自律神経
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56 巻, 4 号
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第71 回日本自律神経学会総会
特別講演4
  • 黒岩 義之, 平井 利明, 横田 俊平, 鈴木 可奈子, 中村 郁朗, 西岡 久寿樹
    2019 年 56 巻 4 号 p. 185-202
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    脳室周囲器官と視床下部は恒常性維持器官であり,自律神経,概日リズム,神経内分泌(ストレス反応),情動・記憶・認知,感覚閾値・疼痛抑制,歩行・運動,神経代謝・神経免疫(熱エネルギー代謝,老廃物排出,自然免疫・腫瘍免疫)を制御する.血液脳関門を欠く有窓性毛細血管が密集する感覚性脳室周囲器官が感知した信号(光,匂い,音,電磁波,レプチン,グレリン)は視索前野,背内側視床下部を経て,休息型視床下部(摂食行動抑制中枢)と活動型視床下部(摂食行動促進中枢)に伝達される.心理ストレス情報は扁桃体から,概日リズム情報は視交叉上核から視床下部に入り,視床下部からオレキシン,バゾプレシン,オキシトシンが分泌される.視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の背景疾患として,ヒトパピローマウィルスワクチン接種関連神経免疫症候群,慢性疲労症候群,脳脊髄液減少症,メトロニダゾール脳症,化学物質過敏症,電磁過敏症などがある.

教育講演1
  • 上田 陽一
    2019 年 56 巻 4 号 p. 203-206
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    視床下部-下垂体系を主軸とする神経内分泌系は,自律神経系調節を含め生体の恒常性維持に重要な役割を担っている.下垂体後葉系は,神経内分泌系の典型的モデルとして長年にわたり研究されてきた.古くは下垂体抽出物に昇圧物質が存在することに端を発して,20世紀半ばには下垂体後葉ホルモンのバゾプレッシンとオキシトシンの単離・構造決定と生合成が成功した.その後,分子生物学的手法や最先端技術の応用により,多くの知見が見出されてきた.最近,神経回路網を解明するための新たなツールとして光遺伝学・化学遺伝学が汎用されている.下垂体後葉系にこれらの新技術を導入した自験データとともに,最近の研究動向について概説する.

教育講演2
  • 本田 真也, 神田 隆
    2019 年 56 巻 4 号 p. 207-209
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    ニューロパチーは疾患特異的に運動神経,感覚神経,自律神経のいずれかにアクセントを置いた臨床症状を呈するが,多くのニューロパチーの障害は大径有髄線維,小径有髄線維,無髄線維の順番で進行する.つまり,一般的に自律神経障害を呈するような無髄神経の障害は末梢神経障害としては末期の状態のことが多く,自律神経障害が初期から主症状であるニューロパチーは少ない.糖尿病やアミロイドーシス,一部の免疫介在性ニューロパチーでは自律神経障害が前景に出る場合がある.自律神経障害は患者の生命予後や機能予後に関与しうる病態であり,正確な診断や症状把握が求められる.

シンポジウム2
  • 岸 拓弥
    2019 年 56 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    5年生存率50%に留まっている慢性心不全は脳がフィードバック制御を行なっている心拍出量が不適切になっている.我々は1) 脳内アンジオテンシンII受容体により産生される酸化ストレス・2)アストロサイトのアンジオテンシンII受容体異常増加による神経グリア連環異常・3) 脳内炎症性サイトカイン産生,が過剰な交感神経活性化を惹起し慢性心不全の病態を悪化させることを報告した.また,圧受容器反射不全で容量不耐性・圧利尿関係異常が惹起され,迷走神経求心路刺激により改善することも報告した.これらの結果は,脳の機能不全が慢性心不全の本質的な原因であり,未達の治療標的であることを強く示唆するものである.

  • 石綿 清樹, 設楽 準, 葛西 隆敏
    2019 年 56 巻 4 号 p. 216-220
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    睡眠呼吸障害(SDB)と循環器疾患は密接な関連がある.関連のメカニズムとして閉塞性無呼吸中の吸気努力による胸腔内高度陰圧化による心拍出量の低下,一過性低酸素を繰り返すことによる酸化ストレスと炎症反応亢進に加え,交感神経活性の亢進が知られる.SDBにおける交感神経活性の亢進は無呼吸に伴う低酸素血症・高二酸化炭素血症,心拍出量低下,肺伸展受容体刺激の消失による機序,中途覚醒などが挙げられる.交感神経活動の亢進は睡眠中のみならず覚醒時においても持ち越されることも知られ交感神経刺激が過剰による直接的心筋障害,血圧・心拍数の上昇による心負荷増大,不整脈の誘発などを介し,循環器疾患の発症や増悪に関与する.

  • 渡部 智紀
    2019 年 56 巻 4 号 p. 221-223
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    発作性心房細動に対する肺静脈隔離術の有用性が報告され,現在心房細動アブレーション治療の主軸となっている.心臓周囲には内因性自律神経節(Ganglionated plexi:GP)が存在するといわれ,心房細動発生・維持に関与するといわれている.これらのGPに対して高頻度刺激を行うと迷走神経反射が認められ,また焼灼により迷走神経反射の減弱を認めることが知られている.近年,心房細動を主とした頻脈性不整脈および洞不全症候群を含めた徐脈性不整脈に対して自律神経を治療ターゲットとしたアブレーション治療の有用性に関する報告がある.一方で心房細動のGPアブレーションにおける長期的成績は一定の見解が得られていない.今後さらなる臨床研究が必要と思われる.

シンポジウム3
  • ―MALTリンパ腫から見たその特徴―
    中村 正彦, 児玉 洋介, 村山 琮明, 松井 英則, 織田 正也
    2019 年 56 巻 4 号 p. 226-232
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    消化性潰瘍をはじめとした消化管疾患に比較し,肝疾患および肺疾患における自律神経の関与については不明な点が多い.われわれは, non-Helicobacter pylori Helicobacterをマウスに長期間感染させることにより,最初に胃MALTリンパ腫,その後,肝臓,肺にMALTリンパ腫が形成されることを見出した.そこで,肝臓,肺の自律神経調節,腫瘍と自律神経の関連,さらに胃MALTリンパ腫において重要な働きをしていると考えられるsubstance Pの肝臓,肺MALTリンパ腫における意義ついて述べたい.

  • 奥村 利勝
    2019 年 56 巻 4 号 p. 233-235
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    オレキシンは脳内でも外側視床下部の神経細胞でのみ産生される神経ペプチドである.我々はオレキシンの消化管機能に及ぼす影響を検討してきた.ラット脳室内にオレキシンAを投与すると胃酸分泌,胃運動,大腸運動や大腸進展刺激に対する内臓痛覚閾値を亢進させたが,腹腔内投与はこれらの機能に影響を与えなったので,オレキシンAは中枢神経に作用して,消化管運動や内臓痛覚閾値を亢進させる事が明らかになった.機能性消化管障害の病態の中核は消化管運動障害と内臓知覚過敏であり,オレキシンが中枢神経系に作用し消化管運動と内臓知覚に影響を及ぼすとの知見は,オレキシンが一元的に機能性消化管障害の病態に関与することを示唆する.

シンポジウム4
  • 根本 崇宏, 柿沼 由彦
    2019 年 56 巻 4 号 p. 239-242
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    コルチコトロピン放出因子(CRF)は,下垂体前葉のみならず扁桃体や青斑核,延髄腹外側核にも放出され,ストレス応答の内分泌系や自律神経調節などの様々な生理作用を有する.我々は,妊娠中に低糖質カロリー制限食を給餌させた母ラットからの低出生体重仔に拘束ストレスを負荷すると血中のコルチコステロン濃度の高値持続がみられること,血清メタボローム解析により血中メチオニンが低下していることを明らかにしてきた.メチルモジュレーター食を授乳母ラットに給餌させると,成長後の拘束ストレス負荷後の血中コルチコステロン濃度が正常化した.そこで本ミニレビューでは,メチルモジュレーターによる早期介入効果を概説する.

  • 内田 さえ
    2019 年 56 巻 4 号 p. 243-247
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    卵巣からのエストラジオール分泌は,思春期以降に視床下部-下垂体-卵巣系の制御を周期的に受けて変動する.卵巣にはアドレナリン作動性神経が密に分布する.私どもはラットを用い,生体外からエストラジオールを長期投与する薬理的手法を用い,負のフィードバック効果により視床下部-下垂体-卵巣系を抑制した状態を作成した.その結果,エストラジオール長期投与ラットでは,卵巣支配の交感神経がエストラジオール分泌に対して顕著な抑制作用を示すことを明らかにした.本稿ではエストラジオールと自律神経の相互作用について調べた私どもの最近の研究を紹介する.

  • 岡田 尚志郎
    2019 年 56 巻 4 号 p. 248-251
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    ストレス刺激により,交感神経-副腎髄質系や視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系が活性化する.両系の活性化は,血中カテコールアミン濃度の上昇やグルココルチコイドの分泌などをもたらし,全身性のストレス反応を引き起こす.一般にストレス反応は中枢性に制御されており,多くの脳領域および神経路が複合的に関与している.その中でも視床下部室傍核は,交感神経系とHPA系の両方の制御中枢であり,ストレッサーに起因する情報入力を受けて統合したのち末梢へ出力する,ストレス反応調節の要となる部位でもある.我々はこれまで,ラット脳内に種々のストレス関連ペプチドを投与した実験系から,交感神経-副腎髄質系賦活の脳内調節メカニズムを解析してきた.その結果,投与したペプチドによって血中ノルアドレナリンおよびアドレナリン増加反応が異なることを見出し,これらの交感神経反応に関与する脳内メディエーターやシグナル経路について明らかにしてきた.中でもとくに脳内プロスタノイド(プロスタグランジンE2,トロンボキサンA2)およびアドレナリン受容体(αおよびβ受容体)の促進的関与や視床下部室傍核における調節機序に焦点を当て,ペプチド投与実験による交感神経系賦活機序のシグナル経路や,さらに,これらの機序がストレス条件下の脳内ストレス応答においても機能するか検討している.本シンポジウムでは,交感神経終末からのノルアドレナリン遊離および副腎髄質からのアドレナリン分泌の中枢性調節機構について,我々の研究成果を中心に概説する.

共催シンポジウム
  • 菊池 友和, 山口 智, 荒木 信夫
    2019 年 56 巻 4 号 p. 253-256
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    日本の慢性頭痛のガイドライン2013では,一次性頭痛の急性期治療および予防に対する鍼治療は有効とされている.コクランレビューでは,片頭痛の予防に対する鍼治療は,予防薬物と比較し効果に差がないが,偽鍼と比較しても効果に差がない.しかし,episodicな片頭痛に限定すると偽鍼と真の鍼に効果の差が認められる.一方,本邦の報告でも,慢性片頭痛よりepisodicな片頭痛の方が効果が高いことが報告されている.鍼の作用機序については,片頭痛患者では,脳イメージングを用いた手法により,予防効果や発作期に対し,鍼刺激を行うことにより,主に脳の疼痛関連領域に影響がある可能性が示されている.

学会賞受賞講演
  • 中村 佳子
    2019 年 56 巻 4 号 p. 257-263
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    飢餓状態になるとエネルギー供給が極めて限られるため,ヒトを含めた哺乳類は代謝などのエネルギー消費を抑え,生き延びようとする.この時,脳内では神経ペプチドneuropeptide Y(NPY)が分泌され,代謝抑制などの作用に関わると考えられる.NPYが視床下部に作用すると,代謝が抑制されるとともに摂食が促進されるため,効率よく飢餓状態を生き延びることができる.しかし,その中枢神経メカニズムは不明であった.著者らは,視床下部におけるNPYの作用が延髄網様体のGABA作動性ニューロン群の活性化を通じて,代謝抑制と摂食促進を同時に起こすことを発見し,NPYによる飢餓反応の神経路メカニズムを明らかにした.

  • 増田 曜章, 植田 光晴, 大林 光念, 安東 由喜雄
    2019 年 56 巻 4 号 p. 264-268
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    遺伝性トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスは,TTRの遺伝子変異が原因となり,アミロイド線維が種々の臓器に沈着し機能障害を起こす遺伝性疾患である.本症の多くの症例は小径線維ニューロパチーにて発症する.最近臨床応用された新規疾患修飾療法は,発症早期からの治療介入が最も進行抑制効果を示すため,早期診断の重要性は増し,治療反応性を鋭敏かつ定量的に評価することが重要となってきた.今回,我々の研究により,皮神経障害が本症の発症早期のみならず無症候の時期から存在することが明らかとなった.皮膚生検による皮神経脱落の解析は,本症の早期診断および病態評価に有用なバイオマーカーとして使用できる可能性がある.

原著
  • Noriko Onozato, Naoto Hara, Akiko Taguchi, Sayaka Matsuda, Kazuki Miya ...
    2019 年 56 巻 4 号 p. 269-272
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    The purpose of our study was to simultaneously measure and compare accommodation and pupillary constriction during the near response among hyperopia, emmetropia, and myopia (refractive errors). We examined 60 normal eyes of 30 subjects (10 males, 20 females) without signs of disease, aged 20–26 years (mean 21.2 years). The refractive error ranged from +5.50 diopters (D) to −8.50 D and was used to divide subjects into five groups of 12 eyes each: hyperopia, emmetropia, low myopia, moderate myopia, and high myopia groups. The gain of accommodation (%) and pupillary size (mm2) to step stimulus of +5 D were measured under adequate correction of refractive errors using a refraction/accommodation measurement device. The high-myopia group exhibited low gain of accommodation (76.7%) and maximum change in pupillary size (13.03 mm2). In contrast, the hyperopia group exhibited low gain of accommodation (72.5%) and minimum change in pupillary size (5.50 mm2). We observed differences in accommodation and pupillary responses in the context of different refractive errors. In high myopia, the large pupillary constriction in the near response compensated for weak accommodation, even at young ages. In hyperopia, small pupillary size daily compensates for accommodation by increasing the depth of focus; therefore, subjects could clearly view near objects despite the weak accommodation and small pupillary constriction.

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