日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
選択された号の論文の191件中1~50を表示しています
口頭発表
  • -料理人による男女両性への啓発-
    今井 美樹
    セッションID: 1A-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】日本料理の専門家によって最も早く創刊された料理雑誌として1886(明治19)年12月創刊の『庖丁鹽梅』がある。これまでの2つの報告においては,第1報では『庖丁鹽梅』の調理理論の啓蒙について分析を行い,それらの記事の内容が5つに分類されることを明らかにした。第2報では明治期に出版された2種の料理雑誌『庖丁鹽梅』と『月刊 食道楽』の記事を比較・分析し,明治期の食生活において求められた内容の特徴を明らかにした。ここでは主婦の役割と調理への近代科学の導入について変化がみられた。本報告では,この雑誌の掲載記事のなかから明治中期の専門料理人が行った男女両性への調理教育について明らかにすることを目的とした。
    【方法】『庖丁鹽梅』全37集(1886-1891)の掲載記事のなかから,明治中期の専門料理人の調理およびその教育について記述していると判断された記事をジェンダー視点で精査した。
    【結果】従来の調理教育においては,男性の料理人に対する調理教育と家庭の主婦むけの調理教育の2つが示されてきたが,精査した結果,(1)男性である料理人に対する調理教育,(2)自営的な料理店のおかみに対する職業教育としての調理教育,(3)家庭の主婦の調理教育の3つがあることが明らかになった。『庖丁鹽梅』ではこれら3つの調理教育の実現普及を図るための料理学校設立の提案を行っている。当時の料理人が徒弟制度のほかに,男性と女性の双方を対象に職業を前提とした調理教育を行なっている点は注目に値する。
  • 岡野 節子, 堀田 千津子
    セッションID: 1A-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的]尾鷲市や海山町には古くから「押しずし」が伝承されている。作り方は押し型に酢水をかけ、はらんやみょうがの葉をひき、すし飯をのせ、酢でしめた魚(さんま・まぐろ・あじなど)、卵焼き、にんじん・椎茸・ごぼうの甘煮、えんどうなどの具を彩りよく並べ、すし飯と具をサンドイッチのように交互に重ねて作るので、他のすしと比較すると時間がかかる。そこで、どのように家庭で調理され食されているか、調理の機会、すし飯の上にのせる材料などを尾鷲市と海山町を比較しながら検討を行ったので報告する。
    [方法]調査時期は2003年9月から10月、調査内容は尾鷲市と海山町在住の三重県食生活改善推進連絡協議会会員を無作為に174名(尾鷲市)と海山町(96名)を対象に質問紙法によるアンケートを実施した。また、現地においては聞き取り調査も行った。統計処理はExsel統計Ver,5.0を用いχ2の検定をした。
    [結果]1) 調理の実施の有無は調理するが38.5%と少なかった。2) 調理を実施している年齢は60才代が最も多く、次いで50才代であった。3) 調理頻度は海山町の方が多かった。4) 材料の比較は魚類では両地域ともさんまが多く、椎茸の甘煮、ごぼうの甘煮、えんどうの甘煮の順になった。5) 押し型の上にひく植物の葉は尾鷲市ははらん、海山町はみょうがが多かった。6) 押し型の段数は尾鷲市では2段、3段が主流となり、海山町は3段、4段が主流となった。7) 家庭で調理する郷土料理は尾鷲市で12種類、海山町で9種類あった。この地域では高齢世代により伝承されているが若い世代になると店舗で購入する家庭も見受けられる。
  • 東西文化の食の指標となるもの
    馬場 景子, 中野 典子
    セッションID: 1A-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    〔目的と背景〕正月に食べられるとろろ飯は、餅の形・年取りの魚と同様に日本の東西文化の指標になる可能性を明らかにした。日本の民俗学研究では、在来種である山芋に関しての調査が行われてこなかった。そのことが儀礼食としての山芋調査が行われなかった理由の一つである。先行調査により山芋が儀礼食であることを想定し、山芋の調理法の一つであると考えられるとろろ飯に注目した調査を行ってきた。その結果、正月に食されるとろろ飯は、正月の儀礼食であることを明らかにした。さらに東日本を中心に分布していることも明らかにしてきた。本発表では、この儀礼食の東西分岐の分布集積地が愛知県知多半島であることの可能性を示唆する。
    〔方法〕資料調査、アンケート調査
    〔結果〕調査により、正月のとろろ飯は儀礼食としての役割を果たしていることが明らかになった。さらに東西文化の食の一つとなる可能性が高いとの推論を出すことができた。愛知県の知多半島での調査結果を示し、分布状況から、伝播起点を想定する。
  • ─朝鮮菓子との関係
    橋爪 伸子
    セッションID: 1A-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的] 牛蒡餅は今日和菓子として一般的なものではないが、江戸時代には寛永20年(1643)の『料理物語』を初め諸料理書に散見される。それによれば牛蒡餅は、糯米粉、粳米粉と煮熟した牛蒡を混ぜて作った生地を、揚げた後蜜または煎じ砂糖に浸けるという菓子である。この揚げて蜜に浸けるという特徴的な調理法は、日本古来の菓子には一般的ではなく、異国の菓子にみられることから、牛蒡餅の起源も伝来菓子の可能性がある。しかしながら、その由来についてはこれまで追求されてこなかった。そこで本報では、牛蒡餅の起源や実態について検討することを目的とする。
    [方法] 牛蒡餅の記述がみられる料理書、諸記録等による文献調査に加え、唯一牛蒡餅が現存する長崎県平戸で、製造業者へ聞き取り調査を行った。
    [結果] 牛蒡餅の起源と考えられる菓子は二つあり、いずれも江戸時代以前に伝来した異国の菓子で、揚げて蜜に浸けるものである。一つは南蛮菓子ひりょうずの根源とされる「フィリョス」、もう一つは朝鮮菓子「薬果」である。後者は日本では「くわすり」等と記され、安土桃山から江戸時代初頭にかけて饗応や茶会等で用いられた。
     牛蒡餅の製法が収録されている主な料理書は、上記『料理物語』のほか、元禄2年(1689)の『合類日用料理指南抄』等比較的初期のもので、その後享保3年(1718)以降に刊行された『御前菓子秘伝抄』を初めとする菓子製法書にはみられないことより、この頃には次第に衰退の途にあったと考えられる。一方、元禄16年(1703)の『筑前国続風土記』では、牛蒡餅が筑前博多の土産にあげられていることから、牛蒡餅の消長には地域差があったことが考えられる。
  • 福永 淑子, 前田 文子, 黒川 理加, 小澤 陽子, 永嶋 久美子
    セッションID: 1A-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    《目的》凍みもちは東北地方の冬の寒さを利用して作られる伝統食品で、福島県鮫川村では現在も日常の食材として利用されている。もち米とうるち米を混ぜて、山ゴボッパ(山ごぼうの若葉を乾燥したもの)を加えて搗きあげた餅を、冷水に浸漬した後に、軒下に吊るし、低温にさらし凍結させ、約2ヶ月間かけて完全に乾燥させる。この伝統食品は先人の知恵の蓄積であり、合理的な技術や工夫が凝らされていると考えられるが、調理的な調査が行われたことはない。そこで、凍みもちを現代の食生活にも生かすことを目標として、作り方とその利用方法を調理学的観点から考察した。《方法》試料は鮫川村で調製された凍みもちを用い、対照として市販の密封パックの切り餅を使用した。凍みもちは、水で戻した後に加熱して、官能検査およびテクスチャアナライザーにより硬さ、粘り、付着性の物性測定を行った。物性測定条件は、直径20mm円柱形のプランジャーを用い。プランジャースピードを5mm/s、圧縮率を70%とした。《結果》物性測定の結果、凍みもちは切り餅に比べ、ゆでた際にはやや柔らかく、粘りはかなり強く、付着性は弱いことが明らかになった。これら物性にはうるち米が混合されていることと、山ゴボッパが加えられていることが影響していると思われる。官能検査では、ゆでた凍みもちと切り餅を二点識別嗜好法により比較したところ、「餅の食べやすさ」「餅の柔らかさ」「総合的な好み」において、有意差をもって凍みもちのほうが優位であった。喉につかえ難く、食物繊維も含む凍みもちを介護食として利用できる可能性は大きいと思われる。
  • - 使用した魚介類の種類・調理法の世代間比較 -
    田原 美和, 東盛 キヨ子, 金城 須美子
    セッションID: 1A-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】前報では沖縄県那覇市在住の主婦を対象に魚介類の食習について調査し、食材の種類や調理法の地域特性について報告した。今回はその調査資料を世代別に分析し、使用する魚介類の種類や調理法を比較検討した。
    【方法】先の調査資料(「調理文化の地域性と調理科学-魚介類調理-」)を基に、対象の主婦50人(20から80代)を50代以下と60代以上の2グループに分け、魚介類の種類や調理法、付け合せなどの食材の差異について分析した。また、市販されている魚介類を用いた惣菜の種類・調理形態、購入状況について実態調査を行った。
    【結果】使用した魚介類は、60代以上の年齢層ではアオブダイ、クルキンマチ、アオリイカ、タカサゴ等の近海魚が多く、50代以下の年齢層ではマグロ、サバ、エビ、サンマ等の移入・輸入品の冷凍魚を多く用いる傾向がみられた。 調理法は、いずれの年齢層も刺身、空揚げや天ぷらなどの揚げ物が多く、年代による差異はないが、沖縄独特のイカ墨汁やマース煮(塩煮)は60代以上の年齢層に多く、20から30代の若い世代では少ない。市場調査の結果は、食材の購入には高齢層は値段が高くても近海魚や天然物を好み、20から30代の若年層では値段の安さを優先する傾向がみられた。市販されている魚介類惣菜の調理形態は、揚げ物、煮魚類が多く、塩焼き等の焼き物は少ない。両世代に共通するものとして、ムニエル風のバター焼きがみられた。
  • 河野 一世, 畑江 敬子
    セッションID: 1A-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    沖縄におけるカツオの食べ方に関する調査研究           ○河野一世1) 畑江敬子2)      1)?味の素食の文化センター  2)和洋女子大学【目的】沖縄はカツオの北回遊域に位置し、かつお節づくりをはじめ、カツオ食の歴史は長い。日本の中では、地理的および歴史的にみて、独特の食文化を培ってきた。そこで、カツオの食べ方の現地調査と歴史資料の調査から、その特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】調査対象は、沖縄本島および池間島の漁業組合、鰹節工場、料理研究家、一般家庭などで、聞き取り調査およびアンケートを行った。同時に、沖縄に関する歴史資料・民俗資料など7点、料理書6点の調査を実施した。【結果】_丸1_カツオが水揚げされる池間島では生食の他、煮熟した後軽く焙乾したなまり節が頻度多く食されていた。_丸2_だしとしての利用はカビづけをしない荒節を長時間煮出す方法が主流であった。_丸3_歴史的に中国と日本両国の影響を受けており、かつお節と豚の混合だしが使用されていた。_丸4_沖縄の特徴的な食べ方として、体調の悪いときに鰹湯(カチューユ)を飲む習慣は現在まで伝承されてきた。_丸5_中国との交易品として大量のかつお節が中国に渡っていることは明らかであるが、その受容実態を明らかにすることはできなかった
  • 長野 隆男
    セッションID: 1B-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    〔目的〕共焦点レーザー走査顕微鏡(以下,CLSM)には,厚みがある試料でもボケることなく観察できる特徴がある。そこで,CLSMを用いて,うどんの構造とデンプン粒の形状変化について観察をおこない,官能検査と力学物性測定結果との関係を検討した。
    〔方法〕小麦粉は,ホクシン,ASW,農林61号のもの3種類を使用して,うどん試料を作製した。官能検査は農林水産省食品総合研究所による小麦のめん適正評価法に基づいておこなった。力学物性測定は,5kgロードセルと測定ジグCooked Pasta Quality/Firmness Rig(A/LKB-F)を装着したTA-XT2iを用い,AACC Method 16-50に基づいておこなった。うどんとデンプン粒の観察はローダミンBで蛍光染色し,蛍光レーザー走査共焦点顕微鏡システム(デジタルエクリプスC1,ニコン)を使用して, 543nm(HeNeレーザー)励起で蛍光画像を取得した。
    〔結果〕CLSMを使用してうどん表面の観察をおこなったところ,うどん表面の網目構造が細かく万遍なく広がった構造をしているほど,官能検査で食感の評価が高くなること,力学物性測定で破断歪が高くなることが対応すると考えられた。次に,デンプン粒の加熱による変化をCLSMで観察したところ,デンプン粒の膨潤開始温度とデンプン粒の平均粒径変化の2つについて知見が得られた。さらに,デンプン粒の平均粒径が最大となるときの大きさを測定することで,デンプン粒が大きくなる程度を数値化できた。以上のことから,CLSMは,うどんの構造とデンプン粒の形状変化の観察に用いることでき,うどんの粘弾性特性の解明に有用な手法であると考えられた。
  • 岡田 久美子, 市川 朝子, 下村 道子
    セッションID: 1B-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】うどんの食感改良、茹で又は茹で戻し時間の短縮など様々な目的で、製麺業界では、製麺時に澱粉や活性グルテンを練り込む方法が取られている。しかし、使用する澱粉の種類や添加量により麺に与える影響が異なる。そこで、澱粉の種類や添加量、さらに活性グルテンを添加した茹でうどんの物性への影響を明らかにすることを目的とした。
    【方法】中力粉(金すずらん 日清製粉)を用い、粉重量の10、20、30%をタピオカ澱粉、コーンスターチ、サゴ澱粉で代替し、活性グルテン添加の場合は3、6%とした。粉に食塩水(食塩3%+水45%)を加え、製パン機で5分間混捏後1時間ねかし、製麺機で圧延、切断後8分間茹でた麺を試料とした。物性測定では破断強度解析(山電 レオメーターRE-3305)、引張試験(不動 レオメーターNRM-2005J)を行った。また茹で加熱中の麺の重量及び形状変化について調べた。併せて市販茹で麺の保存条件を考慮し2日間冷蔵保存した茹で麺について検討した。
    【結果】麺の茹で加熱中の重量変化は加えた澱粉の種類による影響は少なかったが、澱粉添加量が増すと重量変化率が高くなる傾向であった。形状は活性グルテン添加により厚さの増長率が高くなった。茹で麺の破断強度解析における荷重値はタピオカ澱粉添加麺で対照麺より低くなり、コーンスターチ添加麺は高くなる傾向であった。また活性グルテン添加により最大荷重値は高くなったが、添加量による差はほとんどなかった。引張試験における引っ張り強度の値は澱粉添加量が増すと低くなり、活性グルテン添加により値が高くなる傾向であった。茹で麺を2日間冷蔵保存すると保存前より麺の表面が硬くなり、引っ張り強度の値は高くなった。
  • 大藪 佳苗, 三宅 義明, 平光 正典, 木村 友子
    セッションID: 1B-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】前報では、レモンフラボノイドを食パンへ添加し、製パン工程におけるフラボノイドの変化や、食パンの物性や官能評価への影響を調べた。レモンフラボノイドを添加することにより、無添加品に比べ、食パンの比容積が増大することを報告した。本研究ではレモンフラボノイドの添加による食パンの膨化性の向上の要因を探求する目的で、材料と生地のpH、生地の物性などに対するレモンフラボノイドの影響を検討した。
    【方法】レモンフラボノイドは、レモン果皮の水抽出液を逆相樹脂処理して調製し、エリオシトリンを30%含有する粉末を得た。強力粉、蒸留水、スキムミルク、砂糖、塩、ラードを基本材料とし、レモンフラボノイドを強力粉に0%、0.25%、0.50%、0.75%添加し、パン用ミキサーで混捏して各パン生地を作製した。一次発酵前後の各パン生地を蒸留水で溶解させ、pHを測定した。また、ファリノグラフによりパン生地をつくり、エクステンソグラフにて45分、90分、135分後(30℃)のパン生地の伸長抵抗、伸長度を測定した。
    【結果】無添加、および、レモンフラボノイド添加のパン生地はともに一次発酵後にpHの低下が見られた。レモンフラボノイド添加のパン生地は、無添加品と比べて一次発酵前後ともにpHは低値を示し、pHを低下させる作用が見られた。また、エクステンソグラムでは、レモンフラボノイド添加のパン生地は、無添加品に比べ伸長度は小さく、伸長抵抗が大きくなる傾向を示した。レモンフラボノイド添加食パンでは比容積が大きく、テクスチャー値は添加量が増加するにつれて硬さが有意に減少し、凝集性は有意に増加した。製パン性において、レモンフラボノイド添加が有用であることが示唆された。
  • 堀 光代, 長野 宏子
    セッションID: 1B-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】小麦アレルギーは症状が改善されにくい傾向があり深刻な社会問題となっている。小麦粉発酵食品中の微生物が産生する酵素作用の探索を続ける中でアレルゲンとなるたんぱく質を低アレルゲン化することを見出してきた。この作用に着目し、食由来酵素を添加したパン作製を試み、その製パン性とたんぱく質の挙動を検討した。
    【方法】(1)使用する小麦粉は、外国産小麦粉と岐阜県内小麦粉の配合割合を比較し、パン生地はホームベーカリーにて一次発酵後、分割、二次発酵を経て180℃15分焼成した。(2)製法は、ストレート法と中種法を用い製パン性を比較した。パンの体積は菜種法、パンおよび小麦粉の色は色差計にて測定した。(3)パンは凍結乾燥した試料をたんぱく質抽出後、調整しSDS電気泳動および小麦アレルギー患者血清による抗原抗体反応を行った。
    【結果】(1)外国産小麦粉:県内産小麦粉は2:1の配合割合とした。(2)製法による比較では、食由来酵素添加の有無にかかわらず、ストレート法に比較し中種法での作製パンが比容積の結果が良好であった。(3)SDS電気泳動では、食由来酵素添加パンにたんぱく質の分解が見られた。抗原抗体反応では、新たな反応を起こしたバンドや消失したバンドが見られた。
  • 菊地 淑子, 遠山 良
    セッションID: 1B-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】岩手県は他の小麦産地同様、小麦の収穫時期が梅雨とかさなるため、しばしば穂発芽等の被害を受けてきた。平成17年も小麦の収穫時期に降雨が続き、パン用小麦ゆきちからも被害を受けた。かろうじて被害の少なかった収穫物についても、アミログラムの最高粘度(MV)が低アミロの目安とされる300BU以下となったものが多かった。一方、製パンにおいてはMVが100BU程度あればパンの比容積はほとんど低下しないという報告がされているが1)、ゆきちからについてはこのような検討はなされていない。雨害にあった小麦も有効に利用していくため、低アミロとなったゆきちからの製パン性について検討を行った。
    【方法】試料は平成17年に岩手県内で栽培、工場で製粉されたゆきちからを用いた。小麦粉の品質としてタンパク質含量、灰分、アミログラム最高粘度を測定した。製パン試験は小規模ベーカリーを想定し、縦型ミキサーの他、モルダー、オーブンも業務用の機械を使用し、食パンを製造した。焼成したパンについて、ワンローフの体積、食味官能評価、テンシプレッサー(タケトモ電機 My Boy)による硬さの測定を行い比較検討した。
    【結果】雨害を受けたゆきちから粉のMVは約190BUで、低アミロの目安とされる300BUを下回るものであった。これを用いて製造したワンローフは、対照とした健全なゆきちから粉より、タンパク質含量が1%低いにもかかわらず、体積がほほ等しく、食パンのクラムの硬さもほぼ同じとなった。 1)日本食品科学工学会第45回大会講演集p.198
  • 加登 博文
    セッションID: 1B-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    シュークリームの皮(パフ)は生地を一度糊化させ、焼成して得られる。しかし、パフを大きく膨らませ、中を空洞化にするのは難しく、その調製には熟練を要する。これまで、パフの膨化要因として、生地の均一分散、含気量など報告されてきたが、生地中のデンプン糊化との関連は不十分であった。
    【目的】本研究では、糖が一般にデンプン糊化に影響を及ぼすことから、シュー生地の物性及び膨化に及ぼす各種糖添加の影響について比較検討した。
    【方法】本実験に供した糖は二糖類以上で、マルトース,トレハオース,ラクトース,MC55(マルトース混合品)を生地中に対粉1から4%添加した。シュー生地の物性テストでは、卵の影響を除いた生地(未加熱)のDSC加熱による吸熱量と生地粘度を測定し、生地中のデンプン糊化の状態について検鏡観察した。また、膨化テストでは、実際に卵を使用したシュー生地(大玉)をオーブンで焼成して、パフの大きさとボリュームを測定した。
    【結果】1.糖の中でマルトース添加では生地吸熱量と生地粘度が最も低く、検鏡により生地中のデンプンの膨潤糊化を顕著に抑制していることが判明した。
    2.マルトース,MC55添加によりパフの大きさ(特に縦伸び)とボリュームが有意に大きくなる効果を示した。
    以上の結果より、糖添加によるシュー生地の糊化抑制は、マルトース>MC55≫トレハオース≒ラクトースの順に大きく、パフの膨化増大に影響を及ぼすことが判明した。
  • マルチトール、フラクトオリゴ糖を配合したビスケットの性状と嗜好性
    大喜多 祥子, 花崎 憲子, 倉賀野 妙子, 和田 淑子
    セッションID: 1B-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    目的:血糖値の急激な上昇を抑えるGIの低い食は、糖尿病のリスクを減少させるなどの報告もあり、予防面でも注目されている。本研究では、インスリン分泌非刺激性で、かつエネルギーの低い機能性糖質甘味料マルチトールおよびフラクトオリゴを配合したビスケットの性状・嗜好性を検討した。両甘味料は砂糖同様にでんぷんの膨潤糊化を抑制することは既報で明らかにしており、ここではビスケットの食感発現に関与する生地グルテンへの影響を検討した上で、嗜好性に優れたビスケットにするための両者の適切な配合比を検討した。
    実験方法:両甘味料のグルテンへの影響をみるため、ファリノグラフ試験(小麦粉300gに45%糖質水溶液210gを添加した生地)を行った。ビスケットの材料配合は薄力粉100、B.P2、機能性甘味料50、ショートニング32、水16、卵黄3とし、マルチトール:フラクトオリゴ糖の配合比は、3:0、2:1、1:2、0:3の4水準とした。生地は厚さ5mm、直径32mmに成形後焼成した。生地については定速圧縮試験、製品についてはスプレッド、焼き色測定、定速圧縮破断試験、官能検査を行なった。官能検査は女子大生48名をパネラーとし、評価項目は焼き色、硬さ、砕けやすさ、甘さ、甘味の好ましさとし、順位法で行った。
    結果:1)ファリノグラフではフラクトオリゴ糖はマルチトールに比べ、短いミキシング時間で伸展性に優れた生地になる傾向がみられた。2)フラクトオリゴ糖が多いほど、生地の最大圧縮エネルギーが低値、製品の破断エネルギーが低値であったことから、フラクトオリゴ糖は生地のグルテンの性質を軟らかくすると考えられた。3)フラクトオリゴ糖は製品のスプレッドを増し、焦げ色に寄与した。4)官能検査ではマルチトールが多いほど砕けにくく甘く、甘味の好ましさと総合評価においては両甘味料の配合比2:1が有意に好まれた。
  • 佐藤 之紀, 和田 淑子, 肥後 温子
    セッションID: 1B-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】市販菓子のテクスチャーは, 菓子に収着する水分により影響される。そこで, テクスチャーと関係の深い多重層吸着水を中心に, 各種市販菓子の水分収着曲線を解析した。
    【方法】菓子類14種類を粉砕後, 塩類の飽和水溶液で相対湿度7.6-97%にそれぞれ調湿保存した。その後, 135-140℃で恒量になるまで乾燥させて菓子の水分含量を求め, GAB式およびSmith式を用いて, それぞれの菓子の多重層収着水量, 単分子層収着水量および各種水分収着パラメータを求めた。
    【結果】吸着過程での菓子の多重層吸着水量は, 9-25g/100g-乾燥物であり, それぞれの菓子の単分子層吸着水量(4-11g/100g-乾燥物)の約2倍であった。 吸着過程で多重層吸着水量の多い菓子は, 高い単分子層吸着水量を示す傾向を示した(相関係数0.97)。また, 多重層収着の状態を示すSmith式の各種収着パラメータも, 多重層や単分子層吸着水量とそれぞれ0.8以上の高い相関係数を示した。さらに, 菓子類を小麦粉製品(4種類), その他のでんぷん製品(6), 野菜・果物製品(4)に分けて, 多重層吸着水量と単分子層吸着水量をそれぞれ比較したところ, 分散分析法による差は認められなかったものの, 多重層吸着水量は小麦粉製品(10.4±1.1g/100g-乾燥物), その他のでんぷん製品(12.1±2.5), 野菜・果物製品(16.7±5.6)の順であり, 単分子層吸着水量の多い順(小麦, 4.6±0.4; でんぷん, 5.8±1.4; 野菜・果物, 7.9±3.2)と同じであった。脱着過程では吸着過程よりもすべての測定値が高かったが, 類似の相関を示し, 多重層吸着水量が低湿度下の水分収着ですでに決定していると思われた。
  • 真部 真里子, 久賀 奈央子, 牧野 麻美
    セッションID: 1C-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】腸管上皮細胞は、生体に必要な栄養素を取り込むだけでなく、異物の侵入を排除する物理的バリアである。タイトジャンクションと呼ばれる密着結合により互いに接着して、物質を選択的に輸送している。しかし、酸化ストレスに晒されると、種々の細胞構成成分が損傷し異物の侵入を許すことから、身体活動に悪影響を及ぼすと考えられる。そこで、本研究では、野菜による腸管上皮細胞における酸化ストレス防御能について検討した。
    【方法】腸管上皮細胞モデルであるヒト結腸癌由来Caco-2細胞に、過酸化水素を添加し酸化ストレス状態とした。酸化ストレスによる細胞損傷の指標として、経時的な経上皮膜電気抵抗値測定によるタイトジャンクションの密着度、LDH活性測定による細胞膜の健全性ならびに細胞内グルタチオン量を用いた。
    【結果】生のピーマン、ブロッコリー、アスパラガスの水抽出液を添加すると、酸化ストレスによる細胞損傷が抑制された。アスパラガスでは、茹で加熱、レンジ加熱を行ってもその効果は維持された。一方、カボチャ添加では、生では酸化ストレス防御能は認められなかったが、茹で加熱、レンジ加熱を施すと酸化ストレスによるタイトジャンクションの弛緩や細胞膜の損傷を抑制できた。また、ゴボウ添加では、生、茹で加熱品ともに酸化ストレスによる細胞損傷を抑制できなかったが、レンジ加熱では、細胞内グルタチオン量以外の測定項目においてやや酸化ストレス抑制傾向が認められた。このように、腸管での酸化ストレス防御能を期待して野菜を摂取する場合、調理方法を考慮する必要があると考えられる。また酸化ストレス防御能は、一指標ではなくいくつかの指標を用いて検討する必要性が示唆された。
  • 柳原 理奈, 佐藤 真実, 谷 洋子
    セッションID: 1C-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】 福井県の郷土食に挙げられる打ち豆は、大豆を石臼の上におき木槌でつぶしたものである。大豆としての栄養価と潰したことにより調理の簡便性を合わせもつ貴重な食材である。本研究では打ち豆の調理特性を明らかにするとともに、県内の一般的な料理法である打ち豆汁の浸漬汁(溶出液)が、味噌汁や豆乳などと同様に抗酸化機能がみられるかを検討した。
    【方法】 打ち豆は高橋製粉所製(福井市)の潰し後1ヶ月経たないものを使用した。打ち豆の調理特性は、調味料の違いによる浸水、加熱時の豆の吸水率と硬さ(レオテック社製NRM-2002J)の変化を測定し、浸漬汁の官能検査を行った。また打ち豆、浸漬汁は抗酸化機能を評価するために総ポリフェノール量(Folin-Denis法)とDPPH分光測定を行った。
    【結果】 大豆と比較して、打ち豆の吸水率は58.3%と高く、また平衡状態に達するまでの時間が約2時間と早い。官能検査では、酢を除く全ての調味料において、加熱後15分経過したものが甘味、うま味があり、不快臭がなく好まれた。浸水と加熱時間が長くなると、総ポリフェノール量と抗酸化能は豆で減少するが、浸漬汁で増加する。加熱5分までの変化は大きいが、30分までの変化は小さく、30分でほぼ浸水、加熱時間の差はみられなくなった。また味噌汁(具なし)と浸漬汁を比較するとほぼ同程度の抗酸化能を示していた。郷土食である打ち豆汁の調理法が健康的にも好ましいことが示唆された。
  • 伊藤 直子, 山崎 貴子, 岩森 大, 堀田 康雄, 村山 篤子
    セッションID: 1C-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    近年様々な種類や形態のカット野菜が販売されており、業務用のみならず、一般家庭でも若い世代と高年齢層に特に需要が急増している。カット野菜は下処理の手間が要らず、台所からの廃棄物が出ない、さらに業務用においては作業がマニュアル化しやすい、下処理時間を有効活用できるなど多くの利点がある。しかし、カット野菜は大腸菌等の汚染を防ぐため、一般にカット後に次亜塩素酸等により殺菌され、洗浄される。そのため、消毒液の残存や、栄養素の減少、特に水溶性ミネラル、ビタミン等の流出等がおこりやすく、ホール野菜に比べ安全性や栄養面で問題がある。一方、これまでの研究より低温でのスチーミングは生に近い食感を保ち、大腸菌が殺菌されるという結果が得られている。そこで、野菜を低温スチーミングすることにより、安全で栄養価を保ったまま日持ちを向上させることができないかと考えた。
    (材料及び方法)炒め野菜の材料として販売されることの多い、キャベツ、モヤシを用いた。キャベツは外葉及び芯を除き、水道水で洗浄し、全体を幅8-10mm程度に切断した。モヤシは水道水で洗浄した。低温スチーミングは50℃、55℃、60℃、70℃で一定時間行い、室温まで下がった後、ポリエチレン袋に小分けし、室温及び冷蔵庫に保存し、変化の状態を観察した。また、ビタミンや、汚染菌数の変化等についても調べた。
    (結果及び考察)50℃、55℃加熱のものは見かけ上生とほぼ同等であったが、60℃以上で加熱したものは全体が萎凋していた。生では室温保存1日後のキャベツの切り口と、モヤシ全体で褐変、腐敗が始まっていたが、55℃加熱のものは1日後も生に近い状態を維持していた。冷蔵庫保存の場合は、生では3日後で褐変が始まったが、55℃では5日後でも生鮮に近い状態を維持していた。このことより、55℃でのスチーミングがキャベツ及びモヤシの品質保持期間を向上させると考えられる。
  • 吉田 真美, 内田 優, 吉田 佑美
    セッションID: 1C-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的]ショウガはプロテアーゼ活性を有するため肉への軟化作用があるとされ、また6-ジンゲロールなどの抗酸化物質を多種類有することにより抗酸化作用をもつことが報告されるなど、その機能性が評価されている食品である。しかし、その簡便性ゆえに一般に普及している市販のチューブ入りショウガ、瓶入りショウガや粉末ショウガなどのショウガ関連商品についての報告はほとんどない。そこで、これらの商品の抗酸化性とプロテアーゼ活性ついて測定し、生ショウガと比較した。
    [方法]生ショウガはおろして使用した。それぞれの商品の水分を測定して、水分量を一定に調製した後、豚ひき肉に対する抗酸化性をTBA法で測定した。
     また、試料を遠心分離して上清を得て、Sephadex G25を用いてゲル濾過クロマトグラフィーを行った。各溶出各分の280nmにおける吸光度を分光光度計で測定、たんぱく量をLowry法で測定、プロテアーゼ活性をカゼインを基質をして測定した。
    [結果]チューブ入りショウガ、瓶入りショウガは抗酸化性を有したが、生ショウガに比べてその機能はごく弱かった。粉末ショウガは、生ショウガの約半分の抗酸化性を示した。
     プロテアーゼ活性については、チューブ入りショウガ、瓶入りショウガにはたんぱく質自体が存在せず、活性は全く無かった。粉末ショウガには若干の活性が認められた。これらの結果から、粉末ショウガにはある程度の機能が認められたが生ショウガには劣り、生ショウガの機能性が最も高いことが確認された。
  • 三宅 紀子, 酒井 清子, 五十嵐 歩, 倉田 忠男
    セッションID: 1C-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的] エダマメは夏の食材のひとつとして親しまれており、特に新潟県は全国屈指のエダマメ作付面積を誇り、各地で様々な品種が栽培されている。エダマメの茹で加熱過程において呈味成分や栄養成分の溶出や分解の可能性が考えられるため、ごく短時間の加熱が望ましいといわれているが、その裏づけとなる科学的なデータは示されていない。本研究ではエダマメのおいしさに関与する呈味成分として糖および遊離アミノ酸、水溶性の栄養成分としてビタミンCをとりあげ、エダマメ中のそれぞれの含量に対する加熱時間の影響について調べることを目的とした。
    [方法] 試料は、新潟県内で入手した市販エダマメ(肴豆)を用いた。試料は購入後速やかに10倍量の沸騰水中で3から10分間加熱し、直ちに莢から取り出して氷上で急冷した。糖、遊離アミノ酸、ビタミンCの分析はそれぞれ蒸発光散乱検出法、ポストカラム誘導体化蛍光検出法、電気化学的検出法を用いたHPLC法により行った。
    [結果] 呈味成分のうち糖類についてはエダマメに最も多く含まれるスクロースをはじめとして3から10分間の茹で時間において有意な減少は認められなかった。また遊離アミノ酸についてはグルタミン酸、アスパラギンなどは3から10分間加熱において有意な低下は見られなかった。総遊離アミノ酸およびアラニンは7分間までの茹で時間ではほとんど変化しなかったが、10分間ではやや減少が認められた。総ビタミンCの残存率は3から7分間加熱で約90%以上であったが、10分間加熱では約85%とやや減少が認められた。以上の結果から7分くらいまでの茹で時間であればエダマメの呈味成分およびビタミンCは保持されていることが明らかになった。
  • 高橋 智子, 川野 亜紀, 大越 ひろ
    セッションID: 1C-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的]高齢者は根菜類の和風煮物等を好む傾向にある。しかし、根菜類は繊維が多いために咀嚼機能が低下した高齢者には食べにくい食材となる。そこで、本研究では、高齢者には好まれる一方、咀嚼しにくい根菜であるごぼうについて、咀嚼しやすく、食べやすくする調理法を検討した。
    [方法] 青森産のごぼうを試料とし皮を除去後、部位、太さを考慮して、同体積になるよう長さ1.5cmの円柱状に切断した円柱切り、および長さ3cmの円柱を斜めに1/2に切断した斜め切りにした。同体積で形状の異なる2種類のごぼうを、同一レトルトパウチ袋中に同量の水とともに封入し、121℃15分および45分間の加圧加熱を行った。これらの試料について、テクスチャー特性、破断特性の測定、食べやすさの官能評価、および下顎の咀嚼運動について検討した。
    [結果]テクスチャー特性および破断特性の結果から、加熱時間が長い試料ほど軟らかくなった。また、ごぼうの繊維に対するプランジャーの貫入方向により、得られる硬さは異なることが示された。すなわち、繊維方向に対し垂直にプランジャーを貫入させた場合、繊維に対し斜め方向から貫入させた場合よりも、硬く、また繊維を断ち切る際に出現すると考えられる変曲点も多いことが示された。下顎の咀嚼運動測定結果より、臼歯により繊維方向に垂直に咀嚼するよりも、斜め方向に咀嚼する方が最大閉口速度は速くなる傾向を示した。また、咀嚼する際にかたいと評価された試料は最大閉口速度も遅いことが示され、咀嚼しやすいごぼうの調理には繊維に対する切断方向が重要であることが示唆された。
  • 石田 裕, 入田 菜穂子, 鈴野 弘子
    セッションID: 1C-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的]セルリーはオランダミツバとも呼ばれセリ科の植物である。日本には1600年頃持ち込まれといわれているが独特の香りを有するため我が国ではあまり普及しなかった。近年、食の欧米化により、かなり一般的になったが、葉の部分は廃棄される傾向である。その結果、成分表では廃棄部が35%と高い。また市販されている形態をみても、一本ずつ僅かに葉を残した状態のものが多く、実際の株と比較すると廃棄率はさらに高くなると考えられる。そこで本研究では、その廃棄部を含め栄養成分がどのように分布しているのかを明らかにし有効利用の可能性について検討することを目的とした。 
    [方法]品種は一般的に流通されている交雑種コーネル619を用いた。株ごと採取し、まず葉茎の中心部と中間部、外縁部のそれぞれに分け、さらに節ごとに葉部、茎上部、茎下部に分け、9区分を試料とした。成分分析は5訂日本食品標準成分表の試験法に従った。
    [結果]一般成分、ミネラル、ビタミンについては一般に食用とされる茎下部、茎上部はほぼ同様の含有量を示し、成分表の数値とも近似した値であった。しかし葉部は含有量が大きく異なり一般成分では水分が少ない分、たんぱく質と炭水化物、灰分含量が2_から_3倍高かった。またミネラル成分も同様であった。ビタミンについてはカロテンが葉部に約600μg/100gと20倍以上の含有がみられ、ビタミンCは50mg/100g前後、ビタミンEは2mg/100g前後と5倍以上の差がみられたのが特徴的であった。また中心部と中間部、外縁部の比較では若干の差はみられるものの、2倍以上の差がみられる項目はほとんどなかった。
  • 小河 拓也, 藤澤 満彦, 永井 耕介
    セッションID: 1C-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的] 近年、農業をとりまく環境への影響が大きな問題となり、環境創造型農業が全国各地で推進されるようになってきている。有機農業は本来環境に配慮した農法であるが、栽培方法が確立されたとは言い難くその品質においては不明な点が多い。そこで、有機栽培されたホウレンソウの品質を調査した。
    [方法] 県下の有機栽培認定2ほ場においてハウス栽培ホウレンソウを5月から11月まで同一ほ場で年5作(収穫日:1作目5/20、2作目6/24、3作目8/10、4作目9/8 5作目11/30)慣行法で栽培し、各作期における収穫適期に出荷基準内のものを収穫した。ホウレンソウは午前中に収穫し、収穫当日に分析を行った。分析項目は収量、外観、水分、糖(果糖、ブドウ糖およびショ糖)、硝酸態窒素、ビタミンCを調査した。 
    [結果] 水分は90%程度で作期による差はみられなかった。糖は果糖およびブドウ糖の含有率が高くショ糖は低かった。1作目、5作目の果糖、ブドウ糖含有率は高く、3,4作目の果糖、ブドウ糖糖含有率は低かった。4作目ではショ糖はほとんど確認されなかった。硝酸態窒素は1作目が2mg/100g以下で最も低かった。2作目以降含有率が上昇し、4作目で最も高くなったが、5作目では減少した。ビタミンCは1作目が50mg/100g以上で最も高く2、3作目は20mg/100g以下で最も低く、4、5作目で増加し、栽培時期によって成分に大きな差があることが明らかになった。
  • 笠原 賀代子
    セッションID: 1D-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】蒸し煮マイワシの主要揮発性成分の一つとして同定されたプロパナールについて、その生成に及ぼす個体差および鮮度低下の影響ならびにn-3系脂肪酸の加熱揮発性成分との関連性を追求することを目的とした。
    【方法】水分含量および漁獲時期の異なるマイワシから調製した蒸し煮揮発性成分のヘッドスペース・ベーパー(H.S.V.)をGC-MS分析し、プロパナールのピーク面積を比較した。また、冷蔵保存によって鮮度を低下させ、脂質酸化を進行させたマイワシについても同様にH.S.V.を調製してGC-MS分析した。一方、n-3系脂肪酸であるリノレン酸の100℃加熱時の揮発性成分をn-6系脂肪酸のリノール酸と比較してプロパナールの生成を追求すると共に、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)添加の影響を見た。
    【結果】水分含量の異なるもの、即ち脂質含量の異なるものでは、プロパナールの面積は脂質含量の高いものの方が大きく、プロパナールの生成は脂質含量と関連していることが明らかとなった。また、同一水分含量で、漁獲時期の異なるものにおいてもプロパナールは大きく異なり、プロパナールの生成に脂肪酸組成も影響していることが示唆された。次に、冷蔵保存によって脂質酸化を進行させた後に加熱したものにおいてもプロパナールの増加が認められた。一方、加熱したn-3系脂肪酸からプロパナールが主要揮発性成分の一つとして同定され、これはBHTの添加によって生成が抑制されることも確認された。以上のことから、蒸し煮マイワシ揮発性成分中のプロパナールはn-3系脂肪酸の加熱酸化によって生成したものと判断された。
  • 松本 祥子, 鈴木 美沙子, 黒澤 智子, 塚本 研一
    セッションID: 1D-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    「目的」 最近、魚脂中に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸は食品機能性からも摂取が奨められているが酸化されやすい特徴もあることから、今回はハタハタと対照の青みの魚(ゴマサバ)の魚脂を用いて経時的に酸化の程度や脂肪酸組成の変化について調べ、酸化要因を解明をすることを目的として研究したので報告する。
    「試料及び方法」試料はハタハタを用い、対照としてゴマサバを用いた。脂質抽出をクロロホルム:メタノール(2:1 v/v)で行い、フォルチ法で洗浄し、減圧濃縮後、脂質を抽出した。その試料を37℃の恒温槽で保存をした。その保存中の魚脂の経時的変化、イソオクタン法で過酸化物価を測定し、更に、試料をケン化後メチルエステル化し、ガスクロマトグラフィー(GLC)で脂肪酸組成を分析した。
    「研究結果」1)ハタハタ脂質含有量では兵庫県産は秋田県産に比べて1.4-2.7倍多く,秋田県産の雄は雌の2倍多かった。2)37℃5週間保存中の脂質酸化の程度と過酸化物価の経時的変化ではゴマサバの脂質酸化は著しかったがハタハタ脂質はほとんど酸化されず安定していた。3)脂肪酸組成の経時的変化ではハタハタ脂質の多価不飽和脂肪酸は5週間保存した後でも4割維持したがゴマサバの脂質は3週間後に約1/5、4週間後に約1/12に減少した。本研究から魚肉脂質の酸化は魚種によって違いがあることが明らかになった。特に、ハタハタ脂質の酸化安定性が著しく高いことから特産のハタハタを食することによって秋田県の脳血管疾患などの改善につながる可能性が示唆された。
  • 梨本 亜希, 稲森 美奈子, 高木 三姿郎, 松田 秀喜
    セッションID: 1D-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食品の調理加工において、抗酸化能のある調味料を使用することで酸化臭の発生や品質劣化の原因の一つである脂質酸化を抑制する効果が得られるとの報告がされている。一方、鰹だしは日本の伝統的なベース調味料として、呈味や風味という面から幅広く使われている。近年ではおいしさだけでなく、抗酸化性についても注目されているが、調理上の効果に対する報告例は無い。そこで、本研究では調理における鰹だしの脂質酸化への影響について検討を行った。
    【方法】鰹だしは市販の鰹節厚削りを常法にて熱水抽出し調製した。試料とする食材として、不飽和脂肪酸の多いマイワシを選択し、頭、内臓を除去した後、加熱調理を行った。比較対照は水で調理したものを用いた。調味液の抗酸化能は調理前後の調味液のDPPHラジカル消去活性を測定した。試料の脂質酸化生成物は魚肉をホモジネートしTBA値を測定した。試料の評価は三点比較法を用いた官能検査にて行い、生臭みを評価基準とした。
    【結果】鰹だしを使用した調味液のDPPHラジカル消去活性は調理前、調理後の液は共に活性を示し、抗酸化能が確認された。鰹だしを使用した試料のTBA値はより低い値を示し、脂質酸化生成物の抑制効果が確認された。また、官能評価により鰹だしを添加したサンプルは有意に識別され、生臭みの減少が確認された。
    本実験での分析および官能評価の結果から、鰹だしを調理に用いることにより、脂質酸化生成物の抑制効果及び生臭みの抑制効果が認められた。このことから、調理において鰹だしが有効な抗酸化効果を発揮していることが示唆された。
  • 山田 潤, 五十嵐 圭里, 松田 秀喜
    セッションID: 1D-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】鰹節には鰹を焙乾した荒節と荒節の表面を削りカビ付けした枯節がある。これまでにも鰹だしの抗酸化能に関して報告されているが、荒節だしと枯節だしの抗酸化能を比較した報告はOHラジカルを用いた研究だけである。本研究ではDPPH ラジカルを用いて荒節だしと枯節だしの抗酸化能の比較を行い、興味深い結果を得たので報告する。
    【方法】かつお節は焼津産の荒節(10番火)、枯節(4番カビ)を用いた。鰹だしはそれぞれの節1kgをミキサーで粉砕し、温度、時間を変化させ一定濃度で抽出し調製した。DPPHラジカル消去活性は比色法を用いて測定し、Trolox等量として換算した。さらに、荒節だし、枯節だしをPorapak Qカラムを用いて吸着画分、非吸着画分に分画し、それぞれの画分について消去活性の比較を行った。
    【結果】抽出実験の結果、全ての抽出条件において荒節だしは枯節だしよりも高いDPPHラジカル消去活性を示し、OHラジカルを用いた報告とは異なる結果を得た。また、荒節だし、枯節だし共に、もっともラジカル消去活性が高くなる抽出条件は100℃30分の抽出であった。さらに鰹だしをPorapak Qにて分画した結果、荒節だしでは吸着画分と非吸着画分で同等のラジカル消去活性を示したが、枯節だしでは吸着画分が非吸着画分より低いラジカル消去活性を示した。しかしながら非吸着画分においては荒節だしと枯節だしの間に差は見られなかったことから荒節だしと枯節だしのDPPHラジカル消去活性は、吸着画分の差によることが推定された。
  • 原田 和樹, 切通 舞, 村上 育恵, 前田 俊道, 福田 裕, 魚谷 益三, 小泉 武夫, 粟津原 理恵, 永塚 規衣, 長尾 慶子
    セッションID: 1D-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、鮭の加工残渣を利用した市販品の魚醤油の抗酸化能を調べた結果を既に報告しているが1)、今回は、鮭の加工残渣を部位別に分け、それぞれの部位別の残渣を用いて魚醤油の手作りを行った。その時の抗酸化能、すなわち、ペルオキシラジカル捕捉活性能を調べたので、その結果を報告する。
    【方法】試料は、鮭の加工残渣として、肝臓、心臓、めふん(腎臓に相当する)、白子、腸、頭を用い、市販品の鮭の魚醤油や他の市販品の魚醤油と比較した。抗酸化能は、ラジカル捕捉活性能を指標とし、特に、油の自動酸化を引き起こすペルオキシラジカルに注目した。ペルオキシラジカル捕捉活性能は、40 mMの2,2’-アゾビス(2-アビジノプロパン)二塩酸塩(通称AAPH)から発生するペルオキシラジカルに、手作り魚醤油を働かせ、ラジカルの抑制を、アルカリ条件下のルミノール化学発光(ケミルミネッセンス)系で調べた。使用した装置は新型超高速シングルフォトンカウンターを搭載したベルトールド社製Mithras LB940マルチラベルプレートリーダーであった。発生したラジカルを半分捕捉する魚醤油の濃度をIC50値と定義し、IC50値で結果の比較を行った。
    【結果】市販品の「しょっつる」でIC50値は0.12%、市販品の鮭の魚醤油で0.029%であった。一方、鮭の加工残渣で手作りした魚醤油は、0.011から0.028%と高い抗酸化能を示した。特に、鮭「肝臓」魚醤油では、約1万倍に薄めて使用しても発生するラジカルの半分を捕捉する事が判明した。
    1)河原豪, 成田亜矢, 大滝明弘, 山内富夫, 原田和樹, 魚谷益三, 小泉武夫: 発酵食品として鮭で作った魚醤油の抗酸化能. 日本食生活学会第29回大会(福岡), 2004年.
  • 山本 由喜子
    セッションID: 1D-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】魚は多価不飽和脂肪酸のよい供給源であるが、脂質酸化を受けやすいためその保蔵には注意が必要である。特にイワシ等のいわゆる青魚は脂質酸化を受けやすいことが知られているが、その酸化促進にかかわる成分については十分解明されているとはいえない。本研究では、数種類の魚について保蔵時における脂質酸化の程度を測定し、それらの成分中、脂質と鉄について、酸化促進効果との関連を検討した。
    【方法】青魚であるイワシ、サンマと白身魚であるカレイの、各可食部をすり身状にして冷蔵保存した。酸化の程度はロダン鉄法とTBA法により過酸化脂質量を測定して示した。酸化促進に関与する成分として、総脂質含量、脂肪酸組成、ヘム鉄と非ヘム鉄含量を測定した。また、各魚の脂質をFolch法で抽出して、魚油の冷蔵保存時についても脂質酸化の程度を測定した。さらに、100℃、170℃で加熱後についても酸化の程度を測定した。
    【結果】3種類の魚の冷蔵時にはイワシが最も酸化を受けやすく、1日目でPOV, TBAが上昇した。次いでサンマ、カレイの順であった。魚油の冷蔵時における酸化速度は3種類とも魚肉全体よりも著しく遅く、5日目まで安定であった。その後、魚油の酸化が進行したが、その酸化速度はイワシ油が最も速く、次いでサンマ、カレイの順であった。総脂質含量、鉄含量(ヘム鉄、非ヘム鉄)、いずれもイワシ、サンマで多く、カレイは少なかった。多価不飽和脂肪酸の割合の差異は小さかった。また、イワシは加熱により非ヘム鉄が顕著に増加し、その後の冷凍保存では生よりも速く酸化が進行した。これらのことより、非ヘム鉄含量は、魚類の保蔵時における脂質酸化の亢進に大きく関与するものと考えられた。
  • 坂口 絵美, 佐藤 真実, 谷 洋子
    セッションID: 1D-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】福井県の特産品であり、伝統食である「へしこ」は、魚の糠漬けのことをいう。私たちの調査では県内でのへしこの認知度は84%と高く、年代にかかわらず65%の人が好んでおり、サバとイワシのへしこがよく食べられていることがわかっている。本研究においては、県内で販売される製造の異なる7種類のサバのへしこを用いて官能検査を行うとともに、へしことその糠の成分分析を行い、おいしいサバのへしこについて検討した。
    【方法】官能検査は、本学学生26名を対象にし、色、かたさ、旨み、におい、塩加減、総合評価の7項目において5段階評点法にて行った。色は、色差計(日本電色工業株式会社:NR-300)を用い、L値、a値、
    b値を測定した。成分分析は、へしこの魚肉と糠について、pH、食塩、水分、灰分、脂質、ミネラル(富士ドライケム3500)の測定を行った。
    【結果】官能検査の結果、総合評価の高いへしこは、塩加減が最も薄く、やわらかく、独特のにおいが強くないものであった。また、色差がL値、b値で低く、成分分析では、リン(P)、マグネシウム(Mg)が、他よりやや高く、灰分、塩分が低い傾向にあった。特に生サバと比較した場合、Pは総合評価の高いへしこで増加するが、低いへしこで減少傾向が見られた。Mgはすべてのへしこで増加するが、総合評価が高いほど増加率が大きい傾向が見られた。以上の結果より、おいしいへしこは、塩加減が薄く、やわらかく、色差において明度が低く、黄の色相が弱く、成分分析においては、P、Mgがやや多く含まれるものであった。
  • 久保 加織, 松井 理恵, 堀越 昌子, 糸賀 千佳, 磯部 由香
    セッションID: 1D-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】さばなれずしは塩漬けした魚を飯とともに数ヶ月以上漬けることにより製造されるが、飯漬け1ヶ月後にpHや核酸関連物質に劇的な変化が起こり、なれずしに特徴的な揮発成分が出現することをこれまでに明らかにしてきた。本研究では、飯漬け1ヶ月以内の成分変化と乳酸菌の同定を行い、なれずし製造中における変化をさらに詳細に解析した。
    【方法】水分、灰分、脂質の含量、塩分濃度、pHは常法どおり、脂肪酸組成はGCにより、核酸関連物質はHPLCにより分析した。揮発成分はSPMEにより捕集し、直ちにGCMSで分析すると共に、GC-Oにより香りの分析を行った。微生物相については、適宜希釈したなれずしをMRS培地にて平板培養し、乳酸菌数を測定するとともに、外観が異なるコロニーを選択して純粋分離培養し、分子生物学的手法を用いて属・種の推定を行った。
    【結果】さばなれずしの脂肪酸組成は1年後も原料の塩さばとほぼ同じであった。IMPは飯漬け1週間で最高値に達した後、1ヶ月以内にほとんどが消失し、ヒポキサンチンやキサンチン含量の最大値は1ヶ月後にみられた。pHは飯漬け1ヶ月の間に5.7から4.3に徐々に低下し、その後は一定であった。揮発成分は、飯漬け1週間で大きく変化し、なれずしに特徴的な揮発成分が出現した。その後、多種類の揮発成分が微量に出現し、その中には香りを強く感じる物質が含まれていた。乳酸菌数は飯漬け1週間後で7.9×107個/gであったが、その後増加し、6ヵ月後に1.4×108個/gに達した後徐々に減少し、1年後には3.0×105個/gとなった。どの期間においてもEnterococcus faeciumが分離・同定され、発酵に関わっていると考えられた。
  • 比江森 美樹, 増田 和子, 木本 眞順美, 山下 広美, 辻 英明
    セッションID: 1E-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 小麦は様々な加工性に優れており多くの食品に利用されているが、代表的なアレルギー食品の一つとしても知られている。従来、小麦そのもののアレルゲン性に関する研究は活発に行なわれてきた。しかし、小麦利用食品は摂取に際して加熱操作を通して調理されるが、その加熱調理やその形態が小麦のアレルゲンに与える影響やその挙動については知られていない。そこで、我々が既に見い出した小麦の水溶性画分におけるアレルゲン、Tri a Bd 27KとTri a Bd 17Kの両アレルゲンを指標にして、各種調理操作や調理形態が小麦アレルゲンに及ぼす影響について検討した。
    [方法] 小麦粉から作製したドウとバッターの二種類の生地を「ゆで」、「蒸し」、「揚げ」、さらに「オーブン」、「電子レンジ」および「オートクレーブ」による各調理を行い、それら試料よりタンパク質を抽出した。次いで、Tri a Bd 27KおよびTri a Bd 17Kに対するモノクローナル抗体および小麦アレルギー患者血清を用いたイムノブロットにより、加熱調理によるアレルゲン分子の挙動を検討した。さらに、小麦加工食品を作製する際に使用される牛乳、卵、バター、食塩などの副材料が共存した際の影響についても併せて検討した。
    [結果] ほとんどの調理操作に共通して、小麦アレルゲンTri a Bd 27Kは分解されやすいがTri a Bd 17Kは新たにアレルゲン性を保持した複数の重合体を形成することが示された。しかしながら、「オートクレーブ」による加熱操作では、アレルゲン分子をはじめとする総タンパク質の低分子化が観察され、その現象は副材料の添加によって顕著であった。なお、形態による違いは観察されなかった。以上の結果から、加熱調理は調理条件により、小麦のアレルゲン分子に重合化や分解などの影響を及ぼすことが明かになった。
  • 永谷 裕子, 真岸 範浩, 徳力 望, 古林 万木夫, 中田 佳幸, 築山 良一, 今井 宏美, 鈴木 誠, 辻 啓介
    セッションID: 1E-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】これまでに我々は、醤油に含まれる機能性成分SPS(しょうゆ多糖類, Shoyu polysaccharides)に注目し、様々な機能性評価を行なってきた。その一つとして、SPSの抗アレルギー活性を見いだし、スギ花粉症、および通年性アレルギーを対象とした臨床試験によりSPSのアレルギー症状低減効果を実証した。ここでは、SPSの新しい機能性として鉄吸収促進効果を解明した。
    【方法】In vitro試験として、平衡透析法によりSPSの鉄キレート能を測定した。In vivo試験として、3週齢の雄性ラットを鉄欠乏試料で2週間飼育することにより貧血状態を誘導した。その後、貧血ラットに鉄剤とSPSを2週間投与して、臓器重量、血液成分の分析等を行なった。さらに、健常な女性被験者を対象にしてSPS群とプラセボ群を二群とする二重盲検試験(n=45)を1ヶ月実施した。本試験は、倫理委員会を設置し、その承認の下、試験実施計画書ならびにヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守して実施したものである。
    【結果】通常、pH中性域では鉄の沈殿が生じるが、SPSを鉄と共存させることにより、鉄の沈殿を防ぎ溶解性を安定させることがわかった。平衡透析法により鉄キレート能を測定したところ、SPSはpH中性域において鉄イオンをキレートすることが示唆された。貧血ラットを用いた試験では、鉄剤の単独投与に比べて鉄剤とSPSを併用投与することにより肝臓中への鉄の貯蔵が有意に高まることが確認できた。臨床試験では、SPS群の血清鉄はプラセボ群より有意に増加していた。以上の結果から、醤油に含まれるSPSの新しい機能性として鉄吸収促進機能が明らかとなった。なお、本研究の一部は、平成17年度民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業 (農林水産省)の技術開発課題として実施したものである。
  • 新宅 賀洋, 野崎 信行, 太田 美穂
    セッションID: 1E-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】テンペ菌株数種を用いてテンペを作成したところ、発酵時間と共にテンペが硬くなることはすでに報告した。今回、テンペの出来あがりの色を測定し、硬さのパラメーターとなるのかどうかを検討した。また、テンペ入り麺を作り、その機能性を生かした調理への応用について検討した。
    【方法】同一条件下で発酵させたテンペについて、表面と断面の色を測色色差計で、硬さはレオメーターで測定した。原料の大豆および各菌種の発酵24時間におけるテンペの一般成分とビタミンB群について分析した。その栄養特性を生かすため、凍結乾燥したテンペの粉末を添加した麺を作り、色、食感、食べやすさなどについてのアンケート調査、官能検査を実施した。
    【結果】測色色差計で測定したテンペは、発酵時間が長いほど、テンペ断面は明度あまり変化がなかったが、赤みや黄色みが強くなった。菌種による色の違いはほとんど見られなかった。テンペの硬さについては、発酵時間が長いほど硬くなるので、テンペの色調はテンペを作る際の一つの目安になると考えられた。各菌種とも、発酵時間によりビタミンB2は2から6倍、ナイアシンは5から15倍、葉酸は2から4倍に増加していたので、ビタミンB群の供給源として有用と考えられた。それを生かすために、粉末テンペの配合を変えた麺を数種類作り、その色や硬さを測定した。同時に、見た目や食感についてのアンケート調査、官能検査を実施し、テンペの機能性を生かした調理について考察した。
  • 森高 初恵, 高橋 真美, 中澤 文子
    セッションID: 1E-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)高齢化社会へ大きく移行する中で、嚥下困難者へ安全でおいしい食事を提供することは大切なことである。一般には、食品の物性を変えて提供することが行なわれている。本報告では、嚥下困難者にとって食べやすいとされる食品の基礎データを集積するために、人が食物を嚥下するときの咽頭部での食塊の流速と物性との関係について検討した。
    (方法)寒天ゲルとゼラチンゲルを試料として、咽頭部での流速を超音波画像診断装置により、またテクスチャー特性値をレオナーにより測定し、あわせて官能評価を行った。
    (結果)咽頭部での食塊の流速は、寒天ゲルでは0.2%で大きく低下し、0.2から0.4%では緩やかに低下し、0.6%以降では変化が認められなかった。ゼラチンゲルでは0.8%までの流速の低下が小さく、緩やかな下降傾向を示した。食塊の流速を示した波形は2試料とも濃度上昇に伴って輝度が高くなったが、寒天ゲルではゼラチンゲルと比較し輝度が低く、濃度上昇による波形の変化が小さかった。2試料とも濃度が高くなるにしたがって、硬さ、凝集性は小さくなり、付着性は大きくなった。官能評価を行った結果、寒天ゲルは濃度が上昇すると、咀嚼時には壊れやすくなり、ばらつくやすくなり、嚥下力も増すと評価された。ゼラチンゲルは濃度の上昇に伴い咀嚼時に崩れやすくなり、咀嚼力も必要となるが、まとまりやすくなると評価された。また、各測定値間の相関係数を求めた結果、寒天ゲルでは食塊がまとまりやすいほど最高流速が遅くなるという関係が認められ、ゼラチンゲルでは咀嚼時に崩れやすいほど、食塊がまとまりやすいほど、嚥下力を必要とするほど、最高流速が遅くなるという関係が認められた。
  • 長島 万弓, 石川 陽子, 中丸 知美, 二村 陽子, 小嶌 淳子, 福田 靖子
    セッションID: 1E-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ブラッククミンはさわやかな刺激と薬効をもつスパイスであるが日本ではあまり利用されていない。H17年度本大会において、ブラッククミンの精油を含む低極性溶媒抽出物から水抽出物までの4種の抽出物は、いずれも高い抗酸化性と活性酸素消去能を示すことを報告した。今回はブラッククミンの調理への利用を目的に、種子粉砕物を添加した油を調製し、その抗酸化活性と調理に用いた時の嗜好性について検討した。
    【方法】ブラッククミンシードおよび比較としてセージ(葉)、コーヒー豆を粉砕し、サラダ油およびゴマサラダ油に10%添加し、3週間浸漬後ろ過したものを試料添加油とした。抗酸化活性として、自動酸化安定性を重量法で、180℃、6h加熱油の熱酸化安定性をアニシジン価として測定した。また、嗜好性の検討として、常温利用のドレッシング、加熱利用のピラフ、揚げ油としての利用のクルトンを調製し、香り、好ましさ、後味について、5段階評価法で官能検査を行った。
    【結果・考察】自動酸化安定性に関しては、いずれの試料もサラダ油よりもゴマサラダ油に添加したほうが高く、また試料別ではセージ>ブラッククミン>コーヒーの順に高い安定性を示した。アニシジン価については、サラダ油とゴマサラダ油に有意な差はなく、試料別ではブラッククミン>セージ>コーヒーの順に酸化を抑制していた。調理に利用した時の官能検査の結果は、ブラッククミン>コーヒー>セージの順に評価され、ブラッククミン添加油は抗酸化機能を有し、嗜好性も良好な油として調理に利用しうることが明らかとなった。
  • 高橋 真美, 森高 初惠
    セッションID: 1E-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 紅麹菌Monascus ankaの生産する色素は,血圧降下作用,コレステロール生合成抑制作用,ガン予防効果等の生理機能を有することが報告されている。本研究では紅麹菌M.anka AHU9085の色素生産性の向上を目的として,培地に添加する成分のうち炭素源の影響を検討した。
    【方法】 炭素源として,スクロース,うるち米デンプン,2種の米デキストリン(DE17.1とDE24.1)の4種類を用いた。培養後の色素抽出液は300から700nmにおける吸収スペクトルを測定することにより色素生産性の比較検討し,色素の分離は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行なった。測定は470nmの吸光度および吸収スペクトルを測定した。抽出色素の分析は,質量分析(MS)により行い,スキャン範囲m/z/100からm/z/500,コーン電圧40eVで解析した。
    【結果】 4種の炭素源の中でスクロースおよびうるち米デンプンを添加した培地よりも米デキストリンのDE17.1とDE24.1を添加した培地が最も高い色素生産性を示した。さらに,米デキストリンのDE17.1を添加した培地が米デキストリンのDE24.1を添加した培地よりも色素生産性は高まった。このことから,紅麹菌の色素生産性に炭素源の性状が関係しているものと考えられた。HPLC分析の結果,4つのピークが確認され,P1からP4画分が得られた。吸収スペクトルと紅麹色素としてすでに化学構造が判明している主要色素の分子量およびMS分析の結果から,培地の炭素源の違いにより生産される色素構造に変化が生じることが判明した。
  • 磯部 由香, 水野 麻美, 山下 政続, 成田 美代
    セッションID: 1E-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、腸内における乳酸菌の役割が注目されているが、胃酸耐性を有する一部の乳酸菌株に限られている。しかし、耐酸性がなくても有用性を持つ乳酸菌が存在する可能性がある。そこで、乳酸菌を胃酸から保護し、生きたまま腸まで到達させるために、W/O/W型エマルションに乳酸菌を封入した場合の保護効果について検討した。また、冷蔵保存の影響についても検討した。
    【方法】菌株にはLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusLb. acidophilus、及びLb. casei subsp.caseiを用いた。親油乳化剤を添加したオリーブ油に、菌液を加えて攪拌し、W/O型エマルション液とした後、親水性乳化剤を溶解した水を加えて攪拌し、W/O/W型エマルションを調製した。このW/O/W型エマルション液および菌液に塩酸(pH1.5)を加え、振とうした。塩酸を加えた直後から一定時間ごとに中和してMRS平板培地で嫌気培養し、菌数を算出した。
    【結果】3株はいずれも、そのまま塩酸にさらした場合、1時間後には全ての菌が死滅し、酸耐性が低いことがわかった。しかし、W/O/W型エマルションに封入すると、Lb. acidophilusは1時間後にはほとんど菌数の減少は見られず、4時間後まで60%以上が生存した。Lb. caseiは1時間後に約80%が生存し、生菌数は減少していくものの、4時間後まで菌が生存していた。Lb. delbrueckiiは、1時間後まで50%以上の菌が生存した。この結果より、W/O/W型エマルションに封入された3種類の乳酸菌はいずれも油の膜に保護され、塩酸に耐えたことが確認された。また、冷蔵保存14日目の菌数はエマルション調製初日の菌数とほぼ同程度であった。
  • 三宅 義明, 高木 真美子, 韓 順子
    セッションID: 1E-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)三重県紀南地域で栽培されているカンキツ果実の新姫(にいひめ)は、日本タチバナとマンダリンの交配種であり、香りや酸味が高い香酸カンキツ果実である。カンキツ果実には抗酸化性や抗腫瘍性が報告されている機能性成分のフラボノイドが含まれ、健康機能作用が注目されている。本研究では、新姫果実に含まれるフラボノイドに着目し、他の香酸カンキツ果実との比較から特徴を調べ、さらに、調理や食品加工における溶出性を調べた。
    (方法)三重県熊野産の新姫や、ユズ、スダチ、カボスなどの香酸カンキツ果実を分譲や市販購入により入手した。果実を果皮と果汁に分け、果皮を75%エタノールにて抽出した。果汁と果皮抽出液中のフラボノイドをHPLCにて定量した。果皮抽出液の抗酸化活性は、DPPHラジカル捕捉法により測定した。また、新姫果実を半分に切断し、低温(4℃)または高温(90℃)の水、5%エタノール、25%エタノール溶液に浸漬し、溶出液を経時的にサンプリングした。溶出液に含まれるフラボノイドをHPLCにて定量した。さらに、新姫など香酸カンキツ果実を用いたジャムやダイコン浅漬けを作製し、ジャムはエタノール抽出し、浅漬けは液部分について、フラボノイド量や抗酸化活性を測定した。
    (結果)新姫果実の果汁、果皮には、フラバノン配糖体のエリオシトリンやヘスペリジン、ポリメトキシフラボンのノビレチン、タンジェレチンが含まれている点が特徴であった。新姫果実のフラボノイドは、低温溶液より高温溶液で溶出されやすかった。ポリメトキシフラボンは、高温25%エタノール溶液が最も溶出されやすかった。新姫のダイコン浅漬けやジャムは、ユズ作製品と比べて抗酸化活性が高く、これは新姫果実のフラボノイドが抗酸化活性に関与していると推測された。
  • 愛知県と埼玉県との共同炊事場の比較から
    馬場 景子, 中野 典子, 宇野 良子
    セッションID: 2A-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的と背景〕日本の近代化は富国強兵と殖産興業が二本柱となって推進された。特に、殖産興業を謳うことで、日本国内には軽工業が発展していった。その側面として軽工業に従事する工場労働者の食が見直されてのも近代に入ってからである。また栄養の概念が本格的に論じ始められたのもこの時期であった。本発表では、栄養の概念が普及するのに重要な役割を果たした共同炊事場の存在を愛知県と埼玉県での調査から明確にする。
    〔方法〕資料、現地調査、聞き取り
    〔結果〕栄養食の概念は、昭和初期に埼玉県川口市の栄養食配給所をセンターとして普及していったとされているが、共同炊事場はそれよりも以前に愛知県一宮市(旧 尾西市)が最初に組織化され、実働したことを明らかにした。さらに埼玉県川越市の文化財となっている産業遺産である栄養食配給所の調査から、昭和初期の共同炊事場内の様子が判明した。以上のことから、共同炊事場が、日本の近代化を支えた労働者の食を栄養という科学的な概念を取り入れながら、普及させた側面を捉えることが可能になった。
  • -野菜嫌いの実態調査-
    安藤 真美, 鹿子島 温子, 神田 知子, 五島 淑子
    セッションID: 2A-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】子供の偏食のひとつである野菜嫌いは,改善が難しい課題であるが,成長や健康のためには解決が不可避である。そこで,山口県の児童を対象に野菜の好き嫌いに関する実態を調べ,地域差や保護者の好き嫌いとの関連を併せて解析し,その実態を把握すると共に児童の食生活改善の試みについて検討した。
    【方法】2004年12月から2005年2月にかけて,山口県内の小学校の協力を受けて質問紙調査法により調査を実施した。対象地域および調査対象者は,山口市およびその周辺の小学校児童と保護者(各350人)とし,市街部・山間部・沿岸部に分けて解析した。調査内容は,山口県内で生産量が多い野菜について,児童へは好き嫌い・栽培経験・調理経験の有無など,保護者へはそれらに加えてよく使う野菜や調理の工夫などとした。
    【結果】1.野菜の好き嫌いの傾向は,児童・保護者ともに地域差は小さかった。2.保護者の好き嫌いが子供の好き嫌いに与える影響は小さいと考えられた。3.児童が野菜を嫌う理由で最も多い回答は「味」で,次いで「香り」「色」の順であった。これらの要因は素材のもつ特徴であり,変えられないため,調理方法による工夫が重要であると考えられた。4.保護者が行っている具体的な調理方法の工夫は,「細かく切る」「よく火を通す」「味付け」などが多かった。5.調査の結果において最も子供に嫌われたナスを用いて新しい調理方法を試みたところ,野菜嫌いの改善の可能性が示唆された。
    以上の結果より,児童の野菜嫌い克服への対策として,嫌われる傾向にあるそれぞれの野菜について,子供に好まれる新しい調理方法の工夫が有効であると思われた。
  • 津田 和加子
    セッションID: 2A-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】生鮮果物の将来的な消費量の低下が懸念されている。果物離れの要因の一つに「果物の皮をむくのが面倒」という意識があげられていが、若年層においては調理技能の修得が果物の摂取に影響すると考えられる。そこで、果物の産地の一つである福島市において小学生の調理技能(ナイフを使って果物の皮がむける)の有無が果物の嗜好に影響しているか調査することを目的とした。
    【研究方法】福島市内の公立小学校5年生137名6年生144名、合計281名を対象とし、2005年12月から2006年1月に調査を実施した。自記式調査用紙を全員に配布し、その場で記入後回収した。調査項目は、福島およびその近郊で収穫される果物(さくらんぼ、梨、ぶどう、桃、洋ナシ、りんご)の嗜好と「果物の皮をむくことができるか」に関するものである。統計処理にはExcel統計を使用した。
    【結果】小学校5年生では、調理技能に男女差はなく、約50%の児童が果物の皮をむくことが「できる」と答えた。一方6年生になると男子にあまり変化は見られないが、女子の89%が「できる」と答えている。皮をむくことが「できる」「できない」に関わらず男子では「ぶどう」に、女子では「さくらんぼ」に対する嗜好が高く、男女に差が見られた。皮をむくことが「できる」男子では「洋ナシ」が、女子では「桃」の嗜好が高かった。一方「できない」と答えた児童では男女とも「梨」や「りんご」の嗜好が高かった。日頃、家庭において果物の皮をむくのは「母親」であると、ほとんどの児童が答えていることから、嗜好と調理技能の関係は顕著に表れなかった。しかし「桃」や「洋ナシ」といった実が柔らかく皮をむきにくい果物に関しては、調理技能の有無が嗜好に影響していると推察できる。
  • 齋藤 寛子, 松本 時子
    セッションID: 2A-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】成長期における食習慣は、その後のライフスタイルに与える影響が大きい。平成17年6月に食育基本法が成立し、食の大切さを学習することを提唱しているが、小学生のうちは食の学習を素直に受け入れるものの、中学生になると理解していても実践しない割合が高くなる傾向があることを報告した1)。本研究では、中学生における食生活上の問題点を明らかにすることを目的とした。
    【方法】Y市内中学校2校の中学2年生とその保護者各309名に対し、質問紙法による調査を行なった。質問紙は無記名とし、実施時期は平成17年9月、内容は中学生には食意識の実態と食事中の会話について、保護者には、家庭の食事環境、食習慣の実態、郷土の食材に対する意識と利用度、さらに中学生・保護者それぞれに食育に対する意識調査を試みた。
    【結果】中学生の調査結果では、食事の時間は楽しいという解答が多かった(90%)が、一方楽しくないと答えた理由を家族形態別に見た結果、嫌いな物でも全部たべなくてはならない(p<0.01)、おかずが少ない(p<0.05)ということが挙げられた。保護者の調査結果からは母親の80.9%がなんらかの形で就業し時間的にも余裕がないと考えられるが、食事は手作りを心がけている割合が96.2%という状況であった。また、地元食材についての認知度も高く、伝統的な料理が受け継がれる素地はあるものの、利用頻度としては手間暇のかかる食材は敬遠される傾向が見られた。食育に関する意識調査で、身につけたいと思っていることは中学生は料理技術、保護者は食事作法という回答が多く世代間で差が見られた。
    1)日本調理科学会 平成17年度大会研究発表要旨集 p20
  • 小川 久惠, 豊田 光子, 豊満 美峰子
    セッションID: 2A-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕入学後、調理学実習を履修した学生に対して、実習授業で体得した事柄を基準に、調理技能の習得、食事を構成する料理の組み合わせ、1日の栄養量を満たすための食品量、1品の料理に必要な食品量の認識、家族の嗜好を満足させる献立作りなどを復習させるため、夏季休暇中に4日間の食事作りを義務付けている。今回その実習記録を資料として、家庭における食事の実態を分析した。
    〔方法〕課題は、学生が香川式食事法に基づいて、成人女性の栄養量を満たす朝昼夕1日分の献立を計画し、調理、配膳までの一連の作業を一人で行い写真に記録する。その資料の、平成14.15.16年の3ヵ年分と平成3.4.5年の3ヵ年分について、和洋中その他の食事形態、使われている食器および食具、盛り付け方の面から検討したが、ここでは、和洋中その他の食事形態を中心に分析した。
    〔結果〕(1)朝食は洋食でまとめたものが多く、ついで和食であった。洋食はパンと飲み物、サラダ、和食は白飯と汁の組み合わせが基本パターンであった。10年間で洋食スタイルが増加した。両年ともにわずかに和洋、和中折衷が見られた。(2)昼食は和食、洋食形式に中華食が加わり、麺類が主であった。(3)夕食は和食が40%以上で多く、ついで洋食のスタイルであり、和洋折衷が10年間で増加した。主食がないものは数例で食事形態は一応整っており、汁の多くは夕食より朝食にとられ、昼食にはすくなかった。和洋、和中、洋中折衷がわずかに見られ、白飯を主食に洋(ハンバーグ)や、中(野菜炒め)の料理を組み合わせる形であった。
  • 谷澤 容子, 中谷 圭子, 畑江 敬子
    セッションID: 2A-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 演者らは、10年前にフランス人の日常食の実態調査を行い、伝統的な食事様式が残っていることを報告した1)。食を取り巻く環境が世界的規模で目まぐるしく変化している中で、国を挙げて食教育を行っているフランスでは現在の日常食はどうなっているのかを明らかにし、10年前の調査と比較した。
    <方法> アルザスストラスブール市近郊に住むストラスブール大学関係者を主とするフランス人107人に調査用紙を配布し、10年前と同じ秋から冬にかけてとなる2003年11月から2004年3月までの連続した平日3日間について朝食、昼食、夕食の食事場所と献立および材料を記入させ郵便で回収し、集計した。
    <結果> 朝食、昼食、夕食のいずれも欠食または未記入が5%であった。食事の摂取場所は朝食、夕食それぞれ90%、85%が自宅であった。昼食は、公務員食堂等が最も多く43%で、自宅は35%と少なかった。食事内容は、朝食にパンの出現が60%と10年前よりも減少した。昼食の肉料理(肉を主材料とする料理)は、前回同様の出現回数であったもののその種類は、鶏肉の出現が増え、牛肉、豚生肉の出現が減少傾向であった。もともと少なかった魚介料理は出現回数が微増していた。前回同様、夕食はハム・ソーセージが最も多く摂取されていた。昼食、夕食共、パンの出現回数は20%前後と少なく、主としてジャガイモや麺類で、デンプン源を満たしていた。サンドイッチ、ピザ、パスタ料理、アフリカ・アラブ系のクスクス、タージン、ドナーカバブなどの出現増が見られ、食のボーダレス化が伺えた。1)谷澤ら(2002)、日本調理科学会誌、35(4) 375-381
  • 石川 陽子, 長島 万弓, 福田 靖子
    セッションID: 2A-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】人間の食の営みである食事教育は人間の健康を支える重要な教育である。特に成長期である乳幼児・学童期は食習慣を形成する時期である。H16年厚労省の「食を通じた子どもの健全育成(いわゆる「食育」の視点から)のあり方に関する検討会」には、発育・発達過程に応じて育てたい「食べる力」について、具体的にどのように育んでいくのか過程が示され、また「楽しく食べることは、生活の質(QOL)の向上につながるものであり、身体的、精神的、社会的健康につながる」と提言された。本研究では今日の食情報の傾向の把握と過去の食体験が人間生活の柱としてどのような役割を担っているかを明らかにするために調査による研究を行った。
    【方法】食情報の「情報源」、そこから「得ている情報」と「よく利用する情報」についての質問紙調査。「深く印象に残っている食事場面(いつ頃、どこで、誰と、どのような場所で、どのような気持ちで食べたか)」について質問紙調査(女子大学生(87名)及び保育園児保護者(199名)対象)を行った。解析にはExcell統計及びSPSSを用いた。
    【結果】食情報の「情報源」はテレビが女子大生(32%)保護者(30%)と一番多く、その他に雑誌一般(18%)、家族、友人・知人、新聞が多かった。「得ている情報」は、全般的に “栄養学的な面(50%)”と “嗜好的な面(17%)”が多く、新聞からは“食品の安全性(43%)”を得ていることが特徴的であった。共食(みんなで食べる)(7%)孤食(個食)(2%)であった。「よく利用する情報」も「得ている情報」と同様の傾向であった。「記憶に残る食事場面」では、幼児・学童期の記憶が多く、この時期の食体験が後の人間性の発達に影響を与えると考えられるが、今日食事教育で重要な共食や孤食に関する食情報(視点)は情報源の種類にかかわらず少ないと考えられた。
  • 村上 恵, 安藤 真美, 伊藤 知子, 井上 吉世, 我如古 菜月, 久保 加織, 小林 敦子, 武智 多与理, 露口 小百合, 中原 満子 ...
    セッションID: 2A-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】揚げる・炒める分科会ではフライ油の使用限界を揚げ油の風味点数により官能的に判定する方法を確立し、揚げ種や揚げ方法の違いが油の劣化に及ぼす影響を明らかにしてきた。しかし、近年では健康志向によって、機能性を有する油や健康的でおいしい揚げ物を作ることに多くの消費者の関心が寄せられている。そこで、本研究では新たに揚げ物に着目した。家庭でおいしい揚げ物を作るための方法を提案するため、まず揚げ物のおいしさにかかわる要素を明らかにすることを目的として、アンケート調査を行った。
    【方法】調査時期:2005年12月_から_2006年1月、調査対象:近畿地区における18歳以上の学生を含む男女、調査法:直接記入法、回収率 86.9%、有効回答数 1482部(内、学生 1062部)
    【結果】「おいしい揚げ物とはどういう揚げ物か」に関して、食品のおいしさにかかわる要素である品温、テクスチャー、香りなどカテゴリーごとにいくつかの選択肢を用意し、あてはまるものを選択する形式により回答をもとめた。その結果、「揚げたてである」が最も多く、次いで「サクッとしている」、「油っぽくない」であった。料理別でみると、「鶏のから揚げ」のみ、「揚げ種がジューシー」であることが「揚げたてである」に次いで重視されていた。逆に「おいしくない揚げ物」については、「冷めている」、「油がべとべと」と回答したものが多かったが、学生以外の男女では、「べちゃっとしている」、「油がくさい(古い油を使っている。)」と回答した者が多かった。以上の結果より、揚げ物のおいしさは、味や香りよりも、品温やテクスチャーが重要視されていることが明らかとなった。
  • 食器の材質と様式について
    豊満 美峰子, 小宮 麻衣良, 小川 久惠, 松本 仲子
    セッションID: 2A-a9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    (目的)外観はおいしさに係わる重要な要因であるが、その一つとして食器の影響が考えられる。どのような食器を選択するかによって、おいしそうかどうかの印象は大きく変わると予想される。本研究では、食器の材質および和・洋の様式を変えて食物を盛り付けたとき、それらがおいしそうに見えるか否かの外観の評価にいかに影響するかを検討した。
    (方法)食器に食物を盛り付けてパネルに呈示し、おいしそうに見える程度を7段階の評点法によって評価した。材質からの検討では、陶器製・木製・紙製・ガラス製・プラスティック製・ステンレス製の6種類の材質を選び、盛り付ける食物は和・洋および折衷菓子とした。和・洋菓子については両菓子に類似した色彩の菓子を選び、折衷的な菓子としてカステラを加えた。和・洋の様式からの検討では、食器は和・洋の様式の器とし、食物としては和・洋の菓子5種類、飲料4種類、料理7種類を選んだ。
    (結果)材質からの検討では、食器の材質はおいしそうに見えることに影響を及ぼす結果が得られ、例えばすあまは木製食器が紙製・ガラス製・プラスティック製・ステンレス製に比べて0.1%危険率で有意においしそうに見えると評価された。和・洋の様式からの検討では、紅茶・コーヒーはティーカップが湯のみより0.1%危険率で有意においしそうに見えると評価されるなど、和の菓子・飲料・料理は和食器、洋の菓子・飲料・料理は洋食器に盛り付けたものの評価が高かった。パネルは20歳代の若年層であるが、材質および様式のいずれにおいても、食器と食品の和・洋が一致する組合せを高く評価しており、明らかに、見た目の美しさよりは文化的に一致する感覚で外観を評価する傾向がみられた。
  • 早川 文代, 中井 仁美, 日下部 裕子, 進藤 洋一郎
    セッションID: 2A-p1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】食べ物の風味を表現する“こく”“深み”などはおいしさと密接な関係があることが多く、官能評価において重要な特性描写用語として使用されることがある。しかし、抽象的で曖昧なため定義づけやパネルの訓練が困難である。そこで、いくつかの抽象的な風味表現をアンケートにより尺度化することを試みた。
    【方法】まず、プロの料理人26人を対象とした面接調査を行った。おいしさに関係する抽象的な風味表現として、“こく”“深み”“厚み”“広がり”“奥行き”“豊か”の6語を選定し、これらを尺度化するために用いる食物64品目および形容語句40語を収集した。次に、調理科学研究者、栄養士、料理研究家合計29人を対象としてアンケートを実施した。調査票に食物64品目および形容語句40語をそれぞれランダムに挙げ、各抽象的風味表現との関係の強さを4カテゴリ(関係ない/やや関係がある/関係がある/とても関係がある)で回答させた。データ解析にはコレスポンデンス分析を適用した。
    【結果】得られた数量を第1軸と第2軸を用いて布置したところ、2次曲線を描いたことから、1次元尺度の構築が可能であることが示された。そこで、第1数量を用いて尺度化したところ、いずれの用語もスープ類、カレー、チーズなど動物性食品を長時間加熱または熟成した食物と関係が強かった。また、“深み”は酒類や茶類、“豊か”は植物性の素材との関係が特徴的であった。さらに、“こく”は「重厚感」「持続性」、“厚み”は「うま味」「バランス」、“広がり”は「心地よい」と関係が強いなど、各用語の特徴を示すことができた。用語間の関係を調べたところ、“こく”と“厚み”、“広がり”と“奥行き”は類似性が強いことが示された。
  • 澤田 崇子, 瀬戸 美江
    セッションID: 2A-p2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目 的]近年、コンビニエンスストアで一汁三菜の弁当が販売されるなど、主食・主菜・副菜に対する考え方が強くなっている。毎日の食事においても、主食・主菜・副菜を基本に、バランスのよい献立を考える必要がある。本研究では、主菜(主にたんぱく質供給源となるもの)をテーマに取り上げ、調理をする上でどの位の量を使用したらよいか、その目安について検討を行った。
    [方 法](1)コンビニエンスストアで販売されている一汁三菜弁当を主食・汁物・主菜・副菜に分類し、その量に合った皿を選択し盛り付けた。(2)2種類の大きさの異なる皿を用意し、女子学生および教職員(13名)を対象に、主菜となるとんかつをどちらの皿に盛り付けるかを調査した。(3)大学生74名に主食・主菜・副菜をそろえることを条件に、指定した大きさの皿にたんぱく質供給源食品を目分量で取り、その0.5倍以上の緑黄色野菜、1.0倍以上のその他の野菜を用いて調理を行い、その調査結果から栄養価計算およびPFC比を求めた。
    [結 果](1)コンビニエンスストアで販売されている一汁三菜弁当の栄養素は食事摂取基準(身体活動レベル_II_、18_から_29歳)をほぼ満たしており、主菜は、直径約14cmの皿に盛り付けられた。(2)大きさの異なるとんかつを皿に盛りつける場合、人は主菜の大きさを見て皿の大きさを選ぶことが確認できた。(3)大学生に条件をつけて料理させた結果、皿の大きさを指定してそれに合わせてたんぱく質供給源食品を選択することが、バランスのよい食事を作る上での一つの目安となると考えられた。
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