私たちは,ラットにおける中枢神経系による遠位結腸・直腸の運動調節機構について研究を進めてきた.その結果,下行性疼痛調節系を構成する神経核が脊髄より上位の排便中枢としての役割を持ち,腰仙髄部の脊髄排便中枢を介して結直腸運動を制御することを明らかにした.また,この骨盤神経系の遠位結腸・直腸の運動調節機構が慢性的な刺激によって可塑的に変化することを発見し,パーキンソン病モデルラットにおいても結直腸運動が変化することを突き止めた.本稿では,中枢神経系による遠位結腸・直腸の運動調節機構と排便異常,特にパーキンソン病における慢性便秘の病態に関与する可能性について,私たちの知見を中心にまとめる.
青色光が頭痛のトリガーや悪化に関与していることは広く知られているが,その神経機構は未だ不明な点が多い.頭痛を引き起こす侵害情報は,三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)に入力,シナプスを介し上位中枢へと伝達されるが,近年,眼に強い光が入ると,Vcのニューロンが興奮することが明らかになった.本研究では,青色光の頭痛への関与を検証するために,麻酔下のラットを用い,硬膜・角膜に受容野を持つ,Vcのニューロン活動を単一細胞外記法により記録,青色光(3-10 klx)で刺激し,Vcニューロンが興奮する様子を検証した.さらに赤色光(10 klx)での刺激を行い,青色光による神経活動と比較した.その結果,青色刺激によるVcニューロンの興奮は,照度依存的に増加,さらに赤色光に対するVcニューロンの反応に比べ有意に大きいことも明らかとなった.以上の結果から,青色光により頭痛が誘発される可能性が示唆された.