日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成28年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の203件中1~50を表示しています
口頭発表
  • 仲西 由美子, 入江 謙太朗
    セッションID: 1A-a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】玉ねぎを大規模な加工調理で使用する際、「焦げやすい」「離水する」といった特徴は製品品質上問題となる場合がある。我々はこの点を改善するため、調理加工後の品質に優れた品種の探索を行った。今回は北海道立総合研究機構北見農業試験場にて育成された新品種の玉ねぎ「ゆめせんか」の調理加工適性を評価した。

    【方法】「ゆめせんか」と既存の主要品種を用いて、それぞれ生鮮状態の玉ねぎのBrixと乾物率を測定した。さらに、加工として炒め調理とボイル調理を行い、炒め玉ねぎの色調、アミノ酸組成とボイル玉ねぎの硬さ、組織構造観察について評価した。また、炒め玉ねぎを用いたオニオンスープを調製し、官能評価を実施した。

    【結果】生鮮状態の「ゆめせんか」のBrixは9.2、乾物率は10.7%であり既存の品種と比べて有意に高かった。また、炒め玉ねぎの色調は薄く、既存品種と比較してメーラード反応を起こしやすいアミノ酸類が少ないことがわかった。さらに、顕微鏡観察から既存品種に比べて「ゆめせんか」は細胞の構造がしっかりとしていることがわかり、ボイル調理後でも硬さを維持していた。オニオンスープで官能評価を行ったところ、既存品種と比べて「甘味がある」「濃厚である」などの項目で有意に差があった。
  • 久松 裕子, 長尾 慶子, 小林 理恵
    セッションID: 1A-a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】我々は、野菜類の摂取量を増加させるための、効率のよい調製方法として、半乾燥状態に着目し研究を行っている。これまでに、野菜を半乾燥状態にした時の基礎特性について明らかにし、天日乾燥法による重量減少率30%試料が製品として適切であることを報告してきた。引き続き野菜を対象に半乾燥調製による糖度の変化と、適切な調味方法を検討した。 【方法】試料としてダイコン及びカボチャを取り上げた。これまでと同様に、天日及び恒温庫乾燥法による重量減少率30%の乾燥試料を調製し、生試料(重量減少率0%)を基準とした。これらを純水中で、中心部が98℃になるまで茹で加熱し測定試料とした。同様に調味を想定した濃度の塩水及び砂糖水中で茹で加熱した試料を測定に用いた。各試料はミキサーでペースト状にし、純水ならびに砂糖水での茹で加熱試料は糖度計にてBrix値を、塩水での茹で加熱試料は塩分濃度計で塩分濃度を測定した。 【結果】いずれの半乾燥試料も乾燥方法に関わらず、基準(生)に比べて糖度が有意に高くなった。このことは半乾燥調製時の濃縮によるものと考えた。また、砂糖水中で茹で加熱した基準(生)と純水中で茹で加熱した半乾燥試料は同程度の糖度になっていたことから、半乾燥にすることで砂糖を使用しなくても十分に甘味が感じられることが考えられた。また、茹で加熱後に生と半乾燥試料の塩分濃度(%)は同程度となっていた。半乾燥試料は茹で上がり重量が基準(生)の75%程度となっていたことから、試料中の塩分量は少なくなった。以上より、半乾燥野菜試料は野菜自体の甘味を生かしながら砂糖の使用量を減らし、食塩の摂取量も少なくなるように仕上げることが可能であると示唆された。
  • 熊谷 美智世, 佐藤 裕美, 佐藤 瑶子, 香西 みどり
    セッションID: 1A-a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】真空調理とは食材を専用フィルムに入れて真空包装し加熱する調理方法である。一般的に調味液と共に真空調理すると、食材へ味がしみこみやすいといわれている。野菜の調味料拡散には細胞膜機能が関わるが、食材を真空包装することと包装状態で加熱することに分けて、それらの影響を考察した報告はない。本研究では真空包装した野菜の加熱前後の食塩濃度を調べ、真空調理が試料の調味料濃度に及ぼす影響を検討した。
    【方法】2cm角ダイコンを試料とし真空包装後、真空包装状態または包装後袋から取り出して20℃で3日間保存、真空デシケーターで減圧処理(0 atm)の4条件で処理後、試料を0.5%食塩水に30~60分浸漬した。比較のため予備加熱で細胞膜機能が低下した試料も同様に浸漬した。直径4cm高さ2cm円柱型ダイコンを1.5%食塩水と共に真空包装または常圧でポリエチレン袋に入れ空気を抜いて袋口を縛り(常圧試料)95℃で3〜40分加熱した。重量と食塩濃度(モール法)を測定した。
    【結果】真空包装直後、包装後保存、減圧処理後の試料を袋から取り出して0.5%食塩水に浸漬した結果、各食塩濃度は増加せず予備加熱試料は浸漬時間の経過に伴い増加した。このことから真空処理が試料の細胞膜の半透性へ及ぼす影響は認められなかった。1.5%食塩水と共に真空包装した時、試料重量は3.2%増加し食塩濃度は常圧試料より0.1%高かった。真空包装試料の加熱3分後(中心温度34℃)も食塩濃度は常圧試料より高かったが、加熱10分(中心温度84℃)以降は差がなかった。以上より食塩水と共に試料を包装し加熱した場合、加熱後の試料食塩濃度は真空、常圧でほぼ同程度に仕上がることが示唆された。
  • 福田 ひとみ, 勝川 路子
    セッションID: 1A-a4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】日本人の食物繊維摂取量が少ないことが問題となっている。そこで、摂取量増加のために食物繊維を多く含む野菜の1つであるゴボウを用いたビスケットを作製し、その物性と官能評価について調べた。さらに、これを摂取したときの排便効果について調べた。 【方法】生のゴボウを加えたビスケット(以下、ゴボウ添加)を厚さ1、2、3mmで作製し、加えないものを対照として、ビスケットの物性と咀嚼回数の測定、5段階評価法による官能評価を行った。さらに、学生20人(便秘10人、非便秘10人)に対して6日間、毎食事前のビスケット摂取を二重交差試験法により実施した。ビスケットの量はゴボウ添加で1日当たりの添加食物繊維量が約5gとなる40gとした。排便状況調査票で、排便の回数、時刻、量を調査した。 【結果】ゴボウ添加の水分量と膨化率は対照の約50%であった。両群の吸水率に差はなかったが、膨潤率はゴボウ添加が大きかった。官能評価ではゴボウ添加は外観と固さの評価は低かったが、香りと味の評価は高く、総合評価は対照と同等であった。生地の厚さが厚くなるほど咀嚼回数は増えたが、3mmは咀嚼しづらく、総合評価は1mmの生地が最も高かった。排便量は非便秘群では、ゴボウ添加と対照で有意差はなかったが、便秘群ではゴボウ摂取により3日目以降から約90%の人に改善効果がみられた。これらの結果から、食物繊維を補助的に摂ることができるゴボウ添加ビスケットは、無理なく食物繊維摂取量を1日約5g増加させ、便秘を改善する効果があることが明らかとなった。さらに、ビスケットの厚さを薄くすることで食べやすくなり、高齢者にも提供できる可能性が示唆された
  • 早川 文代, 風見 由香利, 神保 聡子, 浦田 貴之
    セッションID: 1B-a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】油脂を用いた加熱調理の品質に油脂の風味は大きく影響し,油脂の原料によって,風味の質,強度,持続時間はさまざまに異なることが経験的に知られている.官能評価の一手法であるTemporal Dominance of Sensations(TDS) は,食べ始めてから後味まで,複数の官能特性の変化を継続的にとらえることができるため,油脂の風味の評価に有効であると考えられる.本発表では,加熱した植物油の風味をTDSによってプロファイリングしたので報告する.
    【方法】なたね油,パームオレイン,大豆油,こめ油,とうもろこし油の市販あるいは業務用同等品を用いた.ヒーティングブロックを用いて,各油を180℃で0,120分間加熱して試料油とした.評価項目は,先行研究および予備評価から,「青臭い」「甘い香り」等10項目を設定し,PCのモニタにランダム順に配置した.訓練された8人のパネリストが,試料油0.3gを口に入れ,180秒間,「支配的な(意識が向けられている)風味」を1つ選択し続ける評価に従事した.評価は4回繰り返し,それぞれの時間で何人のパネリストが選択したかの割合を各項目について算出し,TDS曲線を得た.
    【結果】加熱時間の異なる試料油を比較したところ,例えば,大豆油は,0分加熱では口に入れて約60秒間は青臭さや魚のにおい等複数の風味が有意であったが,120分加熱では初めの60秒間はほぼ魚のにおいのみ,といったように,加熱時間による風味の変化が,口に入れてからの経過時間の情報とともにTDS曲線から読み取れた.また,油の原料については,例えば,とうもろこし油は口に入れた直後にペンキのようなにおいがするものの,その後,主としてナッツのにおいや香ばしさが感じられるといった特徴を示すことができた.こめ油は,前半の甘い香りが特徴的で,これは,前報1)のTime-Intensityおよび多肢選択評価の結果を裏付けるものであった.1)早川他,日本調理科学会平成27年度大会要旨集,P53
  • 高橋 由希
    セッションID: 1B-a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】「コク」とは厚み、広がり、芳醇性、奥深さ、増幅感、重量感、持続性後味、まろやかさが口腔内で感じる感覚と言われている1)。従来、ゼラチン2)や酵母エキス3)等を添加した際にコクが増強されることが知られている。本研究では、ゼラチンの分子量に着目し、ゼラチンを酵素分解し、分子量の違いによるコク増強効果について鰹だしやチキンスープ、牛乳等で確認した。その中でも、牛乳への効果が高く、牛乳のコクは乳脂肪分に関係4)することから、乳脂肪感に着目し比較検証をした。
    【方法】1.ゼラチン及び分子量の異なるコラーゲンペプチドを牛乳に添加し、「乳脂肪感」について官能評価をした。2.全脂粉乳と脱脂粉乳から作成した乳脂肪分0、1、2、3%溶液を指標とし、乳脂肪分1%の溶液に、コラーゲンペプチド、ゼラチン、酵母エキスを添加し味覚センサーと官能評価により比較した。
    【結果】1.官能評価の結果から、平均分子量2,000~3,000のコラーゲンペプチドを添加した試料に、厚みや乳脂肪感といったコクを感じることができた。2.味覚センサーの結果では、平均分子量2,000~3,000のコラーゲンペプチドには、乳脂肪分の配合量を増やしたときと同様の乳脂肪感の増加効果があり、官能評価と同様の結果となった。以上のことから、ゼラチンを酵素分解した平均分子量2,000~3,000のコラーゲンペプチドには、乳脂肪感に対するコク増強効果が示唆された。
    1)日本調理科学会誌,43,327-332(2010) 2)日本調理科学会誌 ,36,55-62(2003)
    3)日本醸造協会誌,102,520-526(2007)  4)農業機会学会誌,75(1),37-44(2013)
  • 山崎 有希子, 片桐 実菜, 松本 理美, 深見 栄三, 内海 研二
    セッションID: 1B-a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】これまでに食用ゴマの劣化臭についてはゴマに含まれる脂質の酸化により発生することが報告されており、原料ゴマの色種、加工方法により程度が異なることが知られている。効率的な酸化劣化制御を行うためにこれらの違いを明確化するとともに、原因となる成分特定を行った。さらに長期品質保持に役立てるため、劣化臭発生メカニズムの推定を試みた。また、劣化臭制御法の1つとして、燻製処理の効果について検討した。
    【方法】金ゴマ、白ゴマ、黒ゴマのいりゴマとすりゴマ、そしてゴマの皮を試料とした。密封性の高い缶に食用ゴマを採取し、缶中の空気を酸素ガスで置換し、密栓後、55℃で保存し試料の酸化を促進した。一定期間保管後のサンプルの劣化臭を官能評価により評価した。劣化臭の原因成分の推定は缶内の気相成分をHSSE法により捕集後、GCMS分析により行った。燻製に関しては、食用ゴマを焙煎後燻製し、上記と同様方法で評価した。
    【結果】官能評価において色種では金ゴマが、工程別では、いりゴマがすりゴマより劣化臭の発現が早い事が判明した。また、ゴマの皮の有無では、ゴマの皮が優先的に反応し、劣化作用に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。におい嗅ぎGCMSによる分析の結果、ゴマに含まれる脂質の主要成分であるリノール酸の酸化分解物と考えられるヘキサナール、2,4-デカジエナールの増加が大きく、焙煎臭であるピラジン類は減少が大きい事が判明し、官能評価の結果と相関性があった。ヘキサナールは原料中では多く、焙煎する事によって減少し、酸化劣化することで再び増加する事が確認された。燻製はヘキサナール、2,4-デカジエナールの増加を抑え劣化臭の抑制に効果があることがわかった。
  • 荒木 萌, 久松 裕子, 小林 里恵
    セッションID: 1B-a4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】福島県会津地方の郷土料理である「こづゆ」には、ホタテ干し貝柱(以後貝柱と略記)が利用される。貝柱は、水浸漬により軟化させ、その浸漬液と共にこづゆの調理に利用される。本研究では、水浸漬で貝柱を効率よく軟化させる条件うを検討する。とともに、その浸漬液の性状に及ぼす浸漬時間と貝柱の形状の影響調べた。
    【方法】貝柱(北海道・オホーツク産)は円柱状の試料とそれを裂いた試料それぞれが2.5%となるように加水(20℃)し1、2、4、8、12時間浸漬した。一定時間経過後に、貝柱と浸漬液にそれぞれ分け、浸漬液はろ紙により濾過して、その塩分濃度、色度を測定するとともに紫外線可視吸収スペクトル(190~400nm)法により核酸関連物質の溶出量を確認した。貝柱は浸漬前後の重量変化から吸水率を求め、レオナーを用いた圧縮試験により圧縮を測定した。
    【結果】貝柱は円柱状試料に比べ裂き試料において吸水速度が速く、短時間で圧縮荷重が有意に低下した。浸漬液の塩分濃度は、裂き試料で比較的高かった。浸漬液では紫外領域に吸収が認められ、それぞれウリジル酸(262nm付近)、アデニル酸、グアニル酸、アデノシン(255~256nm付近)、またヒポキサンチン(247nm)、イノシン(248nm)に相当すると推定された。円柱状試料では、浸漬4時間までは255nm以降のピークが時間の経過に伴い増大し、浸漬8時間以降に247~248nmのピークが検出された。裂き試料では、浸漬1時間と12時間ではほぼ同様のスペクトルを示した。また、円柱試料では8時間以上の浸漬によりb*値が有意に高くなり黄度が増した。裂き試料では浸漬時間による有意な色度の相違は認められなかった。
  • 松本 美鈴
    セッションID: 1C-a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】平成26年度の高齢者率は26.0%に達した。高齢者は,低栄養状態(PEM)に陥りやすく,その一因としてえん下困難があげられる。PEMの予防には,食事に加えて間食の内容を考慮することも重要と考える。そこで,本研究では,PEM予防の間食として,高カロリーで高たんぱく質であるレアチーズケーキに着目し,えん下困難者が安全に食べることができるレアチーズケーキを調整することを目的とした。
    【方法】<各種レアチーズケーキの調製>材料や配合割合が異なる8種類のチーズケーキを調製し,物性を比較した。
    <基本レアチーズケーキの調製>クリームチーズ100g,砂糖32g,ヨーグルト80g,クリーム80g,卵白17.5g,粉ゼラチン2g,水12gを基本配合としてチーズケーキを調製し,クリームチーズの種類およびヨーグルトとクリームの配合割合が物性に及ぼす影響を検討した。
    <物性測定>クリープメーター(山電)を用いて消費者庁の定める,えん下困難者用食品の試験方法に則り10℃および20℃における試料の物性測定を行い,硬さ,付着性および凝集性を求めた。
    【結果】材料や配合割合の異なる8種類のレアチーズケーキの物性を測定した結果,ケーキの種類や測定温度によりケーキの硬さや付着性が異なった。えん下困難者用食品の許可基準Ⅲを満たしたケーキのレシピを基本レシピとして,クリームチーズの種類やヨーグルトとクリームの比率を変えて,レアチーズケーキを調製した結果,クリームチーズとしてマスカルポーネを用い,クリームの割合を減少し,ヨーグルトの割合を増加することで,ケーキの付着性が低減され,えん下困難者用食品の許可基準Ⅱを満たすレアチーズケーキを調整することができた。
  • 岩崎 裕子, 大越 ひろ
    セッションID: 1C-a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】“のどごしが良い”という表現がビールや炭酸飲料には見受けられる。いずれも炭酸を含む飲料であり、炭酸を含まない飲料の“のどごし”について検討した報告は数少ない。また、ゼリー飲料をはじめ粘度が付いた飲みごたえを感じる飲料が近年開発されている。そこで、本研究では、炭酸を含んでいない飲料について、飲料の粘度と“のどごし”の関連性を検討した。
    【方法】試料は基準飲料に対し、キサンタンガム系増粘剤を添加し、ずり速度50s-1における粘度が40、60、90mPa・sを示す3試料と、増粘剤を添加しない原液(1mPa・s)の併せて4試料について比較した。官能評価を行い、“のどごし”について、分析型評価(しっかり⇔すっきり)と嗜好型評価(良し⇔悪し)を行った。被験者の年齢による比較(若年群23名(平均26.1歳)と熟年群27名(平均56.7歳))を行い、更に基準飲料の味による比較(pH=3.8飲料とpH=2.5飲料)を若年群に対して行った。
    【結果】分析型評価の結果、飲料の粘度が高いほど、しっかりしたのどごしと評価された。若年群は粘度が低い程すっきりとしたのどごしで、良いと評価したが、熟年群は粘度の有無は識別できるが、粘度間の識別をしにくく、嗜好型評価において好ましい粘度もばらつきが大きかった。酸味の強いpH=2.5飲料では、pH=3.8飲料と比較し、嗜好型評価において試料間の差がみられず、若年群でも粘度が付与されている飲料を好む人が増えた。粘度によりのどごしが変わることは明らかとなったが、その影響は年齢や飲料の味により異なるため、のどごしの良いとされる粘度については更なる検討が必要である。
  • 山本 淳子, 森山 三千江
    セッションID: 1C-a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】 高齢者人口が増加する現代、咀嚼や嚥下能力が低下し栄養不良や食べる楽しみなどの喪失が問題視されている。そこで、動物性食品に重点を置き、食材の外見を保持しながら柔らかく仕上げる「凍結含浸法」に着目した。凍結含浸法は、酵素を使用することにより柔らかくするものであるが、酵素の苦みや動物性たんぱく質独特の臭みが残ることがある。本研究では、凍結含浸の酵素による含浸時間や味付けを変え、物理的変化と官能評価を行い、食品ごとの最適条件を明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料は、鶏肉、豚肉、牛肉、イカを用いた。酵素は、動物性たんぱく質食品の肉類・魚介類に対応する「Me TORON」を使用した。試料ごとに酵素浸漬時間を5~20分と変え、味付けでは調味料の配合割合を変えた。試料の調味は、酵素と調味液(1度漬け)と、酵素を捨て調味液のみを入れ真空1日(2度漬け)とした。物理的特性では、色調は色差計、破断応力・歪み率は、PU-1レオメーターで測定後、N/㎡に換算した。官能評価は、19名をパネラーとし「見た目」、「香り」、「食感」、「味」、「総合」の5項目について5点評点法を用いて行った。

    【結果】鶏ムネ肉では、酵素の含浸時間での違いはなかったが、2度漬けしたことにより、硬さが半減し柔らかくなった。豚ロース肉では、含浸時間10分の2度漬けが有意に柔らかくなった。色調は、2度漬けすることで、どの試料も濃くなり、L*(明度)は下がり、a*(赤色)が強くなった。官能検査では、豚ロース肉の10分で2度漬けしたものが好まれた。イカでは、2度漬け15分の試料の香りで好まれた。以上のことから、食品により適する含浸時間があり、味は調味液に2度漬けすることで嗜好性が上がることが示唆された。
  • 楠瀬 千春
    セッションID: 1C-a4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】本研究では、独立型緩和ケア病棟(以下S病院)における咀嚼・嚥下困難者に適した食事について、調理学的な研究アプローチを行ってきた。前報の牛肉のソフト食は、嚥下食ピラミッドで普通食に該当し、より重度な咀嚼・嚥下困難者に適した改善が課題として残された。本報告では、牛肉の部位の検討、副材料の長芋と水の添加割合、さらに高エネルギー化を目的とし、MCTパウダーの添加を行った。 【方法】肉、山芋、サラダ油、卵、水を全てフードプロセッサーで粉砕し、流し缶に分注し、蒸し器で加熱(20分)後にフライパンで両面を焼いた。肉は牛ランプ肉及びウデ肉を用い、肉100gに対して山芋添加量(50%~150%)、MCT添加量(19.5~32.5)を検討した。食物栄養学科学生9名(平均22才)をパネルとし、官能評価を行った。また、S病院の管理栄養士1名と、医師を含む医療スタッフ(15名)にソフト食としての評価を依頼した。物性の測定は、消費者庁が定める特別用途食品「えん下困難者用食品許可基準」の試験方法に準拠した。【結果】牛ウデに部位を変更することで食味が改善された。長芋は肉重量より少ないと、ステーキ肉らしさは向上するが、ソフト食としての適正が劣り、肉重量に対し150%を超えると、肉の形成製が低下する。よって、肉重量に対し100%が最もソフト食として適正があると結論付けた。MCT26g添加牛ウデステーキのテクスチャー解析の結果、かたさ、凝集性、付着性の3項目すべてでレベル4の介護食に該当し、テクスチャーの改良に成功し同時に高エネルギー化を図ることができた。S病院の管理栄養士を含む医療スタッフからも、入院患者からも、おおむね高評価を得ることができた。入院患者様2名の評価も高かった.。
  • 荒田 玲子, 仙土 玲子
    セッションID: 1D-a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】茨城県の家庭料理を調査する中で、茨城県太平洋沿岸の鉾田市、鹿嶋市、神栖市で昭和30年代に食され、その主材料が入手困難になったり、高価な食材になっても、食べ継がれているイルカ料理と、背黒イワシやサンマで作られるごさい漬けについて、現在の調理法、食べられ方について聞き取り、その調理法と食べられ方を明らかにすることをこの調査の目的とした。

    【方法】イルカ料理を現在も作り食べている鹿嶋市のHさん、神栖市のIさんにその調理法と食べ方について聞き取りを行う。また、調理をしていただき、写真と筆記で記録する。ごさい漬けに関しても、昔から現在までの調理法と食べられ方についてYさんとIさんに聞き取り調査を行う。また、この地域のスーパーで品揃えを調査し聞き取りも行う。

    【結果】イルカは現在茨城県沖では漁が行われておらず、冬になるとこの地域の店に並ぶイルカは、『岩手産のいしいるか』であった。味には癖があり、他の肉類より高価で入荷も限られる。イルカ料理の愛好者は年配者に多く、入荷するとあっという間になくなるとの事である。脂肪の層と赤身の層が一層ずつの独特の肉をキューブ状に切り、血抜きをして、牛蒡などと一緒に砂糖と醤油で煮込む方法は素朴で長年の食経験と調理経験に裏付けられた合理的なものであった。ごさい漬けは、昭和30年頃豊富に漁獲した背黒イワシを秋の終わりに大根と共に漬けこみ、正月に食べたものであったが、背黒イワシが手に入りにくくなり、主材料を秋刀魚などに変えて作ったり、昔ほど食塩を多く使わなくなり、本年の冬のように暖冬だと、低塩では上手く保存して発酵させることが難しくなってきているようである。食環境の変化が、料理の形を変えていき、否応なく変化し、廃れていく料理があるという例を見たように思う。

     

     

     
  • イモ類を中心に
    関本 美貴, 大橋 きょう子
    セッションID: 1D-a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】演者らは先に、大正末期から昭和初期におけるジャガイモ調理の実態を調査し、農村部ではジャガイモが里芋の代替として広く和風料理の材料に用いられていたことを報告した。本研究では東京近郊の一農村を取り上げ、近現代における都市近郊農村の食生活の実態、およびその変化と要因について、イモ類を中心に検討することを目的とした。 【方法】調査対象地域は、旧神奈川県都筑郡中川村周辺(現横浜市都筑区・港北区の一部)とした。明治後期の食生活の実態を知る資料として「中川村村是報告書」、大正期~昭和40年代の実態を知る資料として「港北ニュータウン地域内歴史民俗調査報告(7巻)」を用いた。両資料よりイモ類の入手方法・調理法・料理に期待する事柄、および食事全般の内容・材料を精査し、これらに関与する地勢、交通、農業、流通等についても調査した。 【結果】①ジャガイモは明治後期にはまだ新しい作物であり、単独で小昼等に食べられていた。大正期以降には一般的な自給作物となり日常の煮物や汁物の材料に用いられていた。両資料ともに洋風料理は出現しなかった。一方里芋は明治後期から常に一定量が栽培され、晴れ食に欠かせない食品として行事の際食べられていた。両者の位置づけには明確な差が見られた。②明治後期、当該地域では麦混合飯と野菜類を中心とした自給自足の食生活が営まれていた。大正以降はさまざまな園芸作物を東京・横浜方面に出荷し、得られた現金収入をだし素材や魚、ごくたまに肉類等の購入に充てていた。しかし食事の内容は明治後期から大きな変化はなく、麦混合飯が昭和30年代まで食べられていた。  一農村の約60年の食生活を調査するなかで、ジャガイモが新しい食品から日常の和風料理の材料へと浸透していく過程を確認することができた。この結果は先の調査結果を裏付ける知見のひとつと考える。
  • 石島 恵美子, 阿部 信一郎, 田村 誠, 安島 清武
    セッションID: 1D-a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    茨城町郷土料理「つと豆腐」の伝承状況とその関連要因
    ○石島恵美子1),阿部信一郎2),田村誠2),安島清武2)
     (1)東京学芸大学大学院連合大学校,2) 茨城大学)
    【目的】多くの郷土料理は,伝承機会が減少し消失の危機にある。本研究では,茨城県中央部に位置する茨城町の郷土料理である「つと豆腐」の喫食現状を把握するとともに,伝承意識に影響を及ぼす関連要因を検討することとした。 【方法】調査対象者は,茨城町5地区から住民200名ずつ合計1000名を無作為抽出し,2015年10月に質問紙を郵送で行った。回収率は33.8%で,有効回答数は313票であった。質問紙の項目は,属性として性別や年齢居住形態など6項目,共生意識に関すること10項目,郷土料理の伝承意識に関すること4項目,つと豆腐に関すること15項目,合計35項目とした。 【結果】つと豆腐を知っている人は,回答者の37.1%で,50歳以上が47.8%であったのに対し,50歳未満では22.6%であり,年代による差が見られた。50歳未満でつと豆腐を知っている人は,日常的に調理し,近所付き合いに積極的で,家庭での年中行事をよく行うという傾向が見られた。つと豆腐を知っていると回答した人のうち,現在もつと豆腐を食べている人は19.7%,食べたことが無い人は9.7%であった。また,現在もつと豆腐を作っている人は9.2%,作ったことが無い人は67.3%であった。つと豆腐を調理しない理由で最も多かったのは,「作る機会がない」で61.1%,喫食機会は「通夜」が最も多く(37.4%),喫食場所は「親戚の家(18.1%)が最も多かった。重回帰分析の結果,つと豆腐の伝承意識は,積極的に地域のイベントに参加し,つと豆腐を美味しいと感じる人で高くなる傾向が認められた。重回帰係数の比較から,つと豆腐を美味しく感じることが伝承意識に一番影響を与えていることがわかった。 
  • 漬物を中心に
    近藤 綾香
    セッションID: 1D-a4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】
    地域に根付いてき郷土の料理は人から人へと伝承されてきたものであるが、時代と共に変化してきた。食育基本法には「地域の産物や食事の歴史や文化を知り継承していく」が含まれている。伝えたい内容を、大正末期から昭和初期の「伝承される味覚」の資料から見いだすことを目的とした。

    【方法】
    『日本食生活全集』(農山村文化協会)の「伝承される味覚」の内容を、漬物、味噌、醤油、その他調味料、すし、飲み物、その他、計7項目に分類を行った。漬物を「名称」「材料」「漬け床」「副材料」の4項目に分類した。

    【結果】
    『日本食生活全集』(47都道府県)の「伝承される味覚」に記載されている食品は、全2346個あり、漬物(56%)、次に味噌であった。漬物の「材料」は「野菜類のみ」と「魚類のみ」が多く、「野菜のみ」の漬物は全体の62%を占め、その材料は大根、「魚のみ」ではいわしが最も用いられていた。多くの漬物は、多量に収穫した材料を保存のために漬けていたと考えられる。「漬け床」に用いられているものは、塩、味噌、米ぬか、こうじ、甘酒、飯などあらゆる形態で漬け床として使っていた。香りづけや甘みづけ、色づけもしくは保存効果を高めるため136種の「副材料」が用いられ、大根の葉は、中敷き・中蓋として、笹の葉は、すし漬の包みなどの容器として、柿の皮は、たくわん漬などぬか漬に多く入れられていた。資料から明らかにした「伝承される味覚」の一つは、身近な食材で、集中した時期多く収穫する産物を人々の生活の知恵のもと工夫された漬物であった。
  • 金成 はるな, 大石 恭子, 香西 みどり
    セッションID: 2A-a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】米飯の性状について、これまで竹炭や酢酸添加による改善報告があること、米の内在性酵素の至適pHは異なることから、炊飯液のpHは米飯の物理化学的性質に影響を及ぼすことが予想される。本研究では炊飯液のpHが米飯の品質に及ぼす影響を明らかにするため、通常調理に使用される食品として食酢、重曹を添加しpH3、5、7(通常炊飯に相当する)、8.5に調整した炊飯液で炊飯を行い、米飯の成分・物性変化及び老化について比較検討を行った。
    【方法】炊飯後の米飯および4℃14時間保存した米飯を試料とし、TAによる一粒法(低高圧縮 2バイト法)で物性測定を行った。スライドガラスに飯粒をのせTAで厚さ0.1mmまで圧縮した米飯のL*値を測定した。官能評価は、外観やテクスチャーについては9段階尺度法で、“米飯の老化感”は5段階尺度法で評価を行った。生試料および炊飯後試料から成分抽出液を調製し、ソモギーネルソン法、フェノール硫酸法およびHPLCにより各種糖量、アミノ酸アナライザーで総遊離アミノ酸量を測定した。炊飯過程(浸漬1時間後、40℃、60℃、80℃)で炊飯液を取り出し、炊飯液中のタンパク質量をBradford法、固形分量を常圧乾燥法で測定した。
    【結果】物性測定、官能評価の結果から、炊飯直後の飯は、pH7に比べてpH3、pH8.5において飯表層部の粘り・付着性が増し、冷蔵保存後の飯においてもその影響がみられた。pH5ではpH7よりも冷蔵保存後の米飯の老化感が増加し、圧縮した米飯のL*値は有意に増加した。米飯の化学成分、炊飯過程における吸水率および溶出成分の測定から、食酢添加と異なり、重曹添加米飯では澱粉の膨潤糊化を妨げるタンパク質の溶出が促進され、米飯表層部の粘り・付着性が増加した可能性が示された。
  • 吉村 美紀, 上野山 あつこ, 田中 紫穂, 江口 智美, 長野 寛之
    セッションID: 2A-a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    粉砕方法の異なる米粉の特性が米粉団子の食味と物性に及ぼす影響

    ○吉村美紀1,上野山あつこ1,田中紫穂1,江口智美2,長野寛之1

    1兵庫県立大,2山形県立米沢栄養大)

     

    【目的】米の粉砕技術が改良され、米粉としての利用が拡大している。本研究では、酒米に注目し、日本酒製造で発生する酒米搗精米粉と粉砕方法の異なる2種類の米粉の特徴を比較検討し、米粉を用いた食品として米粉団子の食味と物性に及ぼす影響を検討することを目的とした。

    【方法】試料として、米粉A(酒米搗精米粉表面粉砕の白ぬか部分)、米粉B(米飯用体積粉砕胴搗き米粉)、米粉C(米飯用体積粉砕水挽き米粉)を用いた。米粉の特性評価として、損傷澱粉率、平均粒子径、アミロース量、難消化性澱粉率、安息角、示差走査熱量(DSC)測定、食品成分分析を実施した。米粉団子は、各米粉に対して75 w/w%の重量の蒸留水を加え2分間混捏後、円柱形に成形し真空密封した。95~100 ℃の温浴中で20分間加熱し、20℃で1時間静置後のものを試料とした。米粉団子の圧縮試験、テクスチャー測定、表色比較、官能評価を実施した。

    【結果】米粉Aは損傷澱粉率が米粉BおよびCより高くなり、DSCによる吸熱ピークがほとんどみられなかったことより、表面粉砕のため澱粉の損傷が多く、米粉に糊化された部分を含むと推察した。また米粉Cは損傷澱粉率が低く、水挽きのため熱による損傷が抑えられたと推察した。食品成分値には大きな差が見られなかった。米粉団子のテクスチャー測定より、米粉Aの団子はまとまりやすく、べたつきやすい傾向があり、米粉Aの損傷澱粉率が高いことが米粉団子の物性に影響したと推察した。官能評価において、米粉AとBの団子、米粉AとCの団子の間で、見た目、硬さ(識別、嗜好)、なめらかさ、べたつき感の項目で有意差が認められた。米粉Aの団子の特徴としてやわらかく、べたつく食感であると評価された。
  • 小柳 由里香, 藤井 恵子
    セッションID: 2A-a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】アレルギー対応並びに食料自給率向上という背景から、米粉を利用した食品に注目が集まっている。しかし、米粉で調製した含泡食品の場合、小麦粉で調製した場合と比較して膨らみにくく老化が速いという問題がある。そこで、本研究ではアレルギー対応食品の開発を目的として、粉体特性の異なる米粉で調製したグルテンフリーマフィンを取り上げ、その調理特性について検討した。
    【方法】澱粉損傷度の異なる2種類の米粉を2分画(25μm以上、25μm未満)に分級して用いた。米粉、豆乳、グラニュー糖、ベーキングパウダーを基本材料とし、これらの材料を混合した後、170℃のオーブンで30分間焼成し、マフィンを調製した。焼成後25℃で1時間放冷した後、測定に用いた。マフィンの生地特性として流動特性を、品質特性として比容積、色度、水分含量、テクスチャー特性を評価し、保存性についても検討した。
    【結果】マフィンの生地特性は澱粉損傷度が高い米粉を用いた方が見かけの粘性率は高くなり、ずり速度が速くなると見かけの粘性率が低下する擬塑性流動を示した。分級した米粉を用いた場合も同様の傾向を示した。一方、澱粉損傷度の低い米粉で調製した生地は、未分級および粒径が25μm以上の米粉を用いた生地では擬塑性流動を示したが、25μm未満の米粉を用いるとダイラタント流動を示した。マフィンの比容積は澱粉損傷度の低い米粉では未分級と比較して25μm以上の米粉を用いたものが顕著に高くなったが、澱粉損傷度が高い米粉では25μm未満の米粉を用いると顕著に低くなった。硬さは未分級と比較し、25μm以上の米粉を用いると硬くなり25μm未満では軟らかくなった。
  • 永井 紘太
    セッションID: 2A-a4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】米粉は小麦粉とは異なる特有のテクスチャーがみられ,機能性を高めるべく米粉の特性や製粉方法について研究されている。本研究では加熱時間と食味との相互作用について高アミロース米粉こしのめんじまんを用いて生パスタを調製し,生パスタの力学特性に及ぼす鶏卵,茹で時間,加熱後放置時間の影響について検討した。さらに硬質小麦粉のデュラムセモリナとこしのめんじまんを用いて調製した麺の力学特性についても比較検討した。
    【方法】米粉120g,食塩2g,鶏卵120g,オリーブ油12gの順にボ―ルに加え,ミキシング,熟成,圧延しカッターを用いて麺を調製した。加熱前はテクスチャー測定を,加熱後は破断測定および放置時間による破断特性の評価を行った。また異なる加熱時間の試料を用い順位法,SD法により官能検査を行った。
    【結果】破断特性はいずれも延性破断を示し,加熱後の米粉パスタ生地の破断歪率は卵白添加試料が最も高く破断しにくいタフな特性を示した。また5分加熱試料と7分加熱試料の破断歪率は共に高く,両者の間に有意差は認められなかった。5分加熱後の麺の破断応力に及ぼす放置時間の影響は,放置時間の増加に伴って破断応力と破断歪率は低下し,5~8分で減少率が最大となった。米粉とデュラムセモリナの比較においては官能検査により,5分加熱試料は硬く弾力が,7分加熱試料は軟らかくもっちりとした食感を示した。加熱前の卵添加の米粉の破断歪率はデュラムセモリナの破断歪率よりも低いが,加熱によって米粉は約24%増加した。米粉で調製した生パスタの破断特性と官能検査のもっちりとした弾力性は卵添加と加熱操作によりデュラムセモリナに劣らず,おいしさの点からも高く評価された。
  • 佐藤 之紀
    セッションID: 2A-a5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】AACC法のプランジャーの径と速度を見直し,国際単位に変換可能なプランジャー径を用いたAACC変法により測定したパラメータCFV20を考案し,パンの力学物性変化を追跡した。 <BR> 【方法】直径20 mm (AACC法では21 mm) の円筒プランジャーを用いて,等速直線運動で一回,家庭用製パン器 (Panasonic SD-BM103)で焼いた厚さ25 mmパンのクラム部位をpenetrateさせて,deformation curve (F–L曲線) を描き,25 % deformation (L=6.25 mm)での力(CFV20)を求めた。さらに,CFV20と指先感覚や口内感覚の関係を,食パンを5℃で密閉保存した場合の経過日数と常温でのかたさ(7点評価法)から調べた。<BR>  【結果】36 mmと21 mmの2種類のプランジャーの径をそれぞれ用いたAACC法でのCFVは,互いに相関していた。さらに,直径20 mmのプランジャーを用いたCFV20は,AACC法でのCFVと一次式で表すことができたことから,互いのパラメータ値への変換が可能となった。また,CFV20は,保存日数の2次式に近似可能であり,食パンクラムのかたさを追跡する際によく用いられるAvrami equationに適用した際に求められる最大のかたさに準じた値も算出可能であった。CFVの代わりに口腔内でパンを噛んだ際の感覚(S)を数値化して,パンの保存日数とSの関係を調べたところ,SはCFVと同様に保存日数の2次式に表すことが可能であった。その2次式から最大Sを求めたところ,保存4.5日目に最大のSを示すことが判明し,機器測定によるCFVと食パンの保存経過日数との関係から求めた最大のCFVを示す保存日数とほぼ一致していた。さらに,CFV20は,Sをよく反映し,CFV20とSの関係は直線関係に近似可能であった。また,Sは,パネルの指先感覚値を用いて推定可能であった。
  • 柏野 由加里, 河野 俊夫
    セッションID: 2A-a6
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】機能性表示食品制度により、「食品の機能性」に注目が集まっており、様々な商品が開発されている。そこでセルロースなどの食物繊維には、整腸作用や血糖値上昇抑制作用など、様々な効果があることが報告されている。また、カロリーがほぼないことも特徴であり、食物繊維を用いた食品の開発が注目されている。そこで本研究では、種類、粒子径の異なるパルプ素材で小麦粉の一部を置換したパンを作製し、その物性への影響を明らかにすることを目的とした。
    【方法】基準パン(小麦粉100%)の材料を小麦粉、水、ドライイースト、上白糖、塩、バターとした。パルプ素材配合パンは小麦粉の一部をパルプ素材(13種類)で置換配合し、パンニーダーにより、パンを作製した。パルプ素材の配合割合は10%、15%、20%の3水準に設定し、各種パンの生地発酵力試験、比容積、パン高さ、クラム及びクラスト色調、クラム断面の顕微鏡観察、老化試験を行った。さらに各種パルプ素材の含水率測定を行った。
    【結果】基準パンとパルプ素材配合パンを比較したところ、パルプ素材を配合した方が、生地発酵力及び比容積が低下した。また、どの種類のパルプ素材サンプルについても、パルプ素材の配合割合の増加に伴い、生地発酵力、パン高さ、比容積がともに低下した。色調比較では、クラムの色調では有意な差は認められなかった。しかし、クラストの色調については、パルプ素材を配合した方が、焼き色が薄くなる傾向が見られた。老化試験では、ヤング率(硬さ指標)を用いて評価した。パルプ素材10%配合パンのヤング率は基準パンの値と有意差はなかったが、15%、20%配合パンは基準パンよりも高い値を示した。
  • 【目的】アシタバはポリフェノールなど機能性成分を含んでいる。強力粉の5%をアシタバ粉と置換したパンは機能性は高いが、膨化が抑制され嗜好的に好まれない。本研究では膨化及び保水効果の期待できるグルテンとトレハロースを用い、機能性と嗜好性を兼ね備えたアシタバ置換パンの改良を試み、その力学物性と嗜好性、保存性に及ぼす影響を検討した.【方法】添加・置換量決定のための予備実験として、アシタバ無置換ドウと同等の膨張率となるグルテン量及び砂糖の一部をトレハロースに置換する膨張実験を行った。その結果、アシタバ無置換パン(C)、強力粉の5%をアシタバ粉と置換した5%置換パン(A)、Aにグルテンを5%添加したパン(AG)、AGに砂糖の80%をトレハロースに置換したパン(AGT)を焼成し試料とした。比容積は菜種置換法、力学物性はテクスチャーを測定した。膨化組織は走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。官能評価は採点法と順位法で行った。保存性は試料を3日間保存しテクスチャーを測定した。【結果】Cに比べAは、比容積が有意に低く、かたさ荷重が有意に高く、凝集性が有意に低かったが、AG・AGTに有意差はなかった。SEM観察でAを除く試料では、気孔の大きさが均一で薄いグルテン膜が見られた。官能評価はCに比べAは有意に低い評価であったが、AG・AGTは有意差がなかった。保存性はC・A・AGでは1日目に比べ3日目は有意に硬くなった。3日目はCに比べ、A・AGは有意に硬かったが、AGTは有意差がなかった。アシタバ5%置換パンにグルテン5%添加、トレハロースを80%置換することで、嗜好性が高く保存性も期待できる機能性を有する改良パンを作成することができた。
    山内 知子, 阪野 朋子, 小出 あつみ, 間宮 貴代子, 松本 貴志子, 山本 淳子
    セッションID: 2A-a7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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  • 正岡 亜紀, 上野 茂昭, 島田 玲子
    セッションID: 2A-a8
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】パウンドケーキは本来、砂糖、小麦粉、バター、卵を同量用いて作られる。バターは乳製品であり、乳製品アレルギーを持つ人はパウンドケーキを食べることができない。また、アレルギーではない人にとっても、バター中に多量に含まれる飽和脂肪酸は過剰摂取による生活習慣病や動脈硬化の促進が懸念されている。その上、バターはサラダ油と比べると高価である。そこで、安価で乳製品アレルギーを持つ人にも食べられるパウンドケーキの調製を目的とし、バターをサラダ油に置換した場合の物性や食味に及ぼす影響を調べた。 【方法】バターを用いた一般的なパウンドケーキをバター試料、バターを同重量のサラダ油に置換したものをサラダ油試料、バター試料と水分量、油分量、塩分量が同じになるようサラダ油、水、食塩で置換したものをサラダ油+水試料として、バターを溶かして最後に添加する共立て法によって生地の調製を行った。生地の粘度や比容積、焙焼中の生地の温度履歴、焙焼後の試料の比容積、物性、色の測定を行った。また、それぞれの試料の経時変化による影響を3日間、6日間保存することで検討した。 【結果】生地の測定では、比容積は、他の試料に比べてサラダ油+水試料が大きかった。粘度は、他の試料に比べてサラダ油試料が大きかった。サラダ油試料の中心部の温度が焙焼開始から20分後頃まで最も高温で、途中、温度上昇が緩慢になる現象が見られた。焙焼後の試料の比容積はバター試料が他の試料に比べて小さかった。かたさはバター試料、サラダ油試料、サラダ油+水試料の順にかたかった。凝集性は、かたさの値が大きなもの程小さくなった。保存によってすべての試料がかたくなり、凝集性は小さくなった。
  • 成田 亮子, 島村 綾, 名倉 秀子, 峯木 眞知子
    セッションID: 2A-a9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    (目的)
    琉球王朝菓子ちんすこうは、豚脂(ラード)を使用し、西洋の焼菓子とは異なった食感と風味に特徴があり、保存性にもすぐれている。ラードの代わりに多種の油脂を用いて調製し、テクスチャーに与える影響を調べた。
    (方法)
    ちんすこうはラード(油脂)、薄力小麦粉(日清フーズ㈱)、砂糖(三井製糖㈱)で調製する。油脂は8種(ラード、バター、アボガドオイル、オリーブオイル、キャノーラ油、ココナッツオイル、胡麻油、米油)で、基本配合は予備実験より、小麦粉120g、砂糖90g、油脂58gとした。油脂を60℃に温め、砂糖を加え、みぞれ状態になったら、小麦粉を加えた。それを、Ø3.5㎝の大きさ(各15g)に形成後、150℃で28分焼成した。焼成後の試料は、重量、体積、比体積、水分含有率、表面の焼き色、破断特性を測定し、官能評価を行った。焼成後の伸びを示すスプレッド値は、直径(㎜)/厚さ(㎜)で算出した。製品の水分含有率は赤外線水分計(㈱ケット)で110℃、80分の条件下で測定した。破断特性はレオナーRE2-3305 B-1(山電(株))で測定した。
    (結果)
    8種の油脂を用いた試料では、ラードを用いた試料より、破断応力および破断歪が低く、もろい製品であった。アボガドオイル試料、オリーブオイル試料では、もろさおよびもろさ歪がかなり低かった。キャノーラ油試料ではスプレッド値、比体積、水分含有率がラードに近い値を示した。ココナツオイル試料では、スプレッド値が6.0と最も高く、水分含有率は3.6%で最も高い値を示した。胡麻油試料ではもろさおよびもろさ歪が高く、水分含有率が2.6%で最も低かった。油の種類により、食感の異なるちんすこう製品ができた。
  • 仲西 由美子, 入江 謙太朗
    セッションID: 2A-p1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】パスタはイタリアを起源とし、今では日本でもすっかりと定着した食品である。現在、パスタ加工品の美味しさに大きく影響するパスタの品質(太さ、硬さ、粘弾性等)とパスタソースの品質(粘度、味の強さ等)の嗜好性や相性は、官能や経験によって判断されているのが主流であり、科学的側面からの評価手法は皆無である。そこで本研究では、科学的評価によりパスタとパスタソースの嗜好性や相性の因果関係を明らかにする。

    【方法】代表的なパスタソースの1種であるスープ系ソースについて検討を行った。粘度の異なるパスタソースと太さの異なるパスタをそれぞれ組み合わせ、官能評価による嗜好性評価を実施した。さらに、パスタとパスタソースを組み合わせた際にパスタに絡むソース量や表面に付着するソース量、内部に吸収されるソース量などをソースの拭き取りにより算出し、嗜好性評価との関係性を考察した。

    【結果】スープ系パスタソースとパスタの組み合わせについての嗜好性は、パスタの太さ、ソースの粘度の間に関係性があることを明らかにした。また、パスタとソースが絡む機構について、スープ系のソースはパスタに吸収される割合が多いため、これが嗜好性と関連していることを明らかにした。
  • 広瀬 純子, 柴田 奈緒美
    セッションID: 2A-p2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】米飯の冷凍保存は家庭で一般的に行われているが,炊き立てと比較して味や風味,食感などの品質が低下する等の欠点を有する。そこで本研究は,冷凍米飯に関するアンケート調査を実施し,冷凍および解凍方法の実態を把握した。そして,結果を基に冷凍および解凍方法を決定し,冷凍米飯の品質向上を可能とする冷凍および解凍方法を提示することを目的とした。
    【方法】アンケート調査は,岐阜大学の学生302人に対し,冷凍米飯の味や見た目に対する意識,冷凍保存の方法,頻度および食べ方などの4項目について調査した。実験に使用する米飯は,無洗米(平成27年度,岐阜県産)を水に30分浸漬させ,電気炊飯器(タイガー魔法瓶(株))を用いて炊飯した。炊飯終了後,一食分の米飯150gを成型し,家庭用冷蔵庫で24時間冷凍した。解凍方法は,出力600Wの電子レンジで2分間加熱した。この際,冷凍および解凍時の試料中心および端の温度測定,解凍後の含水率測定および偏光顕微鏡(ニコン(株))を用いて糊化の様子を観察した。
    【結果】アンケート結果より,米飯の冷凍保存を行っている家庭が多い傾向が見られた。また,各家庭で保存方法が異なっていたため,本研究では米飯の形状を変え,厚さが18mmと36mm,形状が直方体と円筒形の計4種類とした。冷凍過程では,厚さが薄く,円筒形である試料は,急速かつ均一に温度低下し,最大氷結晶生成帯の滞在時間が短くなった。電子レンジ解凍過程においても,厚さ18mmの試料は試料間における温度むらが抑制され,均一な解凍になることが示唆された。それに対し厚さ36mmの試料では,中心は端よりも解凍後の最終温度が高くなる傾向が見られた。その結果,試料上部の含水率が高くなり,不均一な含水率分布が生じた。
  • 中里 文昭, 畑 千嘉子, 井上 隆之, 山内 徹
    セッションID: 2A-p3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】加工食品メーカーの課題のひとつに、不快臭の解決が挙げられる。代表的なものに、魚の泥臭みの主成分である2-メチルイソボルネオールや、畜肉・魚肉の不快臭となるヘキサナールなどの脂質酸化臭が挙げられ、これら不快臭は製品の品質低下要素となっている。本研究では、特に麹の糖化液について、各種不快臭のマスキング効果を検証した。

    【方法】不快臭成分として、2-メチルイソボルネオール、ヘキサナール、トリメチルアミン、エチルメルカプタンを対象とし、麹の糖化液を添加した試験区における残存量をGC-MSにて分析により評価した。

    【結果】麹の糖化液を添加した場合、2-メチルイソボルネオール、ヘキサナール、エチルメルカプタンの消臭効果が確認された。また、特にクエン酸を多量に含む白麹の糖化液を用いた際には、トリメチルアミンやアルデヒド類の消臭効果も確認できた。
  • 栗原 玲子, 白 ろ, 山田 伽奈子, 西田 沙央理, 奥西 薫子, 吉元 寧, 川邊 清隆, 西田 毅, 松田 寛子, 白井 隆明, 島本 ...
    セッションID: 2A-p4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】カボチャは,でん粉が急速に糖化し,食味が変化することが報告されている。主要品種である「えびす」は,粉質から粘質に変化するため,サラダにした場合の加工適性と嗜好性が変化する。そこで本研究では、でん粉の理化学的な性質の変化が,サラダの嗜好性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】北海道産の「えびす」種のカボチャを貯蔵し,収穫直後と58日,104日貯蔵し分析をおこなった。カボチャのでん粉を精製し,ラビットビスコアナライザー(RVA)で粘度測定を測定した。粒度分布,損傷でん粉,顕微鏡観察によりでん粉の分解の評価をおこなった。同時にカボチャの固形量や遊離糖量などの基本成分を測定した。サラダは,「えびす」を基本に他の品種との官能検査による嗜好調査をおこない,好まれる固形量や遊離糖量を求めた。【結果】6%のカボチャでん粉の,RVA粘度特性は,収穫直後では,馬鈴薯のように急激に粘度が上昇した後粘度が低下し冷却後粘度が上昇する。一般に植物の地下部に貯蔵されるでん粉や大粒子のでん粉がそのような性質をもつとされるが,カボチャは果菜であるが同じような傾向であった。58日貯蔵すると,急激な粘度上昇ピークが消失し,最高粘度は約70%に減少するが,冷却後の粘度上昇は一致した。粒度分布による平均粒径は,減少し,損傷でん粉は,増加した。遊離糖は,58日後が最大で104日後には減少した。水分は経時的に増加した。カボチャサラダの官能評価による嗜好調査では,でん粉量が多い品種の評価が高いわけでなくでん粉分解と糖化と固形量によるサラダの適性領域が存在すると考えられた。品種によってサラダの適性領域が異なる傾向がみられた。
  • 野村 知未, 古谷 規行
    セッションID: 2A-p5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【緒言】小豆やインゲン豆などの雑豆は,国内では加糖餡としての利用が最も多く,これらは日本の食文化において重要な食材の一つである。国内産の豆および餡の需要は非常高いものの,国内需要量を国産小豆は約50%,インゲン豆に至っては30%しか満たしていない。これまでに我々は実需者に対し原料雑豆の評価要因をアンケート調査したところ,風味・香り・舌触りの重要度が高かった。そこで本研究では,国産雑豆の生産振興を高めるため雑豆の食味に関わる芳香および舌触りに関わる基礎的データを取得することを目的とした。
    【方法】試料の雑豆は,小豆(エリモショウズ,紅舞妓大納言),金時(福良金時),白小豆(キタホタル),手亡(雪手亡)の5品種を用い,0.3Nになるまで加熱した。これらを,におい識別装置(FF-2020,島津)にて類似度(においの質)および臭気寄与(においの強さ)の測定,粒度分布計(LA-300,堀場)にて餡粒子径を測定した。さらに,餡粒子の大きさの違いによる餡の構造状態を把握するため,加糖餡を調製し,動的粘弾性の測定を行った。
     【結果】各雑豆の煮熟後のにおいを比較したところ,紅舞妓大納言と雪手亡の類似度が最も異なり,エステル系,アルデヒド系,有機酸系の3系統で10%以上の差が認められた。餡粒子の50%粒子径は,紅舞妓大納言(134µm)>雪手亡(129µm)>福良金時(123µm)>キタホタル(114µm)>エリモショウズ(109µm)の順となり,有意な(p<0.01)差が認められた。一般的に,ヒトは舌で10µmの差を認識していると言われているが,これらを加糖餡にした場合餡粒子径の差が小さくなり,加糖餡における舌触りには餡粒子の大きさだけではなく,加糖による構造変化が重要であると考え現在調査中である。
  • 重村 泰毅, 小泉 昌子, 工藤 美奈子, 島村 綾, 峯木 眞知子
    セッションID: 2B-a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】鶏の飼料が鶏卵の品質に影響を与えることはよく知られている。鉱物混合飼料を添加した鶏の卵では、卵黄の粘度や卵黄膜強度、鮮度低下の抑制に良い影響がみられた1)。貝化石を飼料とした鶏が産んだ卵には、卵殻強度に影響するという報告がある。そこで、珊瑚末を飼料とした鶏が産んだ卵(S卵)を用い、標準飼料を用いた鶏(同白色レグホン種鶏)の産んだ卵(A卵)と調理特性について比較した。

     【方法】 A卵、S卵の品質(卵重、HU、卵殻強度、卵黄色)を計測し、沸騰水で15分間加熱し、全熟卵を得た。その卵殻・卵殻膜の重量割合、卵白・卵黄の重量割合、卵の中央部の卵殻の厚さを計測した。また、卵白および卵黄のテクスチャーおよび組織構造を調べた。生卵の卵白の粘度およびアミノ酸分析・電気泳動を行った。本学学生・教職員による官能評価も行った。

    【結果】S卵の卵殻強度は低く、生および加熱した卵殻の重量割合は、A卵より有意に低かった。S卵の全熟卵の卵白は有意にやわらかく、卵黄は保存したもので有意に硬かった。S卵の卵黄中遊離アミノ酸組成はA卵に比べ減少しており, 卵白中遊離アミノ酸についてはA卵と比較して変化は見られなかった。S卵の卵殻および卵殻膜はA卵のものより微細な構造を示した。S卵の卵白では, 色が濃く, 香りが薄く, 硬さは柔らかく, 弾力は強く, 味が濃い値を示したが,  いずれも有意でなかった。卵白の味の好みでは高い値を示したが,  有意ではなかった。卵黄の好みでは,  味の好みおよび総合評価において,  有意に高く好まれた。

    1)小川、峯木、山中:日本調理科学会、33巻、185-191.
  • 設樂 弘之, 島村 綾, 田中 亮治, 有満 和人, 峯木 真知子
    セッションID: 2B-a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】食品、特に生鮮食品と呼ばれる領域の食品に関しては、その鮮度と風味には密接に関係がある。野菜や魚など鮮度が良いとおいしいといわれている一方、肉などのようにすこし貯蔵したほうがおいしくなるといわれている。その原因についても多くが研究されている。卵は長期保存がきくことが知られている一方で、生みたてがおいしいといわれているが、その科学的根拠となる研究例は少ない。そこで保存した卵と生みたてのもので風味に違いを明らかにすることを目的とした。
    【方法】タカハシ養鶏場 深谷農場6号舎で養育されたハイライン種マリア(日齢292日)が産卵した卵を5℃で16日保存した。同じ鶏舎のもの(日齢305日)で3日保管した卵と比較した。基礎項目として卵重、HU、卵黄の色、卵白のpHおよびタンパク質量、卵黄のpH、水分、脂質量、およびタンパク質量を測定した。風味の違いを知るために、卵かけご飯、茹で卵、だし巻卵、カスタードプリンを作成し、風味試験に供した。パネルは、東京家政大学栄養学科管理栄養士専攻4年生と大学院生の計25名で行った。
    【結果】たまごかけご飯、および、だし巻き卵に関して、新鮮卵のほうが好ましいという傾向にあったが、有意な差はなかった。プリンについては有意に新鮮卵を使ったほうが好ましいという結果になった(p<.05)。2つのプリンには硬さに違いがあり、新鮮卵のプリンのほうが軟らかく口どけが良いことから好まれたと思われる。新鮮卵と保存卵のプリンでは固さに差は、タンパク質量、pHに差があったことが、影響した可能性がある。これらの結果から、野菜や魚と比較すると、卵は保管中の変化が少なく、おいしさにもあまり差はないことがわかった。
  • 太田 莉英子
    セッションID: 2B-a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】マヨネーズをホットケーキや厚焼たまごに配合すると、食感及び食味を改良する効果があることは既に報告した。今回は、家庭でなめらかさを再現することが難しいプリンにおいて、マヨネーズを配合した場合の食感及び食味改良効果を明らかにすることを目的とし、検証を行った。  

    【方法】卵、牛乳、砂糖を混合・撹拌し、基本配合のプリン液(対照品)を調製した。試験品は、基本配合の牛乳を一部マヨネーズに置き換えて調製した。評価は「やわらかさ」、「なめらかさ」、「おいしさ」に関する官能試験で行った。更に「やわらかさ」については、機器測定も行った。  

    【結果】官能試験において、試験品は対照品と比べ、「やわらかい」、「なめらか」、「おいしい」といった結果が得られた(有意差あり)。また機器測定における結果も、これを裏付けるものとなった。以上より、マヨネーズをプリンに配合することで、プリンの食感及び食味が改良されることが明らかとなった。
  • 近藤(比江森) 美樹, 植田 玲奈, 長尾 久美子
    セッションID: 2B-a4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】近年,全国でシカやイノシシなどの有害野獣問題が深刻化している。なかでもシカ肉は,牛肉や豚肉に比べて低脂肪,鉄分やビタミンB群が豊富であり,栄養面で高い価値を有する食材である。しかし,「硬さ」や「臭い」が食味上の課題に挙げられる。本研究では,野獣シカの食肉としての有効活用をめざし,各種食材・調味料などの添加物による食味改善(軟化・矯臭)効果を検討した。
    【方法】徳島県で冬期に捕獲後,処理加工施設で精肉・真空包装・冷凍保存された野生メスシカのモモ肉を試料とした。まず,各温度における調理加熱を行い,重量保持率および物性測定(破断強度)から最適な加熱方法を決定した。次いで,タンパク質分解酵素,保水性の向上,さらに矯臭効果が期待される食材や調味料(生姜,キウイフルーツ,塩麹,味噌,ワイン,トレハロース,ヨーグルト)をシカ肉に添加し,4℃で一定時間保存した。その後,加熱調理し,重量保持率の測定,SDS-PAGE,物性測定および官能検査によって添加物の食味改善効果を比較した。また,栄養成分を分析した。
    【結果】加熱方法は,重量保持率および物性測定の結果に加えて,食品衛生の観点を考慮し,85℃の真空調理加熱に決定した。食味改善効果は,塩麹,味噌,および生姜の添加により,未処理肉と比較してタンパク質が低分子化し,破断強度が低下して軟らかく,かつ臭いが抑制されることが明らかになった。さらに,徳島県で捕獲された野生シカのモモ肉は,エゾシカや輸入赤肉よりも脂質が少なく低カロリーであり,ビタミンB群の含有量が高いことが示された。最終的に,食味改善効果が認められた添加物で処理したシカ肉を用いたレシピを考案し,学生食堂で提供した。
  • 安達 官子, 吉村 美紀
    セッションID: 2B-a5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】シカ肉の食資源化のため,シカ肉の物性と機能性成分について検討している。今まで検討をしてきたシカ肉中のカルニチンに加えて、脂質代謝の補酵素であるビタミンB2についてシカの推定年齢および性別における個体差の影響を解明し、高機能のシカ肉を評価することを目的とする。また、加熱温度・麹添加の影響についても破断測定、重量減少率および官能評価を行い、嗜好性を評価することを目的とする。
    【方法】雌雄別、年齢別(推定年齢1歳、3~4歳、6~7歳)に分類したニホンジカのもも肉を試料とし、HPLCを用いてビタミンB2の測定を行った。ニホンジカのもも肉を,シカ肉重量に対し1%の多穀麹を添加したものと無添加のものを10℃で24時間熟成させた試料は調味後真空包装し,90℃でスチーム加熱を30分間行った。その後10℃に冷却のものを破断測定および官能評価に用いた。官能評価項目は、香り、硬さ(識別)、硬さ(嗜好)、うま味、ぱさつき、総合的なおいしさの6項目とし、5段階採点法を用いて試料間の差を求めた。パネルは兵庫県立大学の学生22人(平均年齢22.4±2.4歳)とした。
    【結果】推定年齢による影響では雌雄どちらにおいても、推定年齢6~7歳と比べ1歳のシカ肉のビタミンB2含有量が多い結果となった。また、いずれの年齢においても雄に比べ雌のビタミンB2含有量が多い結果となった。加熱温度による影響では80℃加熱が100℃加熱試料に比べ有意に破断応力が低く、重量減少率が低く、官能評価で軟らかくパサツキが少ないと評価された。麹添加試料の方が無添加試料と比べ破断応力が低く、重量減少率も低い傾向がみられ、官能評価では香りがよく、軟らかいという結果が得られた。
  • 千葉 朋実, 根津 亨, 渡邊 康一
    セッションID: 2B-a6
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】加熱調理された畜肉のおいしさは適度なやわらかさ(かたさ)、ジューシーさ(多汁性)といったテクスチャーが大きく寄与している。これまで、加熱条件(温度、時間)が畜肉のテクスチャー変化に与える影響は多く報告されているが、畜肉の加熱調理における経時的な物性変化を詳しく観察した例は少ない。また、畜肉のテクスチャーの評価はせん断力価や圧縮試験等によるかたさを指標とすることが多く、動的粘弾性による報告は少ない。そこで本研究では、畜肉の加熱調理過程を想定し、畜肉試料における動的粘弾性の温度依存性を評価した。
    【方法】市販国産豚肉(ロース)をイオン交換水及びNaCl水溶液、NaCl+KCl水溶液、乳清ミネラル溶液に減圧下で15分間浸漬した後、動的粘弾性の温度依存性及び、示差走査熱量(DSC)によるタンパク質の加熱変性に伴う吸熱ピークを測定した。
    【結果】動的粘弾性の温度依存性測定によって、豚ロース肉の加熱に伴う物性変化が観察された。イオン交換水浸漬試料の貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)は55~70℃にかけて上昇した後、一定の値を保ち、85℃以上で再び上昇した。一方、塩溶液浸漬試料のG’、G’’は、いずれもイオン交換水浸漬試料と同様に段階的に上昇したが、その値はイオン交換水浸漬試料に比べて低下した。DSCによって、イオン交換水浸漬試料は54.5℃、62.3℃、77.5℃の3箇所にそれぞれミオシン、結合組織、アクチン由来と推測される吸熱ピークが観察された。一方、塩溶液漬処理試料は、55~57℃、72~74℃の2箇所に吸熱ピークが観察された。
  • 沖邉 敦代, 西原 百合枝, 朝倉 富子, 舟木 淳子
    セッションID: 2B-a7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】エビはかたく、高齢者や咀嚼困難者には咀嚼しにくいとされている。われわれは、プロテアーゼ反応をプロテアーゼインヒビターにより制御することで、エビのテクスチャーを自在にコントロールすることを目的として研究を行っている。本研究では、エビをプロテアーゼで分解し、さらにコメ由来のシステインプロテアーゼインヒビターであるオリザシスタチンを作用させることでエビタンパク質の分解を制御することを試みた。
    【方法】プロテアーゼはパパイン(和光純薬工業株式会社)を使用した。脱脂米糠からオリザシスタチンを水抽出し、硫安分画を行い、30~65%飽和画分を粗精製オリザシスタチンとした。冷凍ブラックタイガー(無頭殻付き)を流水で解凍後、5mm角に切断し、パパイン溶液に4℃で浸漬した。また、オリザシスタチン処理は、パパイン溶液に浸漬した後、粗精製オリザシスタチン溶液に浸漬することにより行った。エビのタンパク質分解を、SDS-PAGEにより観察した。
    【結果】エビを0.1~5.0%パパイン溶液に24時間浸漬したところ、パパイン溶液の濃度が高くなるにしたがって、ミオシン重鎖およびアクチンの分解の程度が大きくなった。0.5%パパイン溶液に3~24時間浸漬したところ、浸漬時間が長くなるにしたがって、ミオシン重鎖およびアクチンの分解の程度が大きくなった。そこで、エビを0.5%パパイン溶液に3時間浸漬した後、粗精製オリザシスタチン溶液に21時間浸漬した。オリザシスタチン処理したエビのタンパク質の泳動パターンは、3時間パパイン処理したエビのものと同様であったことから、オリザシスタチン処理により、筋原線維の分解が抑制されたと考えられた。
  • 駒田 聡子
    セッションID: 2B-a8
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    食物アレルギー研修の効果と学校現場の課題

    ○駒田聡子

    (皇學館大)

     

    【目的】平成24年のアナフィラキシーショックによる事故を受け、文部科学省は「学校給食における食物アレルギー対応指針 (平成27年3月)」を策定し、学校における事故防止の徹底を図っている。しかし、食物アレルギーは、医学・栄養学・調理学など幅広い分野の知識が必要で、理解することが難しいとの声も聞く。本研究では、学校に於いて食物アレルギー児支援の要になる養護教員対象修会の機会を利用してアンケートを採り、研修の効果と食物アレルギー支援の課題を明らかにすることを目的とした。

    【方法】三重県内T市で行われた学校養護教諭・栄養教諭対象の研修会後アンケート調査を行い、研修の効果と現場における課題について、「ヒヤリ・ハット事例」も含め調査をした。調査紙はその場で配布し回収した。(回収数58)

    【結果】参加者の85%が養護教諭で、勤務年数は20年以上が約半数だった。勤務年数が1年未満を除き、80%以上が食物アレルギー児を担当した経験があり、いずれの現場でもアレルギー児がいるという前提での対応を整えていく必要があることが分かった。食物アレルギーに対する知識と自分事と思う意識は、もともと高かった割合は低く、講習会を受けて高まったと回答した者が90%を超えた。研修内容の理解度のうちやや低かった項目は「食物アレルギーの仕組み」で、逆に高かった項目はエピペンRに関する項目だった。対応上の困難は、保護者対応で困っている者の割合が最も高く34%で、ついで職員間の連携の26%だった。その内容は、「管理指導表」に関するものや、「食物アレルギー児支援を理解してもらえない」などが多かった。「ヒヤリ・ハット事例」では、職員の食材原料に対する認識不足、献立の変更時の確認不足、トングなど配食時のコンタミネーションなどがあがり、さまざまな場面での注意喚起が必要であることが分かった。

     
  • 浅賀 宏昭
    セッションID: 2B-a9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】人工光型植物工場で栽培される野菜(工場野菜)は、露地物野菜に比べると、柔らかく、味に癖が無く、無農薬で、かつ付着細菌が少なく衛生的である等の特徴があるので、生食に向いているとされる。しかし、工場野菜に適した調理の方法は、必ずしも明らかにされていない。そこで、六次産業化を視野に入れた上で、工場野菜に適した調理法を探ること、および野菜などの食材や調理の科学的側面を学ぶことの2つを目的とした授業を設計し、商学部の特別テーマ実践科目「調理科学入門」として2014年度より開講してきた。2年余りを経過したので、授業実践の報告もかねて成果を発表させていただこうと考えた。
    【方法】材料である工場野菜(小松菜、春菊、リーフレタス、ワサビ菜)は、本学植物工場基盤技術研究センターにおいて栽培されたものを用いた。授業は、毎年1クラス(15~20人)開講し、受講生を3班に分け、上記のような特徴のある工場野菜に適した調理方法を班ごとに検討させ、レシピも完成させた上で、外部専門家委員をお呼びした成果報告会の前で発表させるという、「講義+実習+発表」という形態で実施した。
    【結果】工場野菜は、生食のほか半生状態でも食べやすいことがわかった。小松菜や春菊は、ラップフィルムで包んで電子レンジでの加熱による簡便な方法でのおひたしの材料にも向いているとわかった。どの工場野菜もサラダでより強い歯ごたえを得るためには、まとめて生春巻や海苔巻に、あるいはトルティーヤで包むなどの工夫が有効であった。また、ミキサーで破砕してスムージー、ガスパチョ、ガレットや麺類の素材としても適していると確認できた。さらにババロアや寒天を用いたデザートの材料にも向いていることがわかった。
  • 戸松 美紀子, 野村 希代子, 杉山 寿美
    セッションID: 2B-p1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】汁物から摂取する塩分量を減少させることが,生活習慣病予防としての「減塩」の視点から求められている。一方,我が国の食事は,白飯などの主食と汁や菜と組み合わせて交互に食べることでおいしさが成立しているため,汁物の「減塩」も,実際の食事がおいしく食べられる範囲で行わなければならない。我々はこれまでにみそ汁の塩味の評価が,飯と組み合わせることで変化することを報告しており,本報告ではおかずを組み合わせた場合の影響を検討した。
    【方法】みそ汁(塩分濃度:0.4,0.6,0.8%)に,白飯および魚フライ,煮魚,お浸し,金平牛蒡(塩分濃度:0.6,1.1%)のいずれかを組み合わせて提供し,食べ始めと食べ終わりのみそ汁の塩味の「強さ」「好ましさ」を評価させた。パネルは女子大学生とした。
    【結果】みそ汁の食べ終わりの塩味の「強さ」は,食べ始めよりも白飯のみの場合は強くなる傾向にあった。さらにおかずを組み合わせると,白飯のみの場合よりも塩味の「強さ」は低くなり,煮魚や1.1%塩分の金平牛蒡と組み合わせた場合は有意に低下した。一方,同じ塩分濃度の魚フライやお浸しでの低下の程度は小さく,おかずの塩分濃度のみがみそ汁の塩味の「強さ」へ影響するのではないと推察された。みそ汁の食べ終わりの塩味の「好ましさ」は,食べ始めよりも白飯のみの場合は0.4%,0.6%の汁では高くなる傾向にあった。さらにおかずを組み合わせると,白飯のみの場合よりも0.4%の汁では低くなったが,0.6%,0.8%の汁では白飯のみの場合と同程度であった。これらのことから,みそ汁に白飯とおかずを組み合わせた場合に,みそ汁の塩味の「強さ」は低下するものの,塩味の「好ましさ」は0.6%,0.8%のみそ汁では維持されることが示された。
  • -継続使用期間による影響について-
    菊池 節子, 善方 美千子, 小幡 明雄, 藤本 健四郎
    セッションID: 2B-p2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    減塩醤油を用いた減塩調理への慣れの評価(第3報)

    -継続使用期間による影響について-

    ○菊池節子1,善方美千子1,小幡明雄2,藤本健四郎1

    1郡山女子大,2キッコーマン(株))

     

    【目的】食塩嗜好には慣れの現象がみられるとの報告があることから、我々は大学生およびケア・ハウス入居者において、濃口醤油の半分の食塩含量である減塩醤油を約1か月間継続使用することにより、低塩に対する慣れの現象がみられることを確認し、本学会で発表した1)。今回、継続使用期間による影響を検討するために、使用期間を短縮し2週間の減塩醤油の使用による塩味の慣れに関する検討を行った。

    【方法】対象者はケア・ハウス入居者48名(平均83.3歳±7.1歳)で、以下の試験をお願いした。(1)官能評価(減塩生活前):①濃口醤油(食塩濃度約16.0%(W/V))、減塩醤油(食塩濃度約7.8%(W/V)、いずれもキッコーマン製)で「マグロ刺身」の嗜好試験。②前記2種の醤油で調理した「里芋含め煮」の濃度差識別試験ならびに嗜好試験。(2)減塩生活(14日間):調理に使用する醤油をすべて減塩醤油で生活。(3)官能評価(減塩生活後):(1)と同様の試験。(4)献立の醤油使用量計算。

    【結果】(1)「マグロ刺身」嗜好試験において、減塩生活前では、減塩醤油につけた刺身と濃口醤油につけた刺身間に嗜好の差はなかったが、減塩生活後では、減塩醤油につけた方が有意に好まれた(p<0.01)。(2)調理品である「里芋含め煮」では、減塩生活前後の嗜好に有意な差はみられなかった。(3)施設の給食における1日あたりの平均醤油使用量は、減塩生活前は濃口醤油11.0g、淡口醤油3.0g、減塩生活中は減塩醤油14.3gであった。醤油を減塩醤油に置き換えて調理した結果、醤油からの食塩摂取量は、減塩生活前に比べ1.0g/日減少した。これらの結果から、減塩生活を2週間に短縮しても、低塩に対する慣れと、実質的な減塩につながることが示唆された。1)日本調理科学会平成26年度、27年度大会
  • 中野 優子, 笠松 千夏, 野中 雅彦, 香西 みどり
    セッションID: 2B-p3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】食品のテクスチャーのうち、「ざらつく」「なめらか」といった幾何学的特性は、ヴィシソワーズやねり餡など様々な食物のおいしさに影響する。こうした食物中の粒子に起因するテクスチャー(粒子感覚)に着目し、分散媒と粒子の状態が口腔内粒子感覚に与える影響を、モデル系試料を用いて検討した。
    【方法】モデル系試料として、分散質には微結晶セルロース(篩別前平均粒子径約125 µm)や小豆さらし餡を、分散媒には水や粘稠液(キサンタンガム水溶液)を用いた。粒子の客観的指測定として、粒度分布、摩擦係数、水分含量、真円度およびアスペクト比を求めた。また、分散媒の味(5基本味)や粘度、粒子の濃度、サイズが粒子感覚に与える影響を、粒子を分散媒に懸濁させた試料を用いた官能評価によって調べ、種々の客観的指標との関係を求めた。
    【結果】分散質の粒子径は、篩別した微結晶セルロースでは分画ごとに約36~221 µm、餡粒子は約110 µmであった。これらの粒子の摩擦測定条件を検討し、平均摩擦係数および最大摩擦係数を測定した結果、最大摩擦係数は粒子感覚の強度および平均粒子径と正の相関関係にあった。このことから、摩擦測定が粒子感覚の新たな指標となる可能性が示された。分散媒の味が粒子感覚に与える影響については、グラニュー糖5、8 %および食塩0.6、0.8 %で粒子感覚の強度が弱まり、クエン酸0.4 %では粒子感覚の強度が高まる傾向にあった。また、分散媒に段階的に粘度づけをした試料を用いて官能評価を行ったところ、中程度の粘度(キサンタンガム0.2 %)の方が低粘度(同0.1 %)、高粘度(同0.5 %)の場合よりも粒子感覚は強く評価された。以上より、粒子感覚の知覚は分散媒の味や物性に影響を受けることが明らかになった。
  • 森髙 初惠, 杉本 悠貴, 不破 眞佐子, 堀 一浩, 小野 高裕
    セッションID: 2B-p4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者にとって、食塊の嚥下は生死を分ける大きな問題となる場合があり、これは社会的課題である。食塊を安全に嚥下するためには、食品の物理的性質が大きく影響する。本報告では、嚥下特性およびテクスチャー特性、咽頭部での食塊の移動特性を測定して検討した。 【方法】試料には0.1~0.9%破砕寒天ゾルを用い、被験者は20~22歳の女子学生とした。嚥下時の舌圧と咽頭部における食塊の移動速度を測定し、機器と官能評価によるテクスチャー特性値を測定した。 【結果】テクスチャーの客観測定と主観測定から、寒天濃度は高くなるほど付着性は高くなった。客観測定において、0.3%試料の付着性が0.5~0.9%試料よりも低く、主観評価では03%試料の付着性は0.7および0.9%試料よりも低いと評価された。嚥下時の舌と硬口蓋との接触時間およびピーク値は、0.7および0.9%試料は0および0.1%試料よりも長く、大きかった。硬口蓋正中後部において、嚥下時の舌と硬口蓋の初期接触時間は寒天濃度が高いほど遅かった。咽頭部における食塊の最大移動速度は、寒天濃度が高くなると低下した。これらの結果は、寒天の濃度が高くなると、嚥下時に食塊を口腔から咽頭部へ移送するための舌と硬口蓋の接触エネルギーは高くなるが、咽頭部における食塊の移動速度は反対に低下する関係であった。0.5%は0.7および0.9%試料に比較して、舌と硬口蓋の接触時のピーク値が小さく、嚥下しやすいと評価され、咽頭部における食塊の移動速度は中程度であった。これらの結果から、安全な飲み込みの寒天濃度は、本実験で使用した試料中では0.5%前後ではないかと考えられた。
  • 荒井 恵美子, 永塚 規衣, 小林 理恵, 佐藤 吉朗
    セッションID: 2B-p5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】我々は咀嚼・嚥下困難者の食事におけるQOL向上を目的に、呈味特性や香気特性に影響を及ぼすと言われている「とろみ調整剤」を添加した食品の香気フレーバーリリースについて研究を行っている。前報では、調理から喫食までの保存温度に着目して香気フレーバーリリースを分析した結果、温かくして食する食品を想定した65℃試料において、香味食材「わさび」の香気成分量の変化が認められた。そこで、これら香気成分量の変化に係わる要因として温度および物性が関与していると推察し、本研究では、とろみ調整剤添加食品の品温の違いが物性に及ぼす影響を検討した。
    【方法】蒸留水20mLを35℃まで加温し、キサンタンガム系のとろみ調整剤と粉わさびを加えて1分間手動撹拌した後、常温で30分間放置した。その後、10℃、20℃、65℃に設定した恒温槽で30分間静置した試料について、各温度を保持しながら動的粘弾性測定を行った。また、口腔内に取り込まれた食品の温度変化を想定して、各温度試料の測定温度を体温に近い40℃で測定した試料と比較した。
    【結果】10℃試料と20℃試料のG'(貯蔵弾性率:弾性要素)およびG''(損失弾性率:粘性要素)に差は認められなかったが、65℃試料のG'が10℃試料および20℃試料に比べて顕著に低値を示したことから、65℃で保存したとろみ調整剤添加食品は、流れ易い物性に変化することが示唆された。また、65℃試料を40℃に設定して動的粘弾性を測定した結果、G'の顕著な増加が認められた。このことより、とろみ調整剤添加食品を65℃で保存すると、喫食前までは流れ易い物性であるが、口腔内で体温に近い温度まで品温が低下した場合は、再び弾性が高まると推察された。
  • 西原 百合枝, 沖邉 敦代, 松尾 愛美, 柚木崎 里紗, 朝倉 富子, 舟木 淳子
    セッションID: 2C-a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】嚥下困難者用食品の需要が高まっているが、われわれはその一つとしてパン粥をとりあげ、これまでにタピオカデンプンを使用したパンを用いたパン粥は、強力粉のみのパンを用いたパン粥より硬さや付着性が大きくなることを明らかにした。本研究ではデンプンの種類に着目し、デンプンがパン粥のテクスチャーへ及ぼす影響を検討した。
    【方法】パンはホームベーカリー(SD-BMT2000、パナソニック株式会社)を用いて作製した。デンプンはコーンスターチ、小麦デンプン、タピオカデンプンを使用し、それぞれ強力粉重量の20%を置き換えた。これらのパン(強力粉100%、コーン20%、小麦20%、タピオカ20%)について、比容積を測定した。その後、一定の条件でパンのクラムを水とともに攪拌、加熱を行い、パン粥を作製した。それぞれクリープメータ(株式会社山電)を用いてテクスチャー解析を行った。
    【結果】パンの比容積について、強力粉100%はデンプン20%3種よりもそれぞれ有意に大きかった(p<0.05)。デンプン20%の三者間で有意差はなかった。パン粥の硬さは、45±2℃で測定した場合、強力粉100%が0.98±0.12 kPa、コーン20%が1.30±0.10 kPa、小麦20%が1.05±0.05 kPa、タピオカ20%が1.93±0.13 kPaであった。付着性は、強力粉100%が0.38±0.06 kJ/m3、コーン20%が0.43±0.05 kJ/m3、小麦20%が0.47±0.04 kJ/m3、タピオカ20%が0.83±0.06 kJ/m3であった。タピオカ20%の硬さと付着性は、他のパン粥よりも有意に大きかった(p<0.01)。パン作製時に強力粉の一部を様々なデンプンに置換することによって多様なテクスチャーのパン粥を作製できる可能性があると考えられた。
    本研究の一部は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」によって実施された。
  • 坂巻 明日香, 橋詰 奈々世, 榎本 俊樹, 小林 理恵
    セッションID: 2C-a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】大麦には健康機能性成分として知られる水溶性食物繊維βグルカンが多く含まれ,その摂取を目的として様々な大麦食品が開発されている。しかし大麦はグルテンをほとんど含まないことから,その利用用途は限られる。そこで本研究は,製菓・製パンへの大麦粉の利用拡大を目指して,大麦粉の基礎特性および大麦粉生地の力学特性を測定した。
    【方法】試料は精白大麦粉(大麦粉:JA小松市)とし,その比較には日穀製粉㈱製の薄力小麦粉(薄力粉),強力小麦粉(強力粉)を用いた。各試料の粉体特性として粒度分布および落下体積法による安息角測定の他,水への分散性評価のために,ホソカワミクロン㈱に委託し,ペネトアナライザ(PNT-N)を用いてぬれ性を求めた。併せて,日本バイオコン㈱のキットを用いて各粉の澱粉損傷度を調べた。アミログラフ試験により各試料バッターのみかけの粘度および糊化開始温度を測定した。糊化特性は示差走査熱(DSC)測定の結果と併せて考察した。レオナーによる圧縮試験およびファリノグラフ試験により,強力粉ドウと同じ硬さに調整するための大麦粉ドウの加水量を調べた。
    【結果】薄力粉,強力粉に比べて大麦粉は小粒子径粉の含量が多く,安息角が高い傾向であった。大麦粉のぬれ性は試料中最も高く,分散性が良いことが示唆された。澱粉損傷度が高いと吸水量が大で生地が重たくなり膨化しにくくなるが,大麦粉のそれは4%と試料中最も低かった。アミログラフ試験およびDSC測定の結果,大麦粉は薄力粉および強力粉に比べて糊化開始温度が低く,糊化しやすい特性であり、大麦粉バッターは粘度が著しく高かった。強力粉ドウと同程度の硬さにするためには,加水量を約10%増加させる必要があった。
  • 山地 美樹, 伊藤 聖子, 新井 映子
    セッションID: 2C-a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】パンは多孔質で水分含有量が少ないため,口腔内でまとまりにくく飲み込みにくい。唾液量が減少した高齢者にも食べやすいパンの調製法として,ハイドロコロイドを用いて生地の加水量を高める方法が考案されているが,咀嚼・嚥下に関わる食塊物性を検討した例は見当たらない。そこで,寒天ゲルによる加水量の増加が,パンの特性や食塊物性に与える影響について明らかにすることを目的とした。
    【方法】対粉67%加水で混捏中のパン生地(コントロールパン)に0.8%寒天ゲルを添加し,総加水量が80,100,120,140%になるように高含水パンを調製した。パンの比容積,水分含有率,吸水率,テクスチャー,糊化度を測定し,官能評価を行った。パン粉砕物に模擬唾液を混合して模擬食塊を調製し,α-アミラーゼの不在下と存在下でテクスチャーを測定した。焼成後のパンに水を添加して水分含有率を調整した水添加コントロールパンを用いた比較も行った。
    【結果】寒天ゲルの添加で加水量が増すに伴いパンの比容積は減少したが,120%加水パンが最もやわらかく,凝集性も高いことから,120%までは加水量を増やすことが可能であった。クラムの水分含有率は加水量の増加に伴って上昇し,吸水率は低下した。模擬食塊は,加水量の増加に伴って固形分が減少するためやわらかくなり,付着性も低下した。α-アミラーゼ存在下において,120%加水パンの付着性は,水分含有率が等しい水添加コントロールパンよりも低下した。糊化度は,加水量の増加に伴ってわずかに増加した。官能評価より,120%加水パンはコントロールパンよりも飲み込みやすいと評価され,水添加コントロールパンとの比較では,付着性が低いと評価された。
  • 田中 麻美子, 宇田川 瑛里, 西田 毅, 松田 寛子, 白井 隆明
    セッションID: 2C-a4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】レジスタントスターチ(RS)は小腸内で吸収されない澱粉であり、血糖値上昇の抑制や腸内環境の改善効果がある。澱粉質食物に含まれるRS生成には温度が大きく関与しているが、調味料添加などの調理過程におけるRS量変化に関する知見は乏しい。そこで本研究では、澱粉質食物のうち多くの調理方法が知られているジャガイモに着目し、ジャガイモ中のRS生成に与える100℃を超える温度処理と食酢の原料となり得る酢酸添加の影響を検討した。
    【方法】基礎知見を得るため、ジャガイモ由来の精製澱粉を用いた。精製澱粉に水分含量80%となるように水を加え、無処理(1)、100℃20分加熱(2)、100℃20分加熱後6℃24時間(3)、100℃20分加熱後6℃48時間(4)、120℃20分加熱(5)、120℃20分加熱後6℃24時間(6)、120℃20分加熱後6℃48時間(7)の条件で温度処理後、凍結乾燥したものを試料とした。これらを酵素処理法によりRS量を測定した。また、上記の条件にて水を1M酢酸に置き換え同様にRS量を測定した。さらに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面構造の観察および、食後の血糖値上昇度を示す予測グリセミック・インデックス(eGI値)の測定を行った。
    【結果】水添加での温度処理では各温度処理群で大きな差は得られなかった。一方、酢酸添加時は100℃加熱後の冷却時間にかかわらず(3、4)100℃加熱のみ(2)と比べてRS量が増加し、水添加よりも高い値を示した。しかし、120℃加熱後は冷却の有無にかかわらず(5~7)、100℃加熱処理(2~4)と比べRS量は著しく減少した。SEMによる表面構造の観察において、水添加では変化はなかったが酢酸添加では120℃加熱において多数の細孔が生じた。これらの結果から、ジャガイモ中のRS生成は温度条件と酸添加により大きく変動することが示唆された。eGI値は現在検討中である。
  • 宇田川 瑛里, 田中 麻美子, 西田 毅, 松田 寛子, 白井 隆明
    セッションID: 2C-a5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】レジスタントスターチ(RS)はヒトの小腸内で吸収されず大腸まで到達する難消化性澱粉の総称であり、血糖値上昇の抑制や腸内環境の改善効果がある。澱粉を主成分とする穀類や野菜にはRSが多く含まれ、その含有量は調理過程における温度処理や調味料添加により変化する。カボチャは指定野菜に続いて消費量の多い野菜であるにもかかわらず、カボチャ澱粉のRSについて調理特性の知見は乏しい。そこで本研究では、調理過程での温度処理や調味料添加が、カボチャRSに与える影響の解明を目的とする。
    【方法】カボチャ精製澱粉は、市販のメキシコ産味平カボチャを希NaOHおよびEtOH処理することで得た。その後、精製澱粉に水分含量80%となるように水または1M酢酸を加え、次の温度条件を用いた。それぞれ無処理、100℃20分加熱、100℃20分加熱後6℃24時間、100℃20分加熱後6℃48時間、120℃20分加熱、120℃20分加熱後24時間、さらに120℃20分加熱後6℃48時間で処理後、凍結乾燥したものを試料とした。これらの試料を用い、走査型電子顕微鏡により形状を観察すると共に、酵素法によりRS含有量を測定し、総澱粉量に対するRS含有率を算出した。さらに、in vitroにおいて予測グリセミックインデックス(eGI)値の測定も行った。
    【結果】走査型電子顕微鏡では、加熱後の各温度条件による澱粉の形状変化に、大きな違いは見られなかった。しかしRS含有率は、温度や酸添加処理により大きく変化した。この結果から、調理過程における温度や調味料添加が、カボチャ澱粉のレジスタントスターチ生成に与える影響の一部が示された。eGI値については現在検討中である。
  • 平島 円, 奥野 美咲, 高橋 亮, 磯部 由香, 西成 勝好
    セッションID: 2C-a6
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】澱粉のpHを13よりも高くすると,加熱せずに糊化(アルカリ糊化)が起こることはよく知られている。しかし,こんにゃくや中華麺などの食品に含まれるアルカリ性物質の濃度はアルカリ糊化を起こすほど高くない。そこで本研究では,食品中でみられる高pHの範囲内で澱粉の糊化および澱粉糊液の粘度に及ぼすpHの影響について検討した。
    【方法】澱粉にはタピオカ澱粉(松谷ゆり8,松谷化学工業(株))およびコーンスターチ(コーンスターチY,三和澱粉工業(株))を用い,その濃度は3.0,4.0および20wt%とした。また,澱粉の糊化はNa塩の影響を受けることから,アルカリの影響についてのみ検討できるよう,Sørensen緩衝液を用いてNa濃度を一定とし,pHを8.8–13.0に調整した。アルカリ無添加の澱粉をコントロール(pH 6.5付近)とした。20wt%の澱粉を用いてDSC測定を,また,3.0wt%および4.0wt%の澱粉を用いて粘度測定,顕微鏡観察,透過度測定を行い,澱粉の糊化および澱粉糊液の特性について検討した。
    【結果】pHを8.8–12程度まで高くすると,タピオカ澱粉およびコーンスターチの糊化温度およびエンタルピーは,コントロールよりもわずかに高かった。すなわち,食品で扱われる高pHの範囲内では,いずれの澱粉も糊化は起こりにくくなるとわかった。その影響を受けて,pHを11程度まで高くしたタピオカ澱粉およびコーンスターチ糊液の粘度はコントロールよりも低かった。しかし,pHを12よりも高くすると,糊化温度とエンタルピーはコントロールよりも低く,常温で澱粉粒子内の結晶構造が壊れるとわかった。したがって,pHを12よりも高くすると,澱粉の糊化は起こりやすくなり,澱粉粒子からのアミロースやアミロペクチンの溶出量が多く,糊液の粘度と透過度は高くなるとわかった。
      以上の結果より,食品にみられるアルカリ性の程度(pH12以下)では澱粉の糊化が起こりにくくなるとわかった。
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