全国27大学の耳鼻咽喉科学教室とその関連施設ならびに開業医院の計108施設における耳鼻咽喉科領域感染症患者より2007年1月~2007年6月の期間に分離された新鮮臨床分離株339株に対するgarenoxacin(GRNX)および各種抗菌薬の抗菌力について検討した。
GRNXはペニシリン中等度耐性株(PISP)およびペニシリン耐性株(PRSP)を含むStreptococcus pneumoniae,Streptococcus pyogenesおよびmethicillin感性Staphylococcus aureus(MSSA)に対して,比較検討したキノロン系抗菌薬(levofloxacinおよびmoxifloxacin)の中で最も優れた抗菌活性を示した。一方,Haemophilus influenzaeおよびMoraxella catarrhalisに対してキノロン系2薬剤とほぼ同等の非常に強い抗菌活性を示した。
GRNXは耳鼻咽喉科領域感染症の主要起炎菌に優れた抗菌活性を示し,本感染症の治療薬としての有用性が示唆された。
国内承認後20年目におけるマイコスポール®クリーム1%(以下,ビホナゾールクリームとする)の1日1回塗擦による足白癬に対する有用性について,16例の足白癬患者(小水疱型8例,趾間型8例)を対象に検討した。対象症例のうち1例は皮膚症状が悪化したために,試験薬の投与を2週間で中止した。当該中止例は試験開始4週間後の真菌学的効果および皮膚症状改善度の判定では除外したが,総合臨床効果および有用度の判定では「無効例」および「無用例」として採用した。中止例を除いた症例での試験薬の平均投与日数±SDは26.5±2.3日(21~28日)であった。試験開始4週間後の真菌陰性化率は100%(15/15例)であった。試験開始4週間後の痒,発赤,丘疹,水疱・膿疱,浸軟および鱗屑の各皮膚症状は試験開始時に比べて有意に改善し(p<0.05),ほとんど消失し,皮膚症状改善度は93%(14/15例)であった。真菌学的効果と皮膚症状改善度から検討した総合臨床効果は81%(13/16例)であった。副作用は全例にみられなかった。総合臨床効果と安全性から検討した有用率は88%(14/16例)であった。今回の試験で,国内承認後20年目におけるビホナゾールクリームの足白癬に対する有用性は本剤開発時あるいは国内承認後10年目の試験結果とほぼ同様であることが確認できた。上市後約20年が経過した現在でも,ビホナゾールクリームは足白癬治療に対して有用な外用抗真菌剤であると考えている。
仙台市内の診療所で分離された小児呼吸器感染症の主要原因菌4菌種(Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalis, Streptococcus pyogenesの臨床分離株295株において,小児用抗菌薬7剤の薬剤感受性を検討した。
S. pneumoniaeでは,全体の55.8%がペニシリン耐性S. pneumoniae(PRSP-PISP)であった。ペニシリン系薬および一部のセファロスポリン系薬のMIC90は,0.5~1𝜇g/mLと良好であったが,マクロライド系薬では耐性菌の増加が顕著であった。H. influenzaeでは,全体の50.0%がampicillin中間耐性菌および耐性菌(MIC: ≧2𝜇g/mL)であった。セファロスポリン系薬のMIC90は,0.5~8𝜇g/mLと薬剤間での差が大きく,その他の薬剤の抗菌活性は全体的に弱かった。M. catarrhalisは,ペニシリナーゼに不安定なamoxicillinに対して感受性が低かったが,他の薬剤のMIC90は0.25~1𝜇g/mLと比較的良好であった。S. pyogenesは,マクロライド系薬で著明な耐性化が認められたが,ペニシリン系薬,セファロスポリン系薬のMIC90は0.03~0.06𝜇g/mLと極めて良好であった。
日本では,産褥感染予防のため,多くの施設で出産後に経口抗菌薬の予防的投与が行われている。しかし,正常分娩後の抗菌薬の予防的投与については,エビデンスとなり得る報告が少なく,不必要な抗菌薬投与がなされている可能性も危惧される。
そこで,今回,正常分娩後の褥婦に対して,経口抗菌薬非投与群(A)と抗菌薬セフテラム ピボキシル(CFTM-PI)300mg分3,3日間投与群(B),CFTM-PI 300mg分3,5日間投与群(C)を設定し,その有用性について検討した。
その結果,退院後1週間目までの感染症発生率は,A群:5.83%,B群:1.77%,C群:0%であり,C群>B群>A群の順で有意に感染症発生率が低かった(p=0.004)。
また産褥5日目の悪露中総菌数,総好気性菌数および総嫌気性菌数は,C群>B群>A群の順で,産褥1日目に比し有意に減少していた(p<0.001)。
今回の検討より,正常分娩後の予防的抗菌薬投与は有用であることが示された。その要因のひとつとして,悪露中菌数の有意な減少が関係している可能性が示唆された。
新規経口カルバペネム系抗生物質tebipenem pivoxilの活性本体tebipenemの尿路生殖器を中心に分離された各種細菌に対する抗菌力を種々の対照薬剤と比較検討した。TebipenemはNeisseria gonorrhoeaeに対してcefiximeとほぼ同等の抗菌力を,Enterococcus faecalisにおいてampicillinおよびamoxicillinと同等,faropenemよりやや強い抗菌力を示し,これらいずれの菌種においてもtebipenemに高度耐性を示す菌株は認められなかった。また,腸内細菌科の4菌種に対するtebipenemの抗菌力は,対照薬剤に比べ極めて強く,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生株およびESBL非産生ceftazidime耐性株に対しても同様であった。
Tebipenem pivoxil(TBPM-PI)は新規の経口カルバペネム系抗菌薬であり,活性本体tebipenem(TBPM)をプロドラッグ化して経口吸収性を高めた薬物である。今回,耳鼻咽喉科領域における組織摘出術施行成人患者,急性中耳炎および急性副鼻腔炎小児患者を対象に,各感染症の感染部位となる組織,耳漏へのTBPMの移行性を検討した。
耳鼻咽喉科領域における組織摘出術施行成人患者におけるTBPM-PI 150mg(力価)および250mg(力価)単回経口投与後の各組織中TBPM濃度は,上顎洞粘膜が0.38~1.76𝜇g/gおよび0.17~0.91𝜇g/g,篩骨洞粘膜が0.26~0.94𝜇g/gおよび0.14~0.45𝜇g/g,口蓋扁桃組織が0.12~0.13𝜇g/gおよび0.14~0.47𝜇g/gで,中耳粘膜では250mg投与群で0.29𝜇g/gであった。血漿中濃度に対する比率は,150mgおよび250mg投与群でそれぞれ,上顎洞粘膜が14.3~61.0%および18.4~54.6%,篩骨洞粘膜が34.3~52.1%および9.9~54.6%,口蓋扁桃組織が10.3~15.0% および6.5~17.4% であり,中耳粘膜では250mg投与群で16.8%であった。
急性中耳炎および急性副鼻腔炎小児患者におけるTBPM-PI 4mg(力価)/kgX2回/日および6mg(力価)/kg×2回/日投与時の耳漏中TBPM濃度は,それぞれ0.03~2.00𝜇g/g および1.07, 1.18𝜇g/g であり,血漿中濃度に対する比率は,0.3~86.1% および40.5, 83.6%であった。
以上の結果より,TBPM-PI投与時の中耳炎および副鼻腔炎の感染部位となる組織へのTBPMの移行性は良好であり,TBPM-PIの良好な有効性を支持するものであった。
Tebipenem pivoxil(TBPM-PI)は新規の経口カルバペネム系抗菌薬であり,活性本体tebipenem(TBPM)をプロドラッグ化して経口吸収性を高めた薬物である。今回,臨床推奨用量(250mg:力価)のTBPM-PI細粒投与時の薬物動態に及ぼす食事の影響を確認することを目的として,健康成人男性を対象とした臨床薬理試験を実施した。
TBPM-PI細粒250mg(力価)投与時の薬物動態は,絶食下と比較して食後投与によりTBPMのCmaxは約60%に低下するものの,AUC0–∞および尿中排泄率は同等であった。従って,TBPM-PI細粒投与時のTBPMの薬物動態に及ぼす食事の影響は,吸収速度の低下が生じるものの,吸収量に対しては小さく,臨床使用上の問題はないと考えられた。
Tebipenem pivoxil(TBPM-PI)の耳鼻咽喉科領域感染症成人患者を対象とした後期臨床第II相試験(用法用量確認試験,450mg投与群:150mg×3回/日,500mg投与群:250mg×2回/日,900mg投与群:300mg×3回/日)において測定された活性本体TBPMの血漿中濃度を用い,ベイズ法により一次薬物動態パラメータ(ka,kel,Vd/FおよびTlag)を推定し,二次薬物動態パラメータ(tmax,Cmax,t1/2およびAUC)を算出した。また,ベイズ法で適切な一次薬物動態パラメータを推定できなかった症例については,血漿中TBPM濃度および台形法により二次薬物動態パラメータを算出した。ベイズ法により得られた450mg投与群,500mg投与群および900mg投与群における一次薬物動態パラメータは,それぞれ,kaが5.64±2.76,5.11±3.06および2.51±1.13hr-1,kelが1.75±0.25,2.03±0.10および1.34±0.27hr-1,Vd/Fが17.62±5.09,15.83±6.14および19.34±8.80L,Tlagが0.48±0.11,0.38±0.03 および0.39±0.26hrであった。ベイズ法および台形法により得られた二次薬物動態パラメータは,それぞれ,tmaxが0.85±0.29,0.81±0.33および1.18±1.53hr,Cmaxが5.08±2.05,7.92±4.02および8.69±4.01𝜇g/ml,t1/2が0.40±0.06,0.34±0.01および0.54±0.10hr,1回投与分のAUC(AUC0–8hあるいはAUC0–12hが5.22±1.90,7.93±4.04および13.62±6.29𝜇g・hr/ml,AUC0–24h は15.65±5.70,15.85±8.08 および40.87±18.87𝜇g・hr/ml であった。
以上より,Cmaxおよび1回投与分のAUCは,1回投与量が増加するほど,AUC0–24hは1日投与量が増加するほど増加する傾向を示した。また,いずれの用法用量においてもtmaxは約0.8~1.2 hr,tmaxは約0.3~0.5hrとほぼ一定であり,用法用量の違いによる薬物動態特性の変動は認められなかった。また,耳鼻咽喉科領域感染症成人患者におけるTBPM-PIの薬物動態は,健康成人男性と類似したものであった。
Tebipenem pivoxil(TBPM-PI)は抗菌活性を有するTBPMをプロドラッグ化して経口吸収性を高めた新規の経口カルバペネム系抗菌薬である。今回,TBPM-PIの成人耳鼻咽喉科領域感染症に対する有効性および安全性を検討し,臨床推奨用法用量の決定およびPK-PD解析を実施する目的で,二重盲検比較試験を実施した。
耳鼻咽喉科領域感染症の主要原因菌5菌種(Staphylococcus aureus, Streptococcus pneumoniae, Streptococcus pyogenes, Moraxella catarrhalisおよびHaemophilus influenzae)による感染が確認された症例を対象として,TBPM-PIの投与量は,450mg投与群(150mgx3回/日),500mg投与群(250mgx2回/日)または900mg投与群(300mgx3回/日)の3群とし,いずれも7日間経口投与した。
1.臨床効果:有効性解析対象症例112例における投与終了時(中止時)の有効率は,450mg投与群72.1%(31例/43例),500mg投与群88.6%(31例/35例),900mg投与群85.3%(29例/34例)であり,500mgおよび900mg投与群では80%以上の高い有効率を示した。
2.細菌学的効果:投与終了時(中止時)の原因菌(主要5菌種)の消失率は,450mg投与群92.2%(47株/51株),500mg投与群94.7%(36株/38株),900mg投与群91.7%(33株/36株)であり,各群ともに高い消失率を示した。S. pneumoniaeは,PRSPを含むすべての株が消失し,S. pyogenesおよびM. catarrhalisもすべて消失した。H. influenzaeの消失率は,全体では78.6%であったが,450mg投与群76.9%,500mg投与群100%,900mg投与群66.7%と投与群間で差が見られた。
3.PK-PD解析:TBPMの血漿中濃度が測定でき,かつ原因菌のMICを測定した111例124株のデータを解析対象としてPK-PD解析を実施した。AUCf/MICおよびCmaxf/MICと細菌学的効果に関連が認められ,それらの関係からAUCf/MICおよびCmaxf/MICのターゲット値はそれぞれ10~20,および4と算定された。また,T>MICと細菌学的効果との間には明確な関係は認められなかった。
4.安全性:自他覚症状に関する副作用の発現率は,450mg投与群で28.8%(21例/73例),500mg投与群で35.8%(24例/67例),900mg投与群で30.6%(22例/72例)であった。臨床検査値異常変動の発現率は,450mg投与群で8.2%(6例/73例),500mg投与群で9.2%(6例/65例),900mg投与群で9.9%(7例/71例)であった。いずれも投与群間で差はなく,用量と発現率との相関はないものと考えられた。
以上より,主要5菌種による感染が確認された症例における投与終了時(中止時)の臨床効果において,500mg投与群で85%以上の高い有効率が得られたこと,いずれの投与群においても投与終了時(中止時)の細菌学的効果において,90%を超える消失率が得られたこと,安全性に関してもいずれの投与群も問題となる事象は認められなかったことから,成人耳鼻咽喉科領域感染症におけるTBPM-PIの臨床推奨用法用量は1回250mgの1日2回投与であると考えられた。