びまん性汎細気管支炎(DPB)に対するマクロライドの少量長期療法が,1984年わが国において初めて報告されてから今年で25年目を迎える。この治療法の普及により,それまで難治性呼吸器感染症の代表とされてきたDPBの予後は劇的に改善され,今日ではその発症もほとんど見られなくなってきた。その後,マクロライド療法はDPB以外のさまざまな呼吸器,耳鼻科領域の慢性疾患に臨床応用が広がり,加えて最近では海外での注目度も高まり,国際的医学誌での発表が散見されるようになってきた。近年,マクロライド療法の臨床応用が新たに期待されている疾患として慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられる。本年6月に改訂された「COPD診断と治療のためのガイドライン」(第3版)では,国内外のエビデンスを基にマクロライドがCOPDの増悪を抑制する薬剤のひとつとして記載された。
こうした状況を踏まえ,本日はCOPD治療の指導的立場にいらっしゃる福地先生,一ノ瀬先生,COPDにおけるマクロライドの有効性を報告された山谷先生,Seemungal先生,そして,DPBに対するマクロライド少量長期投与を最初に報告され,25年間DPBの治療に携わってこられた工藤先生にお集まりいただき,COPDにおけるマクロライドの可能性について話し合っていただいた。
性器クラミジア感染症の治療に関しては,日本性感染症学会の「性感染症 診断・治療 ガイドライン2006」および「性感染症 診断・治療 ガイドライン2008」において,キノロン系薬やマクロライド系薬,およびテトラサイクリン系薬を選択し投与すると記載されている。また,PK-PD理論に基づくと,抗菌治療にあたっては,抗菌薬の選択とともに投与方法の工夫も重要で,キノロン系薬では,1日投与量を複数回に分けるよりも1回で投与した方が高い効果が期待できるとされている。そこで,今回,多施設共同研究を行い,ガイドラインで推奨されているキノロン系薬トスフロキサシン(TFLX)の150mg BID群(150mg×2回)7日間投与における有効性と安全性について,TFLXの300 mgQD群(300mg×1回)7日間投与と比較検討し,ガイドラインの検証を行った。
その結果,Chlamydia trachomatisの消失率は,両群とも100%(BID群: 49/49,QD群: 57/57)であった。また,臨床効果は,BID群では,著効57.1% (28/49),有効以上100%(49/49)であり,QD群では,著効59.6%(34/57),有効以上100%(57/57)であった。今回の結果より,TFLXの150mg×2回7日間投与は,ガイドラインで推奨されているように有効な治療方法であることが確認された。また,TFLX 300mg×1回7日間投与も有効な投与方法として用いることができると考えられた。
2001年1月から2007年6月に真菌性腹膜炎と診断された患者の腹水検体から分離したCandida属96株のitraconazole(ITCZ)およびその他抗真菌薬6薬剤に対する感受性を測定し,In vitroに抗真菌活性を評価した。Candida属に対するMIC測定はClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)M27-A3に準拠した微量液体希釈法で実施した。抗真菌薬は,amphotericin B(AMPH-B), fluconazole(FLCZ),itraconazole(ITCZ),miconazole(MCZ),voriconazole(VRCZ),micafungin(MCFG)およびflucytosine(5-FC)を用いた。 Candida属96株の内訳は,C. albicans 37株(38%),C. glabrata 30株(31%),C. tropicalis 16株(17%),C. parapsilosis 13株(14%)であった。薬剤感受性は,non-albicans Candidaに対して,概ねMCFG, VRCZ>ITCZ>FLCZの順であった。CLSIのブレイクポイントに従うと,C. albicans ではFLCZ耐性2株(5.4%),ITCZ耐性8株(21.6%),VRCZ耐性2株(5.4%)を認めた。真菌性腹膜炎の症例においてITCZ静注薬で治療された16症例についてレトロスペクティブに,臨床効果について検討した結果,ITCZのMIC値が1m g/mL以下は全例有効であったが,MIC値が2m g/mLでは無効例2例,有効例2例で,MIC値が4m g/mL以上では無効であった。CLSI基準ではCandida属に対するITCZのブレイクポイントは,S:≦0.125, S-DD: 0.25~0.5, R:≧1となっているが,自験例からはITCZのブレイクポイントをS:≦1, S-DD: 2, R:≧4のように設定するのが良いと考えられ,今後データを蓄積し,再評価するべきであると考えられた。
The aims of this study were to develop a population pharmacokinetic model for cefozopran in pediatric patients, and to use this model to evaluate the pharmacodynamics of cefozopran regimens against common bacterial populations. Plasma drug concentration data (110 samples from 31 pediatric patients) were modeled using the NONMEM program. The mean estimate and interindividual variance of the model were used in a Monte Carlo simulation to estimate the probabilities of attaining the bactericidal target for cefozopran (the time which the drug concentration remains above the minimum inhibitory concentration for the bacterium is 70% of the dosing interval). A two-compartment model fitted the data and body weight (BW, kg) was the most significant covariate. The final model was: Cl (l/h)=0.674×BW0.538, Vc (l)=0.00233×BW2.25+1.85, Q (l/h)=1.46, and Vp (l)=0.0964×BW, where Cl is the clearance, Vc, and Vp are the volumes of distribution of the central and peripheral compartments, and Q is the intercompartmental clearance. The approved regimens of 20- or 40-mg/kg four times a day (0.5-h infusions), which were more effective than the corresponding three times a day-regimens, provided sufficient bactericidal effects on common bacterial populations (Escherichia coli, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, and Pseudomonas aeruginosa) in most typical patients. These results better define the pharmacokinetics of cefozopran and help in the choice of appropriate regimens for pediatric patients.
Legionella pneumophila肺炎モデルをDBA/2系マウスで作出した。DBA/2系マウスに106 CFUのL. pneumophila suzuki株(血清型1)を点鼻接種すると,感染14日後においても104 CFU/Lungの肺内菌数が維持され,マウスの死亡は認められなかった。感染前にCyclophosphamideを投与すると致死的感染となり,感染4から5日後にかけて全例のマウスが死亡した。病理組織学的には,感染初期には好中球の浸潤が認められたが,感染の進展とともに単球・マクロファージ系細胞の浸潤が顕著となり,感染後期にはリンパ球集簇と肺胞壁の肥厚を伴う間質性肺炎を呈した。透過型電子顕微鏡による肺の超微形態学的観察により,食細胞内でのL. pneumophilaの局在と分裂像が認められ,本モデルはL. pneumophilaの生体内での増殖に基づく感染系であることが示唆された。
ニューキノロン系抗菌薬Levofloxacin(LVFX)のLegionella pneumophila肺炎の治療における有用性を基礎的に検討するため,L. pneumophilaに対するin vitroならびにin vivo抗菌活性を評価した。
本邦で臨床から分離されたL. pneumophila(42株)に対するLVFXのMIC90は0.03𝜇g/mlであり,CiprofloxacinおよびPazufloxacinと同等で,TelithromycinおよびMinocyclineよりも高活性であった。
DBA/2系マウスにL. pneumophila suzuki株(血清型1)を点鼻接種し,LVFXを感染翌日から7日間経口投与した。LVFXの投与量は,500mg×1/日を経口投与時のヒト血中濃度時間曲線下面積(AUC)がマウス血清中で達成可能と予測される用量とした。その結果,LVFXは投与翌日から肺内菌数を有意に減少させ,感染8日目以降には除菌に至る治療効果を示した。
以上の成績は,Legionella肺炎の治療におけるLVFX 500mg×1/日経口投与の有用性を示唆するものと考えられた。
国立医薬品食品衛生研究所・安全情報部では,米国FDAA,EU EMEAB,英国MHRAC,カナダHealth Canada,豪州TGAD,ニュジーランドMedsafeE,WHOFなどの海外公的機関から市販後の医薬品安全性情報を収集して「医薬品安全性情報」として隔週で発行し,研究所のホームページに掲載している(図1)。医薬品には市販後に年齢や健康状態が様々な多数の人が,時には長期間使用するようになって初めて明らかになる副作用がある。海外公的機関は独自の有害事象報告システム(FDAのAdverse Event Reporting System,MHRAのYellow card scheme,Health CanadaのCanada Vigilance Programなど)を活用し,医療従事者や製薬会社からだけでなく患者からも積極的に情報収集を行っている。安全性に懸念が生じた医薬品については,学術論文や臨床試験データから信頼性の高いエビデンスを収集し,これらを総合してレビューすることによりベネフィットとリスクの判断が行われている。その結果として海外公的機関から発信される安全性情報は,わが国の医薬品の安全性確保にもたいへん有用である。
本稿では,2008年度から2009年度の初めまでに「医薬品安全性情報」で取り扱った情報のうち,免疫抑制薬使用に関連したウイルス感染症である進行性多巣性白質脳症(PML: progressive multifocal leukoencephalopathy),腫瘍壊死因子(TNF: tumor necrosis factor)-α阻害薬に関連した真菌感染症について紹介する。また,FDAの最近の安全対策として注目されるRisk Evaluation and Mitigation Strategy(REMS,リスク評価・軽減対策)や,患者向けのMedication Guideについても紹介する。