当院にて臨床材料より分離されたStreptococcus pneumoniae,Haemophilus influenzae,Streptococcus agalactiae,Streptococcus pyogenes,基質拡張型𝛽-ラクタマーゼ(ESBL)産生Klebsiella pneumoniae,methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)を対象とし,キノロン系薬ciprofloxacin (CPFX),gatifloxacin (GFLX),garenoxacin (GRNX),levofloxacin (LVFX), moxifloxacin (MFLX), norfloxacin (NFLX), prulifloxacin (PUFX),tosufloxacin (TFLX) の抗菌力を比較した。また,Pharmacokinetics-Pharmacodynamics理論を用い,常用投与量におけるarea under the curve (AUC)とMIC値の比がグラム陰性菌では120以上を,グラム陽性菌では30以上を示す確率を,Monte Carlo simulation (MCS)を使用して算出し,有効性として評価した。S. pneumoniaeに対しては,MIC50/MIC90 ともにGRNXが最も低値であり,0.03/0.06𝜇g/mlと優れた抗菌力を示した。S. pneumoniae以外のグラム陽性菌(S. agalactiae,S. pyogenes,MSSA) に対しても,GRNXの抗菌力が最も優れていた。H. influenzaeに対しては,CPFXの抗菌力が最も強く,MIC50/MIC90で0.016/0.016𝜇g/mlであったが,他の薬剤のMIC50/MIC90 も優れていた。ESBL産生K. pneumoniaeに対してはPUFXが最も優れた抗菌力を示し,MIC50/MIC90 は0.06/1𝜇g/mlであった。
常用投与量におけるMCSを用いた有効性評価では,S. pneumoniaeおよびS. pyogenesではGRNX,GFLX,MFLXが90%以上の達成確率を示した。S. agalactiaeでは,GRNX,MFLX,GFLXの達成確率が60%台であった。ESBL産生K. pneumoniaeでは,どの薬剤の達成確率も低く,最も高いものでもPUFXの43.63%であった。MSSAでは,GRNX,MFLX,GFLX,LVFXの達成確率が90%以上を示した。また,S. pneumoniaeにおいて耐性化抑制のターゲット値AUC/MIC>200に対する達成確率が最も高かったのはGRNXの95.05%で,GRNXはAUC/MICが250でも同様の達成確率であった。
近年,キノロン系薬剤の耐性化はその繁用に伴って増加している。今後は治療効果の増大と耐性化抑制の観点から見た抗菌薬選択を行い,最適な投与量・投与方法を選択する必要があると考えられた。
第2回日本化学療法学会分離菌感受性調査(2007年度)において得られた成人呼吸器感染症由来の臨床分離菌を対象に,「成人院内肺炎診療ガイドライン2008」における軽症(A)群および中等症(B)群成人院内肺炎推奨初期抗菌薬のうち,𝛽-ラクタム系抗菌薬であるセフトリアキソン(CTRX),スルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC),パニペネム/ベタミプロン(PAPM/BP),タゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC),イミぺネム/シラスタチン(IPM/CS),メロペネム(MEPM),ドリペネム(DRPM),ビアペネム(BIPM)の臨床的有効性を評価する目的で,最小発育阻止濃度(Minimal Inhibitory Concentration: MIC)値,MIC値とPharmacokinetics(PK), Pharmacodynamics(PD)を組み合わせたPK/PDブレイクポイントを用いてカバー率を解析した。その結果,Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA), Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalis, Klebsiella pneumoniae の5菌種については,H. influenzae に対するBIPMとSBT/ABPC, K. pneumoniae に対するSBT/ABPCを除き,いずれの抗菌薬も総じてMIC90 が低値を示し,PK/PDブレイクポイント内に分離菌のほぼ100%が収まっていた。 Pseudomonas aeruginosa については,分離菌カバー率が100.0%に至らず,増殖を完全には抑制しきれないことが判った。カルバペネム系抗菌薬5剤は,MIC90 ではいずれもTAZ/PIPCに勝る値を示しながら,PK/PDブレイクポイントに基づく分離菌カバー率においてはTAZ/PIPCに劣る結果であった。この傾向は,最大殺菌作用を示す常用量および最高投与量における分離菌カバー率ではさらに顕著であった。その理由として,わが国で承認されている最高用量が欧米に比べIPM/CSで1/2, MEPMで1/3と少ない点が挙げられる。
新規経口カルバペネム系抗菌薬tebipenem pivoxil(TBPM-PI)の各動物種における薬物動態を明らかにした。
1)マウス,ラット,イヌおよびサルにおいて,経口投与されたTBPM-PIは速やかかつ良好に吸収され,生物学的利用率はそれぞれ,71.4,59.1,34.8および44.9%であった。
2)ラットにおいて,経口投与され吸収されたTBPM-PIは,速やかに活性本体tebipenem(TBPM)へと変換された。血中に移行したTBPMは腎臓に高濃度で分布し,速やかに消失した。腎臓以外に長時間高濃度で残存する組織は認められず,中枢への移行性も低かった。TBPMのepithelial lining fluid(ELF)移行率(ELF中TBPM濃度/血漿中TBPM濃度の比)は21.8±14.7%であった。
3)0.1~100𝜇g/mlの範囲での,TBPMの血清蛋白結合率は,マウスで90.4~98.3%,ラットで78.5~90.0%,イヌで15.7~18.7%,サルで35.3~39.3%,ヒトで59.7~73.9%であった。
4)幼若動物(小児)ならびに成熟動物(成人)のラット,サルおよびヒトの血漿,肝S9画分および小腸S9画分を用いて,in vitro 代謝検討を行った結果,いずれの動物種のマトリックスにおいても,速やかにTBPM-PIからTBPMへ変換された。ラットあるいはサルの幼若動物および成熟動物に14C-TBPM-PIを単回経口投与後の血漿において,吸収されたTBPM-PIは速やかにTBPMおよびLJC11,562(TBPM開環体)へと変換されていることが確認された。また,血漿および尿中には,TBPMPIおよびTBPM-PI開環体は検出されなかった。ラットおよびサルを用いてTBPMPIの幼若動物における薬物動態評価を行ったところ,経口吸収性,分布,代謝物組成並びに排泄は成熟動物と大きな違いは認められなかった。
5)ラットにおいて,1~100mg/kg TBPM-PIの7日間反復投与による肝薬物代謝酵素系への影響はほとんど認められなかった。また,TBPM-PIおよびTBPMの各ヒトCYP分子種のIC50 値はいずれも100𝜇g/ml以上と推定された。
6)ラットにおいて,14C-TBPM-PIを10mg/kg単回経口投与したとき,投与120時間後までに,尿中へ36.9~42.7%,糞中へ58.3~62.2%の放射能が排泄された。投与48時間後までに投与量の大部分が体外へ排泄された。同様に,14C-TBPMを10mg/kg単回静脈内投与したとき,投与24時間後までに,尿中へ87.4%,胆汁中へ11.4%の放射能が排泄された。投与4時間後までに投与量の大部分が体外へ排泄された。
国内外で初の経口カルバペネム系抗菌薬であるTebipenem pivoxil(TBPM-PI)の痙攣に関する作用について検討した。ICR系雄性マウス及びSprague-Dawley系雄性ラットを用いて,TBPM-PI及びその活性本体であるTBPMの痙攣誘発作用及び抗痙攣作用について評価した。
1. マウスにTBPM-PI(30~1000mg/kg,p.o.)及びTBPM(10~300mg/kg,i.v.)を投与したところ,いずれの投与においても痙攣は見られなかった。ラットにTBPM(300mg/kg, i.v.)を投与したところ,脳波検査及び行動観察において痙攣に関連した所見は見られなかった。マウスの脳室内にTBPMを投与したところ,100𝜇g投与で7/10例に間代性痙攣が見られたが, 30𝜇g投与では影響が見られなかった。一方,Imipenem/Cilastatin(IPM/CS)の10/10𝜇g投与では,10/10例に間代性痙攣,3/10例に強直性痙攣が見られ,4/10例が死亡した。Meropenemを100𝜇gの用量で投与しても影響が見られなかった。
2. マウスにペンチレンテトラゾール(痙攣を誘発しない最高用量: 45mg/kg)とTBPM-PI(30~300mg/kg, p.o.)及びTBPM(300mg/kg, i.v.)を併用投与したところ,痙攣増強作用は認められなかった。一方,ペンチレンテトラゾールとIPM/CS(300/300mg/kg, i.v.)の併用投与では痙攣増強作用が認められた。
3. マウスにTBPM-PI(30~300mg/kg, p.o.)及びTBPM(100mg/kg, i.v.)を投与したところ,電気刺激,ペンチレンテトラゾール及びストリキニーネ誘発の痙攣に対する抑制作用は認められなかった。
以上より,TBPM-PIの経口投与及びTBPMの静脈内投与において,痙攣誘発作用及び抗痙攣作用は認められなかった。TBPMの脳室内投与において,他のカルバペネム同様に痙攣誘発作用が認められたが,その作用はIPM/CSよりも弱かった。したがって,TBPM-PIの痙攣発現のリスクはIPM/CSと比較して低く,臨床使用において痙攣発現の可能性が低い薬剤であると考えられた。
免疫系において抗原抗体複合体(IC)は宿主の自然免疫系の活性化とそれに伴う炎症反応の惹起に重要な役割を果たしている。特に,IgG抗原抗体複合体(IgG-IC)が単球状に存在するFcg受容体(FcγR)に結合して活性化することは自己免疫性疾患やIII型アレルギーなど組織傷害性の炎症性疾患の病態生理に関与している。
我々は固相化されたヒトのIgGを用いて単球状のFcγRを刺激することにより自然免疫系の重要な機能を担う樹状細胞(DC)が分化誘導されうるかを調べた。我々は固相化IgGによる単球刺激はCD1b, CDC86, CD206などを発現する未熟樹状細胞(iDC)の分化を誘導し得た。また,この作用はFcγRI(CD64)を介したGM-CSFの転写誘導に依存していることが分かった。しかしながら,固相化IgGで誘導したiDCはGM-CSFで誘導したiDCに比べて,CD86の発現レベルがより高い一方でMHC class II, CD32, CD206, CD14はより低く,異なる細胞表面マーカーのパターンを示した。さらに,固相化IgG誘導iDCはGM-CSF誘導iDCに比べて自己のリンパ球においても同種のリンパ球においてもリンパ球増殖刺激能が高かった。
これらのことから,抗原抗体複合体によるFcγRIの活性化によって引き起こされる特異的未熟樹状細胞は自己反応性リンパ球刺激を介して抗原抗体複合体に関連した自己免疫疾患の発症機序に関与している可能性が示唆された。