含む商品もあったが、海水からにがりへの濃縮倍率から、海水溶存成分以外が混入していると考えられた。その他、Moが海水の濃縮度に比例して含まれていた。また、海洋深層水利用商品について、その他の商品との品質差は見られなかった。
  • 中村 喜代美, 伊関 靖子, 三田 陽子, 坂井 良輔, 新澤 祥恵, 粟津 透, 天野 原成, 西 正人, 笠森 正人
    セッションID: 2E-a1
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食生活の欧風化により摂取量の低下が著しい食物繊維供給源として、また、豆腐生産の副産物であるオカラの再利用の観点より、オカラを亜臨界水(高温高圧水)処理し、得られたペースト状のオカラ(以下オカラピューレ)の食品素材としての可能性を探るため、3種の調理について食味評価を行った。
    【方法】肉団子、焼卵、スポンジケーキについて基本試料(以下A)、オカラ添加(以下B)、オカラピューレ添加(以下C)の3種を調整し、評点法により検討した。
    【結果】1)「肉団子」では、評価項目の中で舌ざわりに有意差が認められ、CがAに比べなめらかと評価された(p<0.05)。この他外観ではCの評価が悪かったが、テクスチャーや味に関する項目では良い評価が得られた。総合評価も有意差はみられなかったが、Cが良いと評価される傾向であった。2)「焼卵」では、有意差の認められる評価項目はなかったが、比較的分散比が高いきめや歯切れでCは良い評価が得られた。総合評価ではAとは同じであったが、Bに比べてCが良いと評価される傾向であった。3)「ケーキ」ではきめ、しっとり感において有意差が認められ、きめについてはCがBやAに比べて有意に細かいと評価され、しっとり感でもCはAやBに比べしっとりしていると評価された。しかし、総合評価においては、有意差はなかったものの、基本試料が最も良く、オカラピューレ添加試料が悪いと評価される傾向であった。4)以上より、肉団子や焼卵においては、オカラピューレ添加により保水性が高まり、なめらかなテクスチャーが得られたことで、調理品の品質は高まったと言える。しかし、ケーキのように製品の水分量が少ないものでは評価が低く、調理法など今後に課題が残された。
  • 沼田 貴美子, 岡田 貴子
    セッションID: 2E-a2
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
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    目的
      菓子は補助的な栄養素摂取や情緒の安定性に有効とされ,嗜好性を重視した食べ物である。先に熊本の菓子に対する嗜好の実態に関する調査及び学生を対象にした熊本の代表的な菓子の官能評価を実施し,その結果を平成14年度大会で発表した。今回はさらに研究を深め,熊本の菓子と認識する理由を明らかにするとともに,菓子の官能評価を前回と同様の方法で実施し,特に食感表現の視点からも調査し解析した。
    方法
     菓子の認識度調査は36種類の菓子について質問紙調査を行った。官能評価は4種類の試料「銅銭糖・天草サブレ・寒菊・カステラ」について,外観・におい・舌ざわりなどの8項目についてそれぞれ評点法で評価させた。また,その食感表現については国際規格に収載されているテクスチャー用語類を参考に66用語を採り上げ調査した。調査対象者は学生107名,調査時期は2002年10月であった。
    結果
     菓子の認識度調査では,熊本に馴染みのあるものを土産品として商品化したもの,地名が菓子の商品名に使われているものを,熊本の菓子と認識していた。
     学生の菓子の嗜好には,菓子の外観・におい・かたさ・舌ざわりなどが影響していた。菓子の食感表現については,各々の菓子の特徴をよく反映した用語が多く回答され,微妙な食感表現の相違を予想以上に認識していることが分かった。
  • 小林 三智子, 岡田 幸雄, 戸田 一雄
    セッションID: 2E-a3
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】味覚感受性の測定にはその目的によって種々の方法が用いられるが、臨床の場では電気味覚計を用いた検査と、ろ紙ディスク法の検査が多く使用される。本報告では、両者の測定法を用い、若年女性の味覚感受性を測定することを目的とした。
    【方法】健康な19歳から21歳の女子学生を対象とし、口腔内には口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していること、非喫煙者であることを確認した。電気味覚検査は電気味覚計(TR-06)を用い、刺激部位は、舌尖より2cmの茸状乳頭領域の左右舌縁(茸状左・茸状右)、舌縁後方葉状乳頭領域の舌根に近い左右(葉状左・葉状右)の部位の計4箇所とした。ろ紙ディスク法検査には直径6mmの円形ろ紙を用い、試料溶液はスクロース、塩化ナトリウム、DL-酒石酸、硫酸キニーネ及びグルタミン酸ナトリウムの五味とした。刺激部位は、舌尖より2cmの左舌縁とした。
    【結果】電気味覚検査の結果は、茸状左-1.38dBおよび茸状右-1.59dB、葉状左0.4dB、葉状右0.2dBであった。葉状乳頭と茸状乳頭のそれぞれ同じ部位において、左右の差は認められなかった。しかし、部位が異なると、茸状乳頭と葉状乳頭の左右ともに、舌尖部の茸状乳頭のほうが有意に低い値を示し、味覚感受性が高いことが示された。一方、ろ紙ディスク法により求めた五味の閾値はそれぞれ、甘味(スクロース)160mM、塩味(塩化ナトリウム)320mM、酸味(DL-酒石酸)40mM、苦味(硫酸キニーネ)0.625mM及びうま味(グルタミン酸ナトリウム)160mMであった。
  • 三橋 富子, 森川 加奈子, 畑江 敬子
    セッションID: 2E-a4
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的: 高齢になると身体諸機能の低下等により食べ物に対する口内感覚も若者とは異なってくると考えられている。口内感覚の中でも味覚は食物選択に大きく関与していると思われるが、年齢や性差による味覚感度についての報告の結果は必ずしも一致していない。そこで、若年者と65歳以上の高齢者を対象として、年齢や性差による味覚感受性の違いを検討することを目的とて調査を行った。同時に食品嗜好調査を行い、味覚閾値と食品嗜好との関連についても明らかにしようと試みた。
    方法: 対象;学生108名(女子54名、男子54名・年齢19_から_21歳)、高齢者54名(女子32名、男子22名・年齢65_から_89歳) 実施期間;平成13年9月_から_平成15年5月 閾値測定;3味(蔗糖、塩化ナトリウム、クエン酸)について行った。食物嗜好調査;甘味食品、酸味食品、苦味食品(各4品目)、塩味食品(5品目)について嗜好度を5段階評価した。
    結果: 高齢者は若年者に比べて有意に閾値が高く、また、性差は高齢者では酸味の検知・認知閾値、塩味の認知閾値で、若年者では塩味の認知閾値でみられ、いずれも女子の方が有意に低い事が分かった。プロビット法によって求めた閾値は、3味とも若年者女子<若年者男子<高齢者女子<高齢者男子の順になった。検知・認知閾値の相関は、個々のグループでは各味に対する閾値の間の相関は少なかったが、被験者全体では、閾値間に有意な相関が多く見られた。味覚感受性と食品嗜好については、相互の関係はあまり認められなかったが、塩味に対する味覚感受性の高い人が塩味の強い塩辛や漬物などの嗜好度が低いことが学生と高齢者共通に認められた。
  • 小川 久惠, 豊満 美峰子, 松本 仲子
    セッションID: 2E-a5
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】調理済み食品の使用が避けられない現在、その多用によって微量栄養素が不足し、その結果味覚感度が低下するという報告が散見される。そこで現在の若年女性の味覚感度について、五味識別や濃度差弁別の官能検査を行い、1972年松本等が実施した過去のデーターと比較するとともに、官能検査成績とアンケート調査による食事の摂取状態や調理済み食品の使用頻度および調理学の成績等との関連性について検討した。
    【方法】官能検査は2003年度短大入学生を対象とし、1972年に松本等が設定した方法に従った。すなわち甘、鹹、酸、苦、旨の五味の識別と苦味を除く四味の濃度差弁別テストを行い、アンケート調査は同対象者に留め置き法で行った。検討事項は1.2003年度入学生(119人)と1972年度入学生(250人)との味覚感度の比較. 2. 2003年度生の入学時と1年経過後の味覚感度の比較、3.日常生活における調理済み食品の使用頻度などの調査結果と味覚感度の成績との関連性を五味識別能力の高い回答者グループと低い回答者グループとに分けて検討した。
    【結果】1.'03年度生と'72年度生の入学時の比較では甘、酸、苦、旨味については有意な差はみられないが、塩味では'72年度生が有意に正答率が高かった。2.'03年度生の入学時と1年後の味覚感度の比較では甘味、旨味については差が見られなかったが、塩、酸、旨の3味で正答率が向上した。またこれを'72年度2年在学生(244人)と比較すると、いずれの味も両年ともに正答率は80%以上で、有意差は見られなかった。3.調理済み食品の使用頻度と五味識別能力との関係については若年女性の味覚の感度、五味の識別能力が高いグループと低いグループとの間には差がみられなかった
  • 価格とブランドがおいしさに及ぼす影響
    豊満 美峰子, 小川 久惠, 松本 仲子
    セッションID: 2E-a6
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    (目的) 食生活が多様化する中で、食品や料理を選択する基準は種々の情報により左右されることが予想できる。例えば狂牛病や鳥インフルエンザ等の食を取り巻く機器管理についての過剰な情報や、下部なコマーシャル・パッケージなどによっての食品の購買行動が大きく変わってしまうなどのことはよく経験するところである。そのような情報が食品選択時に、さらに嗜好自体に影響するかについて検討した。
    (方法)様々な食品について官能評価を行い、種々の情報を提示した場合と未提示の場合とでの評価の違いを検討した。食品の選択条件は、容易に入手できる一般的な食品・調味料・飲料等で、提示条件がほぼ同じか近いものが試料として準備可能であることを重視した。また条件が揃わないものは同一資料で情報だけを変える方法も試みた。アイテム数は約40食品で、塩・砂糖・味噌・酢・醤油等の基本的調味料類、牛乳・豆腐・白米・肉類等の食品、カボチャの煮物・きんぴら等の惣菜類、カステラ・ポテトチップス等の菓子類について評価を行った。情報については、価格・ブランドが中心で、その他遺伝子組み替えの有無や農薬無使用表示の有無、産地の違い、手作りか市販か等についても数品目実施した。パネルは約50~60名であった。
    (結果)価格・ブランド提示の場合は、評価が数パターンに分かれた。(1)ブランドによる影響(2)価格による影響(3)いずれにも左右された(4)いずれにも左右されなかった 等であった。無農薬表示の有無・産地・着色料表示等の情報の場合は、情報未提示時と情報提示時とで完全に評価が逆転する結果となった。
  • 蒲 尚子, 須山 加奈恵, 杉本 温美
    セッションID: 2E-a7
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】大学生は生活スタイルが大きく変化するため食生活においても、選択権をもつようになる。そのため、嗜好により食品摂取が偏ることがあり、食生活が乱れる人が多い。また、最近ではサプリメントの利用も増加している。サプリメントは栄養素摂取の不足を補う一方、特定栄養素の過剰摂取の恐れもある。そこで大学生を対象に食生活状況調査を実施し、食生活の実態を知り、食生活環境が健康などに及ぼす影響を調べた。
    【方法】近畿大学農学部農芸化学科、水産学科、食品栄養学科の1から4回生525人〈有効回答者数496人(男性148名、女性347名)、有効回答率94.5%〉を対象に、生活環境、身体状況、食生活状況(食品摂取回数・食習慣)、自覚症状等に関するアンケートを自己記入式、質問紙・集合調査法で行なった。集計には「SPSS11.5 for Windows」を使用した。
    【結果】比較的よく食べられていると思われる食品69品目、間食15品目、外食13品目の食品摂取回数を調べた。男女間で食品摂取回数に有意差(p<0.01)がみられた食品は魚類、鶏卵、きのこ類、レトルト・インスタント食品などである。野菜摂取回数は女性が、レトルト・インスタント食品、清涼飲料水、外食は男性が有意に高かった。居住形態別では自宅外生に比べ自宅生は食品摂取品目、回数ともに有意に高いものが多い。自覚症状は日本産業衛生協会の質問30項目について調べた。愁訴の多い項目のうち男女間で有意差がみられたのは「眠い」、「あくびがでる」、「肩がこる」であった。サプリメントは28.0%の人が利用し、39.6%の人が「毎日」のんでいた。「ビタミンC」を「美容のために」のんでいる人は25.2%(p<0.01)であった。
  • 富永 暁子, 水上 和美, 肥後 温子
    セッションID: 2E-a8
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕乾式調理用鍋の代表であるフライパンについて、鍋材質の違いが焦げ速度や調理性能に及ぼす影響を比較し報告してきた。その一方で、調理用具の違いによって加熱効率や調理性能が異なることを学生に理解させるために、比較実験の一部を授業の中に取り入れて学生にも体験させた。鉄製とフッ素樹脂加工アルミ製フライパン(以下アルミ製)の比較実験の内容と、実験後のアンケート調査を紹介する。
    〔方法〕1)こげ色比較:小麦粉、パン粉または食パン(30g)を2種類のフライパンで加熱し、焦げ色を観察した。2)実調理試験:もやし炒め、肉せん切り炒め、焼肉について、調理時間と官能評価を行った。3)調査:留め置き法による質問紙調査を2002年~2003年に実施した。内容はフライパンの所持状況、材質別個数、大きさ、使用頻度、料理別使い分け状況とその理由、実験後のフライパンの使い分けに関する意識変化などである。
    〔結果〕1)調理時間を比べると、いずれの実験でも鉄製がアルミ製より30秒以上早く仕上がることが明らかとなり、官能検査でも歯ごたえなどの食感に違いが見られた。嗜好面では炒め物は鉄製のほうが好まれたが、焼肉は有意差がみられなかった。2)フライパンの所持率は100%であり、鉄製は44.7%、アルミ製は84.6%、直径26-28cmの所持率が最も高かった。使用頻度は鉄よりアルミ製が頻繁に使われ、ほぼ毎日使用していた。焼肉、野菜炒め、オムレツについて使い分け状況をみると、いずれもアルミ製の利用が多く、特にオムレツは焦げにくいとの理由でアルミ製を使う傾向がみられた。3)実験後、省エネのために鉄製とアルミ製の使い分けをしたほうがよいと思う学生が増加した。
  • 井元 りえ, 大家 千恵子, 津田 淑江
    セッションID: 2E-a9
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    持続可能な食教育プログラム開発の実践と評価(目的)現在の食生活は、有限の資源とエネルギーを採取・廃棄し続けている。本研究では食生活を環境保全型に構築し直すため、食材の生産・輸送・調理・廃棄のライフサイクルエネルギーを切り口とした持続可能な食教育プログラムの開発を目的とした。
    (方法)昨年度の本学会の報告においては、日常的な献立を作成・調理し、その時の食材のライフサイクルエネルギーを算出して、その環境負荷について分析検討を行った。本研究では、持続可能な食教育プログラムを開発し、高校および大学で授業実践を行い、プログラムの妥当性を検討した。食教育プログラムでは、まず学生に食生活の現状を自己評価させた。次に生産エネルギーのデータから「旬産旬消」を、輸送エネルギーの計算演習から「地産地消」の大切さを理解させた。調理・廃棄エネルギーはデータの提示および実習から省エネルギーの方法を体得させた。
    (結果)持続可能な食教育プログラムの実践により以下の結果が得られた。1) それぞれの食材の旬の時期を正しく認識できた生徒・学生は増加した。例えばきゅうりの場合は、高校生は64.3_%_から83.3_%_へ、大学生は88.9_%_から100_%_へと増加した。2) 旬や産地を意識して食材を購入しようとする学生が増加した。3) 生活において食材購入、調理に携わっている人ほど、授業に対して積極的に取り組み、環境に配慮した食生活を実践しやすいことが明かとなった。4) 調理実習は日常生活における環境配慮行動の実践に有効であると確認された。このように、学生は食材と環境問題との関連を認識するようになり、本プログラムは、持続可能な食教育を行うためのプログラムとして、妥当性があることが認められた。
  • ー女子学生の夕食の実態を中心にー
    大野 佳美, 大野 婦美子, 藤井 久美子, 笠井 八重子
    セッションID: 2E-a10
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的:演者らは,先の報告において、食生活を充実させるという「強い意志」が食生活改善に必要であると認識しても、そのための実践がともなっていないことを指摘した。この要因として、自らが食事づくりを行うことや、調理学実習の経験が密接に関わっていると考えた。そこで、まず、食事づくりの実践のための基礎である献立について、我が国の食事スタイルとしての主食と副食(主菜と副菜)を組み合わせて食する実情について、とくに欠食が少ないと考えられる夕食を中心に、どのように実践されているか、それが、自ら食事をつくることの行動と、どのように関連するかを明らかにすることを目的として調査を行った。
    方法:兵庫と岡山の2地区の女子大学生、18_から_22歳、487名を対象とし、2004年2_から_5月に質問紙調査法を用い、その場で記入、回収する方法によった。調査内容は、日常の調理担当者、食事に対する関心とその程度、夕食に関する調査内容は、食べる場所、形態、作る頻度や購入頻度、夕食の食事スタイル等であった。集計結果の解析には、「SPSS」を用いた。
    結果:全体の8割以上の者が、「食事に関心がある」としていたが、自ら夕食づくりに関わるとする者は全体の約3割であった。また、食事に関心があって、「朝食は必ず摂る」とした者は約3割、大半が朝食を必ず摂るとする習慣に欠けていることが伺われた。一方、週3回以上、夕食を自分で作るとする者は約3割、外食や弁当を購入する者が約2割_から_3割であった。夕食の料理形態は、ご飯もの、パンやめん類を摂るとする者の割合は多いが、それと「おかず」とを組み合わせた食事とする者は必ずしも多くなかった。
  • 菊地 和美, 宗像 美恵子, 山口 蒼生子
    セッションID: 2E-p1
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食品産業の発展は伝統的な家事の伝承と家庭における調理能力の低下をもたらし、食事の簡便化が進展している。管理栄養士養成課程ならびに食品学科に在学している学生も例外ではない。将来、食の専門家として食事計画ができる教育の基礎は栄養学、食品学の知識を献立に反映し、調理することから始まる。そこで、基礎調理教育のあり方を検討する目的で本調査を実施した。
    【調査方法】札幌市近郊にある管理栄養士養成課程ならびに食品学科に在学する女子学生(19歳から21歳)300人を対象に主菜の食材や調理器具、調味料などについて質問紙法によるアンケート調査を集合法により、1997年と2004年に実施した。解析法は各項目の単純集計、グループ間の比較はt-検定、χ2検定を実施した。
    【調査結果】主菜料理の食材である魚、肉、卵、大豆について、女子学生が作ることができる料理は「ない」という回答が多かった。特に、魚料理が顕著であった(p<0.01)。これらの料理作りに対する意識は「好き」と「好きでも嫌いでもない」という回答がほぼ同率であった。作ることが食べる行動を上回っていたのは大豆料理、卵料理で、肉料理、魚料理は低くかった。上述のような結果は家庭環境(家族構成や調理器具と調味料保有状況、保護者の食意識など)に起因すると考え、それらの実態と女子学生の調理に対する意識ならびに調理能力の関連を検討した。
    【結論】女子学生を対象にした基礎調理教育の充実を図るためには女子学生自身で準備できる食事内容について指導し、食事計画へと展開していく際の料理づくりの意義や調理に関心を持たせる支援が必要である。
  • 續 順子, 筒井 京子, 中島 けい子
    セッションID: 2E-p2
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的: 近年、生活習慣病との関わりから、n-6系およびn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取比率が注目され、平成7年「第五次改定日本人の栄養所要量」において、n-6/n-3比率は4程度が適当であるとされた。この値は食料需給表を基に算出されたもので、日本人の摂取比率を反映しているとされているが、実態は不明である。我々は現状把握のため、学校給食の実態調査を進めている。過去三校の調査では、給食一食のn-6/n-3比率の平均値は、いずれも4を上回っていた。今回は平成7年度の対象校であったS市H小学校の平成12年度の学校給食日誌よりn-6/n-3を算出し、5ヵ年間の変化を比較検討した。
    方法: S市単独校方式の平成12年度の給食日誌(191食)を基に栄養価表を作成し、飽和脂肪酸量、一価不飽和脂肪酸量、多価不飽和脂肪酸量を算出して献立別n-6/n-3および一食あたりのn-6/n-3を求め、平成7年度(69食)と比較した。
    結果: 1) 一食のn-6/n-3の平均値は、平成7年度の6.4から平成12年度では9.6に増加していた。2) 献立別n-6/n-3は、平成7年度の0_から_45.1から0_から_454.9と値の範囲が広がっていた。3) 主たる食材が全食材重量の50%を超える献立を詳細に検討すると、魚介類や藻類を主材料とする献立は低いn-6/n-3を示し、肉類や穀類を主材料とするものは高いn-6/n-3を示した。4) 平成12年度の9月からアレルギー対応のため大豆油の使用を中止し、米油を揚げ調理に、サフラワー油を炒め調理に使用したため、一食あたりn-6/n-3の平均が一学期の7.3から二学期以降では10.9と上昇した。
  • 古郡 曜子
    セッションID: 2E-p3
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    目 的  近年子どもの食生活への問題への解決として、食育の必要性が言われている。 本研究では、子ども(小学6年生)の料理への関心を持たせることを目的として、「いももち」の再現料理を用い、「作って食べる」体験をおこなった。「いももち」の特徴は次のとおりである。(1)北海道の開拓時において「もちの代用品」であり、歴史的に意味がある。(2)じゃがいもは地元の食材である。(3)食材の種類が少なく、作り方が複雑ではない。
    方 法  対象は、小学6年生5名(女子)2班(2人A班・3人B班)であった。 実施は次の要領でおこなった。(1)「いももち」と「たれ」を使用食材と作り方の説明をせずに食べさせて、同じものを作らせる(食材・調理方法を考えさせる)。(2)よりおいしいものをつくらせる(発展料理を見出す)。分析は料理過程の記録と感想から(1)「食材の選択」と「調理方法」の特徴を見出すことと(2)再現料理・発展料理と関心の関係を探った。
    結 果 (1)使用した食材・調味料は次のとおりであった。「いももち」の再現では、A班はじゃがいも・牛乳・卵黄・塩・でんぷん・サラダ油あった。B班はじゃがいも・さつまいも・卵・小麦粉・かたくり粉・サラダ油であった。「たれ」はしょうゆとみりんだった。(2)調理方法は、いもをゆでてつぶし、その他の材料を混ぜて、形作り、フライパンで焼いた。使用調理器具の主なものは、マッシャー・フライパン・皮むき器であった。塩とさとうの使用量に失敗が見られた。(3)発展料理においては「チーズ入りいももち」、「ひき肉入りマッシュポテト焼き」、「大学いも風」、「クッキー風」を作った。子どもたちの感想からは、「戸惑いながら作った」と「楽しかった」などを得られた。
ポスターセッション
九州支部
  • 吉岡 慶子, 福地 乃理子
    セッションID: P-1
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]福岡県の都市部、農村および漁業地区でどのような種類の魚介類がいかなる調理法で食べられているかを明らかにするために調査を行い、摂取の現状とその調理特性について検討した。
    [方法]福岡県福岡市、久留米市近郊農村および柳川市近郊の各10世帯ずつとした。各世帯における魚介類の調理文化と地域性に関する調査について、平成15年11月から12月に聞き取り法で実施した。
    [結果・考察]魚介類の調理法に関して、魚の使用種類数は1世帯あたり福岡市29.5種類、久留米市近郊17.2種類および柳川市近郊19.2種類であった。各地域間の使用数は福岡市と久留米市近郊間および福岡市と柳川市近郊間では共に5%の有意性がみられた。久留米市近郊および柳川市近郊は、地方都市近郊の農村および漁業地区ではあるが有意性がみられなかった。これらのことから福岡市ではデパート、大手スーパーマーケットから種々の食材を簡単に入手できる便利な地域であるといえる。久留米市近郊は都市近郊農村であり、食材をスーパーマーケットで購入する場合と、農作物を自家栽培する場合とに分けられる。柳川市近郊では有明海に面し、ワラスボ、海茸などの特有の魚介類も入手可能であった。また、魚料理数は1世帯あたり福岡市35.5種類、久留米市近郊27.3種類、柳川市近郊26.3種類の料理数があげられた。3地域における調理法(生物、煮物、揚げ物、焼き物、汁物)の上位5種類の出現度については、地域によって出現率は異なり1%の有意性で認められた。煮物、焼き物については、福岡、久留米の両市と柳川市の間には1%の有意性が認められた。魚介類の地域特有の食べ方として、福岡市では博多五目雑煮、博多押し、久留米市近郊ではかます鮨、柳川市近郊ではうなぎ飯、がん汁などが挙げられた。地域特産の素材を生かした特徴的な料理が一部にみられたことから、地域の食文化に根ざした調理法の伝承の必要性が考えられる。
  • 金子 小千枝, 金縄 嘉代子
    セッションID: P-2
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的 魚の中でさばは青い魚の代表であるが、「さばの生き腐れ」といわれるほど傷みやすい。また、主役にはならないが日常食としては人気の高い魚である。鮮度のよいものになると、高級魚にもまさるおいしさがある。福岡県の漁獲高で一番の魚はさばであり、全国的にも最も漁獲量は多い。このさばが福岡県でどのように食されているか、さばの鮮度・季節・地理的条件によって食され方にどのような特徴があるかを調査した。
    方法 調理文化の地域性と調理科学-魚の調理-の調査に参加し聞き取り調査を行った。時期は2003年11月から2004年5月である。調査地域はかって福岡県の僻地と言われた山村(八女郡)、新鮮な魚が入手可能な地域(福岡市)、山村と都市部の中間地域(筑後地区)の三地域で、調査後特徴ある調理に関して追調査を行い、料理を再現し過程を記録した。
    結果 三地区に共通した食べ方は塩焼き、煮物、味噌煮などであった。星野村は山村であり、交通手段が未発達の時期には魚は塩魚や干物で運搬されていた。塩さばもそのひとつで、昔から塩さばを色々に利用してきた。特に秋祭りには頭・尾をつけたままのゆずの香りがする“さば寿司”が必ず作られた。若狭さば街道で運ばれた塩さばで、関西地区ではよく作られるさば寿司が、形は異なるが福岡県の山村でも作られていることは興味深い。 都市近郊農村地帯である筑後地区ではしめさばの“温めなます”がある。また、かます寿司の代用にさば寿司が作られるようになった。新鮮なさばが手に入り易い福岡市では、寒さばを醤油とごまに漬け込んだ“ごまさば“が刺し身がわりに食され飯にもかける。このようにさばの料理には地域性がみられ、季節とともに行事との関連も深い。
  • 安部 テル子, 篠原 寿子
    セッションID: P-3
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】:大分県における魚介類の日常的な摂取状況と地域の特徴的な食材およびその料理法を知ることを目的とした。
    【方法】:平成16年3月から、漁業中心の大分県中津市今津地区、九州の中央に位置し古くは天領であった日田市、および県庁所在地である大分市で調査を行った。調査対象は各10世帯で、予め調査票を配付し 留め置き自記式調査と聞き取り調査を行った。
    【結果】:今津地区では、日常摂取されている魚類は48種類,えび・かに類4種類,いか・たこ類3種類,その他の魚介類3種類の計58種類であった。いわし,きす,いか,さば,えび,かれい等地物の魚介類が中心である。調理法別では、なま物調理26.6%,煮物調理25.6%, 焼き物調理17.6%,揚げ物調理12.9%の順に多く出現していた。漁港に近く新鮮な魚介類が日常入手できるため、旬の魚介をそのまま調理して食することが多い。特徴ある加工品として、したびらめやきぬ貝(中津の特産品である)の一夜干し(天日干し)があり、その食べ方は軽く焙っておかずや酒肴とする。日田市では、わずか20年前くらいまでは、鮮魚としては川魚が多く食卓に載っていた。旬の時期に甘露煮にして長期間食べていた。今でも甘露煮を冷凍にして便利に利用している。また、以前は無塩といい珍重された、海産の鮮魚も、刺し身が日常的な食べ方となった。日田市独特の盆のご馳走、たらおさ(タラの鰓・内臓の干物)の煮物は他に例を見ない。大分市の関あじ・関さばは、以前も他のあじ・さばとは区別されていたが、ブランド化されることにより、ますます生食が美味な高級食材として、食卓に供されている。
  • 安達 町子, 武藤 慶子, 井手 順子, 野口 和子
    セッションID: P-4
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/09
    会議録・要旨集 フリー
    [ 目的 ] 長崎県の家庭における魚の利用状況を明らかにすることを目的として,都市部,農村部,漁村部の各地域において,どのような種類の魚介類がどのような調理法で食べられているか,また地域に残る伝統的な魚介料理を調査した。
    [ 方法 ] 長崎市(以下都市部),大村市(以下農村部),川棚町(以下漁村部)に居住する20代から70代までの主婦30人を対象に質問紙をもとに聞き取調査を行った。結果は集計後,地域別,年代別,世帯別に使用する魚の種類,入手状況,調理法,使用調味料の比較を行った。
    [ 結果 ] 年間に使用される魚の種類は,都市部30.1種,農村部48.8種,漁村部12.8種と地域による差が見られた。近隣とのつながりが残り,行事食などもよく作られる農村部が最も多く,とれた魚の一部を家庭用として利用する漁村部では魚の種類も少なかった。魚の入手方法は,都市部では大部分の家庭が購入(89.3%)によっているのに対し,漁村部では自給が62.1%と多かった。調理法は都市部,農村部ではなま物,焼き物,煮物,揚げ物の順であったが,漁村部では煮物,なま物が多く,獲りたての魚の持ち味を生かすシンプルな調理法が主であった。使用する調味料はどの地域も醤油が最も多く,次いで塩,砂糖,酒,酢,味噌であった。年代別では50歳未満の人達が多くの種類の魚を利用していた。魚料理の入手状況は年齢が若いほど調理済みの魚を利用する割合が高く,高齢になるほど手作りが多かった。伝統的な魚介料理として,あらかぶの味噌汁,いわしのかけあえ,大村ずし(鯛そぼろ),ふかの湯引き,そぼろずし,えそのかんぼこなどが見られた。
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