日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成26年度(一社)日本調理科学会大会
選択された号の論文の211件中101~150を表示しています
ポスター発表
  • 網野 惠深, 塩田 風実, 柴内 友紀, 沢村 信一, 木村 靖子, 小林 三智子
    セッションID: 1P-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】現代の日本人は野菜の摂取量が不足している。そのため、健康志向の高まりから野菜を用いた加工食品が注目されている。野菜ジュースは、にんじんを主体としている物が多く、にんじんは一年中市場に出回っているため、入手しやすく加工食品として使用されやすい。また、ピューレにすることで粒度の違いによる物性の差を見ることができる。本研究では、粒度の異なるにんじんピューレを用いて調製したパンの物性について測定を行い、パンに添加するのに好ましい粒度を求めることを目的とした。
    【方法】14・90・250 μmの3段階の粒度のピューレを使用し、全材料に対して15.3%添加した。また、無添加(コントロール)のパンを調製し、それぞれ得られた試料について機器測定を行った。機器測定では、レオメーターRE33005(山電)を使用し、破断特性値およびテクスチャー特性値を求めた。デジタルマイクロスコープKH-7700(HiROX)を使用しパンの構造を観察した。さらに、赤外線水分計FD720((株)ケツト科学研究所)を使用し水分量を求め、分光色差計SE6000((株)日本電色工業)を使用し色差を測定した。
    【結果】
    破断特性値として、破断ひずみ、破断応力および破断エネルギーを求めた結果、いずれもにんじんピューレの粒度の違いによる明らかな差は認められなかった。同様に、テクスチャー特性値であるかたさ、凝集性および付着性において粒度の違いによる明らかな差は認められなかった。水分量は、ピューレを添加した3種類とコントロールとの有意差は認められなかった。色差においては、明度に有意差は認められなかったが、色相および彩度はコントロールに比べ有意差が認められた。
  • 惠良 真理子, 森永 賀亮, 唐川 紀章, 長田 啓佑, 森田 洋
    セッションID: 1P-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】北九州市内の竹林面積は1498 ha (2007年)であり、市町村単位では全国有数の広さを誇っているが、放置竹林による里山の廃虚が深刻な問題となっていることから、モウソウチクの新たな用途開発が求められている。そこで、乾燥100 gあたり94.2 gの食物繊維が含まれている竹の化学組成に着目し、本研究ではモウソウチクの新たな利活用の1つとして、モウソウチクの食用化を目的とし、モウソウチク稈粉末(竹粉)の添加量と粒度の違いによる製パン特性について研究を行った。
    【方法】モウソウチク稈粉末はプレス法により微粉砕し((株)セイシン)、平均粒子径が異なる3つの竹粉を使用した。パン生地調整は市販強力小麦粉(日清製粉(株))あるいは竹粉添加小麦粉100 gに、砂糖5 g、食塩1.7 g、ドライイースト(日清製粉(株))1.7 g、水68 ml、無塩バター5 gを加え、手で500回混捏し、日本イースト工業会のパン用酵母試験法に基づいて実験をおこなった。生地膨張力試験はシリンダー法で行い、各発酵終了時の生地の高さを読み取り、生地膨張力とした。
    【結果】パンの生地膨張力および比容積は竹粉10%添加までは顕著な変化が見られたが、竹粉20%以上添加では竹粉の粒度が小さくなるにつれ生地膨張力および比容積が低下した。竹粉含有量の増加に伴って小麦の含有量が低下しグルテンの形成が出来ずに、酵母菌によって二酸化炭素やその他の揮発成分は発生するが、デンプン生地が発生したガスを包蔵できずに膨化には至らず、生地膨張力および比容積の低下の一因になったのではないかと考えられる。
  • 田中 淑子, 酒井 裕子, 大迫 早苗
    セッションID: 1P-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】ベーグルは焼成の前段階において成形した記事を沸騰水中で加熱する操作を行うドーナツ型のパンである。その操作によって歯ごたえのある独特のテクスチャーが生まれると考えられる。本研究では、家庭でベーグルを調整する場合の配合割合や調整法を検討し、52%の水分量を採用した。たんぱく質含量の近い国産小麦粉と外国産小麦粉がベーグルの性状にどのような影響を与えるか比較検討した。【方法】 小麦粉、イースト、食塩、水を基本材料とし、予備実験から水分量を52%と決定し、国産小麦粉(はるゆたか)と外国産小麦粉(カメリヤ)を用いてベーグルの調整を行い、焼成後の外観、内相の観察、重量・体積・比容積ならびに物性の測定を行った。【結果・考察】外国産小麦粉は膨化率が低く、破断エネルギーが大きいことから、国産小麦粉よりも外国産小麦粉のほうが硬いベーグルになった。その要因として、外国産小麦粉は水分量が十分でなかったこと、ミキシング後の生地のグルテン形成が十分に行われていなかったことが考えられる。水分は膨化に大きく影響しており、吸水が少ないとパンの容積が小さく、形が不均一になったと思われる。また、グルテン形成にはたんぱく質に適した吸水が必要であるため、吸水率の高い外国産小麦粉では52%の水分量ではグルテン形成に不十分であったとことが示唆される。一方、国産小麦粉は膨化しておりミキシング後の生地はグルテン形成が水分量であったと考えられる。
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    セッションID: 1P-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】日本における小麦の流通形態は粉状である。イタリアには粒を塩茹でしてサラダやスープに用いて粒状のまま食されるスペルトがある。国産小麦粒をスぺルトと同様に加熱した場合に組織構造に差異があるかを調べた。【方法】材料の小麦にはスペルト、硬質小麦のハルヨコイ(春よ恋)、軟質小麦のキタホナミを用いた。これらの小麦を12時間浸漬し、加熱粒は5%加塩で18分間および無塩では軟化するまで茹でた。小麦の粒をカルノア液で固定した後、パラフィンに包埋して薄切し、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色をおこなった。標本を簡易偏光装置を用いてデンプン粒の糊化の状態を観察した。官能評価は、外皮および内部の軟化、嗜好性の3項目についておこなった。【結果】5%加塩で加熱したスペルトは、胚乳部のデンプン粒は完全に糊化していたが、外皮は糊化しなかった。ハルヨコイおよびキタホナミの大部分のデンプン粒は糊化しなかった。ハルヨコイおよびキタホナミを無塩で茹でると、25~30分間でデンプン粒は糊化して軟化した。しかし、ハルヨコイの胚乳中心部のデンプン粒は、わずかに糊化しない部分があり、均一な軟化ではなかった。キタホナミのデンプン粒は、すべて糊化した。外皮は軟化しなかったが、加塩で茹でたものより軟化した。スペルトは、5%加塩でデンプン粒は糊化して軟化し、食することができる小麦であった。一方、国産小麦は糊化せず軟化しなかった。
  • 石川 匡子, 米山 直樹, 山岡 景子
    セッションID: 1P-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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     【目的】パスタを茹でる際に塩を添加する理由として,「下味をつけるため」「麺を引き締めるため」などがあげられる.にがり成分を豊富に含む塩は,苦味や塩味などに特徴があることが分かっているが,実際に調理加工に用いたときに味だけでなく硬さや噛みごたえといった食品素材の物性にどのような影響を与えるかは不明である.本研究では,塩の種類,塩分濃度を変えることで茹で上げた麺の食感,味に違いが表れるか検討した.
    方法】NaCl(以下A),平釜法により作られた塩(以下B),海水を噴霧乾燥させた塩(以下C)の3種類の塩を, NaCl含量で0.5,1.0,1.5 %になるようそれぞれ調整した沸騰浴中で市販乾燥パスタを加熱した.各々のゆで麺に対して成分分析,物性測定,官能検査を実施した.
    結果】成分分析,物性測定の結果,塩の種類によって茹で麺中のイオン含有量は異なるが,麺の硬さに与える影響は小さいことがわかった.官能検査では,0.5%区では塩の種類の影響は少なかったが,1.0%区ではNaCl濃度を統一したにも関わらず,塩Cと他の塩とで塩味の強さに有意差が認められた.1.5%区では塩味の差異は小さくなり,塩A-C間で苦味に有意差が認められた.塩Cはにがり成分が多く水溶液では1.0%で苦味が識別できたが,パスタの茹で調理では1.5%濃度で塩の特徴が茹で麺にあらわれ,調理法によりにがり成分の影響が異なることがわかった.
  • 冨岡 佳奈絵, 佐藤 佳織, 阿部 真弓, 鈴木 惇
    セッションID: 1P-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】安納イモは,水分が多く粘性の食感や甘味が強いことで知られ,熟成させると糖度が上がりおいしくなる。サツマイモは,加熱によりデンプンの糖化が進み,加熱方法の違いが味覚に影響を強く与える。異なる加熱方法で調理した安納イモの糊化デンプンの性状の違いをみるために組織化学的方法により調べた。
    【方法】サツマイモ(安納イモ、ベニアズマ)を3cm厚の輪切りにし,茹で,蒸し,オーブン(140℃と200℃)および電子レンジで加熱した。加熱した試料を室温に下げてから,ドライアイス・アセトンで急速に凍結し,コールドミクロトームで薄切(厚さ:16μm)した。薄切した切片をヨウ素液および過ヨウ素酸・シッフ液で染色して糊化デンプンの性状を観察した。
    【結果】安納イモの内部では,糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞が少なかった。糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞は,茹で,蒸しおよびオーブン200℃,オーブン140℃の順に少なかった。ヨウ素染色による糊化デンプンの色調は,茹でと蒸しでは褐色から青色を呈し,オーブン200℃ではほとんどが褐色であった。オーブン140℃では,糊化デンプンは褐色を呈し,貯蔵細胞を完全に満たすことはなかった。電子レンジでは,糊化デンプンが青色に染まり,多くのデンプン貯蔵細胞を満たしていた。オーブンで加熱したものの甘味が他のよりも強かった。ベニアズマでは,加熱方法の違いにより色調の差異があり,糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞が多かった。安納イモは,ベニアズマより非常に甘かった。糊化デンプンの性状の違いが,甘さの違いと関連すると考える。
  • せんべいへの応用
    大迫 早苗
    セッションID: 1P-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】これまでキヌアのイネ科の穀類と比べたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維等を多く含む栄養価の高い食品であり、小麦アレルギーの人への代替食品としてパンやスポンジケーキ、餅などにキヌアを添加して新しい食品の利用について報告してきた。そこで、本研究ではより幅広い年代にも好まれ、手軽に食べることができ保存性の高いスナック菓子に着目して生地の作製方法およびキヌアの添加量、焼成方法、味付けおよび物性特性について検討した。【方法】スナック菓子の生地は、米粉に1.5倍の水加え団子状にし、厚さ5㎜、直径4.5㎝に調製したものと米粉をキヌアで10%、20%に置換したものを試料とした。焼成方法は電子レンジ(750W)、オーブンレンジ(300℃)、電子レンジ+オーブンレンジの3つの方法でそれぞれの試料について調製した。各試料について焼き色は色差計で測定し、クリープメーターを用い硬さ、付着性、破断特性について測定した。また、焼成後にせんべいに味付け(甘醤油)を塗布してキヌア特有の香り、味についても検討した。【結果】オーブンで焼成したものは香りも焼き色も好ましく、電子レンジで焼成したものは外観が白っぽく変形し均一に焼成することが困難であった。電子レンジ+レンジでの焼成は焼き色も均一でオーブン焼成同様に好ましかった。キヌアの添加量が増しても焼成による焼き色の違いは見られなかった。破断測定では米粉とキヌア添加ではキヌア添加量が増えるにつれて値が小さくなる傾向を示した。味付けを行うことでキヌア特有の香り、苦みの緩和に繋がった。このように食べやすいせんべいにすることでキヌアの新しい利用が可能となった。
  • ―ナッツアレルギー対策として
    奥田 玲子, 武田 香織理, 岩崎 初音, 白杉(片岡) 直子
    セッションID: 1P-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】アーモンドは洋菓子に特有の好ましい風味や質感を付与する特性から,製菓に欠かせない材料として特に粉末状で汎用されている。一方で,近年,アーモンドに反応するナッツアレルギーの症例も増えている。そこで,ナッツアレルギー対応策として,洋菓子におけるアーモンド代替の可能性を検討することにした。アーモンド菓子の代表であるマカロンに着目し,アーモンドパウダー不使用のマカロン様菓子の試作を試みた。
    【方法】官能評価では,二元配置法により7段階評価尺度を用いて,食感や風味を問うた。卓上型物性測定器(山電,TPU-2DL)によりプランジャ-(接触面直径3mm),ロ-ドセル20N,クリアランス1.0mm,測定速度 2.5mm/secでマカロンの破断特性を測定した。
    【結果】薄力粉や米粉,食用油,香料などを用いて,マカロン様菓子を調製した。配合条件を検討し,物性において,アーモンドを使用した標準マカロンの荷重-歪曲線に近づけることができた。ところで,香料には,アーモンド抽出物を含む製品と合成品のみを調合した香料とがある。標準マカロンと,前者の香料を添加したマカロン様菓子とを,ナッツアレルギーを持たない大学生らに供して官能検査を実施したところ,両試料に対するプロファィルは似たパターンを示した。どの項目においても得点の平均値は標準マカロンの方が高かったが,マカロン様菓子も一定水準でパネルに評価された。一方,ナッツアレルギーに対応させるために,後者の香料を用いたマカロン様菓子を調製したところ,官能検査で低く評価された。品質を標準マカロンにより近づけるために必要な要素をいくつか見出したが,特にアレルゲンを含む懸念のないアーモンド香料の開発が必要である。
  • 荒木 裕子, 高梨 裕子, 丸井 正樹
    セッションID: 1P-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】ダリア(Dahlia,Dahlia)はキク科ダリア属のメキシコ原産の植物である。近年、花の収穫後に廃棄される塊根の有効利用が望まれている。塊根にはイヌリンが含有されており、アメリカではダリアイヌリンの機能性サプリメントが販売されている。ダリア塊根を有効活用する働きがある中、過去にダリア塊根での食中毒事件が報告されている。ダリア塊根の安全性は他の研究で確認されているが、本研究では、福島県塙町産ダリア塊根の食材としての安全性を確認し、またダリア塊根の新規利用の検討も試みた。【方法】ダリア塊根は加工特性を考慮して、洗浄後輪切りにし、65℃で乾燥し粉砕したものを試料とした。(以下ダリア粉)ダリア粉の一般成分を日本食品成分表に準拠する方法で分析した。安全性の確認は、硫酸アトロピン、スコポラミン臭化水素酸塩を標準物質として用い、ダリア粉の溶媒抽出液をTLC法、HPLC法で分析した。ダリア粉を添加した新規加工食品として麺、クッキー、パン、生パスタの調製を行なった。【結果】ダリア粉の一般成分分析値は[可食部100g中、水分7.9g、たんぱく質5.9g、脂質0.6g、灰分3.0g、炭水化物82.6g]であった。安全性の確認ではTLCではアトロピンがRf値0.3、スコポラミンがRf値0.8に確認されたが、試料では検出されなかった。HPLCでは標準物質アトロピンでは約12分にピークが検出されたがダリア粉からは約12分にピークが検出されなかった。新規加工食品の調製を試みた結果、ダリア粉の持つ色調や香りなどが付加された食品が調製できた。特にダリア粉を添加した麺は色調や味が蕎麦に類似し、そばの代用品として提供することが可能であると示唆された。 
  • 武田 珠美
    セッションID: 1P-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]ゴマの新しい利用形態として焙煎後、超低温(液体窒素利用)で凍結し粉砕した、パウダー状のゴマが開発されている。粒度は練りゴマに匹敵するが、さらさらしており、すりゴマの外観や食味とも異なるため、どのような調理に適性が高いのか不明である。そこでゴマパウダーの調理適性を明らかにし、どのような特性に基づくかを検討した。
    [方法]ゴマパウダー(リキッドガス)およびその原料である炒りゴマを試料とした。炒りゴマは、電動磨砕機によってすりゴマ(磨砕1分間)あるいは練りゴマ(磨砕30分間)を調製した。調理によってすりゴマあるいは練りゴマを選択し、ゴマパウダーとの比較を官能評価により行った。また吸水性、分散性、顕微鏡像等を比較した。香りについて室温25℃で30日間の保存試験を実施した。
    [結果]ゴマパウダーは小麦粉スイーツにおいてショートネスを付与し、ケーキ類よりもタルト、スコーンやクッキーに適性がみられた。ポタージュ等の汁もの、あえもの、プリンは従来のゴマの方が好まれた。これはゴマパウダーによるテクスチャーへの違和感が一因と考えられ、理由を検討中である。香りの保存試験の結果、調製直後はゴマパウダーとすりゴマは練りゴマよりもゴマらしい香りが同様に強かったが、20日後にはゴマパウダーの方が強いと評価された。油臭さはすりゴマよりも遅延して発生する傾向であった。ゴマパウダーは風味が保持され、分散性が高いため、各種調理に応用可能であるが、従来のすりゴマや練りゴマとの違いをさらに追及する必要があると考えられた。
  • 谷口(山田) 亜樹子, 佐藤 祐子, 牧田 知江子, 重田 公子, 高野 克己
    セッションID: 1P-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】アカモクとは、褐藻類(ヒバマタ目ホンダワラ科)に属する海藻で、成長により7m程度になる。栄養塩に富む浅海が生育に適しており、東日本に各地の沿岸部に分布し、老成すると赤褐色になる。各地では「ギバサ」(秋田)、「ギンバソウ」(山形)、「ナガモ」(新潟県)などと呼ばれ食されている。アカモクは、ミネラルや食物繊維、ポリフェノールが豊富であり、アカモクのぬめりの成分に含まれているフコイダンは、抗癌作用や免疫力向上への作用がある。本研究では、まだあまり知られていないアカモクに着目し、鎌倉で採れたアカモクのミネラルやポリフェノールなど機能性について検討し、さらに食品への利用法について調べた。
    【方法】 試料のアカモクは鎌倉海岸に生育(2014年4月収穫)したものを用いた。ミネラル量の測定は原子吸光度分析法により行い、ポリフェノール量はフォーリン・デニス法を用いて測定した。また、アカモクの食品への利用として、調理、加工を行った。
    【結果】アカモクのミネラル量を測定した結果、カリウム、カルシウム、マグネシウムが多かった。また、ポリフェノール量を測定したところ、ワカメの葉の部分より、アカモクの葉の部分の方がポリフェノール量が多いことが確認された。アカモクを用いて、かまぼこ、炊き込みご飯、パンケーキ、パンなどを製造したところ、アカモクにより食感のよい食品となった。
  • 渡邊 幾子, 植田 和美
    セッションID: 1P-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】柑橘類は、たいへん種類が多く日常よく食べられる果物である。その中のブンタン類に属しているブンタンのほとんどは生食されている。加工品としてジャム類などに利用されているものの、果皮の多くは廃棄され未利用資源となっている。そこで、未利用資源である果皮の有効利用を目的として、その嗜好性や加工利用について検討した。
    【方法】2014年4月に本学学生を対象に無記名自記入式アンケート調査を実施した。食品成分表記載の柑橘類を対象とした認知度、嗜好度および食経験、そしてブンタン果皮の加工利用など全10項目とした。調査表は後日回収し、集計および解析を行った。次いで、ブンタン果皮を利用した調味料を考案、試作し本学学生をパネルとして官能評価を実施した。
    【結果】アンケートの有効回答数は138枚であった。ブンタンの認知度は87.7%、嗜好度は39.9%、食経験は73.2%だった。嗜好理由としては「味(さっぱりしている)」51.5%、「香り」49.5%、「味(甘さ)」48.5%が上位に挙がり、食べ方では「生のまま食べる」が92.1%、果皮の利用は「ほとんど利用していない」が94.1%であった。飲食してみたい加工品では、ゼリーなどのデザート類が上位を占めた。そこで、未利用資源である果皮の新たな加工利用を考え、ブンタン調味料(塩、味噌、ねりブンタン)を試作し、本学学生を対象に評点法(5段階)による官能評価を実施した。その結果「塩」「味噌」ともに高い評価を得た。また、果皮の利用が多い「ねりブンタン」も苦味を強く感じるものの色や香りの評価は「塩」や「味噌」よりも高く、配合や調理法を改良することで嗜好性の高い新しい加工品へ利用できると考えられた。
  • 阿久津 智美, 筒井 達也, 古口 久美子, 篠原 実, 松倉 敬士, 吉田 隆彦, 松本 茂夫, 吉田 茂隆
    セッションID: 1P-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】ユウガオ果実をひも状に乾燥させた干瓢は,食品素材として知られており,栃木県の生産量は全国生産量の98%を占める。一方で収穫時期が短いなどから果実としての流通量はわずかで,これまで干瓢以外で食される機会は少なかったが,最近は豊富な食物繊維が見直され,一部が総菜等に調理加工されている。また,栃木県の生乳生産量は全国第2位であることから,新しい乳製品の考案も県内企業で進められている。こうした中,ユウガオ果実の独特の食感や,甘味との相性を活かしたスイーツ素材の検討がされたが,使用されたユウガオ果実のシロップ漬は,煮崩れにより果実の食感が活かせなかった。そこで本研究では,食感を活かしたユウガオ果実シロップ漬を開発し,ヨーグルトへの応用も図った。
    【方法】栃木県内で栽培されたユウガオ果実を試料とし,塩漬(塩蔵),脱塩,糖液浸漬後加熱処理し,シロップ漬を作成した。これについて,生の果実を糖液浸漬後加熱処理したシロップ漬を対照とし,テクスチャーアナライザーTA.XT. plus(SMS 社製)により貫入試験を行った。また,シロップ漬の糖濃度(終濃度10,15,20%)についても検討した。
    【結果】塩蔵脱塩後シロップ漬加工をしたものは,対照品と比較し,物性値では最大応力が大きく,破断距離も長くなったことから,塩蔵品はより硬く存在感のあるシロップ漬となることがわかった。また,糖濃度の違いでは物性値に差はなかった。これらの結果により,通年利用できるシロップ漬製造方法が確立し,ユウガオ果実の食感を活かしたヨーグルト製品の開発につながった。
  • 岩倉 里恵, 多山 賢二, 岡本 洋子
    セッションID: 1P-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】リンゴにおける食塩の挙動を解明することを目的に,次の4点を検討した。 85℃塩化ナトリウム溶液に浸漬したときの「リンゴの深さとナトリウムイオン濃度」の関係を調べた。リンゴの塩化ナトリウム煮における加熱時間とナトリウムイオン濃度の関係を明らかにした。リンゴの加熱時間経過にともなう硬化と軟化状況を調べた。塩化ナトリウム煮と水煮の破断応力を比較した。
    【方法】材料は青森県産リンゴ(サンふじ),試薬は塩化ナトリウムを用いた。液温85℃,3.0%塩化ナトリウム溶液中(w/v)へ薄ゴム被覆した「生リンゴ」と「蒸リンゴ」を,所定時間,浸漬した。浸漬後,凍結して小片にわけ,細断・遠心分離を行って,ナトリウムイオン濃度(NaMETER B-722:堀場製)を測定した。また,塩化ナトリウム煮および水煮を同一条件で行い,ナトリウムイオン濃度と破断応力を測定した。破断特性の測定にはクリープメータ(RE2-3305B:株式会社山電製)を用いた。
    【結果】リンゴの深さとナトリウムイオン濃度の関係では,累乗の近似曲線を描いた。生リンゴと蒸リンゴの表面付近では,ナトリウムイオン濃度の著しい差はみられなかった。10mm(全長約20mm)を超えると,蒸リンゴは,生リンゴに比べ,ナトリウムイオン濃度が高くなる傾向がみられた。塩化ナトリウム煮では,加熱とともに,ナトリウムイオンが浸透していることがわかった。10分加熱では,加熱液の約70%が浸透していた。加熱リンゴは,初期では生リンゴに比べ,硬化試料が多かったが,10分加熱では軟化試料が多かった。塩化ナトリウム煮では,水煮に比べ,破断応力値が小さい試料が多くみられた。
  • 石神 優紀子, 松岡 美咲, 山﨑 薫
    セッションID: 1P-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】食生活に必要不可欠である食塩と多様な果肉色が存在するパプリカを用い、加工塩を作成した。原料となる生パプリカの色を残すことに重点をおき、食塩添加する生パプリカの乾燥方法を検討後、生パプリカ、乾燥パプリカ、パプリカソルトの色差を測定し、最も色が退色しない加工塩を選出することを本研究の目的とした。また、総ビタミンC含有測定も行い、検討を行った。【方法】全8色のパプリカを入手し、加工塩作成の原料とした。食塩に添加するパプリカの条件を、生パプリカ、凍結乾燥パプリカ、天日干しパプリカ、レンジ干しパプリカと設定し、各々の調製パプリカに対して食塩を混合させ、パプリカソルトを作成した。生パプリカの色調とパプリカソルトとの色差を確認するため、試料を全自動色差計にて測定し、NBS単位(米国標準国)に準じ、比較を行った。加えて、総ビタミンC(総アスコルビン酸)含有測定も行った。【結果】生パプリカとパプリカソルトの色差を算出した結果、72種類中61種において生パプリカとの色差が「非常に大きい」という評価となり、加工法の違いにより退色、変色が認められることを確認した。本件は水分含量が約90%あるパプリカに食塩が加わることにより脱水作用が引き起こされ、水分(果汁)とともに色素が流出した後、乾燥加工を施しているため、水分と色素がともに蒸発しまう可能性が示唆された。パプリカソルトの総ビタミンC含有測定の結果、パプリカに食塩を添加することにより、総ビタミンC含有量にプラスに働く傾向が認められた。生パプリカの色に近い試料ほど、ビタミンCの含有量が高いという結果より、パプリカの果肉色で総ビタミンC含有量を判断することが可能なのではないかと推察した。
  • 渋井 彩希, 高澤 萌, 藤井 沙耶, 鴨下 澄子, 小林 三智子
    セッションID: 1P-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】「健康日本21」では、健康増進の観点から野菜を1日350g以上、そのうち緑黄色野菜を1日150g以上摂取することを推奨している。しかし、平成24年度の国民健康栄養調査では、どの年代でも野菜及び緑黄色野菜の摂取量は目標に達成しておらず、特に20代の女性で不足がみられる。これに比例しビタミンAにおいても不足がみられる。これらを改善するためには野菜、特に緑黄色野菜の摂取の向上が必要であると考えられる。そのためには、野菜の活用方法を増やし、3度の食事だけではなく間食にも野菜を摂取することなどがあげられる。本研究では特に野菜不足が見られる20代女性を対象に栄養価の高い旬の地場野菜を活用したスイーツレシピの提案をすることを目的とする。
    【方法】地元の農園で農業体験を行い、収穫した野菜を用いて、スイーツレシピの開発を行った。また、開発したレシピのスイーツを実際に学園祭と新座市民祭りで販売をし、地元の方々に提案することを試みた。
    【結果】地元の特産物である、にんじん・ほうれん草を用いて、バターサンドクッキー、パウンドケーキ、団子等のレシピ開発を行った。バターサンドクッキーは学園祭で、パウンドケーキは新座市民祭りで販売し、地域の方々に特産品を広め、新しい野菜の食べ方を提案することができた。このバターサンドクッキーとパウンドケーキを間食に取り入れることで、1食あたりビタミンAレチノール当量でそれぞれ58.3μgRE、139.5μgRE摂取することができる。これは20代成人女性のビタミンA推奨量の9.0%、21.5%に相当し、緑黄色野菜の摂取向上に繋げられると考えられる。
  • 小林 由実, 小川 宣子
    セッションID: 1P-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】食品の安全性や健康志向が強く求められる現代において有機栽培による農産物が注目されている。しかし、有機栽培の「よさ」について科学的な手法で明確には示されていない。そこで、本研究では有機栽培で生産されたほうれんそうについて成分と保存性から慣行栽培によるものとの比較を行った。
    【方法】無農薬で無化学肥料栽培で生産されたほうれんそう(以下有機栽培)と有機栽培を行っている地域で化学肥料を使用して生産されたほうれんそう(以下慣行栽培)で、品種はいずれもファイトパワーを用い、β-カロテン,K,Fe,Mg,Znの成分、ほうれんそうの「はり」、色の比較から調べた。成分は高速液体クロマトグラフィーおよび原子吸光光度計、「はり」はクリープメーターによる破断応力、電子水分計による水分量、走査電子顕微鏡による葉の断面の観察から調べ、色は色差計を用いた。保存性の違いについては、8℃で9日間保存したほうれんそうを用い、同様の項目から調べた。また、調理に及ぼす影響については、ほうれんそうを炒め、硬さおよび外観の色から比較した。
     【結果】有機栽培はZn以外の成分は慣行栽培に比べて多く、a値が小さかったことからより緑色をしていた。「はり」については、有機栽培の破断応力が大きかった。保存しても有機栽培は破断応力が低下せず、水分減少も見られず、柵状組織の組織構造が維持されていた。しかし、いずれの栽培法でも保存による成分量の減少はみられなかった。調理に及ぼす影響として、ほうれんそうの炒め物の硬さは有機栽培の方が慣行栽培に比べ硬く、生と比べた時の軟化度は小さく、有機栽培では調理後もほうれんそうの歯ごたえが残っていた。
  • 井上 瑞穂, 高橋 亜由美, 久保 加織
    セッションID: 1P-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】近年、生活スタイルの変化に伴って調理の簡便化が求められ、冷凍食品や総菜などが数多く販売されている。お弁当用の冷凍食品も多く、なかには自然解凍を提案する商品もあるが、解凍法による成分の違いは明らかになっていない。一方、野菜はビタミンや無機質、食物繊維の供給源として重要な食品であるが、栄養素のなかでもビタミンCは、調理中の損失が大きいことが報告されている。本研究では代表的な野菜の一つであるホウレンソウに含まれるビタミンC量の加熱と冷凍、および解凍による変化を調べた。
    【方法】試料には、生鮮野菜として2013年11月に岐阜県産、2013年12月と2014年4月に滋賀県産のホウレンソウを、市販冷凍食品として「ほうれん草3種のおかず」(N社製)をそれぞれ大津市内のスーパーマーケットから購入して用いた。ホウレンソウはゆでた後、醤油を添加して冷凍庫内で2週間冷凍した。解凍は電子レンジ解凍、あるいは20℃で5時間の自然解凍とした。ビタミンCはHPLCによって定量した。
    【結果】ホウレンソウ中の総ビタミンC量は、試料間でのばらつきが大きく、収穫時期、個体や部位による含有量の違いが大きくみられた。ホウレンソウをゆでると加熱による酸化、分解、水への溶出により総ビタミンC量は大きく減少し、醤油を添加するとさらに減少したが、冷凍による変化はあまりみられなかった。生鮮野菜から調製した冷凍品も、購入した冷凍食品もともに自然解凍よりも電子レンジ解凍の方がビタミンCの残存率が高い傾向が認められた。これは、電子レンジ解凍では内部温度の上昇により酸化酵素が失活するためと考えられ、解凍には電子レンジを用いる方が望ましいと判断した。
  • 小寺 真実, 原 知子
    セッションID: 1P-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】緑色野菜の茹で方については、茹で条件をはじめ多くの報告があり、教科書やインターネット上においても記述が多い。一般的にはたっぷりのお湯で少量の塩を入れて短時間で茹で上げる、ということが定着している。しかし、その根拠については食塩が必要、不要という別内容のものもある。そこで、茹で条件とその効果についての資料を比較検討したうえで、実際の調理において肉眼的に認識されやすい色に着目して、条件による変動が調理初心者にも、理解しやすい視覚で判断することができる資料を作成することを目的とした。
    【方法】1)ホウレンソウの茹で方についての記述を、辞典、教科書、インターネット検索、論文について、比較検討した。2)ホウレンソウの茹であがりを視覚的に表現するために、実際に茹で実験を行った。実験試料については、神戸市内で市販されている兵庫県産ホウレンソウ(リード種)を用いた。食塩濃度を0,1,2,3%の茹で湯50mlにホウレンソウを投入し、投入後、1,3,5,10分加熱したもの、さらに水、水(ふたあり)、重曹添加、食酢添加、硫酸銅添加で、同じく1~10分加熱したものを試料とした。色の測定は測色色差計ND-1001DP型(日本電色工業)を用い、肉眼観察を表現するために写真撮影、透過光による写真撮影を行った。
    【結果】茹で方の記述について内容が異なるように解釈できるのは、色、硬さ、あく抜き、栄養素の損失等の観点が混在していることも一因であると考えられた。従って、これらを整理した教材が必要であると考えられる。色についてはおいしさ要素として肉眼的に意識されやすい側面であるので、調理初心者向けに影響因子とその結果が視覚的に一覧できる資料を作成した。
  • 鶴田 裕美, 柘植 圭介, 吉村 臣史, 澤田 和敬, 永尾 晃治, 柳田 晃良
    セッションID: 1P-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】佐賀県の特産物であるレンコンは、通常4~6節からなり、一般的に外見や味が良くないと言われている下位節部位の廃棄率が高く、その有効利用が望まれている。一方、ポリフェノール含量は、良品質なレンコンに比べて、廃棄処分されている未利用な規格外レンコンで高い傾向がある。そこで、本研究では、レンコンの未利用部位を機能性食品として有効利用するために、レンコンを節または部位(皮、実、節)ごとに分け、栄養成分および抗酸化活性について調べた。
    【方法】佐賀県白石町で栽培されたレンコン(品種:金澄8号)を試料として用いた。6節からなるレンコン3本を各節ごとに分け、乾燥粉末を調製し、水分、タンパク質、アミノ酸、デンプン、ポリフェノール含量および抗酸化活性(DPPH法)を測定した。また、皮、実、節の部位ごとに分けたレンコンについても同様に分析を行なった。
    【結果】節ごとに分析した結果、ポリフェノール量および抗酸化活性は、下位節(6節)で最も高かった。タンパク質含量は、上位節(1節)から下位節になるに従って低下した。デンプン含量は、6節で顕著に低値を示し、他の1~5節で大差は認められなかった。アミノ酸組成については、上位節側でアスパラギン酸が少なく、アルギニンおよびアラニンは多い傾向が認められた。部位ごとのポリフェノール量は、実に比べて皮で約2倍、節で約5倍の値を示し、抗酸化活性についても同様の傾向が認められた。したがって、レンコンは節や部位ごとで成分含量が異なり、特に未利用な下位節や節部分は、抗酸化性を有するポリフェノールの含量が多く、機能性食品の原料として有用性が高い可能性が示唆された。
  • 村上 恵, 池田 香織, 渡部 真理子, 安本 理恵
    セッションID: 1P-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】干し野菜は独特な歯ごたえが生まれ,味が染み込みやすく,調理時間が短縮できると考えられている。そこで本研究では,干し野菜としてよく用いられるダイコンについて3日間の天日干しを行い,抗酸化性や歯ごたえ,味の染み込みやすさに対する影響を検討した。またカルシウム(Ca)量の変化についても検討を加えた。
    【方法】ダイコンは5mm厚の輪切りにし,セルクル(直径6.5cm)を用いてくりぬいた。干しネットに入れ,南側のベランダで6時間乾燥を3日間繰り返した。干したダイコンについて水分測定,破断測定を行い,エバンスブルー染色により植物細胞の状態を調べた。ラジカル捕捉活性はDPPH吸光度法,還元糖量はSomogyi-Nelson法,Ca量は原子吸光度法で測定した。各項目とも生,1日干し,2日干し,3日干しの変化を測定した。
    【結果】破断特性では破断応力が生<1日干し<2日干し<3日干しの順で大きくなった。生死染色では,生から3日干しにかけて死細胞の割合が増加した。ラジカル捕捉活性は1日干しから3日干しにかけて増加したが,還元糖量は,生から3日干しにかけて減少した。Ca量は生から3日干しにかけて増加した。干した日数が長くなるほどダイコンの表面が褐変化しアミノカルボニル反応が起こっていると考えられた。これらの結果より,干しダイコンは経時的に硬くなる一方で,味は染み込みやすくなると考えられた。
  • 宮澤 紀子, 木村 典代, 松岡 寛樹, 田中 進, 綾部 園子, 森光 康次郎, 中村 宜督, 小澤 好夫
    セッションID: 1P-31
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】近年,アブラナ科野菜から生成する辛味成分はガン予防効果のあることが疫学的・動物実験的に明らかとなってきている。辛味成分は植物組織が破壊されると,ミロシナーゼの作用により生成し,ミロシナーゼ活性は食塩により影響されることが知られている。漬物中の食塩濃度は,生活習慣病及び嗜好の観点からも重視されるため,アブラナ科野菜浅漬けの食塩濃度とイソチオシアナート生成に関して検討した。
    【材料及び方法】カブ,白菜を使用した。漬物容器に,それぞれの野菜500gに対し特級NaCl濃度1,2,3%とし,各容器を恒温器(5℃)に2日から3日間保存した。それぞれ50gを,pH6.5の緩衝液中でホモジナイズし,酢酸エチルにより辛味成分を抽出,減圧濃縮し,GC-MS分析に供した。内部標準イソチオシアナートと比較することにより,各サンプルのイソチオシアナート量を求めた。また,嗜好に関する官能評価も行った。
    【結果】カブからは,3-ブテニル,4-ペンテニル,2-フェニルエチルの各イソチオシアナートが同定された。2日間保存では,1%食塩濃度のイソチオシアナート量は約10mg/100g,2%食塩濃度では約12mg/100g,3%食塩濃度では約15mg/100gであった。3日間保存した場合でも3%食塩濃度で漬けたサンプルが最もイソチオシアナート含量が高かった。ハクサイは3-ブテニル,4-ペンテニル及び2-フェニルエチルイソチオシアナートを同定した。2日間保存では,1%食塩濃度のイソチオシアナート量は約3mg/100g,2%食塩濃度では約3.8mg/100g,3%食塩濃度では約4.3mg/100gであった。3日間保存した場合でも3%食塩濃度で漬けたサンプルが最もイソチオシアナート含量が高かった。官能評価の結果から,カブ,ハクサイともに2%食塩濃度が最も好まれた。
  • 秋山 久美子, 稲岡 朋子
    セッションID: 1P-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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     【目的】微酸性電解水は、有効塩素濃度が低いにもかかわらず、高い殺菌効果を持ち、安全かつ安価であるため、水道水と同様の感覚で使用することができる。微酸性電解水で食材を処理しても、風味や食感に影響は少ないという利点がある。現在、食品加工の現場では、機械、設備の洗浄のみならず、カット野菜の洗浄・殺菌にも用いられている。本研究では、切削等により褐変しやすいゴボウを試料として、微酸性電解水の褐変防止効果について検討を行った。
    【方法】水洗いしたゴボウの中央部から下部にかけての内部(木部)をコルクボーラーで切り出し、試料とした。試料を5g秤取し、5倍量の微酸性電解水とともに10000r.p.m.で3分間ホモジナイズした。No.2のろ紙で自然ろ過したろ液を試料溶液とし、分光色差計にかけ、色調を測定した。イオン交換水を比較検討のために用いた。微酸性電解水の効果を浸漬温度、時間等変化させて検討を行った。
    【結果】微酸性電解水中の有効塩素濃度の違いによるゴボウの褐変抑制効果の影響について検討を行った結果、濃度の高いほど効果のあることが分かった。また、浸漬液の温度を変化させたところ、温度の高いほど効果的であった。微酸性電解水は、イオン交換水と比較してゴボウの褐変防止効果があったものの0.1%酢酸溶液よりも効果が認められなかったが、微酸性電解水は味の変化もなく、人体に安全な水であるため使用後のすすぎが必要ない。殺菌効果もあるため、保存性が高まること考えられた。
  • 亀岡 麻依子, 柘植 光代, 岩崎 裕子, 大越 ひろ
    セッションID: 1P-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】近年,食べ物のまとまりをよくするために短時間の撹拌操作のみでゲル化するゲル化剤の開発が行なわれている。このゲル化剤は,乳化剤などを含む液体と撹拌することにより泡沫を含むゲルの調製が可能となる。そこで本研究では,このゲル化剤を用い,含泡ゲルの力学的特性に及ぼす豆乳濃度の影響について検討を行なった。
    【方法】豆乳に蒸留水を加え,濃度を40,60,80,100%に調整した豆乳溶液にゲル化剤を2.0%添加し,バーミックス(12,000回/分)を用いて0.5,1,3,5分撹拌した後,20℃の恒温器内で60分静置し,含泡ゲル試料を調製した。試料についてテクスチャー特性,比重および動的粘弾性を測定した。
    【結果】撹拌時間0.5~3分では豆乳濃度にかかわらず,硬さの値が近似したが,5分では豆乳濃度の増加に従い上昇した。豆乳濃度と比重の関係をみると,硬さと同様,5分になると豆乳濃度の増加に従い上昇した。そこで,撹拌時間の短い0.5分と最も長い5分試料について比較を行なったところ,いずれの撹拌時間でも豆乳濃度の増加に従い硬さは上昇したが,0.5分試料では豆乳濃度の増加に従い比重は低下し,逆に5分試料では上昇した。ひずみ依存測定では,いずれの豆乳濃度においても貯蔵弾性率G′は撹拌時間の増加に従い上昇した。また,周波数10rad/secにおけるG′と撹拌時間の関係をみると,G′は撹拌時間の増加に従い上昇した。一方,10rad/secにおけるG′と比重の関係からは,撹拌時間による影響はみられず,ゲル内部の気泡の状態は微小変形領域に反映されないことが示された。すなわち、微小変形領域のゲルの特性は気泡ではなく、分散媒の影響を受けると推察されるが、検証にはゲル内部の気泡状態を確認する必要がある。
  • 島田 和子, 西村 沙紀, 中村 知実, 林 紗弓
    セッションID: 1P-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】有色大豆の一つである赤大豆は地域特産物として栽培されているが、その種皮の色素成分はこれまで報告がなく、その加工品の特徴も十分に知られていない。そこで今回、赤大豆種皮の色素成分を明らかにするとともに、赤大豆を用いて調製した豆乳の特徴を調べ、黒大豆と黄大豆の豆乳と比較した。
    【方法】試料大豆は赤大豆(山形県産、福井県産、島根県産)、黒大豆(北海道産光黒、茨城県産関東115号、山口県産のんたぐろ)、茶大豆(秋田県産茶豆),黄大豆(佐賀県産フクユタカ)を用いた。種皮のアントシアニン組成量はHPLC、プロアントシアニジン量はバニリン法、総ポリフェノール量とDPPHラジカル消去活性は常法にて測定した。調製した豆乳のアントシアニン、イソフラボン、DDMPサポニングループ、遊離糖は各々HPLC、色調は測色色差計、粘度はB型粘度計で測定し、官能評価は評点法で行った。
    【結果】赤大豆種皮のアントシアニンはペラルゴニジン-3-グルコシドであり、黒大豆のアントシアニン組成と異なった。赤大豆種皮は黒大豆種皮と比べるとアントシアニン量、プロアントシアニジン量、総ポリフェノール量が少なく、抗酸化能も低かった。山形県産赤大豆種皮のアントシアニン量は赤大豆の中で最も多かった。赤大豆豆乳の色調は薄い桜色であり、2週間の4℃保存後でも安定であった。赤大豆豆乳のイソフラボン量とサポニン量は黄大豆豆乳と大差はなかったが、スクロース量は多く、甘味はより感じられる傾向があった。赤大豆豆乳の粘性は中程度であった。以上より、赤大豆は一般的な黄大豆と同様な機能性と嗜好性をもつ、かつ色調の珍しい豆乳の原料大豆となることが示唆された。
  • 笹原 麻希, 荒木 葉子
    セッションID: 1P-35
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年「和食」が世界遺産に登録されたことにより、日本の伝統的な料理だけでなく調味料も注目を集めており、我が国において身近な食材のよさを知るというのは非常に有意義である。多種多様な和の食材の中でも味噌は代表的かつ特徴的な発酵食品であり、地域色の強い調味料と言える。東京には伝統的な江戸甘味噌があるが、一般的に知られているのは信州味噌の類である。江戸甘味噌が広く認知される機会を創出し、普及を図ることは「地産地消」につながり、さらには「東京の味」をその他の地域に発信するきっかけともなる。そこで、江戸甘味噌の特徴を生かした活用方法を検討することとした。【方法】家庭で使用している味噌の種類や形態、購入基準などとともに江戸甘味噌の認知度について新渡戸文化短期大学学生80名を対象に自己記入式留置法によるアンケートを実施した。また、江戸甘味噌の用途拡大を狙って洋食料理や菓子への応用検討を行った。試料としては都内で製造されている、あぶまた味噌社製「江戸甘味噌」を用いた。【結果および考察】味噌の種類としては米味噌、だし入り調合味噌を使用し、価格を購入基準とすることが多いが、江戸甘味噌はまったく知られていなかった。そこで、ハンバーグ、ニョッキ、バーニャカウダ、パウンドケーキ等のメニューへの江戸甘味噌応用レシピを考案した。デミグラスソースとバーニャカウダソースで当該味噌の使用有無を対比したところ「旨味」と「こく」の項目において危険率5%で江戸味噌を使用した方が有意に好まれた。本研究に用いた江戸味噌は、独特の工程と豊かな米麹使用量によって塩分が少なく甘みが強いという特徴があり、料理に「こく」のある深い味わいを付与できることがわかった。
  • 長尾 慶子, 久松 裕子, 小田 宗宏
    セッションID: 1P-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】味噌は生活習慣病をはじめとした様々な疾病の予防や、毎日の健康づくりに有用な食品として注目されている。中でも愛知特産の豆味噌は、蒸気で蒸した大豆全てを麹としているので、他の味噌と異なり、色、味、香り等において独特の風味を有している。我々は、豆味噌の地域性の拡大と利用頻度の向上を目指し、その風味を生かした日常食として利用しやすい味噌レシピを作成し、抗酸化能及び嗜好性についての測定・評価を行った。
    【方法】一般的な料理として9種類のレシピを選択し、通常の味噌なし料理と、材料中の塩分を豆味噌で代替した料理を調製した。各料理は、前もって塩分計を用いて塩分濃度が同濃度となるように味噌の添加量を調整した。次に各料理を凍結乾燥後、超純水で抽出し、化学発光法を用いて、AAPHにより発生させた活性酸素のペルオキシラジカルの捕捉活性を測定し、得られたIC50値(%)から抗酸化能を評価した。さらに、味噌入り料理についての嗜好度を、調理科学研究室員をパネルとした9段階嗜好尺度法により官能評価した。
    【結果】提案した9種類のレシピにおいて、豆味噌入り料理の方が豆味噌なしのいずれよりも抗酸化能が高い結果となった。特に豆味噌添加後に加熱調理を行うレシピ料理にその傾向が顕著に見られた。味噌には抗酸化物質が多いことが知られているが、調理操作の違いにより抗酸化能を発揮する効果が異なることも示唆された。さらに官能評価の嗜好意欲尺度結果からも、豆味噌を加えることで高い評価となり好まれるレシピとなっていた。以上より、豆味噌は、日常の調理に利用し、さらに調理手法を工夫することで、抗酸化能をより高め、嗜好的にも好まれる料理として提案できることが示唆された。
  • 孫 潔慧, 白杉(片岡) 直子, 本多 佐知子, 堀江 孝史, 丸山 達生, 大村 直人
    セッションID: 1P-37
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】省エネ・低炭素化を目的とした加熱調理の研究が活発に行われているが、これらに「食の安全」の視点を盛り込んだ研究はほとんど見当たらない。われわれは、高温加熱調理時にアクリルアミドなどの毒性化学物質が非意図的に生成されることに着目し、食の安全の観点からは、日常の調理において、「焼く」、「炒める」、「揚げる」の乾式加熱調理法に対して、「茹でる」、「煮る」、「蒸す」の湿式加熱調理法の割合を増やすことが望ましいと考えた。しかし、先行研究では、湿式加熱のほうが乾式加熱よりエネルギー負荷が大きいことを報告している。そこで、本研究では、茹で加熱を中心に根菜類の最適加熱条件を明らかにする。根菜類の中でも特に軟化に時間を要するニンジンに着目した。ニンジンを茹でた際の試料の硬さの変化を測定し、官能検査から得られた適当な軟らかさになる最適加熱条件を熱源や加熱方法を変えて調べることを目的とした。
    【方法】直径4.0cm、厚み2.0cmのニンジンをガス・IHを熱源として茹で、物性測器 TPU-2DL(山電)にて、茹でニンジンの内輪・外輪の破断特性を調べた。官能検査により、食べるのに適した軟らかさになった茹であがりを評価した。
    【結果】官能検査で評価されたちょうどよい茹であがりに相当する最大荷重の範囲を5.5~4.0Nと定めた。本実験で用いた市販のニンジンは産地に季節により必要な加熱時間が異なった。そこで、同じ市販ニンジンに対して、最大荷重 5.5Nになった時点におけるガス及びIHの加熱時間とエネルギー消費量を比較した。
  • ‐お赤飯の調理‐
    能井 さとみ, 佐藤 恵, 後明 祐希, 田中 ゆかり, 藤本 真奈美, 鴫原 正世
    セッションID: 1P-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、新調理システムを導入する施設が増えていることから、栄養士養成校である本学でも授業に真空調理を取り入れ、その活用方法の検討を重ねている。 本研究では、北海道の郷土料理のひとつである甘納豆入り赤飯に着目し、真空調理のメリットを生かした赤飯調理を目的に、調理工程を検討し、冷凍保存中の食品微生物検査を行った。また、喫食時の加熱条件について官能評価を実施した。  【方法】赤飯調理工程。試料:うるち米、もち米、食紅水(食紅濃度0.005%)。調理条件:真空包装、スチームコンベクションオーブンで加熱(モード:スチーム、温度:98℃、時間:60分)、ブラストチラーで冷却。これらの条件のもと、米の下処理工程やパック方法などを検討した。食品微生物検査。一般生菌数及び大腸菌群は、加熱後摂取冷凍食品(凍結直前加熱)として、食品衛生法に基づく試験方法で検査機関へ依頼した。実施期間:平成26年3月25日~4月23日。試験方法及び項目:混釈平板培養法による一般生菌数試験、混釈重層平板培養法による大腸菌群試験、表面塗抹培養法による黄色ブドウ球菌試験、表面塗抹培養法によるセレウス菌試験。官能評価。実施日:平成26年3月24日、本学教職員の協力者37名。評価項目(加熱条件:電子レンジ、湯煎):見た目、味、食感、総合。【結果】調理工程検討の結果、予備実験の中から一番簡便にできる方法で仕上がった。食品微生物検査の結果、製造後1カ月間は全ての項目において食品衛生基準を満たしていた。喫食時加熱条件については、全ての評価項目において有意差は認められなかった。  
  • 杉山 智美, 斉藤 真理子, 市川 智美, 内山 けい子, 熊谷 美智世, 佐藤 瑶子, 香西 みどり
    セッションID: 1P-39
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:エネルギーを削減する加熱方法として、余熱の利用が挙げられる。本実験では、水を媒体とする「ゆでる」「煮る」という加熱操作を取り上げ、日常の調理において余熱調理を実施する場合の目安となる鍋の選定や水量設定等の条件を明らかにすると共に、野菜の調理条件を検討し、それを利用したレシピを開発することを目的とした。方法:素材や形状の異なる4種(アルミ製:18cm深型・2.7L容、ステンレス製:18cm深型・2.8L容、22cm浅型・2.8L容、22cm深型・4.9L容)の鍋を用い、1.6Lの水の加熱中と消火後の水温変化およびガス消費量を計測した。ステンレス製18cm深型の鍋を用い、水量を鍋の容積の30、60、80%として、同様の計測を行なった。実際の調理を想定し、余熱を利用した野菜の加熱条件を検討した。ジャガイモ、ニンジン、ダイコンは、試料の中心部が適度な硬さになるまでに必要な沸騰継続および余熱利用時間をシミュレーション*し、ホウレンソウ、モヤシ、ブロッコリー、インゲンは、予備実験により条件を決定した。余熱調理した試料について、煮熟度についての官能評価を実施した。結果:鍋の素材については消火後の水温下降における違いはほとんど見られず、形状については18cm径深型鍋の水温下降がもっとも遅かった。鍋に対する水の容積比がもっとも小さく、水温下降がはやい22cm径深型鍋の場合でも70℃以上の保持時間は消火後53分と長かった。余熱調理を行なった試料は、官能評価によりすべて煮熟の程度が許容された。以上に基づき、余熱調理を取り入れたミックスナムル、ふろふき大根、おでん等のレシピ開発を行なった。*遠藤ら(2013)日調科誌,46,31-38
  • 覆い時間短縮による余熱効果の検証
    大石 恭子, 石渡 仁子, 高崎 禎子, 中村 恵子, 松田 康子, 伊與田 浩志, 杉山 久仁子, 渋川 祥子
    セッションID: 1P-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでの研究1-3)において、230℃のオーブン加熱で、肉中心温度が70℃に到達後1分間の加熱、その後ホイルで肉を覆う余熱利用により、75℃1分間以上保持の衛生条件が満たされることを明らかにした。また熱容量の大きい角皿を用いた余熱利用であれば、65℃から1分間の加熱でも同条件が満たされたが、硬さの増加が促された。本研究では、衛生条件を満たし、かつ物性改善を図るために覆い時間短縮による効果を検討した。
    【方法】既報と同様に、厚さ15㎜の豚ヒレ肉9個を角皿に並べ、230℃設定のガスあるいは電気オーブンで加熱し、角皿対角線上の3個の試料中心温度を測定した。2個目の試料温度が65℃に到達して1分後に加熱を終え、直ちにアルミホイルで角皿を5分間(‘65℃・5分’)または30分間(‘65℃・30分’)覆った。75℃到達後1分間加熱し、30分間放置した試料(‘75℃・0分’)も調製し、加熱後の肉の重量、形状、硬さを測定し、官能検査を行った。
    【結果】 ‘65℃・30分’ ‘65℃・5分’ ‘75℃・0分’の75℃保持時間は6.7分、5.8分、4.6分であり、3試料間に有意な差(p<0.05)が認められた。加熱終了時の中心温度は、65℃加熱は74℃、75℃加熱は80℃であり、覆った試料は覆い3分後に最高温度に達しているため、昇温幅に覆い時間5分と30分の違いはなく、いずれの試料も最高温度は約82℃であった。加熱後の重量減少率は3試料間に差はなく、歪率20%における応力は‘65℃・30分’が最も大きく、最も小さい‘75℃・0分’との間に有意な差が認められた。官能検査においては‘65℃・5分’は‘75℃・0分’に比べて有意に軟らかいことが示され、覆い時間短縮による硬さ軽減の効果が認められた。1)2)調理科誌44,p72,p277 3)H25年度調理科学会大会発表要旨集p.56
  • モデル材料を用いた加熱実験との比較
    伊與田 浩志, 茅野 知広, 松本 泰希, 野村 周平, 山形 純子, 杉山 久仁子
    セッションID: 1P-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】スチームコンベクションオーブンは,庫内温度や水蒸気量等を設定できる機能を有した加熱装置として広く利用されている。しかし,実際の庫内の水蒸気量は設定値とは異なっており,機種によっても差異の傾向は異なっている1)。このことは,使用する機種によって設定する温度や水蒸気量の最適値が異なることを意味する。また,より目的にあった加熱調理を行うためには,利用者が装置の諸特性や実際の庫内の水蒸気量が食品に与える影響を理解しておくことが望ましい。そこで本研究では,装置の構造や制御方式をふくめて熱・物質移動の状態をモデル化し庫内状態と材料温度を数値計算により知ることで,装置及び水蒸気量に関する理解を深めるためのソフトウェアの開発を試みた。【方法】市販機種(GN2/3,4段,ガス式,一部改造)を対象に,まず,庫内の水蒸気量と温度変化の測定結果から,計算に使用する装置のボイラの蒸発能力,制御パターン,外気空気の吸引量(相当量),放熱量等を把握し,その結果をふまえて装置のモデル化を行った。形状や物理化学的な変化のない円柱状の含水耐火断熱レンガ(B-1(JIS-R2611),直径50mm,厚さ15mm,含水率約60%)をモデル材料とし,水蒸気量の設定値別(ホットエアー,20%,60%,100%)に材料中心温度,庫内の温度・水蒸気量の変化を測定し,計算結果と比較した。【結果】適切なパラメータ値を用いることで,4種類の水蒸気量設定値における庫内の温度・水蒸気量の予測結果は実測値とよく一致した。加熱後の重量減少率は,凝縮水挙動(オーブン皿への流下等)がモデル化していないため,予測値は実測値より少なくなる傾向になった。1)日本調理科学会平成25年度大会要旨集(1P-33)
  • 菊池 節子, 長谷川 浩司, 小幡 昭雄, 藤本 健四郎
    セッションID: 1P-42
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食塩の過剰摂取は高血圧を引き起こすとされており、食塩摂取量のさらなる低減が望まれている。そこで本研究では、食塩嗜好には慣れの現象がみられるとの報告があることから、通常の濃口醤油の半分の食塩含量である減塩醤油を継続使用した場合の低塩に対する慣れの影響について検討した。
    【方法】対象者は女子大学生12名で、A.一人暮らし、B.日常的に濃口醤油を使用、C.食塩濃度差識別試験に正解、を条件とした。実施した試験は次の通りである。(1)鹹味嗜好試験(1回目):食塩濃度の異なる醤油で調理した「マグロ刺身」「高野豆腐含め煮」の嗜好調査。(2)減塩醤油生活(36日間):調理に使用する醤油をすべて減塩醤油(食塩含量7.8%、キッコーマン社製)とした。(3)(1)と同様の鹹味嗜好試験(2回目)。(4)濃口醤油生活(49日間):使用する醤油を濃口醤油(食塩含量16.0%、キッコーマン社製)に変えた。(5)(1)と同様の鹹味嗜好試験(3回目)。なお、(2)および(4)の期間中、醤油使用量を記録した。
    【結果】(1)「マグロ刺身」鹹味嗜好試験において、減塩醤油生活後の試験で減塩醤油につけたものが濃口醤油より有意に好まれたが、その他の時期の試験では差は認められなかった。(2)「高野豆腐含め煮」の最も好まれた食塩濃度を減塩醤油生活前後で比較すると、生活後に低くなる傾向があった。(3)減塩醤油生活中の1日の醤油使用量は4.3±2.2g、濃口醤油生活中は3.1±1.9gで、減塩醤油の使用により食塩摂取量が約33%減少した。これらの結果は、減塩醤油を1ヶ月継続使用することが、低塩に対する慣れと、実質的な減塩につながることを示唆している。
  • 大島 裕子, 藤原 佳史, 亀岡 恵子, 朝田 仁
    セッションID: 1P-43
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 近年の健康志向の高まりにより、減塩食への関心が高まっている。調理においては、だしを効かせることでおいしく減塩できると言われており、これまでにも様々な知見が報告されている。これまでの我々の研究で、吸物においては鰹節だしに塩味増強効果と嗜好向上効果があることを明らかにした1)。本研究では、新たに料理3品を対象として、鰹節だしの塩味増強効果と嗜好向上効果を調べた。
    【方法】 料理は、ほうれん草のおひたし、炊き込みごはん、大根のみぞれ煮の3品とした。それぞれ、(1)通常品(2)30%減塩品(3)30%減塩品に鰹節だし添加、の3種類を調製した。塩味の強さ、おいしさの2項目について、-3点から+3点までの7段階の採点法にて官能評価を行った。
    【結果】 塩味の強さに関しては、料理の種類に関わらず、30%減塩品よりも30%減塩品に鰹節だし添加のものが評価点は高かった。しかしながら有意差はなく、鰹節だしには塩味増強効果はないといえる。吸物における塩味の強さは、だし濃度が増加することで有意に強くなったことから1)、料理によって鰹節だしの塩味増強効果に違いがあることが明らかとなった。おいしさに関しては、吸物ではだし濃度が増加することで有意に評価点が高くなったが1)、本研究に供した料理では、鰹節だしによるおいしさの向上は認められなかった。鰹節だしの塩味増強効果と嗜好向上効果は、料理により大きく異なることが明らかとなった。
    1)  大島他:日本調理科学会平成25年度大会研究発表要旨集(2013)
  • 窪田 彩香, 石川 恵美, 佐藤 幸子
    セッションID: 1P-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】西洋料理ではワインビネガーにハーブ類を漬け込み、お酢特有の刺激臭を緩和し、調味料として広く利用されている。そこで本研究では、ハーブビネガーを調製し、お酢の刺激臭の軽減効果についてハーブの匂いがどのような変化をもたらし、ビネガーの匂いに影響を及ぼすのかについて検討することを目的とした。
    【方法】ハーブ類はディルとローズマリーを試料とし、エスビー食品㈱から提供いただいた。ビネガーはマイユ白ワインビネガー(輸入者:エスビー食品㈱)を使用した。ハーブビネガーは、ディルとローズマリー各15gを白ワインビネガー500mlに漬け込み、冷暗所に保存し調製した。香気成分は、固相マイクロ抽出法(SPME)により香気成分を捕集し、GC/MS分析およびGC-O分析を行った。調整したハーブビネガーについて、選定パネルによる匂いの官能評価を実施した。
    【結果】GC/MS分析の結果、ハーブ類の主要な香気成分はディルがα-phellandrene、p -cymene、dilletherであり、ローズマリーはlimonene、linalool、borneolであった。ワインビネガーの主要な香気成分はAcetic acidであった。GC-O分析の結果、ディルビネガーは青っぽい匂いのdillether、ローズマリービネガーでは柑橘様のlimoneneと甘い匂いのlinalool が確認できた。官能評価の結果、ディルビネガーは調製3日の評価が高く、調製期間が長いほど匂いは強くなったが、匂いの変化は感じられなかった。ローズマリービネガーでは調製7日までは甘い匂いであったが、調製期間が長くなると柑橘様の匂いに変化し、嗜好的評価が分かれる結果となった。
  • 大橋 きょう子, 相馬 邦彦, 武田 恒幸, 澁谷 忠久
    セッションID: 1P-45
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高オレイン酸ひまわり油は酸化安定性が高く、LDLの抗酸化能を向上させることから機能性を有する食用油として注目されている。しかし、調理性及び嗜好性に関する研究は少ない。そこでオレイン酸の嗜好性に着目し、官能評価により非加熱及び加熱調理における嗜好性を明らかにすることを目的とした。【方法】試料油に高オレイン酸含有ひまわり油、対照油にキャノーラ油を用いた。本学学生20名をパネルとした。フレンチドレッシング(油量50%)、マヨネーズ(80%)、野菜の炒め物4種(ピーマン、ニンジン、ナス、モヤシ)、スクランブルエッグ、チャーハンは各重量の8%油量、190℃で3~5分間加熱し官能評価に供した。①におい(油臭さ)②油っぽさ③コク④あっさり感⑤食材の風味⑥総合的な好ましさ、について7段階評点法で評価させt検定により解析した。【結果】1.試料油は対照油に比べて有意に色が薄く、ややにおいが弱かった。2.試料油で調製したドレッシングは、有意に酸味が強く油っぽさや油のコクは弱いと評価された。3.マヨネーズは、単独で味わった場合には油臭さが弱く総合評価は高い傾向を示した。茹で野菜と和えた場合の総合評価には顕著な差は認められなかったが、試料油で調製した方は有意にさっぱりしていると評価された。4.試料油で炒めたニンジンは総合評価が有意に高く、チャーハンは食材の風味が強いと評価された。5.吸油量の多かったナスは、対照油を用いた方が有意に油臭いと評価された。加熱後の対照油のPOV及び遊離脂肪酸は、試料油と比べて高値を示したが重合物に差は認められなかった。食材により出来上がりの風味及び味の感じ方に若干の違いが認められた。
  • 菊﨑 泰枝, 湯川 梨紗, 中屋 麻衣, 源馬 絵美, 中村 美月, 小林 慧子
    セッションID: 1P-46
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】わが国では食品の抗酸化力の統一指標が確立され、将来的にはその指標のデータベースを栄養疫学研究のツールや日常の食事管理に活用し、国民の健康に寄与することを目標としている。本研究ではポリフェノール系抗酸化物質の抗酸化力を示す統一指標のORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)に着目し、食品のORACを栄養価計算に準じた方法で活用することへの有用性や問題点を明らかにすることを目的とした。
    【方法】野菜を中心とした食品30種とそれらを食材とする5種の野菜料理〔非加熱料理:野菜ごま酢和え、加熱料理:きんぴら(炒)、なすの味噌田楽(焼)、ほうれん草の白和え(茹)、野菜スープ(煮)〕を実験対象とした。各食品を下処理後直ちに凍結乾燥して非加熱食材を、5分間蒸し加熱し凍結乾燥して加熱食材を調製した。加熱料理は野菜スープを除きスチームコンベクションオーブンで調理し、調理後の各料理を凍結乾燥した。凍結乾燥試料を溶媒抽出により水溶性と脂溶性画分に分画後、ORAC、DPPHラジカル捕捉能、総ポリフェノール量を測定した。
    【結果】食品のORAC-DPPHラジカル捕捉能、ORAC-総ポリフェノール量の間には1%以下の危険率で有意に正の相関があった。しょうが以外の食品の抗酸化力、総ポリフェノール量への寄与率は水溶性画分が脂溶性画分よりも大きかった。各食品の加熱前後の抗酸化力、総ポリフェノール量に顕著な差は認められなかった。各食品の測定値から算出した料理1食分の抗酸化力、総ポリフェノール量の予測値と実測値を比較したところ、概して抗酸化力の指標としてはORACの方がDPPHラジカル捕捉能より妥当性が高いと推察された。
  • 保育所・幼稚園児の調査より
    阿部 優子, 齋藤 理沙, 石村 由美子
    セッションID: 1P-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】幼稚園児・小学生を対象に食生活調査を行い,子どもを取りまく実態の側面を明らかにして,食育の内容に役立てると共に,より良い食生活のあり方を探ることを目的とした。前報「その1」では,保育所及び幼稚園に通園する園児の食事の摂取状況や食事に伴う生活環境の実態等の調査結果について報告した。本報告では,間食の摂取状況や外食の利用状況について,また,食事中の様子等についての調査結果を報告する。
    【方法】平成24年11月から平成25年1月にかけて,郡山市内の保育所5か所,幼稚園2か所,小学校3か所へアンケート用紙を配布し留置き法により調査を実施した。今回は保育所及び幼稚園に通園する年少・年長児321名を取り上げ,間食の摂取状況や外食の利用状況,食事中の様子等についての調査結果を集計し,分析を行った。
    【結果】集計の結果,95%以上の高い割合で間食を与えており,与える理由としては「子どもが欲しがるため」との回答が,年少・年長児とも50%以上の高い割合であった。与え方として年少児で最も高い回答は「分量・時間を決めて与える」が48%であったのに対して,年長児は40%で第2位。一方年長児で最も高い回答は「欲しい時に分量を決めて与える」が41%であったのに対して,年少児は35%で第2位という結果であった。年少児には間食の摂取時間を守らせたいといった思いが見受けられた。既製食品の利用状況では,「時々利用する」との回答が約80%と最も多く,次いで「よく利用する」との回答が約15%と年少・年長児とも同率であった。その理由として,「調理の時間がない」との回答が約70%と高く,調理時間短縮のための手段として利用している傾向が見られた。
  • -保育所・幼稚園児の調査より-
    齋藤 理沙, 阿部 優子, 石村 由美子
    セッションID: 1P-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】幼稚園児・小学生を対象に食生活調査を行い,子どもを取りまく実態の側面を明らかにして,食育の内容に役立てると共に,より良い食生活のあり方を探ることを目的とした。前報「その2」では,保育所及び幼稚園に通園する園児の間食や外食についての利用状況や食事中の様子等についての調査結果を報告した。本報告では,食事を通しての家族との関わり,食前食後の過ごし方等についての調査結果について報告する。
    【方法】平成24年11月から平成25年1月にかけて,郡山市内の保育所5か所,幼稚園2か所,小学校3か所へアンケート用紙を配布し留置き法により調査を実施した。今回は保育所及び幼稚園に通園する年少・年長児321名を取り上げ,食事中の会話,好き嫌いに対する対応等,家族との関わりや,「いただきます」「ごちそうさま」等のあいさつ,歯磨きの状況等についての調査結果を集計し,分析を行った。
    【結果】集計の結果,好き嫌いが多いと回答した割合は年少児30%,年長児19%と年少児が高い値を示していた。また「今日のご飯はなぁに」などと言うことはありますか?との問いで「よくある」と回答した割合が59%の年長児に対し,年少児は49%と若干ではあるものの年少児に低い値が認められた。このことから,成長につれて家族とのコミュニケーションを積極的に取ることができる年長児の方が,自分の好みを伝えたり,食に対する興味を示すことで,徐々に好き嫌いの範囲が狭くなって行くのではないかと考えられた。好き嫌いの多い子どもを心配する保護者が多く見られたことから,子どもたちが嫌いな食べ物として挙げた食材を使用した調理方法について,その一部を紹介する。
  • 時友 裕紀子
    セッションID: 1P-49
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】山梨大学と山梨県北杜市食と農の杜づくり課(食農課)は北杜市の小学生対象教育ファームの運営とファームにおける食育の効果について検討を行っている。本研究は、北杜市立の15保育園が食農課と連携し、年間を通して行っている保育園の教育ファームに注目し、その活動の成果を明らかにすることを目的とした。また、就学前のファーム活動の課題や小学校入学後における継続したファーム活動の在り方についても考察した。
    【方法】2014年3月に山梨県北杜市立の15保育園に郵送法でアンケート調査を依頼した。ファームでの活動内容、活動に期待することや子どもへの効果、子どもの印象的な発語・エピソードおよび小学校入学後のファームや食育活動に期待することについて質問した。13園の園長、保育士、調理師計93名の職員より回答を得た。
    【結果】2013年度は、食農課職員とボランティアの指導による活動の日が約10日設定され、じゃがいもやトマト等の定植、だいこんなどの播種、野菜類の成長の観察・収穫やみそ作り,収穫物を利用したカレー作り、牛舎の見学とバター作りなどが行われた。保育園の職員は「食べ物や生命への感謝の気持ち」「収穫の喜びを味わう」「食べ物への興味」が得られることをファーム活動に期待していた。活動により子どもたちには「農作業や栽培を楽しみにするようになった」「食べ物の話をするようになった」等の変化がみられた。調理加工作業については評価する意見が多かったが、感染症を危惧する意見もあり、幼児期における食育活動の課題と考えられた。小学校入学後については、日常的、継続的、主体的に子どもが取り組めるようなプログラム設定が望まれた。
  • 塩田 二三子, 山本 明美, 豊原 容子
    セッションID: 1P-50
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】子どもへの食育は健全な心身と豊かな人間性を育むために重要であり、さまざまな取り組みが提案・実行されている。これらの取り組みにおいて、子どもの食に対する意識を高めることはもちろん、その保護者の意識の向上も重要であると考えられる。そこで今回、親と子を対象にしたクッキング教室を企画し、その効果と問題点について検討した。
    【方法】付属幼稚園児(4~6歳児)およびその保護者の希望者21組42名(男児9名・女児12名、父親4名・母親17名)を対象に親子クッキング教室を実施した。今回は、全行程子どもひとりでも容易にできる操作方法となるよう工夫した「ピザ」を献立として取り上げた。また、素材本来の味を経験してもらうために、鶏ガラからとったブイヨンとたっぷりのニンジンを使用したポタージュスープを提供した。実施10日後、保護者を対象にアンケート調査を行った。その結果と当日のビデオによる観察記録をもとに、このプログラムの効果と親子クッキング教室における問題点について検討した。
    【結果】アンケート調査(回収率100%)の結果、参加者から高い満足度を得られたことがわかった。また、子どもたちが調理を体験することで、プログラムにおいての楽しい体験に留まらず、「これまで食べることができなかった野菜の克服」「調理への関心の高まり」等、その後の食に対する意識も変える効果が見られたことが明らかとなった。さらに、保護者においても同様の意識の変化が認められた。本プログラムは、希望者が対象であったため、食への関心が高い保護者が参加されたと考えられるが、保護者の調理経験にはかなりの差が見られ、親子クッキングで食育を行う時の問題点となると考えられた。
  • 三浦 加代子, 岩城 啓子, 片平 理子, 川西 正子, 岸田 恵津, 坂本 薫, 作田 はるみ, 橘 ゆかり, 中谷 梢, 堀内 美和, ...
    セッションID: 1P-51
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】小学校家庭科の学習指導要領において,「米飯及びみそ汁の調理ができること」という項目があり,調理の基礎に関する重要な指導事項として位置付けられている。炊飯の学習では,「基礎的・基本的な知識及び技能を身につけることをねらいとしており,米の洗い方,水加減,浸水時間,加熱の仕方,蒸らしなど,固い米が柔らかい米飯になるまでの一連の操作や変化を実感的にとらえ,炊飯することができるようにする」と記載されている。一方,今日では,家庭での炊飯はほとんどが自動炊飯器で行われており,家庭で鍋を使ってご飯を炊くという機会が少ないため,鍋での炊飯を教える必要性はないのではないかという意見もある。そこで本研究では,学校現場での炊飯実習の現状について家庭科担当教員の意見を聞き,炊飯実習のあり方について考えていくことを目的とした。
    【方法】平成25年11月に,近畿2府4県各105校ずつ無作為抽出した合計630校の公立小学校の家庭科担当教員を対象に,家庭科の炊飯実習に関するアンケート調査を郵送法により行った。回収率は48.6%であった。
    【結果】炊飯実習はほとんどの学校で行っていたが,師範のみや実施していない学校も僅かにあった。約9割が鍋による炊飯を行い,鍋炊飯のうち約85%がガラス鍋を使用していた。自動炊飯器のみしか行わないところも僅かにあった。炊飯実習で困っていることは,火加減の指導,焦げること,浸水時間がとれないことなどが挙げられていた。児童の反応としては,自分たちでご飯がおいしく炊けたことを喜び,ご飯が炊けるまでの変化に興味をもっていたことが挙げられていた。炊飯実習の意義については,ほとんどが肯定的であった。
  • 伊藤 知子, 河口 文香
    セッションID: 1P-52
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】「素材から惣菜へ」といわれるように、家庭において食品の素材購入が減少し、惣菜(含む冷凍食品)購入が増加している。家庭における調理の機会が減少していることが考えられ、今後、調理を学ぶ場を確保していくことが重要であると考えられる。調理を学ぶ場として学校教育における家庭科の授業があげられる。高等学校の家庭科における調理実習の効果について明らかにすることを目的とし、大学生の食生活と調理力、調理力と高校時代の調理実習の関係について調査を行った。
    【方法】大学生および短期大学生を対象として、2012年5~8月に自己記入式質問紙調査を行った。質問内容は、普段の生活でどの程度調理をしているか、調理知識・技術について、高校時代の家庭科の授業における調理実習についてなど計26問であった。有効回答数は294部、有効回答率97.6%であった。
    【結果】日常的に調理をする・時々すると回答した者の割合は75%であった。よく作る料理は炒め物(78%、複数回答)であり、蒸し物(5%)、和え物(11%)、揚げ物(14%)は少なかった。得意料理があると回答した者は61%であり、その58%は家庭において修得していた。高校時代に調理実習の授業を受けたと回答した者は82%であったが、その回数は60%が5回以下であった。作った料理名は覚えていない者が大半であったが、デザートについては比較的よく記憶していた。高校時代に調理実習の授業があった者の方が切り方の名称、調味料の名前などの正解率、だしをとれる者の割合が高かった。調理力を高めるためには、日頃から継続的に食や調理に関わっていることが重要であると考えられた。
  • 八尋 美希, 秋武 由子
    セッションID: 1P-53
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】学生の調理技術の低下に伴い学生の調理実習の調理に携わる時間も年々長くなっていると感じている。実際に調理器具で調味料を計量するにも計量器の使い方から指導が必要であり、調理以前の準備の段階でも十分な時間を確保しなければ、授業時間内に終わることが困難であるため、指導の工夫をせざるを得ない。そこで学生がこれまでにどれくらいの調理技術や知識を習得してきているのかを調査することとした。 【方法】(1)調味料の計量とその誤差の測定を調べた。(2)調理の基本(切り方および調理操作)を本学学生計239名に行った。(3)きゅうりの輪切りテスト:きゅうり1/2本を2mm以内のうす切りにし、30秒間に切れた枚数の測定を行った。測定は2010年-2012年の本学学生計182名に行った。(4)りんごの皮むきテスト:りんご1/2個の皮をむく時間を測定した。なお、測定対象者はきゅうりの輪切りテストと同じ学生である。 【結果】調理実習でよく使う調味料とその計量による誤差は薄力粉および上白糖に関しては、測定する年により測定結果にばらつきが見られた。植物油を除く液体に関しては控えめに計量する傾向が見られた。  材料の切り方の名称については、「せん切り」、「輪切り」を答えることが出来た学生が約7割以上で比較的高かった。きゅうりの輪切りテストは平均13.23~19.20枚であった。2回目のテストでは1回目よりもその枚数は増加した。りんごの皮むきテストでは廃棄率の平均は18.29~20.47%、皮をむくのに費やした時間は平均119~148秒であった。
  • ~ライ麦パン作り~
    塩田 良子, 政田 圭子, 高野 恭秀
    セッションID: 1P-54
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、栄養士養成校において学生の調理技術等の低下が言われている。そこで本学の実態調査を行い、少しでも改善できるきっかけを得るために、今回学生の関心度が高かったパン作りを、授業内で取り入れた。その結果について報告する。 【方法】本学食物栄養学科栄養士コース2年生(41名)に行った実態調査(調理に関する22項目)の結果を基に、特別研究内(少数ゼミ)の学生11名を対象にパン作りを試みた。まずパンの種類を検討し、給食等で提供することを視野に入れ、栄養価が高く、主食パンとして食されるライ麦パンとした。先に広島市内近郊のライ麦パン12種で食味をし、学生が好むライ麦の配合割合を把握し、パン作りを数回行った。その都度嗜好や作り方についての検討を重ね、製パン技術に併せて調理への関心度を確認した。 【結果】普段、献立作成・試作や調べ学習など授業外での課題取り組みについては、消極的な反応をし、下調べが不十分であることが多い。本研究では、もとから関心度が高かったパン作りを行うことで、取り掛かりが前向きとなり、毎回が楽しいと感想を述べる学生がほとんどであった。また授業外時間でも自らパン作りを行うようになり、市販のパンにも関心が高くなり、レシピをまとめる、他者から意見をもらい次に活かすといった行動が見受けられるようになった。近年の本学学生は、本来調理に対し無関心ではないが、何から取り組めば良いのか、どこを工夫すればよりおいしいものが作れるようになるのかといった探究心は乏しい。何か関心のある料理をきっかけにすることで、探究心を拡大することができるのではないかと推察されるため、今後全学生への有効性を検討していきたい。
  • ~習熟度自己評価と作業動作から~
    澤田 千晴, 安田 智子, 宮地 博子, 北山 育子
    セッションID: 1P-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究では入学時と調理実習履修終了時の習熟度自己評価を比較し、2年間でどの程度の技術・知識を習得できたかを検討した。また、実習における作業動作から学生の実習への関わり方を明らかにし、様々な調理経験を持った学生が混在する中で、個々の習熟度を向上させるために、どのような指導方法が有効かを検討することを目的とした。【方法】対象者は短期大学生64名と専門学校生21名の計85名とした。調理実習における習熟度(5点満点)を自己評価させ、第1報の調査に加え履修終了時に行った。作業動作については、調理作業が比較的多い献立を選び、作業工程表及び8項目からなる作業確認プリントを用い、実習中の作業内容を調査した。実施時期は平成25年4月から平成26年2月である。【結果】習熟度平均値は入学時2.6から履修終了時4.2と大幅に上昇した。履修終了時で4.6以上は「計量に関わるもの」「衛生に関わるもの」「手作りのおいしさ」で栄養士として基本となる項目が高かった。習熟度上昇値については「和風だしの取り方」「文化釜でのご飯の炊き方」「栄養計算」で2.5以上となり、繰り返し行われている内容であった。作業動作は計量・切る・処理・加熱・調味・洗う・盛付・片付の8項目で学生の作業数平均は6.5個であり、7~8項目とまんべんなく作業に携わった学生は58.5%と半数を占めた。作業項目別にみると、「片付」が98.6%と最も高く「調味」については60.0%であった。作業動作を自ら確認することで作業の振り返りとなり、学生自身の実習への関わり方を再確認することができた。更に作業工程表を事前に作成し、終了後に修正することでスムーズな実習に繋げられるようになった。
  • 片平 理子, 池田 とく恵, 河村 美穂
    セッションID: 1P-56
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】「包丁を使う技能」は、基本的で重要な調理技能の一つであると同時に、調理を学び始めた学生が上達を実感しやすい技能である。家庭での調理経験が減っている現在、大学入学時に基本的な包丁技能が身についていない学生も多い。管理栄養士養成課程における効果的な教育方法を探る一環として、本研究では、情報量が多く、繰り返し確認できる「動画」を活用した調理技能の教育方法の開発に向け、入学時の学生を対象として、包丁の使い方の特徴と仕上がりとの関係を分析し、実習前後の変化についても明らかにする。
    【方法】管理栄養士養成課程1年生70名について、調理実習授業開始時(4月)と終了時(7月)に、キャベツの繊切りを20秒間行う様子をデジタルカメラで撮影した。動画データを基に、(1)姿勢、(2)利き手、(3)添え手、について10項目の評価項目を設定し、それぞれに作成した3段階の評価基準により評価した。仕上がり状態は3段階で評価し、使い方についての評価項目との相関の有無を調べ、実習前後の変化も調べた。
    【結果】4月には、幅1.5mm以内の繊切りに揃えて仕上げられた学生は約2割であった。包丁の握り方・構え方、添え手の指先の形は、ほとんどの学生が正しくできていたが、利き手を一定のリズム・速度で前に押し出すように動かす、添え手を包丁の腹に接触させ、切り幅を調節しながら動かす動作ができていたのは約6割であった。仕上がり状態と利き手・添え手の動きには正の相関があり、包丁を正しく使えれば、仕上がりが良くなることが確認された。半期の実習後には、利き手と添え手の動かし方に関する項目の評価得点は有意に増加したが、仕上がりには有意な変化は認められなかった。
  • 大貫 和恵, 坂倉 有紀
    セッションID: 1P-57
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
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    【目的】近年,我が国の食生活は大きく変容しており,食への意識も変わりつつある。そこで,今後の食市場の方向を担う若者の食意識や食行動について捉えることを目的とし,調査を行った。【調査方法】調査対象は,本学1年生140名(食物健康科学科(F科):66名,看護学科(N科):74名)とし,平成26年4月に留め置き法によるアンケート調査を行った。なお,対象者は,「家族と同居している」が82.9%,食事の主な調理者が「両親」で77.9%を示し,食環境に対して学科間に差がないことを確認した上で調査を行った。【結果】「健康に留意した食生活をしていますか」では,「している」「まあまあしている」が約50%を示し,健康的な食生活を心がけていた。食品や食生活の情報への関心度は,「大変ある」「ある」が77.9%と非常に高く,F科(83.3%)はN科(73.0%)より高かった(p<0.01)。その主な情報源は,「テレビ・ラジオ」(85.0%)であり,F科で「授業」「携帯」が,N科で「友人との会話」が高く,学科間での差が認められた(p<0.01)。また,食事の摂り方では,「朝食をとる」(61.4%),食事内容では「野菜をとる」(69.3%),食品の選択では「賞味期限」(57.1%)に最も留意していた。一方,「自分の健康づくりのために必要な食に関する情報が十分に得られているか」では,「どちらともいえない」「あまり得られていない」が66.4%を示したことから,健康や食に関する意識が高く,情報に関心があるものの,情報を得るための行動ができておらず,情報が十分に得られていない現状にあることが明らかとなった(p<0.01)。
  • 湯川 夏子, 森 絹予
    セッションID: 1P-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】平成25年12月「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、国内外から注目を浴びている。しかし、米の消費量の減少など、日本人の「和食離れ」が問題になっている。 本研究では、本学学生を対象とした質問紙調査を行い、「和食」に対する意識と、調理の実態について調査し、「和食」を次世代に継承するための方策を考察した。
    【方法】調査は、平成25年7~12月に本学学部生を対象に自記式質問紙による集合法にて実施した。質問内容は「調理状況」「和食に関する調査」「和食のイメージ」等である。配布数297票、有効回答数293票、有効回収率98.7%であった。
    【結果】「和食と聞いてイメージする料理」では「味噌汁」が全体の半数以上の票を得た。次いで「肉じゃが」「焼き魚」「寿司」という順であった。「和食」が一番好きと答えた学生は約52%であり、「洋食」「中華」と比べると人気が高かった。また、約95%以上の学生が「和食」を「好き」・「どちらかというと好き」と答えた。しかし、実際に和食を毎日食べている学生は全体のおよそ1/5であった。よく作る料理項目を見ても上位に和食は上がらず、また、約半数の人が和食を「あまり作らない」「全く作らない」と回答した。その理由としては、「作り方を知らない」「難しい」という回答が多く、和食は好きだが、実際に作らない人が多い現状が明らかとなった。イメージ調査において、和食を「作ってみたい」と回答している割合は高く、簡単な和食の作り方を支援していくことは、和食の継承のために重要であるといえた。
  • -大学生への食支援として-
    園田 純子, 有福 陽子, 大森 かおり, 乃村 沙耶花, 細田 眞美
    セッションID: 1P-59
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】大学入学までの学校教育の中で、家庭科やその他食に関する指導を受けてきた大学生であっても、自分自身で食事を作るための知識や技術が十分とはいえない。そこで、本学学生の食に関する実情をふまえ、自炊のための食情報誌の作成を検討した。【方法】自炊をテーマとした料理教室の開催(平成25年6月)と、本学全学部生(1307名)を対象とした食に関する調査(同10月、回収率83%)により、本学学生の食状況の実情を明らかにした。さらに家庭科教科書等を用いて、食の自立のために必要とされる内容を精査し、掲載する料理の作成・写真撮影、イラスト作成等を行い、パンフレットを完成するとともにその活用を検討した。【結果】全学調査より、1日3回食事をとっている人は自宅生、寮生共に80%以上で、一人暮らしでは67%であった。一人暮らしの人は、食生活の満足度が34%と他に比べて少なかった。一人暮らしは全学生の7割を占めており、積極的支援の必要性が示唆された。食生活を満足するための知識として半数以上が「バランスのとれた食事のとり方」をあげ、「簡単な調理方法や料理」がそれに次いだ。料理教室で得られた意見や評価をもとに、情報誌の内容は「準備する調理器具・調味料・食器類」「調理の基本知識(計量・切り方・火加減・調理用語・食材の保存方法・栄養バランス)」「基本的な料理の紹介と余ったときの一工夫」「参考資料やウェブサイトの紹介」とし、食事バランスガイドのシートも添えた。完成した情報誌は、退寮後一人暮らしを始める本学寮生全86名へ配布した。今後、大学主催の健康セミナー(料理教室)での使用や新入学生全員への配布を行うことにより全学生への食支援につながると思われる。
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