日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成28年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の203件中101~150を表示しています
ポスター発表
  • 石井 香代子, 高橋 知佐子, 近藤 寛子
    セッションID: 1P-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】 真空調理法を用いて長時間加熱で作製した肉・魚の調理時間の違いによる食品の硬さ・色や味の変化を測定し食品の物性を知ること、物性と食味について比較検討し、加熱の特徴を知ることを目的とした。 【方法】 試料として豚バラ肉・鶏ムネ肉・牛もも肉・サバを用いた。真空袋は厚さ0.06mm、15cm×25cmを使用し、調味料は食材重量の8%の砂糖・濃口しょうゆと食品重量の20%の蒸留水をだし汁として調味液とした。加熱はスチコンを用い、スチーム度100%、80℃で1・5・10・15時間加熱し、室温冷却(25℃程度)・急速冷却(クックチルシンクで芯温4℃前後)し、測定試料とした。測定には再加熱(75℃1分)したものを用いた。破断解析は、RHEONERⅡCREEP METER RE2-3305B:㈱山電製で直径(生は2mm、加熱品は3mm)のプランジャーで測定した。食味評価を甘味、塩味、酸味、硬さ等について5段階評価を行った。 【結果】 鶏ムネ肉の加熱時間1・10・15時間の室温冷却の硬さは各々6.27(×10⁵N/m²)、5.15(×10⁵N/m²)、8.79(×10⁵N/m²)、3.92(×10⁵N/m²)で、同じく急速冷却の硬さは、4.75 (×10⁵N/m²)、4.19(×10⁵N/m²)、6.18 (×10⁵N/m²)、4.56 (×10⁵N/m²)であった。サバも同様に室温冷却の硬さは各々5.15(×10⁵N/m²)、11.43(×10⁵N/m²)、5.67(×10⁵N/m²)で、同じく急速冷却の硬さは、各々8.66(×10⁵N/m²)、13.7(×10⁵N/m²)、3.76(×10⁵N/m²)であった。
  • 能井 さとみ, 後明 祐希, 田中 ゆかり, 鴫原 正世
    セッションID: 1P-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】大豆は、古来より様々な形で加工され日常の食生活になくてはならない食品である。また含まれる栄養成分などから、近年その健康効果が期待されている。開学以来、全学給食制を実施している本学でも大豆の栄養価値に着目し、大豆加工品のメリットを生かした給食献立への応用を目的にレシピを検討し給食調理を実施、嗜好アンケートを行った。

    【方法】レシピの検討:大豆ミート(株式会社マイセン「まるっきりお肉」)を使用。予備実験:ドライカレー、ミートソース、挽肉コロッケ、かぼちゃのそぼろあんかけ、ハンバーグ、チャーハンのレシピを作成し調理。試食後、条件を満たした2種類(チャーハン、ドライカレー)を採用。給食調理①チャーハン:実施日平成28年3月3日、対象者:本学教職員の協力者46名。②ドライカレー:実施日平成28年3月26日、対象者:本学オープンキャンパス参加者、本学学生ボランティア、教職員計147名。嗜好アンケート:①②共に見た目、食感、香り、味、具材について、総合評価。嗜好アンケートでは、大豆加工品を使用していることを伝えず実施(アレルギー性食品の使用は提示)、給食提供、アンケート記入後に提示。

    【結果】嗜好アンケート:見た目、食感、香り、味、総合評価。両レシピ共に、すべての項目において非常に好ましい、好ましい又は普通との評価が90%を超えていた。挽肉の種類についての質問では大豆以外の豚肉、鶏肉、牛肉、牛・豚挽肉との回答がチャーハンで70%、ドライカレーで80%を占めていた。これらのことから大豆加工品の使用は給食献立として応用が可能で学生の健康維持の面から見ても積極的に取り入れたい食品であり、今後更にレシピの幅を広げていきたい。

     
  • -れんこんの場合、学生による官能評価の実施-
    能井 さとみ, 佐藤 恵, 後明 祐希, 田中 ゆかり, 藤本 真奈美, 鴫原 正世
    セッションID: 1P-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】新調理システムを導入する施設が近年増えていることから、栄養士養成校である本学でも平成18年より新調理システムのための機器を導入し、真空調理等を授業に取り入れ、その活用方法についても検討を重ねてきた。今回はれんこんに着目し、真空調理のメリットを生かした煮物で一般調理と同等の仕上がりを目的に調味料の分量等を検討、官能評価を実施した。

    【方法】試料:生れんこん、かつおこんぶだし、白しょうゆ、みりん、上白糖。①一般調理、真空調理の試料を作成し、調味料の分量や調理工程、仕上り等を比較検討。調理条件:一般調理は、IHコンロを使用し加熱。真空調理は、真空包装後、スチームコンベクションオーブンで加熱。②官能評価:実施日、平成27年12月2日、パネリスト:本学食物栄養科2年生の協力者(調理科学演習受講者)22名。事前に2点識別検査法を行いパネリストとして適しているかを判断した。事前検査方法:塩分濃度0.8%と0.85%のすまし汁(かつおこんぶだし、食塩)の塩分濃度を識別可能か。官能評価項目:見た目(仕上がり)、柔らかさ・固さ、舌触り、味、食感総合。

    【結果】パネリストへの2点識別検査法の結果有意水準1%で、パネルは識別能力があると判断できた。官能評価の結果、柔らかさ・固さ、舌触り、味、食感総合で有意差がなく、見た目(仕上がり)については1%危険率で一般調理が有意であった。このことから、見た目以外の項目においては、一般調理と同等に仕上げることができたと言える。また、官能評価を行った感想として「一般調理も真空調理もそれぞれよいところがありどちらかを選ぶのに苦労した。」「事前にすまし汁の識別検査を行っていたので要領よく進めることができた。」等が見られた。

     
  • 石原 佑希子
    セッションID: 1P-32
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】鶏卵はサルモネラ感染症の原因食品として知られている。サルモネラ菌の含有率は鶏卵の1万個に3個の割合と低いが,特に加熱前の生卵はサルモネラ菌以外の細菌の汚染源となる可能性もある。実際に割卵を行った調理台において中温性好気性菌の生菌数を測定したところ,その発生が確認できた。そのため,割卵の際には器具や他の食品への汚染が懸念される。しかし,大量調理施設衛生管理マニュアル等では割卵方法までの取り決めはされておらず,各施設での割卵方法は様々である。そこで,栄養士養成施設における鶏卵の割り方の指導方法について検討を行った。

    【方法】様々な施設に勤務する管理栄養士・栄養士20名と調理師27名を対象に割卵方法について質問紙調査法により予備調査を行った。そのうち,全体で頻度の高い割卵方法であった「調理台の上で割る」「ボウルのふちで割る」「ボウルの外側の側面で割る」「卵同士をぶつけて割る」の4種について栄養士科学生4名による割卵実験を行い検証した。それぞれについて割りやすさ,作業効率の良さ,調理台への生卵の付着の有無,卵殻の混入の有無という点から評価した。

    【結果】①割りやすさ,②割卵の平均時間,③調理台への生卵の付着,④卵殻の混入回数の全ての項目において「ボウルの外側の側面で割る」が最も高い評価であった。この理由として,卵を割り落とす場所が近く作業効率が良いこと,ボウルの外側の曲面は割卵しやすく,卵殻が砕けにくい角度であることが考えられる。そのため,調理に不慣れな学生でも割りやすく作業効率の良い方法であることが示唆される。
  • オーストリアにおける分子調理の取り組み
    冨永 美穂子, 石川 伸一, 湯浅 正洋, 安部 春香, トレイバー フリッツ
    セッションID: 1P-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】物理や化学の原理やそれらを応用した科学技術的なアプローチで新たな料理を開発する試みが欧米諸国で広まりつつあり,分子調理と呼ばれている.一方,日本においては一部の新進気鋭の料理人の調理技術を除き,分子調理の学術的な概念や理論が調理科学に関係する研究者にほとんど浸透していないと考えられる.そこで,日本において分子調理の学術基盤を構築し,普及させていくために分子調理分野を研究開拓しているオーストリアグラーツ大学味覚研究室(Geschmacslabor)と交流活動を行い,そこでの取り組み事例を紹介する.
    【方法】2014年3月から2016年3月にかけてグラーツ大学味覚研究室を訪問し,学生・教員,地域住民などを対象にだしや和食,弁当をテーマとするワークショップを3回開催した.亜酸化窒素(N2O),メチルセルロース(MC),乳酸カルシウム(CL),アルギン酸ナトリウム(SA),複数のゲル化剤などを使用し,泡状(エスプーマ),シート状,球状,パスタ様料理などを調製する分子調理基礎コースを体験取材するとともにだしの分子調理版の調製を試みた.
    【結果】ワークショップでは日本の代表的な家庭料理である卵焼きの調製方法や味に高い関心が寄せられた.通常,液体,固体として食する料理の形状を泡状,球状,シート状などに変えることにより,外観をはじめ,風味,食感を変化させることが分子調理の基礎技術と捉えられていた.SAおよびCLを利用した日本の人工いくらの製造技術が色鮮やかなタピオカ様ドリンク,液体だしはN2Oにより泡状,ゲル化剤によりパスタ様,ゾル状食品はMC添加,100℃数時間オーブン焼成によりシート状に変化した.異食文化の視点の融合により新たな料理の開発・発展につながる可能性が高いと考えられた.
  • 金高 有里, 柏谷 梨緒, 古矢 詩織, 三好 美咲, 戸羽 奈都美, 名倉 秀子
    セッションID: 1P-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】離乳食については、2007 年に厚生労働省により発表された「授乳・離乳の支援ガイド」があり、保健センター等でその調理法の具体的な指導があるが、受講者は少なく、調理法に不安を持つ親も多い。離乳食の調理については、手間や時 間の短縮のためフリージングの活用が広まっている。しかし、野菜をフリージングした離乳食のテクスチャーや栄養価を示した報告は少ない。そこで、離乳食によく使用される 野菜を用いて、ゆで、フリージング、解凍の一般的な方法を検討することとした。ここでは、テクスチャー、栄養価の視点 から解凍方法の影響をについて明らかにすることを目的として検討を行った。【方法】離乳食に使用される食材として人参とほうれん草を用いた。各食品について予備実験を行い、ゆで時間、ゆで水量等の調理条件を検討した。離乳食の調理形態として離乳後期を設定し、人参は 1 ㎝の角切り、ほうれん草は粗みじん切りとした。人参は切断した後ゆで、ほうれん草はゆでた後切断して、30g ずつのポーションに分け、一定期間冷凍した。2 種の急 速解凍(ゆで解凍、マイクロ波解凍)で加熱し、測定試料とした。各々の重量変化・テクスチャー・栄養価等を検討した。【結果】ゆで後の重量変化は、ほうれん草と比較して人参の方が大きくなった。ゆで解凍・レンジ解凍後の重量変化率は、人参・ほうれん草共にゆで解凍の方が高くなった。人参の栄養価は、人参の脂質・ビタミン C・葉酸において大きな変化が みられた。ほうれん草では、鉄・葉酸・βカロテンにおいて大きな変化がみられた。解凍後のかたさ応力は人参、ほうれん草共にゆで解凍の方が大きくなり、解凍法の違いがテクスチャーに影響を及ぼすことが示された。
  • 兒山 左弓, 鈴木 歩, 橋本 彩緒里, 堀川 真理子, 町田 瑞希, 森下 絢加, 山下 優賀
    セッションID: 1P-35
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】一人暮らしの高齢者が在宅で調理をする場合、安く、早く、美味しく、無駄なく、簡単な調理方法が求められる。食材の中で、生野菜はしなびたり変色しやすいため短期間に使い切ることは難しい。野菜の保存性を保ちながら、調理の手間を省くために、予め冷凍処理した野菜を使って調理したものが、高齢者の食事に適しているかについて検討した。

    【方法】生のジャガイモ、レンコン、ニンジン、キャベツ、キュウリを、調理に適した大きさに切り、水にさらした後、水気をふき取りそのまま冷凍保存袋に入れて、家庭用冷凍庫で1週間保存した。その後、冷凍保存した野菜と生の野菜とを用いて、それぞれジャーマンポテト、きんぴら、コールスローサラダを調理した。大学生14名(男性9名、女性5名)を対象として試食をおこない評価を行った。

    【結果】ジャーマンポテトときんぴらの見た目については、生に比べて冷凍の方が若干評価は低いものの、味については明らかな違いはみられなかった。噛みやすさについては、冷凍の方が軟らかかった。総合評価では、ジャーマンポテトでは、生と冷凍に差はみられなかったが、きんぴらでは生の方が冷凍より良いという結果であった。コールスローサラダについては、冷凍では離水が激しく、水分の多い野菜を冷凍後サラダとして調理することは適していないことがわかった。高齢者に対してどちらが適しているかという問いに対して、ジャーマンポテトでは、生が21.4%であったのに対し、冷凍は60.7%、きんぴらでは、生が3.6%であったのに対して冷凍が85.7%と高く、冷凍した野菜の軟らかさが高齢者の食事に向いているという評価が得られた。
  • 峰村 貴央, 宮田 美里, 西念 幸江, 三舟 隆之
    セッションID: 1P-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】近年、平城京跡出土木簡や「正倉院文書」、平安時代の法典と知られる『延喜式』等によって古代の食品が判明するが、その調理法や食事、食膳風景はほとんど不明である。そこで本研究では、「正倉院文書」から東大寺写経所で一日一人当たりに支給されている食品名および量、さらに調理器具や食器を調べ調理法を検討し、古代の日常の食事の復元を試みた。
    【方法】史料は、「正倉院文書」の天平宝字六年(762)十二月十六日「石山院奉写大般若経用度雑物帳」や『延喜式』等の古代史料とした。支給されている食品は、「粳米,塩,醤,末醤,酢,糟醤,海藻・滑海藻,布乃利・大凝菜・小凝菜,芥子,糯米,大豆・小豆,胡麻油,漬菜」であり、ナベなどの調理器具は古代と形状が比較的類似しているものを使用した。また、復元に使用する熱源は古代では薪だったが、ガスを用いた。
    【結果】史料に見える支給された食品と調理器具、そして食器から復元をすると、1日の食事重量や食塩相当量が非常に多いことが推測された。推測した調理工程は、以下のようになった。①粳米は食品と共に甑が支給されており、それを用いて蒸したと推察された。しかし、浸漬の有無は文献や木簡に記載がないため、粳米は強飯のような調理工程であったと考えられる。②海藻類(海藻・滑海藻)は羹汁に調理されていたと思われる。③天草と布乃利は心太に調理されていたので、水と共に加熱後、ゲル化させた。④糯米は史料に「餅」という記述があるが、粳米と同様の調理工程では餅に加工ができないため、糯米を茹でた後にすりこぎで米粒を潰して餅にした。⑤大豆・小豆は、「大豆餅・小豆餅」という餅が存在したため、餅に混ぜ合わせた。
  • 川面 なほ, 橋本 淳, 山下 満智子, 東 あかね
    セッションID: 1P-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】  本研究は、食文化の一つである箸をテーマとし、伝統的な箸の持ち方・使い方の支援を目指し、文化的な視点を含んだ教育プログラムの開発を目的とした。 【方法】  伝統的な箸の使い方を伝えるための教育プログラムの開発のために、箸の持ち方に関する実態調査、箸使いのワークショップの試行、作業療法的視点(手の機能や特徴)から見た箸の使い方、及び京都市内の小学校での「箸の使い方」への取組み事例についての聞き取り調査を行った。これらの調査に基づき、子どもが楽しみながら箸の使い方を習得するための教育媒体として、双六「めざせ!お箸の達人」を作成した。 【結果】  京都市内で開催されたイベント会場での調査の結果、4歳~12歳までの調査対象者45名のうち約53%が非伝統的な箸の持ち方であった。京都市内の学童保育所にて低学年を対象とした箸のワークショップ(参加者5名)の試行を通じて、楽しさだけでなく、伝統的な持ち方・使い方を定着させるための工夫が必要であることが明らかとなった。また、伝統的な箸の持ち方は「作法」に基づいたものであり、作業療法的視点(手の機能や特徴)に基づいた箸の持ち方とは異なることがわかった。教育媒体として作成した双六は、①箸の持ち方を習得するための基本動作の確認、②箸の使い方を習得するためのさまざまな箸の操作パターンの練習、③文化的な背景を学ぶためのクイズのコマを設定し、箸の使い方や箸に関する知識を学ぶことができるように工夫した。本研究は京都府立大学地域関連課題研究の助成により実施した。
  • 伊藤 美穂, 宇都宮 由佳, 糦須海 圭子, 秋永 優子, 朴 卿希, 江原 絢子
    セッションID: 1P-38
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】学校給食は、1950年に完全給食が始まり、主食にパンが出されていたが、1976年には米飯給食が導入され、現在では週3回以上の米飯の利用が推奨されている。米飯給食によって、伝統的な食文化や郷土料理を導入した給食が提供されやすくなった。また、2005年に食育基本法が施行され、子どもたちへの食育が盛んに行われる中で、学校給食は生きた教材としての位置づけがなされている。近年、食の簡便化・平準化により、伝統的な食文化や郷土料理が失われつつある。そのため、現在の学校給食には、栄養の補給のみならず、子どもたちに食文化を伝える役割が期待されている。そこで、学校給食における食文化継承の取り組みの実態および課題等を明らかにすることを目的として調査を行った。
    【方法】2015年6、7月に栄養士を対象にした研修会の会場で、自己記入式アンケート調査を行った。228名に回答してもらい、その場で回収した。調査内容は、献立作成の際意識している点、学校給食での郷土料理の実施状況、子どもたちへの伝え方などについてである。得られたデータをSPSSで分析した。
    【結果】郷土料理の実施率は96.0%であり、栄養教諭・学校栄養職員の年齢による差はみられなかったが、年間平均実施日数は年齢が高くなるほど増加した。栄養教諭と学校栄養職員の相違点をみると、郷土料理の実施率は、栄養教諭は99.3%であったのに対し、学校栄養職員は89.6%と有意に低かった。「和食や郷土料理を子どもたちへ十分伝えていると思わない理由」では、栄養教諭・学校栄養職員ともに「自身の知識がない」と回答した者は多かったが、栄養教諭は「時間がない」、学校栄養職員は「伝える場がない」が有意に多かった。
  • 小学生の調査より
    齋藤 理沙, 阿部 優子, 石村 由美子
    セッションID: 1P-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】幼稚園・小学生の保護者を対象に食生活調査を行い、子どもを取りまく実態の側面を明らかにして、食育の内容に役立てるとともに、より良い食生活のあり方を探ることを目的とし、前報「その1」~「その3」まで保育所及び幼稚園に通園する園児の食生活に関する実態について報告を行った。「その4」では、小学1、3、5年生の食事の摂取状況や食事に伴う生活環境の実態について報告を行い、本報告では小学生の食生活について調査結果を報告する。

    【方法】平成24年11月から平成25年1月にかけて、福島県郡山市内の保育所5か所、幼稚園2か所、小学校3か所へアンケート用紙を配布し留置き法により調査を実施した。今回は前報に続く報告として、小学生(1、3、5年)をもつ保護者が子どもの好き嫌いや食事に関するしつけ等をどのように行い、食育を実践しているかについて分析し考察を行った。

    【結果】集計の結果、好き嫌いがあるかの質問に対し、「好き嫌いが多い」、「少しある」との回答が最も多かったのが1年生で75%であった。3年生、5年生と学年が上がるにつれて好き嫌いの減少が見られ、3年生では71%、5年生では66%であったが、好き嫌いが多いことで、栄養バランスや調理の悩み、成長に関する悩みも多かった。好き嫌いなく食べることは「重要」と考えている保護者は1年生、3年生、5年生とも90%の割合で見られ、好き嫌いなく食べてもらえるよう、細かく刻んだり、味付けを変える等、様々な工夫をしていることもわかった。また、10%の保護者は、好き嫌いがあることは仕方のないことで無理に食べさせる必要はない、成長と共に食べられる料理や食材が増えていけば良いと考えていることがわかった。
  • 「味覚の授業」に着目して
    湯川 夏子, 瀬川 裕紀, 福井 博美
    セッションID: 1P-41
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】近年、早期からの食育が重要となる中で、小学校低学年における、実践の報告は極めて少なかった。そこで、本研究では、小学校低学年の課題の一つである「偏食」に着目し、「味覚の授業」の実践、検討を行った。 【方法】国立大学附属K小学校1年生2クラス(計64人)の児童を対象に、学級活動の時間を用いて「味覚の授業」を行った。実施期間は、2015年10月~12月で、1年生担任A教員と分担し、全5時間の授業を実施した。内容は、第一次「給食を振り返る」、第二次「五感と5つの味について知ろう」(内2時間を担当)、第三次「五感を使って味わおう」である。授業前後でアンケートを行い、児童の好きな食べ物・嫌いな食べ物とその理由の記述の変化を分析した。また、授業中の児童の様子、ワークシートの分析をもとに、「味覚の授業」の有効性を検討した。 【結果】第二次第一時では、野菜を用いた「五感」を使った味わい方についての学習、第二時では「5つの味」についての学習を行った。授業回数を重ねるごとに、児童は「五感」を使った味わい方が定着し、意欲的に授業に取り組んでいた。授業後のアンケートにおいて、好きな食べ物の理由(自由記述)を分類した結果、「味覚」に関する表現は、合計で32人から72人へと、2倍以上の増加となった。「わからない・なし」については、11人から1人へと減少し、ほぼ全ての児童が五感で味わい、ある程度表現ができるようになったといえる。以上の結果から、①食に関する興味関心②食に関する知識③表現力を向上することができ、小学校低学年における「味覚の授業」も有効であり、実践が可能であるといえる。 しかし「偏食」改善への効果については、さらなる改善・工夫が必要とみられた。  
  • 柳内 志織
    セッションID: 1P-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】一般の料理教室では、殆どがある一定の年代層(多くが成人女性)が対象となっている。その為、子どもを対象とした料理教室開催のノウハウは大人の料理教室と比べて圧倒的に資料が少ない。平成26年度の研究では、子どもたちは火を見ながら調理することで、集中力・自信・充実感などを得られることを明らかにした。平成27年度の研究では、子どもたちが調理を重ねていくことで達成感を味わい、生活全般への意欲が向上し、調理を媒介とした親子の会話や絆、食材への興味や関心が広がったことを明らかにした。本発表では子どもを対象とした料理教室やイベント開催の足掛かりとなるよう、指導手引書を作成することを目的とした。【方法】平成27年に実施した子どもを対象とした料理教室を基にマニュアルを作成・検討した。【結果】(1)料理教室内容の検討・決定(a)料理教室の目的(b)対象者(c)衛生面対策(d)実習回数(e)スタッフ間の意思統一事項の検討(f)スタッフによる被験者観察項目とその評価方法の作成(g)アンケートの項目の検討(f)アンケートの集計・分析方法の検討(h)料理手順とその流れの検討(2)準備事項(a)小学校への研究協力依頼(b)対象小学生(被験者)の保険の加入検討(c)被験者への当日の持ち物などについて(d)スタッフへの指示内容の検討(e)調理レシピ、手順の作成 (f)調理材料発注(3)当日の手順 タイムテーブルの作成(a)前日の材料分配(b)当日の時間の配分(c)調理実習レシピの配布(d)調理のデモンストレーション(e)盛り付け例のセッティング【まとめ】このマニュアルを通して、子どもを対象とした料理教室または子どもの料理教室における調査などに役に立てたい。
  • 磯部 由香, 中川 真希, 中井 茂平
    セッションID: 1P-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】近年、家庭・学校だけでなく、様々な場における食育が期待されている。そこで、本研究では、企業が提供できる場として「料理教室」に注目した。学校外での調理体験が子どもの調理技能や家庭での実践意欲の向上にとって有効であるかを確認するとともに、多くの現場で活用可能な指導用テキストの作成を試みた。
    【方法】平成27年5~7月に月に1回計3回の料理教室を小学校4~6年生の32人を対象に実施した。第3回の弁当作りを目標として、第1回に主菜、第2回に副菜の調理を取り上げた。各回の終了時に調理の難易度、調理操作の自信度について回答を得た。また、保護者に家庭での子どもの様子についてアンケート調査を行った。
    【結果】各料理の作り方を調理操作ごとにイラストで丁寧に説明した子ども向けテキストとともに、誰でも指導が可能な指導用資料を作成した。今回取り上げた8つの料理の難易度を尋ねたところ、6つの料理で70%以上の子どもが「とても簡単だった」「簡単だった」と回答した。卵焼きは約30%が「とても難しかった」「難しかった」と回答した。もう一度作りたい料理は卵焼きが26人と最も多く、ついでフライドポテトが25人であった。一方、焼き鮭は5人と他の料理よりも有意に少なかった。これは達成感の違いによると推察される。「包丁で野菜を切る」「野菜をゆでる」などの8つの調理操作の自信度はいずれも80%以上が「自信がある」「やや自信がある」と回答していた。また、26人の子どもが取り上げた料理を家庭で作っており、多くの保護者は子どもの家での調理実践、お手伝いの回数が増加し、調理技能が向上したと感じていた。3回の料理教室は子どもたちの調理技能を向上させるのに有効であったといえる。  
  • 大島 千穂, 續 順子, 中島 正夫, 三田 有紀子
    セッションID: 1P-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】大学生の健全な食生活実践への支援として平成(H)23年度より食堂環境整備の取り組みを進め、質的・量的調査により学生の食行動・食意識のあり方を追跡している。本報告では、実施開始時および2年経過時の学生の量的調査による食行動・食意識を比較して、取り組みの有効性を検討・評価する。

    【方法】食環境整備として、ヘルシーメニュー提供、全メニューへの「食事バランスガイド」のコマ・栄養価等の情報をメニューカードとして提供、ポスター・卓上メモ・リーフレットによる栄養情報提供を行い、栄養相談会、料理教室の開催を含む総合的な取り組みを継続して実施した。調査はH23,H25年度に実施し、各年度の対象者とその有効回答人数(回答率)は、一般学生245名(96.8%),232名(99.2%)、管理栄養学科学生(専攻学生)435名(93.8%),472名(99.4%)、計680名(94.8%),704名(99.4%)であった。

    【結果】昼食欠食者の減少や、昼食の栄養バランスが良いと評価する者の増加など、H25年度には昼食摂取状況の改善が見られた。各種栄養情報媒体の認知度は高まり、興味・関心を持つ者はいずれの媒体も70~90%と高率だった。H25年度から導入したメニューカードも興味・関心度が高く、また、見たことがある者(73%)の中で70%以上が食事選択の参考にしていた。一方、支援の中心の場である学生食堂を利用する者は73%から60%に減少し、特に専攻学生で変動が大きかった。利用者のメニュー選択理由は好み、気分、値段が主要で、栄養バランスを考慮する者が少なく、この傾向は変化が見られなかった。ヘルシーメニューの利用率も40%に留まり、学生の認知レベルの低さがこれらの要因として挙げられた。また、大学外での食や栄養に関する情報・知識の活用経験が少ない点も、今後の食育支援の大きな課題である。
  • 茶に関する道具類に着目して
    村上 陽子
    セッションID: 1P-45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】茶は世界各国に種々存在する。文化的視点からみて,緑茶の伝統が継承され,その飲み方が確立しているのは我が国においてのみである。このことから,緑茶を急須で淹れて飲む習慣を守ることは,食文化継承に繋がるといえる。一方,近年においては緑茶の消費スタイルは多様化しており,簡便性や利便性に優れたペットボトル飲料の需要が増加している。茶処といわれる静岡県においても,急須で淹れる緑茶(リーフ緑茶)の消費量は年々減少傾向にある。そこで本研究では,緑茶文化継承に関する食育教材開発の一助とするために,緑茶の摂取状況と嗜好性を検討した。また,急須で緑茶を淹れる習慣のあり方をはかるために,茶に関する道具類の保有状況を調査した。
    【方法】調査は自記式質問紙法で行い,回答は無記名・選択式とした。調査は2010年4月,調査対象は本学大学生306名(男子124名,女史182名)とした(回収率・有効回答率100%)。質問項目は,学生本人に関する項目,緑茶の嗜好性や飲用状況に関する項目など全18項目を設定した。
    【結果】緑茶の嗜好性は,男女ともに高かった。また,認知度および飲用経験ともに高かった緑茶の種類は抹茶であった。緑茶の飲用形態については,緑茶ドリンク(ペットボトル)が最も高かった。茶に関する道具類についてその保有状況を検討したところ,ほぼ全員が実家(下宿生の場合は帰省先)に急須と茶葉を常備しているにも関わらず,緑茶ドリンク(ペットボトル)の利用が高かった。下宿生は急須を持っていない者が多かった。出身別に見ると,急須(p<0.01),および茶こし(p<0.1)の保有率は,静岡県内者の方が県外者より有意に高かった。
  • 鈴木 亜夕帆, 阿曽(染矢) 菜美, 海老原 泰代, 田村 友峰子, 三宅 理江子, 滑川 美朝, 渡邊 智子
    セッションID: 1P-46
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】大学生の健康づくりを食から支援するために,入学時に配布する「食事作り初心者のための食生活支援パンフレット」の改良,「食事作り中級者向けの食生活支援パンフレット」の作成を行った。 【方法】①「初級者向け食生活支援パンフレット(For your Health Ⅰ)」の改良:すでに発行しているパンフレットの内容について,全学生を対象にWEBを使ったアンケートを実施。②「中級者向け食生活支援パンフレット(For your Health Ⅱ)」の開発:初級者向けパンフレットの内容を踏まえて,食事を自分で用意するために必要な知識を説明したパンフレットの作成を行った。 【結果】①「初級者パンフレット(For your Health Ⅰ)」の改良:本調査前に予備調査を行い,質問内容の表記方法やWEBでの回答しやすさを検討した。アンケート回収率は,51%。結果は,「すべて読んだ」11.8%,「興味のあるところを読んだ」19.9%,「ほとんど読んでいない」29.6%,「読まなかった」38.9%。「読まなかった」と回答した学生は,存在を知らなかったという理由が多かった。デザインについて,表紙のデザインの改善のコメントが多かった。アンケート結果を踏まえて,表紙のデザインの変更,全体の色合いの変更を行った。②「中級者向けパンフレット(For your Health Ⅱ)」の開発:内容について,食習慣調査結果や本学学生の生活状況を踏まえて,掲載項目や内容について検討を行った。A4サイズ,全8ページのパンフレットを作成した。内容は,基本的な調理器具と購入するときのポイント,基本の調味料と追加してそろえる調味料,基本の料理から調味料を工夫して簡単にアレンジできる方法,使い勝手のよい食器や盛り付けのテクニック,食事の内容を考えるための基本情報とした。
  • 清水 友里, 谷米(長谷川) 温子, 若林 素子
    セッションID: 1P-47
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】厚生労働省による国民健康・栄養調査の平均摂取エネルギー量によると、20代男女の多くが、エネルギー摂取量が必要量を下回っていると考えられる。学生の日常的な食事摂取状況を把握し、改善のための知見を得ることを目的として調査研究を行った。
    【方法】2015年に日本大学の2年生108名を対象とし、22のグループに分け、主食・主菜の肉または魚、および主な野菜類を指定して弁当の献立を作成させた。献立を実際に調理し、各自が持参した弁当箱にそれぞれ必要と思う量を詰めさせた。これを計量し、エクセル栄養君ver.6.0を用いて弁当の栄養価を求めた。また、自記式調査用紙により各自の推定エネルギー必要量を求めた。市販弁当については内容量を計量し、原材料から同様に栄養価を求めた。得られた結果についてJMP®12(SAS Institute Japan株式会社)を用いて統計解析を行った。
    【結果】手作り弁当で、必要なエネルギー量を満たしていた弁当は4.6%であった。弁当箱のサイズや詰め方によるものと考えられる。また、市販弁当と比較してエネルギー産生栄養素バランスは手作り弁当より市販弁当の方が望ましいという結果であった。しかし食物繊維や、ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素含有量は手作り弁当が市販弁当に比べて有意に多かった。また、各栄養素量、主食・主菜・副菜の数や重量などの変数のうち、弁当のエネルギーに関連が高い変数を決定木分析により探索したところ、弁当のエネルギーに最も寄与するものは炭水化物量であった。市販弁当の炭水化物量が手作り弁当より有意に多かったことからも、手作り弁当の炭水化物量を増やすことにより、エネルギー必要量を満たし、栄養価の高い弁当となり、学生の食生活の改善につながる可能性があることが示された。
  • 嶋田 さおり, 岸田 太郎, 坂田 香代子, 森田 君香, 平岡 祥子, 改野 芙美, 松本 愛, 中村 紀子, 渋川 祥子
    セッションID: 1P-39
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】家庭で一般的に行われている揚げ物料理の吸油率については、すでに調べられ文献等で公表されている。しかし、大量調理機器によって測定された吸油率のデータは見られない。学校給食の場合、厨房設備や作業工程などの事情から、一般的な揚げ物料理とは、食材やその切り方が異なることもある。そこで本研究では、学校給食で提供頻度の高い揚げ物料理について、吸油率を明らかにし、児童生徒に提供している給食の栄養価を正確に把握することを目的とした。

    【方法】愛媛県松山市において、平成22~24年度の学校給食献立3年分をもとに、提供頻度の高い揚げ物料理を、素材別、揚げ形態別、揚げ衣別に整理した。次に、提供頻度の高い揚げ物料理について、2か所の共同調理場で、ガス回転釜とフライヤーの2種の調理機器を使用して実際に調理し、調理前後の水分率、吸油率を測定した。各試料は、20人分で調整し、揚げる前と揚げた後の試料の全量をそれぞれホモゲナイズし、その中から1gを取り出してクロロホルム・メタノール法で2分抽出して測定した。

    【結果】提供頻度の高い揚げ物料理に使用されている素材は、魚が最も多く次に肉、甲殻類が続いていた。揚げ方の調理形態別では天ぷらと唐揚げが多く、揚げ衣別ではでん粉を主としたものが44%、小麦粉等が39%、衣なしが17%であった。これらの結果から素材は使用頻度の高い鯛を使用しその唐揚げと天ぷらについて吸油率を測定した。170℃で3分揚げた鯛の唐揚げは、ガス回転釜の吸油率が8.6%、フライヤーの吸油率が4.6%であった。これはガス回転釜投入時の平均油温がフライヤーよりわずかに高く、そのため取り出し時の油温と試料中心温度も高くなったことから、ガス回転釜の方の水分蒸発が多くその分吸油したことが原因と考えられた。鯛の天ぷらについては差がなく両機器とも約5%であった。
  • 中村 恵子, 佐藤 まり子, 横山 阿由美
    セッションID: 1P-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    大学生にみる日常食の自炊感とクリスマス料理の手作り意識

    ○中村恵子,佐藤まり子,横山阿由美

    (福島大学)

     

    【目的】総菜やインスタント食品などを利用し料理を用意することを「手作り」と考える風潮があるときく。そこで本研究では、レトルト食品などを利用した料理作りに対する大学生の自炊感を明らかにすることを目的とした。さらに、クリスマス料理づくりの実態とこれを食べる理由、将来のクリスマス料理の手作り意識について調査した。

    【方法】2015年6月(調査①、②)及び10月(調査③)に質問紙調査を行った。対象は大学生(①142名、②137名、③55名)、質問項目は、料理作りの頻度、料理をする/しない理由、今後料理をしたいか/その理由等とした。また、日常食(スハ゜ケ゛ティミートソース、餃子など6料理)の作り方を、総菜の温め直しから材料を刻んで加熱するまでの4段階に区分し、どの作り方を「自炊」と考えるかを問いた。さらに、クリスマスの実施状況、クリスマス料理の喫食状況や準備の実態、将来の手作り意識等についても調査した。

    【結果】「料理をする」と回答したものは約5割であったが、「料理をする」者の平日の夕食の手作り頻度は「週3回以上」が約6割、休日の朝食は「ほとんど作らない」が約4割と必ずしも高くはなかった。今後料理をしたいと回答する者は約9割であり、その理由は「料理技術の向上」「食費の節約」「将来のため」であった。日常食の「自炊感」については、「レンジで温めたりお湯を加える」だけでは「自炊」ではないが、「お湯を沸かしてレトルトを温める」では約2割、「麺をゆでたりフライパンで焼く」では6~8割が「自炊」であると判断した。行事食としてクリスマス料理にケーキを食べている者は約9割であるが、約8割が将来は子どもや家族と手作りしたいと希望している。そのうち約7割が買ってきたものであり学生自身は準備していない。大学生の料理作りに対する意識と実態との乖離は大きいと考えられる。
  • 石見 百江, 冨永 美穂子, 下岡 里英
    セッションID: 1P-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にあり,低年齢からの食教育の必要性が示されている。そこで,子どもたちに望ましい食教育をするために郷土料理や食文化伝承に関する実態調査を行い,調査結果から得られた課題をもとに,実現可能な食教育アプローチ方法を検討した。
    【方法】平成27年5月~9月に保育園5園と幼稚園2園に通う3~6歳児の保護者455名へ留置法によるアンケートを実施した(有効回答448名)。地域連携による食教育実施4園と非実施3園に分類し、統計解析は、χ2検定を行い,p<0.05で有意差ありと判定した。調査内容は幼児の食生活状況、家庭で郷土料理や食文化の話をするか、家庭で話す食の内容(地域食材,給食など)、郷土料理伝承の必要性などだった。
     【結果】実施園は211名,非実施園は237名だった。「家庭で郷土料理を作る・話す」は実施園41.0%,非実施園29.2%だった(p<0.05)。話をしない理由は「自分が食文化や郷土料理について知らない」が多く、実施園55.6%,非実施園54.5%で両群に差はなかった。その一方,幼児期の郷土料理伝承は約80%が「必要」と回答した。希望する伝承方法は「保育園や学校の教育」が最も高く,「家庭での伝承」,「地域の方のご指導」の順だった。幼児に対する郷土料理の伝承教育は必須だが,多くの保護者が「郷土料理を知らない」と回答しており,幼児が家庭外で得た知識や関心を実生活で展開できない可能性が示唆された。そのため、地域や文化に根づいた地域の食や郷土料理について保護者自身に興味を持ってもらえるような給食参観の実施や双方向教育が幼児の食教育に必要と考えられた。
  • 片平 理子, 池田 とく恵, 河村 美穂
    セッションID: 1P-50
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】一昨年の大会で、情報量が多く繰り返し確認できる「動画」を基に入学直後の大学生がキャベツの繊切りを行う動作の特徴を明らかにし、(1)姿勢、(2)利き手(包丁の握り方、速度、リズム、動く方向)、(3)添え手(形、位置、動き、働き)に関する9項目を3段階で評価する基準(ルーブリック)により、包丁技能習得状況を評価できることを報告した。本研究では、「動画」を用いた包丁技能の教育方法開発の一環として、学習者がルーブリックを用いて自身の動画を評価することによる教育効果を検討した。

    【方法】管理栄養士養成課程1年生前期に開講する調理実習授業において、2週目にキャベツの繊切り動作を例示し、先行研究で作成したルーブリックに沿って包丁の使い方を説明した。学生は20秒間繊切りをする動画撮影を3回行い(2週目授業時、10週目自宅課題、15週目実技試験)自己評価し、教員も授業終了後に2週目と15週目の動画及び繊切りの出来栄え(静止画)を総合的に評価した。

    【結果】利き手の速度とリズム、添え手の位置と動きの評価は、他の項目に比べて2週目に学生の自己評価が低い傾向にあったが、15週目では約6割の学生が2週目よりも高く評価し上達したと考えていることがわかった。実際に教員による総合評価では、約7割の学生の包丁技能が向上した。これらの変化は、ルーブリックを用いることにより学生が包丁技能を習得する上での要点と到達目標を理解して取り組んだ結果と推察された。一方、技能の向上が認められなかった学生は、教員の評価よりも高く自己評価する傾向があり、動画を適切に自己評価できるように動画とルーブリック内容との照合方法に補足説明を加える必要があることが示唆された。
  • 奥谷 香, 坂本 薫, 作田 はるみ
    セッションID: 1P-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】寿司は、人生儀礼や年中行事などのさまざまな「ハレの日」の特別な食べ物、地域の祭礼や行事に密着した郷土料理として親しまれてきたが、最近では、回転寿司や持ち帰り用調理済み食品(中食)の利用が多くなり、気軽に食べられる料理となってきている。昔ながらの寿司の味付けと現在の寿司の味は異なってきていることも考えられるので、若い世代を対象とし、寿司および寿司の味をどのように評価しているかについて調査を行うこととした。
    【方法】調査は、兵庫県姫路市にある大学生および専門学校生247人を対象として、平成27年7月に実施した。調査用紙を配布し、無記名式の自記式質問紙法にて行った。分析は、10~20歳代の回答のみを対象とし、欠損値のある回答は分析対象から外し、229人のデータを分析対象とした。
    【結果】寿司を食べる頻度および寿司の食べ方と家族構成については、核家族の方が拡大家族よりも寿司を食べる頻度が高い傾向があり、自宅で寿司を「年中行事」で食べることが多いのは、拡大家族であった。食べることが多い寿司は「回転寿司」であった。寿司のイメージは、好きでおいしそうで、見た目が良く、楽しいイメージで、田舎的とも伝統的とも年配者むけとも思われていないことがわかった。寿司の味に対するイメージについては、甘い、塩辛い、すっぱいの3項目を5段階で評価してもらい、その結果について寿司を作ることができると回答した者97人と作ることができないと回答した者132人に分け検討した。すし飯は酢、砂糖、塩を使用し調味するが、いずれのグループも寿司を甘いとも塩辛いともすっぱいとも思っていないことが明らかとなった。今後は、高い年代区分についても同様の調査を実施し、その差を比較検討する予定である。
  • 三田 有紀子, 青山 佳奈, 佐野 由佳, 小島 沙起, 大島 千穂, 村上 心, 續 順子
    セッションID: 1P-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】近年日本人の食事は、生活習慣や食習慣の変化に伴い味覚形成や食嗜好に大きく影響し、日本における伝統的な食事形態である「口中調味」にも影響を与えていると考えられる。日本酒は食中酒であり、食品との相性が重要な品質特性である。日本酒と食品との相性はこれまで数多く報告されているが、それらは先入観が味覚に大きく影響することが指摘されており、実際の飲酒前後の味覚変化については不明な点も多い。そこで、本研究では日本酒摂取が味覚に及ぼす影響を明らかにすることを目的として日本酒摂取前後の味覚変化を検討した。
    【方法】被験者は実験内容に承諾を得られた健常女子学生30名とした。身体測定、唾液試験は味覚試験前に実施し、唾液試験では唾液量、pH、アミラーゼ活性を測定した。また、味覚試験当日には、食物摂取頻度調査票を用いた食事調査を実施した。味覚試験は5基本味について全口腔法で認知閾値を測定した。1回目の味覚試験終了後、被験者には日本酒を摂取してもらい、その後血中アルコール濃度を呼気ガスで測定し、最大値から減少し始めたところで2回目の味覚試験を同様に行った。
    【結果】飲酒前後における各味覚の認知閾値には、個々人で有意差が認められず、他の項目でも同様であった。飲酒前の味覚が飲酒後に影響を及ぼすかどうか検討するため、飲酒前の味覚感受性の結果に基づいて2群にグループ分けをしたところ、飲酒前の味覚感受性が鈍い群では飲酒後の酸味が有意に鈍化したが、鋭い群では飲酒後の塩味が鈍化する傾向があった。飲酒後では、飲酒前の味覚感受性が鈍い群は、鋭い群と比べて、酸味閾値が有意に高く、塩味閾値が高い傾向がみられたが、その他の甘味、苦味、旨味では両群間で飲酒後の閾値に有意な差は認められなかった。
  • 堀 光代
    セッションID: 1P-53
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】日本各地域には自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着した岐阜県西濃地域の郷土料理とその暮らしの背景を明らかにする目的で聞き書き調査した。

    【方法】「次世代に伝え次ぐ日本の家庭料理」聞き書き調査で、岐阜県西部の海津市、大垣市、揖斐郡を調査した。対象者はその地で30年以上居住し家庭の日常的に食事作りに携わる女性13名とした。

    【結果】西濃地域の南に位置する海津市は木曽三川の輪中地帯であり、川魚(鯰、鮒、鯉、雷魚、もろこ)を利用した料理に特徴がみられた。雷魚は現在食する機会がなく、鯰は近郊の料理店で提供されていた。近年、鯉や鮒は市販品も多くみられ、祭事に食されていた。鮒と大豆を味噌で煮た「鮒味噌」は現在も冬の代表的な料理であり、鯉をあらめ(コンブ科海藻)で巻いた「鯉のあらめ巻き」は今も親しまれていた。もろこは甘露煮にして寿司飯の上に具としてのせた箱寿司の「もろこ寿司」が地域の伝統食となっていた。また、葬儀日に赤飯を食すのは「天国に旅立ち、生まれ変わった」ことを祝う習慣として今も続いていた。大垣市赤坂町では、生魚が手に入らなかった頃にするめを魚の代替に用いた煮物の「なすの切干」「芋ずるめ」や麩を入れた酢の物などが親しまれていた。揖斐郡揖斐川町は茶の栽培や薬草の宝庫として知られている。特に伊吹山の麓に位置する春日村では山菜(わらび、うど、ふきのとう等)や伝統野菜の沢あざみを用いた料理(煮物、混ぜご飯、白和え)が現在も親しまれていた。
  • 西脇 泰子
    セッションID: 1P-54
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】日本各地域には自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960年〜1970年頃までに定着してきた岐阜県中濃地域の郷土料理とその暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。

    【方法】日本調理科学会「次世代に伝え次ぐ日本の家庭料理」聞き書き調査に参画し、中濃地域の岐阜県郡上市(北部)、美濃市(中央部)、加茂郡川辺町(南部)を調査した。対象者はその地で30年以上居住した60歳代~80歳代の女性4名であり、家庭の食事作りに携わってきた人である。

    【結果】郡上市では、雑穀を主とした米食で野菜や芋を中心に、「味噌煮」や「桑の木ささげの煮物」などを食した。田植え時は「朴葉寿司」が作られた。「鶏ちゃん」は各家庭で味付けが工夫され、現在は土産物になっている。夏は長良川で釣った鮎、冬は山で獲れる鹿、熊、猪の料理も食された。美濃市では、家庭で打ったうどんを「煮込みうどん」で、「だつ(里芋の茎)」料理や、「ひきずり」(鶏のすきやき)を食された。主食は、塩秋刀魚の「秋刀魚飯」、「へぼ(蜂)の炊き込みご飯」、「茶飯」と味ご飯が多い。川辺町では、米の少ない時は麦飯、山の素材(山菜・へぼなど)を多く食した。中濃地域は寒い土地柄のため保存食作りが盛んである。大根の切り干しやさきぼし、赤だつの乾燥、干し柿、漬物(大根・白菜・きのこ)などの保存食を日常食に取り入れ再調理していた。正月には「ねずし」、大根なますを作り、川魚も甘露煮、一夜干しにする。伝え継ぎたい家庭料理は、朴葉ずし、ねずし、鶏ちゃん、だつ料理、ひきずり、秋刀魚飯、茶飯、年越しのおかず、昆虫食などである。

  • 森中 房枝
    セッションID: 1P-55
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】甑島列島は,薩摩川内市川内川河口から約30km西方の東シナ海上に位置し,北東から南西方向にかけて上甑・中甑・下甑の3島が連なっている。調査地域の手打は下甑の中心で水産業が主である。交通の便が悪く地域間の交流が少ない中での生活が独自の生活文化を育み,郷土料理や行事食などを持っている。高等教育機関がないために島立を余儀なくされ,若物層が少なく高齢化が進んでいる。外食産業の影響を受け、伝統的な食文化の継承が懸念されている中で、貴重な家庭料理を次世代に伝える必要性があることから本調査を行った。 【方法】平成20~23年の8月下旬から9月上旬にかけて行った「こしきアイランドキャンパス事業」の中で,生活研究グループの協力を得て郷土料理や行事食の実習を行い,地域住民に対しては自記式アンケート調査を行った。また日本調理科学会特別研究ガイドラインに基づき聞き書き調査を行った。 【結果】島民は海や山の幸,少ない耕地を利用して野菜などを作り,独自の食文化を築いてきた。四季折々の旬の食材や山菜料理,コッパやつわの干物などの保存食も大切にし,素朴な中にもしっかりした行事食や冠婚葬祭の通過儀礼なども受け継がれている。魚は良いものは売って換金し,売れないものは家庭内で使い,保存食とした。ハレの日には刺身を中心に,すす(混ぜずし)や手打ちかまぼこ(色付けすり身と昆布を用いて季節の花などをアレンジしたかまぼこ),ひら(煮しめ)やぼた(ぼたもち)等をつくって祝った。普段の郷土料理にもきびなごの塩からげやきびなごのなます,のびるの酢味噌和え,しんびらびいの和え物,アザミの佃煮など身近な魚介類や山野草などを利用したユニークなものが多い。
  • 松森 慎悟, 阿久澤 さゆり
    セッションID: 1P-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】現在「ベーグル」という名称で、ベーグル専門店やベーカリー等においてクラストやクラムの食感が様々なものが販売されている。それらは、その形状や硬さの違いによって幾つかのタイプに分類されているが、その分類基準は明確には示されていない。本研究では、販売されているベーグルについて、それらの形状、気泡分布、硬さ等の品質特性を測定し、ベーグルの特性に寄与する因子の抽出を検討した結果を報告する。

    【方法】試料は市販のベーグルとし、ベーグル専門店、ベーカリー、カフェ販売及び個包装タイプのものを使用した。測定項目は、形状として重量、体積、比容積、直径及び高さを測定し、水分含量、クラストの色調測定を行った。硬さはクラスト及びクラムの破断測定で得られた破断応力とした。また、断面の観察画像中の2cm2の3画分を無作為に選択し、区分内に観察された気泡数と各気泡の面積を画像解析ソフトで解析し、平均気泡数及び空隙率の算出を行った。得られた測定結果を用いて主成分分析を行い、特性に寄与する因子を解析した。

    【結果】ベーグルの比容積は1.8~3.4、直径は93.9mm~116.7mm、高さは33.6mm~50.3mmであり、ベーグルによる形状の差は明らかであった。クラストの破断応力は0.94×105N/m2~10.32×105N/m2、クラムの破断応力は1.01×105N/m2~6.25×105N/m2となり、クラストの硬さの差が顕著であったが、クラムの硬さとは相関はみられなかった。また、断面の観察では、各ベーグルにおける気泡数と各気泡面積の分布に特徴がみられたが、空隙率とクラムの破断応力には相関が認められなかった。また、得られたデータを用いて主成分分析を行ったところ、第3主成分まで得られ、それらの意味づけよりベーグルの特徴を抽出してカテゴリーに分類することができた。
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    セッションID: 1P-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】ビスコッティは、イタリアの伝統的な焼き菓子であり、小麦粉、卵、砂糖およびナッツ類を用いて2度焼いた素朴な菓子である。本研究では、このビスコッティを改良して嗜好性を満足させることが可能かについて調べた。

    【方法】材料には、薄力粉、卵、砂糖を使用し、これに加えるナッツ類を他の食材(小松菜、パセリ、キナコなど)に変え、さらに、ゴマや寒天などを組み合わせた(33種類)。混ぜ合わせた材料は、180℃で15~20分間加熱した後、8mmの厚さに切断して、2回目の加熱を行った。製品は30人により嗜好調査を行った。

    【結果】小松菜などの野菜を加えたビスコッティは、材料中の水分により中心部が湿った状態であった。パセリは、サクサクとした食感であったが、独特の香りであった。キナコを用いたものは板状の硬い製品となった。これらの食材は、単一材料として使用した場合は好まれなかった。そのため、他の食材と組み合わせることにより嗜好性の向上を図った。パセリの風味を損なうことなく、焙焼により風味が良くなる食材としてゴマを用いたものが好まれた。キナコは、寒天を使用することにより製品に適度な空間が生じてサクサクとした食感となり、さらに仕上げに振り掛けたキナコにより嗜好性が向上した。これらは、一般的なビスコッティのエネルギーに対し約1/2であった。さらに特徴としてパセリとゴマでは、脂質が約1/3、カルシウムが1.3倍、キナコと寒天では、鉄分が1.3倍、食物繊維は約2倍となり、嗜好性を満足させる製品に改良することができた。
  • 小川 眞紀子
    セッションID: 1P-58
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】希少糖D-プシコース(以下Psi)は、エネルギー値がほぼゼロのノンカロリー単糖で、保水性が高く、メイラード反応が進みやすい特徴をもつことから、食品素材として特にベーカリー食品への利用が期待されている。本研究では、近年ヘルシー志向で注目され、従来の揚げドーナツよりもエネルギーが低い焼きドーナツにPsiが適しているかをショ糖とPsiおよびD-フルクトース(以下Fru)との配合割合を換えて検討した。さらに、牛乳を豆乳に置換した場合の影響についても検討した。

    【方法】糖配合は、ショ糖のみをコントロール(C)とし、ショ糖に換えてPsiおよびFruを20%(P20・F20)、40%(P40・F40)それぞれ置換した。また、牛乳と豆乳の2種類を用いて合計10種類の焼きドーナツを作製し、物性測定と色差測定を行った。

    【結果】SB、SCともに焼き色は、C、P10、P20、P30の順に濃くなった。高さは、SBはC、P10、P20、P30の順に、SCではC、P10、P30、P20、の順に高くなった。破断強度測定から、SBはPsiの割合が多いほど破断変形は有意に高くなり、破断応力は有意に低く、破断歪率は有意に高くなった。SBは、Psiの割合が多いほど脆くて軟らかい特徴がSCよりも顕
    本研究の結果より、ショ糖の40%をPsiに置き換えることで、やわらかく焼き色の好ましい焼きドーナツに適していることが示唆された。
  • 荒木 葉子, 笹原 麻希, 藤原 美佐子, 斉藤 睦子, 渡邊 司
    セッションID: 1P-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】本研究室では、これまでに短大生を対象に行ったアンケート結果で、食器洗浄方法は子どもの頃に家庭で教えられたことがわかった。洗剤使用量に各家庭で差があり、子どもの頃に正しい食器洗浄を身につける必要性を感じた。そこで、小学生を対象に食器洗浄の知識を与えることで節水に対する意識を高められないかと考え、簡易実験を通じて検討した。

    【方法】サピックスecoクラブミドルコース小学4年生を対象に「食器洗浄と環境影響」について授業と実験を行った。始めに共通実験では全員が合成洗剤を用いて、同一洗浄条件で実施した。一方、この共通実験の結果や授業の情報をもとに、エコ洗浄実験として最も残留しやすい食用油を効果的に洗浄することを目的として、「環境にやさしい洗浄方法」を小学生に考えてもらい、ムクロジなどの天然洗剤を使用して食器洗浄を行い、実験を行った。さらに、児童に対して実験後にアンケートを実施して行動変容につながったか検証した。

    【結果および考察】共通実験では、プラスチック容器を使い自ら振ることで食器洗浄機に見立てて洗浄し、その結果でんぷん・たんぱく質は標準の濃度の洗剤でも落とすことができることが分かった。エコ洗浄実験では、振る回数を増やす、スポンジで擦る、洗浄前に油を拭き取るなど、さらに多種類の洗剤を試し、結果それぞれの洗剤の欠点や利点などを理解した。これらの実験を行った後のアンケート結果から、「水を大切にしようと思った」、「環境問題はすごく難しい、もっと洗剤の種類や洗い方なども考えて使いたい」など、小学生に食器洗浄における洗剤と環境の関係について理解を深めてもらえたと考えられた。

     
  • 鈴野 弘子, 池田 昌代, 秋山 聡子, 石田 裕
    セッションID: 1P-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】災害時の食料支援については、過去に発生した災害時のデータをもとに食生活支援活動ガイドラインなどが示されている。被災時の食対策は、備蓄食品と救援物資を組み合わせたものであり、食品の備蓄は一般的には3日分が推奨されている。しかし、東日本大震災では、それ以降も救援物資は届かず、入手可能な食品で炊き出しが行われたため、料理に必要な調味料等も必要であった。そこで、過去の災害時の炊き出し献立を調査し、備蓄調味料等の適切な種類と量を検討し、行政など団体で災害時に備えるべき調味料等の基礎資料を得ることを目的とした。
    【方法】1.調査対象:東日本大震災時に行われた炊き出し献立合計1961献立(行政機関23件、医療機関3件、社会福祉施設1件、企業121件)とした。2.調味料等の算出:献立より使用調味料等を抽出し、救援物資の到着が遅れた場合にも対応できる1人当たり7日分を算出した。なお、料理名のみの献立は、文献や一般料理書を参考に調味料等の使用量を決定した。また、調理は行わず既製品を利用したと考えられた料理は除外して算出した。
    【結果】1人当たりの7日分の調味料等使用量は、しょうゆ191.8g、砂糖80.5g、味噌79.8g、みりん88.9g、麺つゆ60.3g、酒33.6g、顆粒和風だし33.6g、食塩11.2g、カレールー62.3gであった。衛生面を考慮して加熱料理が多いためサラダ油(74.9g/1人当たり7日分)が多量に使用されていた。これらのことから、行政や施設などの団体で備蓄すべき調味料等は、食塩、味噌、顆粒和風だし、しょうゆ、砂糖、サラダ油であると考えられた。さらに、常時給食を提供している施設では、本調査から得られた備蓄すべき調味料の種類と量を指標として、サイクル利用を実践することで、無駄なく調味料等を備蓄できると考えた。
  • 竹下 温子, 野口 紗希
    セッションID: 1P-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】鹿児島黒豚は在来の島豚に英国のバークシャー種を掛け合わせ、明治時代から100年以上改良を重ねて築きあげた「鹿児島バークシャー」と呼ばれる鹿児島県独自の系統で、脂が美味しいと言われるほど、脂身に特徴を持ち、1990年代にブランド化したが、偽造が後を絶たず問題となってきた。豚の品種判定については、毛色関連遺伝子を用いたPCR-RELP法が主流となっているが、黒毛同士の判別は困難を極めている。そこで本研究では、人の味覚で差のある脂身に注目し、すでに小林らによって4品種の豚の判定法が確立されている、Heart-fatty acid binding protein(H-FABP:細胞内の脂肪酸輸送に関連する)遺伝子を用いて、鹿児島黒豚の解析を行うこと、また人の感覚受容器にて鹿児島黒豚と他の豚の品種識別が本当に可能なのか検討することを目的とした。
    【方法】品種判定には、鹿児島黒豚肉から液体窒素粉末法にてDNAを抽出し、既報のH-FAPB遺伝子のPCR-RELP解析法により、鹿児島黒豚と梅山豚の比較検討を行った。また、静岡大学教育学部の学生100名を対象に味覚調査を行い、最も閾値の優れている25名を選出し、白豚、鹿児島黒豚、梅山豚の分析型・嗜好型官能試験を実施した。
    【結果】H-FABP遺伝子による品種判定では、他の遺伝子を用いた品種判定と同様に、梅山豚と鹿児島黒豚の黒毛間の品種を区別することはできなかった。次に大学生の分析型官能試験では、肉の色による判別力に有意な差が認められた。よって今後ミオグロビン量を反映するヘマチン含量に関連する遺伝子について黒毛間の品種判定が可能か検討していく必要があると考えられた。また嗜好型官能試験では、普段食べている白豚肉を美味しいと評価する学生が有意に多かった。味覚は学習と複雑に絡み合っており、普段食さない肉質への嗜好性は、普段から食べ慣れている肉質の嗜好性に劣る、つまり美味しさは味覚における学習の幅に影響される可能性が示唆された。よって今後は被験者層を広げ同様の結果が得られるか検討していく。
  • ~地域連携における和菓子・洋菓子・せんべいの提供~
    佐藤(栗原) 幸子
    セッションID: 1P-62
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】食物アレルギーの有病率は乳児で5~10%、学童以降で1~2%と考えられている。老若男女が参加する地域連携の取り組みで配布する菓子を、 本学学生が“できるだけ多くの人が安全に食べられること”を目標に、特定原材料7品目を使用しない菓子の製品開発を実施した。
    【方法】1.製品開発はアクティブラーニングで実施した。“栄養学各論”の一環で、(1)アレルゲンおよびアレルギー症状の学習、(2)アレルギーに配慮した市販菓子の喫食、(3)修得した専門知識や技術を生かし、特定原材料を使用しない和菓子・洋菓子のオリジナルレシピの考案、(4)試作および問題点の改良を繰り返し行った。“セミナー(卒業研究)”では、(1)練馬区・新宿区の高齢者施設にて、食べているおやつ、食べたいおやつについて訪問聞き取り調査を実施した。 (2)調査結果をもとに製作する菓子の選択、(3)選ばれた菓子の文献調査および産地訪問を行い、製法の聞き取り調査および体験実習を実施、(4)試作を繰り返した。2.完成した製品を<染の小道>で提供し、喫食者にアンケート調査を実施した。
    【結果】1.加熱処理したもので常温保管できるものを製品化した。2.高齢者施設聞き取り調査結果で、食べているおやつ、食べたいおやつの上位は煎餅と餡の2つであった。日本人の主食でアレルゲンになりにくい米を原材料とした①せんべい(なかい~煎餅)と薯蕷饅頭(小道まんじょう)を製作した。洋菓子は米粉を使用したクッキー2種類(野菜カラフルスノーボールクッキー・ヘルシークッキー)であった。4.産地訪問は埼玉県草加市とした。5.アンケート回答者88名であった。
  • 須田 有実子, 金井 愛由美, 佐藤 美月, 鈴木 愛, 小林 三智子
    セッションID: 1P-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】本研究では、簡便な脳波計を用い、5基本味を味わった際および安静時の脳波のα波出現率を測定した。これらを比較、検討して、味刺激により誘発される脳波の変化を知ることを目的とした。

    【方法】閾上濃度の5基本味溶液を試料として用い、脳波の測定にはミューズブレインシステム(株式会社デジタルメディック)を用いた。測定時間は20秒間とし、測定者が3秒カウントした後、実験協力者に味溶液を口に含ませ、5秒後に溶液を飲み込んでもらい、α波出現率を測定した。安静時の脳波の測定時間も5基本味と同様20秒間とし、これをコントロールとした。なお実験協力者は21~22歳の女性16名であった。

    【結果】コントロールに比べて、5基本味を飲み込んだ際にα波出現率が増える傾向が見られたのは、16人中甘味では7人、塩味では8人、酸味では8人、うま味では6人および苦味では11人だった。個人の測定値では、α波の出現率がコントロールに比べて高い人が多かった一方、測定者全体の平均値で見るとα波出現率は、コントロールの平均と比べて甘味では1.2%、塩味では0.6%およびうま味では0.1%低かった。また同様にα波出現率を比較すると、個人の測定値よりも測定者全体の方が、酸味では0.6%および苦味では0.9%高かった。5基本味によるα波出現率の変化を検討した結果、甘味、塩味およびうま味はコントロールと比べてα波出現率に有意差が見られなかった。一方で、酸味および苦味ではコントロールと比べてα波出現率が有意に高く、酸味および苦味を味わうことにより、リラックス効果が示唆された。今後、より詳細な脳波の変化を検討する予定である。
  • 形状や材質の異なる大小スプーンの計量
    根津 美智子, 樋口 千鶴, 依田 萬代
    セッションID: 1P-64
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】計量は調理の基本操作である。しかし、調理に使用される市販計量スプーンの材質や形状には様 々なものがある。それらを使用して通常、家庭人数分の調理実習を行い、重量表を用いて重量換算を行っているのも現状である。そこで、計量スプーンに対するアンケート調査と計量実験を試みたので報告する。                                     【方法】1)2015年Y短大栄養科1年生計80名に計量に関するアンケート調査を行った。2)同短大1年生15名5組に16種の調味料を3種類の市販大小スプーン(1:使用しているステンレス、2: ステンレスの新品、3:プラスチック)で計量実験を行い、テキストに掲載されている大小スプーンの重量表と材質による実測値との比較を分散分析を行い重量表との違いを検討した。
    【結果】1)計量スプーンでの計量値の正確さは約8割の学生が信頼し、重量表を6割の学生が利用していた。材質が異なる計量スプーンでも同一の計量を行うことができると8割の学生が考えていた。家庭でも9割以上の学生が計量スプーンを使用して調理をしていた。2)計量大小スプーン3種類で調味料を計測した結果、ステンレス1と2間では水とみりん、塩(精製)に小スプーン間で、また、トマトケチャップ・強力粉・塩(精製)の大スプーン間に重量表との差が見られたが、ほとんどの調味料では差がなかった。しかし、プラスチック大小スプーンは重量表と比較するとほとんどの調味料が多めに計られる傾向が確認できた。また、少量の調味料を計量する際、計量誤差を少なくする計量方法の習得が必要であると感じたので、その習得指導にも努めたい。







  • 河野 俊夫, 柏野 由加里
    セッションID: 1P-65
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】カップ麺用を除いて乾燥麺の多くは、棒状に製品化されて消費者に提供されるが、茹で上げ時に、意図しない亀裂・断裂を生じる場合がある。こうした亀裂発生は麺内部の水分むらや空隙が原因と推定されるが、その発生メカニズムをモデル化し、亀裂発生を予測する方法を提供した例はほとんどない。そこでパスタ麺を対象として、麺の物性や内部構造をもとに、亀裂発生に関わるシミュレーションを試みた。
    【方法】まず、顕微近赤外分光法によって得られるスペクトルから、乾麺の水分状態を、ニューラル・ネットワーク(NN)モデルによって推定する方法を明らかにした。含水率とスペクトルとの関係をPLSR法で解析し、その回帰係数をもとに含水率を推定する候補波数を選びだしたうえで、これら候補波数での乾麺表面の近赤外反射二次微分値を入力、含水率を出力としてNNを学習させた。つぎに含水率と密度変化との関係を利用し、横側から乾麺を押圧した場合の、麺内部の水分むらおよび内部空隙を原因とする局部応力の上昇状態を有限要素法(FEM)によって試算した。
    【結果】近赤外スペクトルから水分を推定するNNモデルでは、PLSR法によって8つの波数を選び出し、ニューロン数を40~80個の範囲で変化させ、それぞれバックプロパゲーション学習を行わせた。その結果、60個ニューロン・モデルでの推定精度が良好であった。また、水分むらによるパスタの密度変化を導入し、かつ、パスタ麺の中央に直径の5分の3~4の位置に0.1mmの球体空隙を想定して、横からの押圧によるパスタ内部の応力計算を試みたところ、弱い力でも局部的に大きな応力がかかり亀裂の原因になることが明らかになった。
    なお本研究は、一般財団法人東和食品研究振興会の学術助成により実施した。ここに記して謝意を表する。
  • 布川 育子, 能井 さとみ
    セッションID: 1P-66
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】本学では、学内の給食管理実習において、100食の大量調理実習を1年次2回、2年次1回の計3回行っている。学内実習・学外実習を通して、栄養士として必要な知識や技術を修得し、現場で実践できる能力を養うことが重要である。今回は、学内実習の学生自己評価を分析し、苦手意識のある項目、実習によって自信のつく項目等を明らかにし、今後の学生指導に生かすことを目的とした。
    【方法】本学食物栄養科の学生を対象に、自記式質問票で自己評価させた。調査時期は1年生が2014年11月~2015年2月、2年生が2015年4~6月であり、3回の実習それぞれの終了後に行った。評価項目は、栄養管理、作業管理、衛生管理、調理、サービス、協力性からなる33項目とし、それぞれ、できる4点、ややできる3点、多少できない2点、できない1点で回答させ、実習回ごとに集計・解析した。
    【結果】1回目の評価で平均点が高かった項目は、身支度(3.87点)、協力(3.81点)、手洗い(3.71点)、低かった項目は、作業動線図(2.50点)、作業工程表(2.65点)、献立作成(2.79点)であった。衛生管理の基本である身支度及び手洗いは学生の意識が高いことがわかった。実習回数が進むとともに平均点も高くなり、3回の実習終了後、33項目中22項目で有意差が見られた。実習での体験を通して多くの項目で自信がつくことがわかった。一方、作業動線図、作業工程表、献立作成は、3回目の平均点がそれぞれ3.21点、3.23点、3.35点と、他の項目より依然として低かった。これらの項目については苦手意識があり、修得に経験と時間を要すると考えられ、指導方法等検討が必要であることがわかった。
  • 岩井 美和, 仲辻 亮作, 鈴木 慎吾
    セッションID: 2P-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】一般に「おにぎりはご飯を潰さないようふんわりと握る」と言われるが,こうすると「米粒が立ち,空間が生まれるので口中でよくほどけおいしく感じる」ためである。米飯が「ふっくら」かつ「しっかり」している状態は「粒立ちがよい」と表現され,「粒立ち」は米飯食品のおいしさを構成する重要な要素の一つである。しかし,おにぎりやシャリ玉などの米飯加工品は,成形工程で米飯粒が崩れやすくなる。崩れた小さい粒は大きな粒の隙間に入り込み, 空間が失われ, 口中でほどけにくい団子状になるため,最終製品まで粒立ちがよいことが望まれる。米飯の「硬さ」「ねばり」等の特性については従来より物性測定機が用いられ報告も多いが, 「粒立ち」という「米飯粒の在り様」は「硬さ」だけでは捕えられない。官能評価も有効だが訓練されたパネルを要し評価尺度にも限界がある。そこで「粒立ち」の定量的評価のため米飯加工品より採取した米飯粒の画像データを画像解析ソフトで処理、評価する方法を検討した。

    【方法】米飯加工品より採取した米飯粒のデジタル画像を解析ソフトに取り込み,全粒について面積を計測した。計測データについて頻度(粒数)を縦軸に面積を横軸にヒストグラム(および累積度数分布曲線)を作成した。

    【結果】粒立ちの良い試料は、右方向に度数が集中し,全粒の総面積値も大きくなった。逆に粒立ちの悪い試料は,全体に度数が分散し総面積値も小さくなった。二つの測定パラメーター「総面積値(一粒一粒が大きいこと)」「累積度数分布曲線の傾き(粒の大きさが揃っていること)」は官能評価とよく一致した。この手法をもとに市販のおにぎりをポジショニングしたところ,よくその特徴を把握することができた。
  • 森井 沙衣子, 坂本 薫, 白杉(片岡) 直子
    セッションID: 2P-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】浸漬温度が異なる米の吸水率について検討したところ,温水浸漬と低温浸漬では,吸水曲線が交差する現象が観察され,平衡状態まで吸水させた場合では,温水浸漬よりも低温浸漬の米の吸水率が高くなることをすでに明らかにした。本研究では,さらに品種および搗精度が異なる米の吸水率について,同様に吸水曲線が交差する現象が観察されるかどうかを明らかにすることを目的とし,実験を行った。 【方法】試料米はキヌヒカリ,ササニシキ,ハツシモの3品種とし,玄米および93%または91%搗精米を用いた。浸漬温度は5,20,40℃とし,それぞれ10,20,30,40,50,60,90,120,240,480分間,さらに吸水率が平衡にならなかった場合は平衡になるまで各設定温度の水に浸漬させた。浸漬後,小型遠心分離機を用いて3,000 rpmで5分間遠心脱水を行い,米の吸水量から吸水率を求めた。 【結果】91,93%各搗精米の吸水率は品種に関わらず,浸漬30分までは浸漬温度40℃で最も高値を示したが,60分後には20℃での吸水率が高くなった。さらに浸漬時間を長くすると5℃浸漬米の吸水率も40℃浸漬米よりも高くなったことから品種にかかわらず,5,20℃浸漬と40℃浸漬では,吸水曲線が交差することを観察した。また品種によって吸水率に差は見られるものの,91,93%各搗精米を平衡状態まで吸水させた場合,5℃浸漬米の吸水率が高くなる傾向が見られた。玄米においても短時間の浸漬では40℃浸漬米の吸水率が高値を示したが,長時間浸漬させると,5,20℃各浸漬米の吸水率は40℃浸漬米とほぼ同等の吸水率となるか,もしくは搗精米と同様に吸水曲線の交差が起こることが明らかとなった。  
  • 山口 智子, 金子 桂子, 常谷 柚里, 江口 智美
    セッションID: 2P-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】新潟県には魚沼地方を発祥とするつなぎにふのりを用いたそばがある。ふのりは紅藻類フノリ科フノリ属の海藻で、この地方では古くから織物の糊料として用いられてきたものであるが、そばに独特のコシの強さと歯ざわりの良さを与えている。演者らはこれまで米粉麺の研究を進めており、本研究ではふのりをつなぎとした米粉100%の米粉麺を調製し、その特性を明らかにすることを目的とした。
    【方法】米粉は平成25年新潟県産コシヒカリCKタイプ(新潟製粉(株))を使用した。乾燥ふのり(ヤマナカフーズ(株))に蒸留水を加え、ステンレス鍋または銅鍋を用いて煮詰めたものを、米粉、蒸留水とともに自動製麺機HR2365/01(PHILIPS)にて1.6mm平麺に製麺した。ふのりおよび生麺の抗酸化性(DPPH比色法)、総ポリフェノール量(Folin-Ciocalteu法)および色調(L*, a*, b*値:日本電色工業(株)製色彩白色度計NW-11)を、ゆで麺については色調と物性(破断強度:(株)山電製RHEONERⅡクリープメーター RE2-3305C)の測定および官能評価を行った。
    【結果】加熱に用いる鍋の材質によりふのりの色調が変化し、ステンレス鍋では赤紫色、銅鍋では緑色となった。また、その際のDPPHラジカル捕捉活性および総ポリフェノール量は、ステンレス鍋で加熱したふのりに比べて銅鍋で加熱したふのりで減少がみられた。生麺においても、銅鍋で加熱したふのりを添加した米粉麺のDPPHラジカル捕捉活性および総ポリフェノール量は低値を示したが、官能評価では好まれた。生麺およびゆで麺の物性を比較した場合にも相違がみられ、詳細については現在解析中である。
  • 志和 睦, 武智 多与理, 畠中 芳郎, 高村 仁知
    セッションID: 2P-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】コールドプレスジュースはスロージューサーで作成したジュースで、摩擦や熱で失われやすい酵素やビタミンなどが残っているほか、固形物が取り除かれているので胃への負担が少ないなどの理由で人気が高まっている。家庭用ジューサーの普及に伴い、コールドプレスジュースを家庭で製造する機会が増えたが、残渣などの廃棄部分が多く出るという問題がある。しかし、残渣には様々な機能性成分が含まれているため、食品としての利用価値が高い。本研究では、コールドプレスジュース製造残渣を増粘多糖類として利用したグルテンフリー米粉パンの開発を試みた。 【方法】柑橘系の果物からコールドプレスジュースを製造して得られたジュース残渣を試料とし、増粘多糖類として、グルテンフリー米粉パン製造の際に添加した。未乾燥のジュース残渣はパン生地の水分量に影響するため、まず、添加時の形状と添加可能な上限量を検討した。その後、ジュース残渣を添加した食パンを調製し、物性値(生地の膨化度、生地の粘度、比容積、パン断面の観察など)の測定および官能評価を行い、最適添加量を検討した。 【結果】ペクチンなどの食物繊維が豊富なジュース残渣の添加量を増やすには乾燥状態とすることが望ましいため、家庭で可能な乾燥法を検討し、自然乾燥と電子レンジ加熱を組み合わせて乾燥・粉末化する方法を見出した。米粉比約2%までの添加で、パン生地の粘度上昇と膨化が確認できた。焼成後のパンの品質も、対照として用いたグルテンを添加した米粉パンに近いものが調製でき、ジュース残渣が増粘多糖類として利用できることが示唆された。また、ジュース残渣の添加により、果物風味のおいしいパンが作成できた。
  • 小野 萌香, 土川 瀬莉奈, 奥西 智哉, 翠川 美穂, 林 徹, 岡留 博司, 五月女 格, 安藤 泰雅
    セッションID: 2P-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】餅は茹でて食されることが多く、食味評価も茹で餅で行われることが多い。焼餅での消費もおよそ1/3ほどあるが、食味評価手法としてはほとんど知見の蓄積がない。餅物理特性については、餅硬化が速い方が加工時の生産性が高いことからこの指標が重視されるが、食味の観点からの指標化はされていない。そこで、焼餅に関して、食味官能評価を行い、理化学特性との関連について検討したので報告する。

    【方法】平成26年度新潟県産わたぼうしを精米歩合90%に調製した。ホームベーカリーのもちコースで生餅を作成し、一晩室温で冷却した後、4cm×6cm×1.5cmに切断成型した。焼餅はホットプレートを200℃に設定し、表面4分-裏面5分-表面1分の順に焼いた。エクステンソグラムによる生餅試験、およびテンシプレッサーによる焼餅の曲げ試験および引張試験を行い変形エネルギー、ヤング率、歪率を求めた。イオンクロマトグラフにより生餅の水抽出物から糖含量を求めた。食味官能評価は、色・つや・香り・味・こし・のび・総合評価を5段階で評価した。

    【結果】餅製造時の加水量を変化させ、各評価を行った。テンシプレッサー試験における焼餅のヤング率は加水量と負の相関を示した。ヤング率は餅のこしと考えられ、官能評価でのこし評価との相関も比較的高かった。一方、歪率は加水量とは相関を示さなかった。歪率は餅ののびと考えられ、官能評価においてはのびは加水量との負の相関が見られたことから、今回用いた測定条件はのびを評価する手法としては不適であった。加水量による糖含量には変化がなく、官能評価での色・つや・香り・味も同様であった。
  • 藤井 久美子
    セッションID: 2P-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」による平均食物繊維摂取量は目標量を下回る状況が続いており,大麦など雑穀類の摂取量減少が一因と考えられる。これまで大麦は米に混ぜて炊飯する主食用として押麦や米粒麦の形で食べられてきたが,米飯の摂取量低下とともに減少した。また近年,健康機能性が期待される水溶性食物繊維を豊富に含む国産大麦が育種され,大麦粉として食品への利用が模索されている。そこで本研究では,米粉に不足する食物繊維を補う,もち性大麦粉添加米粉パンの調製を目的とした。
    【方法】衝撃式粉砕法による米粉に粉末グルテンを加えたパン生地配合において,もち性大麦(キラリモチ)粉添加量や加水量,発酵温度,ガス抜き等の条件を変えて生地膨張を計測した。その結果に基づいてもち性大麦粉添加の各区分(米粉の10%,20%,30%置換)と置換なしの米粉のみのパンを製作し,パンの比容積,テクスチャを計測した。またパンの色調,歯切れ,きめ,やわらかさ,もちもち感,味,香り等について官能評価を行った。
    【結果】比容積はもち性大麦粉10%置換が最も大きく,米粉のみと同等であった。テクスチャ計測の結果,硬さはもち性大麦粉10%置換が最も高値で他と有意な差があり,凝集性は米粉のみが最も高値でもち性大麦粉置換に比べて有意な差があった。官能評価では,もち性大麦粉置換の3区分ともプラス評価で,もち性大麦粉10%置換は10項目中6項目で最も高い評価であった。特に色:外皮の評価は3区分とも米粉のみよりも好まれた。評価項目の合計点はもち性大麦粉10%置換が最も高く,次いで米粉のみ,もち性大麦粉20%置換,30%置換の順であり,また分散分析の結果からもち性大麦粉10%置換と20%置換の間に有意差はなく好まれた。
  • 濱石 貴士, 森永 賀亮, 森田 洋
    セッションID: 2P-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】米粉パンは、小麦粉パンと比較し生地がべた付き切れやすく、外観のボリュームが出ないことが課題として挙げられる。従来、製パン分野ではパンの品質向上の為に様々な生地改良剤が用いられてきた。そこで本研究では、陰イオン界面活性を持つ脂肪酸塩を新規生地改良剤として着目し、米粉生地に脂肪酸塩を添加することによる米粉の製パン特性を検討した。

    【方法】使用した脂肪酸塩はラウリン酸カリウム(C12K)とミリスチン酸カリウム(C14K)を選定し、最終濃度が350 mM、pH10.5になるように調製した。生地は上新粉にグルテン、砂糖、ドライイースト(日清製粉(株))、食塩の溶解水を加え、水(約45℃)を少量ずつ加え、手で500回捏ねた。脂肪酸塩の添加量は全粉重量に対して10 %に設定した。生地比容積は100 gに調整し、180℃のオーブンで15分間焼成。常温まで冷ました後に一定容量の容器とガラスビーズを用い、菜種置換法により比容積を測定した。

    【結果】米粉生地では脂肪酸塩添加による生地膨張力の増加が認められなかった。またグルテン添加(1、5,10 %)米粉パンにおいては、C12KよりもC14Kの方がより顕著な生地膨張力の増大が認められたことから、脂肪酸塩によるグルテンネットワークへの影響には差異があることが示唆された。また焼成後における比容積の変化において、グルテン添加量が増大するごとに比容積の増大は認められたが、グルテン添加米粉生地と脂肪酸塩を加えたグルテン添加米粉生地において、顕著な差は認められなかった。
  • 坂口 友梨, 深井 康子
    セッションID: 2P-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】有色素米を水に浸漬後、ペースト状にして用いるとパン、シュー皮、アイスクリームなどを調製する際に調理がし易いことが明らかになった。本研究では、雑穀の調理や利用を図るため黒米との混合ペーストに着目し、シフォンケーキを調製し、その性状と嗜好性について検討した。
    【方法】試料は黒米(富山県産)、キビ(宮崎産)、アワ(岩手県産)、ハトムギ(島根県産)、キヌア(ペルー産)、アマランサス(北海道産)を使用した。黒米ペーストは黒米100gに83.3W/W%の純水、雑穀ペーストは雑穀100gに83.3~90.0W/W%の純水を浸水させ、5分間攪拌した。黒米雑穀粒の吸水率(10℃、2時間)、ペーストの粘度、粒度分布、色調を測定した。シフォンケーキは黒米/雑穀が1/1のペーストに卵などを加え、170℃で40分焼成し、色調、テクスチャーを求めた。黒米ケーキを基準に黒米雑穀混合ケーキの官能評価を評点法により行った。
    【結果】吸水率はキビ>キヌア>アマランサス>アワ>ハトムギ>黒米の順に高く、キビは黒米の約10%高い36%であった。黒米・雑穀ペーストの粘度は回転数1.5rpmで黒米が雑穀に比べ顕著に高い粘度を示し、粒度分布では黒米は0.5μmを頂点とした正規分布に近似し、キヌアを除いた雑穀は2つのピークをもつ分布を示した。平均粒子径はアマランサスが183μmで黒米の約350倍でキヌアが黒米に近い値であった。黒米・雑穀の色調は、粒からペーストになるとL*値はやや低く、a*値は特にアワ、アマランサスが高く、b*値は全ての試料で高かった。官能評価では、全ての評価項目において有意差は見られなかったが雑穀を混合しても嗜好的に好まれることがわかった。
  • 松尾 将平, 三貝 咲紀, 森田 洋
    セッションID: 2P-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】日本における酒の歴史は古く、今では人々の生活・文化に親しまれている。従来の焼酎醸造では、蒸した米や麦などのデンプン質原料に直接、カビを生育させる「固体麹」が一般的である。固体麹は、高い酵素生産性が得られる一方で、発酵熱の品温管理や酸素供給のタイミングなどの培養制御が困難である。そこで、培養制御が容易な「液体麹」による製麹法が注目されている。しかし、液体麹の課題として、焼酎醸造で重要な耐酸性α-アミラーゼが生産されにくいことが挙げられる。そこで本研究では、耐酸性α-アミラーゼが高生産される液体麹の開発を行った。

    【方法】菌株にはAspergillus kawachii NBRC 4308を使用した。胞子懸濁液を改変SLS液体培地(米粉: 1.0 g、K2HPO4: 1.0g、KCl: 0.1 g、トリプトン: 0.6 g、MgSO4・7H2O: 0.05 g、FeSO4・7H2O: 0.001 g、ZnSO4・7H2O: 0.0003 g、CaCl2: 0.021 g、クエン酸: 0.33 g /100mL (イオン水) ) に初発胞子数1×107 個/mLになるように接種し、30 ℃、200 rpmで72 h振とう培養を行った。耐酸性α-アミラーゼ活性はα-アミラーゼ測定キット(キッコーマン社製)を用いて測定を行い、粗酵素液1 mLがN3- G5- β- CNPから1 μmolのCNPを遊離したときを1 Uと定義した。

    【結果】690 U/g-substrateの耐酸性α-アミラーゼ活性が、改変SLS液体培地より得られた。培地組成中のトリプトンは、食品への使用が認められておらず、亜鉛塩及び鉄塩の使用は、本格焼酎の定義には当てはまらないことから、改変SLS液体培地組成中のトリプトン0.6 gをスキムミルク2 gに変え、更にZnSO4・7H2O 0.0003 gをごま5.08 gに、FeSO4・7H2O 0.001 gを水道水にそれぞれ代替した。その結果、1008 U/g-substrateの高い耐酸性α-アミラーゼ活性が得られた。これは、固体麹で得られる耐酸性α-アミラーゼ活性を、大幅に上回っており、液体麹の有意性が示された。
  • 佐藤 朱, 川野 華澄, 桝澤 岳史, 鈴木 真由美, 平間 瑞希, 猪俣 亜衣子, 石川 伸一
    セッションID: 2P-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】肉は、加熱時に酵素的・物理化学的変化を伴うが、肉の温度を60℃に保つことでやわらかくジューシーに仕上がることが明らかとなっている。しかし、フライパンや従来のオーブンでは60℃の比較的低い加熱温度を調節することは難しく、それを可能とする調理器具が必要とされる。一方、食材の適正に合ったTT条件(加熱温度と加熱時間)を容易に管理できる方法として、近年高速熱風調理や真空調理が注目されているが、それらの調理法を比較した例は未だ報告されていない。そこで本研究では、コンベクションオーブン(コンベクション)を基準として、熱風オーブン(熱風)および真空調理(真空)の加熱調理において牛肉の嗜好性を比較することを目的とした。
    【方法】試料は交雑牛内モモ肉を使用し、コンベクション、熱風および真空において加熱した。コンベクションを基準とし、熱風と真空の理化学的分析および官能検査を行った。理化学的分析は、多汁性(クッキングロスの算出)、テクスチャー(テクスチュロメーター測定)、味(アミノ酸・核酸物質の定量)について行った。また、官能検査は外観、香り、食感、味、多汁性、総合評価の6項目について、52人の男女を対象に実施した。
    【結果】アミノ酸分析では、うま味系アミノ酸であるグルタミン酸量および甘味系アミノ酸であるグリシンにおいて熱風が有意に高い値であった。官能検査は、多汁性・味・総合評価の項目において熱風が有意に高い値だった。クッキングロスにおいて、調理損失のうち真空はドリップであったが、熱風はほとんどが蒸発によるものだった。このことから、熱風はうま味物質の流出が抑えられ、味の項目で高い評価を得たことが示唆された。また、グルタミン酸が熱風で有意に高い要因として、熱風がグルタミン酸生成酵素の活性する温度帯(50~60℃)を真空より長く通過したためと示唆された。
  • 露木 理紗子, 飯田 文子
    セッションID: 2P-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】昨今の牛肉自給率は40~42%である。わが国の肉用牛は黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の和牛および乳牛とその交雑牛である。それらの食味は異なるといわれているが、詳細は明らかではない。そこで海外種および黒毛和種、褐毛和種、日本短角種および交雑種の食味を比較検討し、それらの特長を明らかにすることを目的とした。【方法】試料は黒毛和種76頭、褐毛和種5頭、日本短角種4頭および交雑種31頭の国内牛肉と海外種17頭の合計133頭とした。各試料を1cm厚さに調製し200 ℃に熱したホットプレートで表面60秒、裏面を内部温度60℃になるまで、合計約120秒焼成し、3×4cmに切りだし、官能評価試料とした。試料の温度は24±2℃で供した。パネルは五味識別、うま味濃度差訓練を行った訓練パネル7~9名とし、評価項目はテクスチャー、フレーバー項目および総合評価の13項目の分析型官能評価を行った。【結果】黒毛和種は、褐毛和種に比べてテクスチャーおよび香りに関する項目で有意な違いはみられなかったが、「うま味の強さ」は有意に高い評価となった。黒毛和種はその他4種と比較するとテクスチャー、風味に関する項目で有意に高く、食味の良さ、すなわちテクスチャーおよびフレーバーともにバランスのとれた牛肉であることが示された。褐毛和種はテクスチャー項目においては日本短角種、海外種に比べ高値となり、黒毛和種に次ぐ評価となった。交雑種はフレーバー項目の評価が黒毛和種同様高いのが特徴的であり、日本短角種は他の国内牛肉よりも硬く、海外種はテクスチャー、フレーバーともに、評価は低くなった。また、黒毛和種では産地により違いがみられ、異なる特長が示された。
  • 大貫 和恵, 武藤 亜矢, 五百藏 良, 野口 玉雄
    セッションID: 2P-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/28
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    【目的】フグ肝臓(フグ肝)には,フグ毒テトロドトキシン(TTX)が含まれているとして,全てのフグ類の肝臓が廃棄されてきたが,無毒フグの生産が可能になった。そこで本研究では,無毒が確認されたフグ肝を食品として利用するため,これまで報告してきた生肝や加工品(缶詰,レトルトパウチ詰,ぬか漬け)に加え,栄養補助食品(サプリメント)としての利用を目的とし,フグ肝の油(肝油)を分析した。

    【方法】管理の行き届いた室内の開放系循環水槽(佐賀県)で2年間養殖したトラフグ(Takifugu rubripes)の肝臓を用いて公定法に準じて毒性(TTX)を試験し,次いで,油分を抽出した。それをAOAC法に準じて,一般成分,ビタミンE(α-トコフェロール),脂肪酸組成,IPA,DHAを分析した。

    【結果】毒性試験の結果,フグ肝の無毒(10 MU/g未満)を確認した。得られた肝油(n=4)の一般成分は,脂質99.8±0.2 g%,ビタミンE(α-トコフェロール)25.1±3.3
    mg%で,脂肪酸組成は,不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸より多く,特に,機能性の効果がある高度不飽和脂肪酸DHAが13.9±3.1%,IPAが7.1±1.6%で,豊富に含まれていた。肝油と生肝のDHAおよびIPAは,可食部100g当たりで比較したところ,肝油(DHA:約11 g%,IPA:約6 g%)の方が生肝(DHA:約7 g%,IPA:約3 g%)より約2倍多く,有意な差が認められた(p<0.05)。
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